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第五話 ドッキドキ! 初デート♥という話
§1 - 三月の兵頭睦月(その三)
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オフィスビルの階段を下り、踊り場でスマホを取り出す。迷うことなく通話アイコンをタップした直後。
(そういえば、午前と午後は小論文の練習って言ってたよな……)
ちょうど集中している最中だったら邪魔してしまう。どうしよう、と青くなった時、明るい声が響いた。
『あ、もしもし、兵頭さんですか?』
「う、うん。ごめんね、変な時間に電話しちゃって」
『いや、平気です。四字熟語の書き取りやってたんで』
「そ、そっか。良かった……」
『兵頭さん、今ってお仕事中ですよね? 何かあったんですか?』
「あ、いやそのちょうど休憩時間だから、なんていうか、磯上くんに『明日がんばれ』って伝えたくて……」
どうして肝心な時にしどろもどろになるのだろうか。いい大人だというのに。内心がっくりしていると、通話口から弾む声で、
『うわ、すっごい嬉しいです! ありがとうございます!!』
にこにこ笑う磯上皐月の顔が目に浮かび、すっと心が楽になった。なんだろうこのパワーは。
「たしか、小論文のほかに面接もあるんだっけ?」
「そうなんです。学校の先生相手に練習したんですけど、うまく喋れるかどうか微妙で……」
「気負わずに、普段の磯上くんらしく話をすれば良いと思うよ」
だって仕事で疲れた上に、頼りになる上司が辞める話を聞いてダメージくらったオレですら、君の声を聞くだけで元気になれるんだから……とはさすがに言えないけど。
『へへっ、頑張ります。あ、でも兵頭さんは働きすぎちゃダメですよ。それじゃ、また連絡しますね!』
「うん。じゃあまた」
通話が切れた後、へなへなとしゃがみ込んでしまう。
「……好きだなあ……」
思わずポロリと声が出てしまい、慌てて周囲を見回した。誰もいなくて良かった。
■ ■ ■
磯上皐月と連絡先を交換してから、兵頭睦月の生活はガラリと変わった。いや、社畜生活が悪化しているという話ではなく、プライベートが充実しはじめたのだ。
朝昼晩にメッセージが届く。ときどき自撮り写真が届く。たまに電話で話をする。相手が受験生ということもあり、内容は息抜きがてらの他愛ないものだし通話時間も短いものの、明るく素直で少しおっちょこちょいな性格の磯上皐月という人物は、知れば知るほど好みのタイプで、恋心がぐんぐん育っていた。だがしかし……。
(年の差がなあ……八歳は離れすぎだよなあ)
もう一歩踏み込みたいと思いつつ、心の中でブレーキをかけていた。
(大学に合格したら、きっと好きな女の子とかできるんだろうし)
爽やかな好青年で、あれだけ性格も良ければ、女が放っておく訳がない……ネガティブな考えに囚われてしまい、溜息をつく。
(磯上くんが彼氏になってくれたら宝くじが当たるより嬉しいけど、フラれた時のダメージが計り知れないし……)
客観的に見た場合、兵頭睦月の方がイケメン・高身長・大手企業勤務というハイスペックなのだが、本人の性格がネガティブなため、何事も後ろ向きに考える癖がついているのだ。
(とりあえず、今は仕事のことだけ考えよう)
オフィスへ戻り、まずは山積みの仕事を一つづつ確実にこなそう、そう己に言い聞かせるものの、ついついスマホが気になって仕方ない。
(磯上くんとのラインは家に帰ってからやりたいなあ……)
とっとと仕事を終えるべく、溜まっている業務をこなせばこなすほど、やれ中西の手伝いだ、小出が担当した箇所のチェックだと駆り出されてしまい、結局は終電まで残業して始発で出社する生活が続いていた。
(そういえば、午前と午後は小論文の練習って言ってたよな……)
ちょうど集中している最中だったら邪魔してしまう。どうしよう、と青くなった時、明るい声が響いた。
『あ、もしもし、兵頭さんですか?』
「う、うん。ごめんね、変な時間に電話しちゃって」
『いや、平気です。四字熟語の書き取りやってたんで』
「そ、そっか。良かった……」
『兵頭さん、今ってお仕事中ですよね? 何かあったんですか?』
「あ、いやそのちょうど休憩時間だから、なんていうか、磯上くんに『明日がんばれ』って伝えたくて……」
どうして肝心な時にしどろもどろになるのだろうか。いい大人だというのに。内心がっくりしていると、通話口から弾む声で、
『うわ、すっごい嬉しいです! ありがとうございます!!』
にこにこ笑う磯上皐月の顔が目に浮かび、すっと心が楽になった。なんだろうこのパワーは。
「たしか、小論文のほかに面接もあるんだっけ?」
「そうなんです。学校の先生相手に練習したんですけど、うまく喋れるかどうか微妙で……」
「気負わずに、普段の磯上くんらしく話をすれば良いと思うよ」
だって仕事で疲れた上に、頼りになる上司が辞める話を聞いてダメージくらったオレですら、君の声を聞くだけで元気になれるんだから……とはさすがに言えないけど。
『へへっ、頑張ります。あ、でも兵頭さんは働きすぎちゃダメですよ。それじゃ、また連絡しますね!』
「うん。じゃあまた」
通話が切れた後、へなへなとしゃがみ込んでしまう。
「……好きだなあ……」
思わずポロリと声が出てしまい、慌てて周囲を見回した。誰もいなくて良かった。
■ ■ ■
磯上皐月と連絡先を交換してから、兵頭睦月の生活はガラリと変わった。いや、社畜生活が悪化しているという話ではなく、プライベートが充実しはじめたのだ。
朝昼晩にメッセージが届く。ときどき自撮り写真が届く。たまに電話で話をする。相手が受験生ということもあり、内容は息抜きがてらの他愛ないものだし通話時間も短いものの、明るく素直で少しおっちょこちょいな性格の磯上皐月という人物は、知れば知るほど好みのタイプで、恋心がぐんぐん育っていた。だがしかし……。
(年の差がなあ……八歳は離れすぎだよなあ)
もう一歩踏み込みたいと思いつつ、心の中でブレーキをかけていた。
(大学に合格したら、きっと好きな女の子とかできるんだろうし)
爽やかな好青年で、あれだけ性格も良ければ、女が放っておく訳がない……ネガティブな考えに囚われてしまい、溜息をつく。
(磯上くんが彼氏になってくれたら宝くじが当たるより嬉しいけど、フラれた時のダメージが計り知れないし……)
客観的に見た場合、兵頭睦月の方がイケメン・高身長・大手企業勤務というハイスペックなのだが、本人の性格がネガティブなため、何事も後ろ向きに考える癖がついているのだ。
(とりあえず、今は仕事のことだけ考えよう)
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(磯上くんとのラインは家に帰ってからやりたいなあ……)
とっとと仕事を終えるべく、溜まっている業務をこなせばこなすほど、やれ中西の手伝いだ、小出が担当した箇所のチェックだと駆り出されてしまい、結局は終電まで残業して始発で出社する生活が続いていた。
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