【完結】街一番の有名人は、薬草クッキーがお好き

青空爽

文字の大きさ
9 / 20

第九話 別れてください①

しおりを挟む
 お仕事の終了時間ピッタリに、入り口のベルがカランカランと鳴った。
 入ってきた人物は、ゼルバだ。
 ゼルバはニコニコしながらこちらに近付いてくる。

「レノン。会いたかった。迎えに来たよ」
「ゼルバ……」

 先程女性に言われた言葉がグルグルと頭を周り、私はうまく笑えなかった。
 そんな私の反応にいち早く気付いたゼルバが心配そうな表情をする。

「どうしたんだい? お腹痛いの?」
「いいえ……。大丈夫」

 そんな私たちのやり取りを見ていたキノルルが、怒ったように口を開いた。

「ゼルバさん! 聞いてくださいよ! さっき女が来て――」
「キノルル!」

 私はキノルルの言葉をさえぎった。私の大きな声に、ゼルバは驚いて目をパチクリさせている。
 
「なんでもないわ。ゼルバ、お待たせしてごめんなさい。今行くわ」

 私はエプロンを脱いで棚にしまった。そんな私を、キノルルが不満げな表情で見ている。

「レノン。さっきのこと、ゼルバさんに言わないつもりかよ」
「もういいの。キノルルは口を挟まないで」

 突き放した言い方をすると、キノルルは少しだけ傷付いた表情をした。
 ――ごめんなさい。あとで謝るから……。今は一刻も早くゼルバと二人っきりになりたいの。

 私はえてキノルルとは目を合わさずに、レジのカウンターを出た。そのままゼルバの手を引っ張って出口に向かう。
 外に出ると、ゼルバが困惑したような表情で私に話しかけてきた。

「レノン。キノルルさんと喧嘩でもしたのかい? あの言い方は良くないよ」
「そうね。明日謝るわ。それより今は、一刻も早く貴方に話したいことがあるの」
「話?」
「そう……。大事なお話」
「へぇ? なんだろう?」

 ゼルバはニコニコしながら私の手を握った。

「俺の家で話す?」

 家に行ったりしたら決心が鈍る。だからダメ。私はフルフルと首を振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

閉じ込められた未亡人は、当主となった義息と契約する。

黒蜜きな粉
恋愛
借金の肩代わりとして後妻に入った私は、 妻と呼ばれながら屋敷の離れで「いないもの」として暮らしていた。 ある雪の日、夫が事故死したと告げられる。 だが、葬儀に出ることすら許されず、私は部屋に閉じ込められた。 新たに当主となった継子は言う。 外へ出れば君は利用され奪われる、と。 それが保護であり、同時に支配なのだと理解したとき、 私はその庇護を条件付きの契約に変えることを選ぶ。 短いお話です。 ※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。 そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。 やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。 大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。 同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。    *ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。  もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...