Jet Black Witches - 2芽吹 -

azo

文字の大きさ
29 / 40

第27話 流星群観測会に備えて

しおりを挟む
 ソフィアとケインは、会話に熱中していたため、やや瞳孔が開き気味だ。それに気付いたジンはソフィアに声をかける。

「ソフィアもなんか興奮気味だけど、大丈夫?」
「あぁ、あなた。抱き締めて、キスをくれる?」

 近くにいるケインが羨ましそうな素振り。いや、それを悟られまいと素振りには表れないように振舞っているが、意志とは無関係に反応する瞳孔の変化と、潤む瞳、ハッと気付いての視線外し。ソフィアはほんの一瞬のそれを見逃さない。

「あぁ、ケインもいらっしゃい! いいでしょ? あなた」
「オレはかまわないよ。ソフィアがいいのなら。二人同時に抱き締めて、キスは交互でいいよね?」
「本当に? 私も混ぜてもらえるの?」
「そうよ。いらっしゃい? んん」
「はい、それでは。ん」

 ジンのキスは疲労も回復していくが、気持ちの穏やかさも取り戻せるようで、すっかり瞳孔の開きも収まっていた。
「ケインもあらかた回復できたかしら?」
「はい、ごちそうさまでした。本当に素敵な力。疲労感が全く感じられなくなったわ」

「それじゃあ、仮眠を取りましょう!」
「はい、おやすみぃ」
「おやすみなさい」
「また後ほど」

 ジンを挟んで、右手にソフィア、左手にケインが肩を寄せながら、ソファーで仮眠に入る。

 …………

 22時にセットしておいた目覚ましのアラームが鳴り響く。

「ん、あぁ、もう時間か。ソフィア、ケイン、起きろー」
「あぁ、時間なのね? あら、ケインは爆睡してるわね。今日はお出掛けして、疲労はジンが回復してくれたはずだけど、たぶん精神的にも疲れたのかしらね? ソッとしておこうかしら?」
「いや、オレもそうしてあげたいけどダメだよ。ケインは早く起こす理由があっただろう?」
「あぁ、そうね、寝かしといてあげたいけど、パスポート取るのにも時間がかかるのに、他のことも忙しいから、ケインだけなかなか修練が進められないものね? まぁ、仕方ないか。でも、今日も特別にキス三昧のご褒美があるなら、逆に喜ぶかな? けれど今日だって例外なのだからね? ジン、わかってる?」
「わ、わかってるよ。でも、ソフィアとマコトの次に大切に思ってて、ケインもイルも、もう家族としての愛おしい気持ちはあるよ? 男女のそれとはまったく違うものだけどね。それでいいんでしょ?」
「えぇ、いいわ。ただ、なんだかケインは第二夫人のように思えて、嫉妬心みたいなものはあんまりないのよね。あなたが一夫多妻の話なんてするからよ! もぅ!」
「あぁ、たぶん、オレとソフィアとの間にある愛する気持ちと信頼感が揺るぎないものである証なんじゃないかな?」
 そう言いつつも、なぜか、不意にソフィアが他の男となんて想像が脳裏をかすめる。

「そうね。でも、倫理的にはちょっとアレだけど」
「あ、あ、あ、あぁ、ダメだ。ソフィアが別の男となんてのは考えられない。あぁ、想像しただけで気が狂いそうになる。ソフィアはこんな思いをしてたのか」
「ようやくなのね。まぁいいわ。私がどれほどの思いでいたのかを理解してくれたのならそれでいいもの」
「よくないよ。オレ、わかってなかったよ。もうするなんて言わない。本当に済まなかった! 想像するだけで心が壊れてしまいそうになる」

「ううん、いいのよ。思いが至ってなかったことはほんの少しだけショックだけど、あなたの私への思いがそんなにも純粋なものであったことがわかったし、他の人のそういう行為とあなたのは全く違うもの。それにもしもあなたにそんな力がなくて、私が命の危機に瀕しているとき、他の誰かのそんな行為しか救う方法がなくて、私の命が今まさに尽きようとしてたら、きっとあなたも苦渋の決断をすると思うの」

「う、うん、…………そうだね。それしか救う方法がないのなら、君を失うくらいなら、他のどんな嫌な思いでも飲み込める自信はある。……それでも嫌だなぁ。……でもでも受け入れるしかないんだね、そういうときは」
「そうよ。私だって、いろんな負の感情がわんさか芽生えたものよ? ただ、見知らぬ人ならいざ知らず、大切なケインの命が救えるのなら、私のあなたを独り占めしたい思いなんてちっぽけなものよ。最近そう思えるようになったわ」

「ソフィアは強くなったんだな?」
「そうよぉ? 何があろうと、私はこれからもずっとあなたの妻であり続けるもの。あなたは人の根幹を成す命に息吹を与えられる稀有な能力を持つ人だもの。今のところは魔女限定だけれど、もしかしたらそれ以外にも効果がある可能性はあるわ。そうそう試せないからなんとも言えないけれどね。そしてあなたは窮地にある人を見て見ぬ振りができない人。もちろん手の届く範囲か、力の及ぶ範囲で救うべき価値のある人に限って欲しいけれどね。それなら、受け入れるしかない場面はこれからもきっと訪れる。むしろ命のかかる場面なら、私からまたあなたにお願いするかもしれないわ?」

 言葉にできず、ただ頷くジン。
 それを見届けてソフィアは続ける。
「だから気に留めては貰いたいけれど、誰かを救うための行動は躊躇しないで欲しいの。私はもっと強くなる。ケインはそのためのプラクティスでもあるの。というか、さっきも言ったけど、ケインに関しては、不思議ともうほとんど抵抗感がないの。もうすっかり大切な家族としての意識が強いのと、夫を亡くしてポッカリ空いたピースが埋まったような、なんとなく幸せそうな表情を見せるケインを見てると、今の感じが続けばいいなぁ、って思う。だから、私を一番愛してくれていることが実感できて、かつ私の前でなら、ケインともかまわないわ。ただ、その場その場で生まれるちっちゃな嫉妬心から軽くあなたを奪い合いするかもしれないけど、まぁそこはご愛嬌ということでね?」

「わかった。じゃあ、そういう場面では必ずソフィアがいるということになるね。そういうときは、事前にソフィアを見るから、問題ないなら頷きが欲しいな? ダメなときは首を横に振ってくれ」
「わかったわ」

 ボトッ、ボトボトッ
「ぅぅ……私なんかのために……」
 熟睡していると思っていたケイン。話の途中に目が覚めて、聞き耳を立てていたようだ。

「あら、おはよう! いつから起きてたの?」
「パスポート云々のあたり……ズズ……」
「そう。夫婦の秘め事が漏れてしまったわね。ちょっと恥ずかしいけど、まぁ、ケインならいいか。あれっ? でもパスポート云々からって、丸々聞いていたのと同じじゃない? だったら直ぐに起きなさいよね?」
「ご、ごめんなさい。話がどんどん進んでいくから話に入りそびれたの」

「まぁ、いいわ。そういうわけだから、どうしても回復が必要なときは遠慮しなくていいわよ。ただし私の前だけね?」
「ズズ……私、これまでの人生で優しくされ慣れていなくて、それと、もういい歳なのか、涙脆くて」
「もう! あなたまだ二十代でしょ? しかも今は十代のはちきれんばかりのボディーに見えるのに、心はおばあちゃまなの?」

「は! そうよね。涙脆いのは私の性分でもあるし、その時々の心の震えなのだから、止めることはできないかもしれないけど、そこはいいわよね? でもそんなこんなを年のせいにするのは間違っていたわ。うん。心が気持ちよりも後にあるのがダメなのよ! 気持ちよりも前に心を持ってこないと」
「あ、うん、何を言っているのかわからないけど、ともかくもう大丈夫なのかな?」

「え? あぁ、伝わらないかな? ただ流されるままに感情に委ねた後で、心が理由付けするのではなくて、まず心で捉えて、というか頭で今必要とされることを考えて、そこから溢れる嬉しいや悲しいは感情に流すの。まぁ、感情も心で捉えた結果なのだけどね。それでも、感情のままにグダグダになって立ち止まるのではなくて、前を向いて、次のことに向かっていけると思うの」
「ケインはなんか難しい思考回路をしているのね? あ、まぁ、考える癖を付ける、ということなのね?」

「あ、まぁ、そういうことになるわね。でもソフィアたちの心が強いのはきっとそういうことなのね? やっとわかったわ。私も繰り返す挫折のせいで心が折れまくったから仕方ない、って思っていたけど、私自身の問題でもあったってことなのね」

 不意にジンが口をはさむ。
「あぁ、ケイン。そんなに自分のことを否定する必要はないと思うよ」
「え?」
 ようやく自分の直すべき癖を自覚したところで、それを打ち消すような人の言葉にやや意表を突かれたケイン。ジンが続ける。
「ケインがたくさんの苦労を重ねてきたことは教えてくれたから概要は知ってる。そんな概要だけでも計り知れない苦労があったことも想像できる。誰だって投げ出したくなりそうなほどのとんでもない苦境だったと思う。それでもケインは諦めなかったでしょう? イルを必死に育て守ったでしょう? それも過労死してしまうほどに頑張った。真似をしようと思ってもできることじゃない。ケインのやってきたことは凄かったんだよ?」
「そ、そう?」
 ケインに形成された癖は、それ相応の経緯があったからだというジンの言葉にむず痒さを憶えるケイン。ジンはさらに続ける。
「今わかったっていう、その心の持ちようも大事だから、今後の自分に生かせばいいと思うけど、ケインが味わったような苦境がもしももう一度訪れた場合、そんなときまで気を張る必要はないんだよ。感情に任せたっていい。そうじゃなきゃ壊れちゃうよ。それに、これまでとの大きな違い、それはイルだけじゃなく、これからはオレたちもいるということ。存分に頼ってほしいと思う」
 これまで一人で抱え込むしか選択肢がなかったケイン。これからは抱え込まずに吐き出せと言ってくれるジン。支えてくれようとするその温かさに、ケインの心の防波堤はほろほろと崩れ、涙腺はどんどん緩んでいく。
「ヴン。ヴン。ズズ」
 ソフィアも防波堤崩落へと参戦してくる。
「そうよぉ、ケイン。そんなときはこれからは私たちに思いっきり甘えなさい」
「うん」
「それと、さっきの私はちょっと冷たかったかしらね?」
「ううん」
「ケインがこれまで背負ってきた苦労、私にはきっと背負えないと思うもの。それが長かったから染みついたものもあるのも事実だと思うけど、それを私なんかが否定していいわけないわ。それに私たちがイルちゃとそのお母さんを全力で助けたい、って決意を固めたときに思ったの。イルちゃ親子はもっと報われるべきだと。それなのに、私はそんな大変だった過去のことを蔑ろにして、あなたにまた大きな苦労を強要するところだったわ」
「ううん、そんなことないわ…」
「あなたさえよければ、これからは私たちがずっと一緒にいるし、あなたは自分の思うように生きる道を選んでいいのよ。私が話したお仕事の話もいったん白紙に戻しましょう。贅沢三昧な生活まではさせてあげられないけど、生活の不安もなく、楽しい日々を送れると思うわ」

 ソフィアは一転、ケインへのオーダーをすべてを撤回しようとする。ケインとしては、投げかけられたオーダーに対して、いろいろと思うところや、自分なりの決意、アイデア想起などがあったため、そこまで気遣われては、それらも無に帰してしまうことと、何より立つ瀬がなくなる気がしたため、反論を返す。

「ヴン。って、ちょっと待って! 私は何もしないで養われるような感じに聞こえたけど、そ、それだけは勘弁して! 大恩ある皆さんを前にして、何もしないなんて、たぶん耐えられないと思う。それにお仕事だって強要されているつもりはないわ。いつだって選択肢をくれて、それで私がやる、って決めたことだもの。お仕事が大変そうだなとも思うけど、私、嫌じゃない。むしろどうやったらソフィアに凄いって言わせられるかって、ちょっと楽しみでもあるのよ。だからさっきまでの通りでお願いします。でも、ふたりともありがとう。こんなにも心を砕いてもらえて。私、幸せすぎるわ」
 自分の意志をなんとか伝えきれたことに安堵するケイン。
「わかったわ、ケイン。それじゃあ、早速お風呂に入りましょう? 話は歩きながらでね」
「はい、でも早く入るのは何か理由があるのでしょう?」

「あぁ、そういえば説明がまだだったね。ケインにお風呂のシールドを張ってもらいたいんだ。前に教えた、見えにくくするシールドと、万一、流星が墜ちても大丈夫なくらいの頑丈なシールドで、お風呂と言ったけど、この一帯を包むくらいのできるだけ大きいサイズで作ってほしいんだ。ケインに不足する修練の代わりにもなるし、何よりも早く漆黒を卒業して欲しいしね?」
「なるほど、そういうことなのね? すっかり補講カリキュラムができてたわけね?」

「よし、着いたね。じゃあ、ソフィア? お風呂に入る前に、ケインに見えにくくするシールドを先に張ってもらって? できるだけ大きめだけど、道の街路樹の手前のまでが全部覆われるくらいの円形のドームがいいな。もし魔力に余裕があれば、厚みを持たせるか、二重に張ってみて?」

「了解よ。ケイン? 作り方は前に教えた通りだけど、あの木とあの木、それからあの崖の麓あたりを底辺とする、高さと半径が10~15mくらいのドームを作るわよ? 準備できたら始めていいわ」
「了解。間違ってるのに気付いたらすぐに教えてね? ソフィア」
「わかったわ。ケイン」

 ケインは、手のひらを合わせて目を閉じる、イメージを固めた後、目を見開き、合わせた手のひらを見つめながら念じていく。すると手のひらの内側から薄っすらと水色に灯る小さな球体が生まれ、ケインは徐々に手のひらを広げていく。バスケットボール大くらいの大きさのところで一度ソフィアに確認する。

「ソフィア? 見えにくくするシールドで間違ってないかしら? 問題なければこのまま広げていくのよね?」
「うん。シールドの形成上は問題なさそうよ。あとは広げていくだけなんだけど、ゆっくりでいいから、均一の厚さを保ったままドーム状に大きくしていくのよ? 今の大きさから大きくしていく段階で手のひらの内側には収まり切れなくなるから、そこからは手を放すけどシールドはオーラで繋がっている状態になるから、手をかざす感じになるわね。それとその少しあとには今の自分も大きくなったシールドの球体の内側に移行するのね。すり抜けるだけだから、びっくりしてシールドを解除しないことよ?」
「わかった。やってみるわ」

 ケインは手のひらを広げて少しずつ大きくしていく。手に抱えきれない大きさになったところで頭上に持っていく。さらに大きくなったところで球状のシールドの内側に入る。

「よっと、こんな感じ?」
「うん、上出来よ」

 ソフィアもジンも球状のシールドの内側に入る。

 ゆっくり、ゆっくり大きくしていく。が、ケインが息切れし始める。

「はぁはぁ。魔力量が足りないみたい」
「そのままシールドを保持してて」

 ジンがケインに駆け寄り、キスをする。ゆっくりとエネルギーを補充していく。
 ケインはキスをしながらだが、苦しそうな表情はなくなったようだ。

「ケインは、ジンとそのままの状態でシールドを広げていって? ゆっくりとよ? 位置がずれたりしないか、全体的に均一かどうかはこっちでも見ておくわ」

 ケインは頷き、キスをしたまま、目は開いて頭上を向き、シールドに魔力を注いでいく。目がややトロンとしているが、シールドを見据えて形成に気を配っているようだ。ジンからの補充が潤沢なのか、球状のシールドの拡大具合もややスムーズそうだ。

「あぁ、ケイン? 大きさは大体それくらいでいいわ。そのまま全体的な厚みを加えられるかしら?」
「んぐ。あ、ちょっとやってみるわ」

 ケインは答えるとすぐにジンと唇を重ねる。
 もう遠目の位置にあるから、制御している本人だけが状態をわかるだけで、ジンやソフィアには厚みがどれくらいかの細かい部分はわからない。

「たぶん厚み的にはこれくらいかと思うけれど、どうかしら?」
「本人が言うからそうなのだと思うけど、万一もあるから、ソフィアも見えにくくするシールドを内側に重ねて張れるかな?」
「わかったわ、ちょっと待ってて」

 ソフィアは手慣れたもので、そそくさとシールドを生成し、ケインの作ったシールドの内側に重ね張りを完了する。

「よーし、光学シールドは完成かな?」
「えぇ、なかなか良い出来よ? ケイン」
「あ、ありがとう。こんなに大きいもの、私一人ではやっぱり作れないみたいね。でも補充してくれるのなら、私でもできることがわかったわ。私も日々研鑽してキャパを増やす必要があるわね?」

「そうね。そうしてくれるとありがたいわ。でもまだ終わりじゃないのよ? ケイン」
「あっ、そうでした。光学シールドは見えにくくするだけで、誰でも通れてしまうのよね? 今度は硬質化シールドで、外からの人の侵入を防ぐのと、今日の場合は万一に備えて、流星落下にも耐えられる、超頑丈なシールドを作るのよね?」

「そうそう。でも光学シールドよりは作るのは単純よ? ただ必要な魔力量は多くて、特に今日は頑丈なシールドだから余計ね。だから最初からジンから補充しながらで始めようか?」
「はい。ジンさんもよろしくお願いしますね」

「あっ、そうそう、とても重要な話よ? さっきも言ったように硬質化シールドはエネルギーを多く必要とするし、今日の場合は特に頑丈なシールドが必要なの。さっきの状況だとすぐに補充が必要になるのは予想済だけど、シールドを作るときのエネルギーの勢いがあって、補充のスピードが足りないと枯渇する危険性もあるのね? それで言いにくいのだけど、前にやった第3段階というか、肌を密着させた状態じゃないと間に合わない可能性もあるの。あの、その、前回と違って、今回はしなければ命の危機があるわけじゃないし、漆黒卒業だけが目的だから、今日の硬質化シールド作成はやらない、という選択もあるのね? どうする?」

「あ、あぁ、なるほど。そうよね。今の私じゃ特別な補充なしでは厳しすぎるわよね。その、第3段階? 人に知れたら倫理的な視線を浴びるかもだけど、私はジンさんが大好きだから、願ってもないことだし、私は全くの見返りなしに全面同意するから、そこは全く問題ないと思うわ。それに実際もそういう行為とは全く別物で純粋にエネルギー供給でしかないもの。むしろ問題なのは、ソフィーのほうよ」

「私は、さっきの夫婦の秘め事を聞かれてしまったときに言った通り、止むを得ないときのエネルギー供給のためならかまわないわ。ケインに関してはそう決めたの。あなたの場合、遅咲きになるから、魔女としての成長が遅れがちだし、今後の行動にも影響あるわ。それにあなたがジンを好きでいてくれて、私との関係性も保ってくれるのなら、それはもう第2夫人みたいなものよね? あなたがそれでかまわないのなら、私は家族としてそういう認識でいるつもりよ?」

「それなら、私は問題ないわ。私はジンさんを大好きだけど独占したいわけじゃない。ソフィーのことも大好きで、二人が永遠に幸せであって欲しいと願っている。だから私がお邪魔でないなら、二人の近くにチョコンと座らせてもらって、ソフィーとマコちゃんの次くらいにおこぼれの愛情をちょっぴり分けてくれるなら、もうそれで充分なの。その意味でもしも第2夫人のような立ち位置があるのなら、願ってもいない幸せよ? それに今さら再婚する気もないから、このまま独り身よりは潤いがある分、残りの人生も豊かに過ごせるわ。あぁ、ごめんなさい。好き勝手言ってしまった気がするわ。と、ともかく、絶対に二人の邪魔にはならないわ」

「わかったわ。じゃあ、時間もないし、子どもたちがいつ起きてくるかもわからないから、お風呂に入って最初からその状態でシールドづくりね? 二人ともそれでいいかしら?」

「わかったわ」
「オレもOK!」
「そう。じゃあ入りましょう?」

 3人ともいそいそと服を脱ぎ、お風呂に入る。

「じゃあ、ケイン? まずはキスから始めるけど、すぐにいくよ? 心の準備はいい?」
「あぁ、私は大丈夫。よろしくお願いします」
 お風呂に入ってまずはキス。
 ソフィアはだいぶ慣れたものの、ちょっとだけ焦れったさは感じていた。

「じゃあ、いくよ?」
「はい、ん」
 二人は抱き合ったまま湯船に浸かる。ケインは声を出さないように気遣いながらソフィアに顔を向ける。

「じゃあ、硬質化シールドね? まず片手を上げてその先にオーラを集める。そこで円盤状の形をイメージしてオーラを形作ってみて?」

 言われた通りに手順を進めるが、いつもはオーラの制御も制御がままならないのか、もたもたしていたのが、いつもと違い滑らかな制御反応にケイン自身が驚く。

「あれ? 前回はうまくできなかったのに、今回はすんなりとベースの円盤が作れたわ。やはり魔力量の問題が大きいのね? ジンさんのエネルギー供給が潤沢なせいよね?」
「えぇ、いい感じよね? 今度はそれを天にかざして、少しずつ円盤を上方に離していって? オーラとしては細く繋がっている状態よ?」
「こうかしら?」
「そう、いい感じよ。そのままさっき作った光学シールドの内側に停止させて、今度は光学シールドのドームの内側に沿わせるように硬質化シールドを広げていくのよ。できる?」
「はい。こんな感じ?」
「うん。いい感じよ。前回うまくいかなかったのはやっぱり魔力量の問題ね。扱いはとても器用に制御できているわ。それなら、やっぱり今の補充スタイルの選択はすごく適切だったわね?」
「え? そうなの? でも私の力じゃなくて作れているから私自身の向上にはならないのではないの?」
「あら、違うわよ? 今のシールド作成はあくまでケインの力で作っているの。すると今のケインだとすぐに枯渇するから、それを急速チャージしている状態なのよ。ということは日頃の何十倍もの修練をいっぺんにやっている感じになるわけ。だから今日のシールド作成が終わった頃には、魔力量もかなり増加しているはずよ?」

「そうだったのね。それで私のためにこんな段取りを組んでくれたってことね?」
「そうよ。話の途中だけど、そろそろドームの下端に差し掛かるわ。集中どころよ?」
「はい。集中集中」
「光学シールドと違って、物理的にぶつかるからその直前で部分的に止める必要があるのよ。はい、そろそろゆっくり目にしてね。あっ、崖の麓あたりはもうそろそろね。はい止めて? あぁ、そのほかはゆっくりと伸ばしていってね? 残りは大体同じくらいの隙間だから、ぎりぎりまで伸ばして止めるわよ。はい、止めて!」
「はい」
「うん、大体いい感じよ。これでシールドの殻ができた感じだから、ここからは厚みを加えていくの。イメージはあるかしら? さっきの光学シールドでも似たようなことをやったから大丈夫よね?」
「えぇ、きっと大丈夫」
「厚みに関しては頑丈なほどいいから、フルパワーでガーっといっちゃってもいいわよ?」
「了解、ジンさんの補充もあるから私は大丈夫。ジンさん自身は大丈夫そう?」
「オレは大丈夫。まだまだ余裕だよ」
「じゃあ、ケインいきます! フルパワー。むぐっ」
 ケインは繰り返す魔法行使にずいぶん慣れたのか、スムーズな魔力の出力でシールドの厚みはどんどん増していく。

「そろそろ大丈夫そうね。ケイン、仕上げよ。厚みのムラを調整しつつ、最後にもう一膜重ねる感じでシールド強化よ」
「ぷはぁ、了解」

 かなりスムーズな魔力出力でシールドの強化調整を行うケイン。
 と、そのときケインの身体が薄っすらと灯り始めた。

「やったぁ、ケイン、おめでとう。そのまま放出する感じよ」
「はい」

 ケインが最後の力を放ったその瞬間、ケインの全身が眩い光に包まれ始める、とすぐにお風呂の全体がカッと強く放つ光で見えなくなるほどの眩しい状態になった。
 そんな異変真っ最中にイルとマコがお風呂場にやってきた。

「パパ、ママ、何ごとなの? うわぁぁぁぁぁぁぁ、綺麗」
「あら、マコちゃにイルちゃ、起きてきたのね? さぁ入ってらっしゃい」
「あぁ、お母さんもいるし、お母さんが光ってる。これはもしかして……あぁ、お母さんの髪色が戻ってる。お母さん、おめでとう。っていうか、また私だけ取り残されたのね?」

「あぁ、ケインは借金返済関連の手続きで忙しいから、一人だけ修練の時間が取れずに漆黒卒業に相当時間がかかりそうと思ったから、今夜の流星群観測会に備えたシールド作りで頑張ってもらうことにしたのよ。パパの魔力補充のサポート付きで、なんとかシールド張り終えるまでに漆黒卒業が果たせてよかったわ。イルちゃはちょこちょこ魔力行使しているからそのうち漆黒卒業できるけれど、ケインはこうでもしないと難しそうだったもの」

「じゃあ、イルも今同じように補充してもらいながらたくさん魔力を使えば漆黒卒業できるのかな?」

「あー、それもそうねぇ、パパはまだ元気あるかしら?」
「あぁ、うーん。大丈夫かな。うん。まだ余裕はありそうだよ。ところでケインも随分消耗したはずだけど、補充できたのかな?」

「あ、えーと、もう少しだと思うから、最後にキスをいただけると嬉しいわ?」
「わかった。ということだから、イルはもうちょっと待っててね」

「よかったわね、イルちゃ」
「ありがとう、ソフィー。パパもありがとう。待ってるね」

「イル、よかったね? またあのストロベリーブロンドを拝めるわけだね。やったぁ。マコはあの髪色大好きなんだ」
「うん、ありがとう、マコちゃん。それでソフィー? その、たくさん魔力消費する必要があるみたいだけど、イルは何をすれば早く消費できるのかな?」

「そうねぇ、ケインと同じように全体シールド張るって方法もあるけど、一応今は必要分を張り終わっていることと、大きいのはいろいろと危険だから、小さめの硬質化シールドを張ってみようか?」
「え? あ、はい、わかりました。けれど、大きいのは危険なのに、お母さんは張り終えたわけでしょう? お母さんができたのならイルにもできそうな気がするんだけど……」

「あぁ、ケインにやってもらって枯渇しかけたから言ってるのよ。そのためにもスタンバイしてたパパからすぐに補充できたから難なく終えられたけど、やはり危険な状態に近いから、少し小さめの硬質化シールドを多重構築すればいいと思うわ。それにシールド構築の流れを何回も重ねることによって、かなり魔力の操作にも慣れるから、以前よりスムーズに出し入れできるようになると思うわよ」
「なるほどです。そういうことなら、それでお願いします」

「それではやってみようか? イルちゃの場合はギャング掃討作戦のときにずいぶん使いこなしていたと聞いているから基本は大丈夫よね?」
「はい、大丈夫です」
「今回の場合は、自身保護用の円形の硬質化シールドを作ったら、上方に掲げて作りたいドームの高さまで浮揚させる。手から離れるけど、細いオーラの紐で繋がったままの状態でね。その高さに達したら、ドームを形成するように円を広げていくの。ちょうど半球になるようにね。地表に達するところで、その終端を微調整しながら達した部分から広がりを停止していくの。ドーム形状ができたなら、全体に均一の厚さになるようオーラを注ぎ込んでね。感覚としては1cmくらいの厚さのシールドができれば完成よ。あぁ、ドームの大きさはお風呂のサイズに少し余裕を持たせた高さと半径は4~5mくらいがいいかな? 質問がなければ作成してみていいわよ。あぁ、小さくても枯渇の危険はあるから、お風呂に入ってジンの近くやるといいわ。1枚作成するたびにジンからキスで補充してもらうのよ? 作成途中でもやばいと感じたら、作りながら補充してもらうといいわ」

「はい。パパから補充してもらえるのね? わーい。うれしいな。パパお願いします」
「おぅ、まず補充しようか?」
「はい、お願いしま……ん、ん、んんん、ぷはぁ。それでは一枚目開始」
 円状の硬質化シールドを作るのは、すっかり慣れているのかサクッと作って頭上に掲げるイル。

「ここから5mくらい浮揚させるのよね?」
 ケインと違い、やはり若い分だけ物覚えがいいのか素早く頭上5mの位置に浮き上がる。

「ここから大きく均等の厚さで広げつつドーム状に形作るイメージっと」
 作成するドーム形状は小さい分、見渡す範囲も小さいし、距離が近い分正確性も高くなるから、作りやすいのは確かだが、イルは器用なのかあっという間に9割がた作り終える。

「イルちゃ? とても素早く上手に作れているけど、そこからは慎重にね? 硬質化シールドだから、地表にぶつかるとその衝撃や反動も生まれるから、気を付けないと危険な状態になりかねないからね?」

「はい。そこは気にしているつもりです。ここから全周を気にしながら地表に合わせるように止めるのでしょう?」
「そうよ。あぁ、そんな感じに止める、でOKよ。うまいわね、イルちゃ」
「えへへ。ソフィーに誉められちゃった。早くマコちゃんに追いつきたくて、教わったことはいつでもちゃんとできるように反復練習したんだ」

「あら、さすがはイルちゃね。さてと。ここからは均等に厚みを加えていくのよ? 少し地味だけど魔力を多く使うところだし、厚みを揃えるのも意外に気を遣うところだから、ちょっと注意しながらやってね? 自分の魔力量はまだ大丈夫そう? 自分の状態把握も重要なスキルなのだから、そういう目線も持ちながらゆっくりとね」
「はい。さすがにもうそろそろ枯渇の二、三歩手前くらいだと思います」
「うん。じゃあ、そのまま、お口だけジンに預けて補充しながら続けるわよ」
「はい、パパお願いします」
「よしきた」
「んぐっ、んんん。ふはぁ、気持ちいいです。初めてのことだから肩も凝ってたみたいで、凝りまで解れて力が漲る感じは毎度のことながら素敵です。もう一回、んぐ。んんんんん。ぷはぁ、補充しながらだとシールドに送るエネルギーも大量に送れるみたいで、もうこれ、完成でいいのかな?」
「えぇ、いいわ。その調子で数枚、内側に重ねてドームを作ってみてね」
「はい。消費量も要領も大体わかったから、自分の思うスピードでやってもいいのかな」
「いいわよ。ただくれぐれも残りの魔力量には注意してね? 枯渇だけはほんとに危険な状態なのだからね? 感覚的でいいけど、大体残り40%で補充を意識して、少なくとも30%になる前に補充は開始できているようにするのよ?」
「そういう感覚なのね。ありがとうソフィー、とても参考になりました。じゃあ、次のドームにかかります」
 そう言いながら、頭上に手を掲げると同時くらいにシールドの円盤が完成し、ドーム状に広がり始めている、と思った頃には地表に到達。そしてみるみる厚みが増していく。あっという間に硬質化シールドのドームは完成。ちょうど区切りがよいのか、補充に向かうイル。

「パパ? 補充お願いします。あの、ドーム作りの要領はわかったので、補充してもらいながら作ってもいいですか?」
「あぁ、いいけど、大丈夫なの? 見え方も変わるけど……」
「たぶん大丈夫です。空間的な距離は大体掴めたので。ただ地表付近では、いったん離してシールド作成に専念するけど、そのあとはまた補充してもらいながらでお願いします」
「わかった、いいよ」
「じゃあ、いきます。んぐっ、んん……」
 イルは凄いスピードでシールドを張っていく。イルの弱点は魔力量が少ないことで、それがリアルタイムに補充されるのだから、スピードはどんどん上がっていく。7枚目のシールドが完成したか、と思った頃にイルの身体に異変が起こる。

 イルは突然の眩い光に包まれ始める。とすぐに浸かっている湯面が真っ白く強い光を放ち、それがイルの作った何層ものシールドで乱反射する。虹色に飛び散る光の筋が織りなす空間が何とも言えぬ幻想的なシーンを演出するようだ。

「ふぁ~~。今までと違ってシールドが近いせいと、何層にも重なってるせいなのかしら、今まで見たことのないくらい幻想的で素敵な空間演出になったわね」
「イルゥ、すごく綺麗、あぁ、イルもストロベリーブロンドに戻ったね? わーい、おめでとう! イル」
「イル、素敵よ。同じ日に元の髪に戻れて嬉しいわ」
「イル、よかったな。やっぱりイルはこっちの髪色がいいな」

「ありがとうみんな。髪色が戻って嬉しいけど、それ以上に魔力量がけっこう大きくなった気がして嬉しい!」

「ふぅーーっ、よかった。これでみんな移動できるわけだね。ケインとイルはパスポートの手続きを進めるんだよ? あぁ、そうかマコトもパスポートを作り直す必要があるな。髪色もそうだけど、瞳の色が変わると別人判定されるよね? ソフィア。ごめん、ソフィア、オレはどうやるかがわからないけど、ソフィアならわかるよね? ソフィアに任せるよ?」

「わかったわ。というか日本かN国で戸籍ごと手を入れる必要があるから、マコちゃは移動は黒髪黒目に戻って出入国するしかないかもね?」

「あぁ、やっぱりそうするしかないよね。うん、それが一番いい方法かもしれないな」
「あぁ、それかこのままパスポートの期限超過になるまで黒髪黒目のままでやり過ごして、期限超過して無効になってから、新規に作成すればいいだけじゃない?」

「それもそうか。そうだよね。よし、懸念事項は大体片付いた。じゃあ、今からは当初予定の流星群観測会と洒落込もうか?」
「「「賛成」」」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...