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本編

6.

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 ◆

 アルバートに馬乗りになったわたくしは微笑んだ。
 おそらくアルバートは今、ヘビに睨まれたカエルになった気分を味わっているわね。お顔が真っ青だもの。

 明日の卒業パーティーで、ヒロインとのエンディングを迎えるはずのアルバートは、悪役令嬢の要請には応じないと思ったので、アルバート殿下の部屋までやって来てお茶に誘った。

 即効性の痺れ薬入りのお茶ですけどね。

「いったい、なに、を、するつもり、だっ!?」

 痺れ薬の影響で、アルバートの呂律はあやしい。

 わたくしはアルバートの下穿きに手をかけ、引き下ろした。外気にさらされたアルバートの逸物は、心なしかしょんぼりしている。

「殿下にわたくしの初めてをもらっていただこうと思って」
「っ……なぜ!?」
「殿下が好きだからですわ」
「っ!?」

 どうせなら好きになった人に、処女を捧げたいと思うでしょう? わたくし、前世はSMクラブの女王様だけれども、好きな人と添い遂げたいという乙女心もちゃんと持っていましたのよ。

 わたくしは殿下のなめらかな頬を撫でる。

 7歳から触れてきたこの頬。ふにふにしていた丸い線は、今ではすっかり青年らしいシャープな線を描いていた。この頬に触れるのも今夜が最後なのね。

「安心なさって。わたくしも侯爵家の者。退き際は心得ております。事が済んだら、ちゃんと殿下の前から消えますから」
「なに、を、言って……? ぅあっ!?」

 わたくしは屈み込むと、アルバートの肉の棒を握って先端にちゅ、と口づけた。

「ヴィア!?」
「ん、変な味」

 唇を舌で湿らせてから口を開き、先端のふくらんだ部分を頬張った。ねぶりながら肉の棒を手でしごいて、アルバートの熱を肉の棒に集める。

 このような真似をするのは、前世でも今世でもバートが初めてよ。
 だって、わたくし元女王様だもの。どちらかと言えば、舐めさせる立場だったわ。

 じゅうぶんにかたくなった勃起をつかみ、わたくしは準備をしてきたぬかるみにあてがった。

「ふっ! ん、んっ!」
「あ、く、ヴィ、アっ」

 バートの逸物を飲み込むには、今世のわたくしには経験不足のよう。
 圧迫感に何度もあえぎながら、小刻みに腰をゆらしては少しずつアルバートを挿入させる。

「ぁ、くっぅ! ヴィアっ! くっ、う……」
「はっ、はっ、んんっ! んぅ、うっ!」

 互いが苦しいだけの交わりの中、鉄さびの匂いが殿下の上に乗ったわたくしにまで届いた。

 やったわ、わたくし!!
 おめでとう、わたくし!!
 これで、もう、思い残すことはないわ!!

 処女を脱したことに満足したわたくしは、アルバートを引き抜くと乱れたスカートを下ろす。
 バートの逸物が股の間に挟まっている感覚がするけれども、わたくしには気にする余裕はない。

 荷造りは済んだ。
 修道院までの馬車の手配も済んだ。
 脱処女も済んだ。

 元婚約者とはいえ第二王子に薬を盛ったのだから、わたくしは罪に問われることになるだろう。
 さあ、騎士団につかまる前に、修道院に駆け込むわよ!!

「では、殿下。ごきげんよ……きゃっ!?」
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