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第一章
第一話 張り紙
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1941夏。東京のとある女学校。
「それでは、今期の学業過程はこれで終了します。これから夏季休暇に入りますが、節度を持って過ごすよう心がけてください。それでは休暇明けまで、御機嫌よう」
教壇に立つ先生がそう言うと、ほかの生徒も「御機嫌よう」と返す。もちろん彼女、下田アリサも。
「アリサさん。せっかくですから銀座までお買い物に行きましょうよ。ほら、皆様も一緒に行そうですし」
友達の一人が誘ってくれた。しかし彼女はそれを断った。
「ごめんなさい。私今日は用事があるの」
「そうですか…残念ですが仕方ありませんね。また機会がありましたらお誘いいたします」
「うん、ありがとね。じゃあ御機嫌よう」
「はい、御機嫌よう」
下田は一人で校門をくぐり、一直線に家へと向かった。
「早く帰って、お母さんのお手伝いをしないと」
彼女は幼い頃に、父親を病気で亡くしており家では母親と二人暮らしだった。母は内職の少なし給与をやりくりして彼女の学費を支払っていた。
帰り道の途中の喫茶店では、同じ女学校の女学生数人がお茶を飲みながら談笑をしている。下田の目は、無意識にそちらを見てしまったが、すぐに目をそらした。
「ダメダメ!学費を払うだけで精一杯なのに、無駄遣いなんて出来ない!」
本当は彼女の、友達と一緒に銀座へ行ってみたかった。友達とお買い物をして、お茶をして…憧れではあったが、余計にお金を使うわけには行かなかい。下田は目をそらし、足早に歩きながら代わりに夕飯の献立を考えることにした。そのおかげで、彼女は目の前に立っていた掲示板に全く気づかなかった。
「痛ったい!もう…」
見事なまでにど真ん中にぶつかった。彼女は頭をおさえ、たんこぶでも出来ていないかを心配した。
「なんなのよ、こんな所に掲示板なんて…ん、これって」
彼女はぶつかった掲示板を見た。真ん中に大きな張り紙が一枚だけ掲示してある。そこには大きな目立つ文字でこう書かれていた。
『海軍省連絡 現在海軍省では事務作業手伝いのため、十代の女性を募集しています。希望される方は、下記の日時に海軍省にお越しください』
張り紙にはさらに、詳しい作業内容や仕事の期間、そして給与などが記されている。そこには「女学生歓迎」の文字もあった。確かに仕事内容は14歳の彼女にもできることだった。しかも短期間でそれなりの給与がもらえると書かれている。
「…夏季休暇の間だけでも、少しはお金の足しになるかな」
彼女はカバンからメモの切れ端を取り出し。素早く日時だけを記入してカバンに押し戻した。そして改めて足早に、献立を考えながら家に急いだ。
「それでは、今期の学業過程はこれで終了します。これから夏季休暇に入りますが、節度を持って過ごすよう心がけてください。それでは休暇明けまで、御機嫌よう」
教壇に立つ先生がそう言うと、ほかの生徒も「御機嫌よう」と返す。もちろん彼女、下田アリサも。
「アリサさん。せっかくですから銀座までお買い物に行きましょうよ。ほら、皆様も一緒に行そうですし」
友達の一人が誘ってくれた。しかし彼女はそれを断った。
「ごめんなさい。私今日は用事があるの」
「そうですか…残念ですが仕方ありませんね。また機会がありましたらお誘いいたします」
「うん、ありがとね。じゃあ御機嫌よう」
「はい、御機嫌よう」
下田は一人で校門をくぐり、一直線に家へと向かった。
「早く帰って、お母さんのお手伝いをしないと」
彼女は幼い頃に、父親を病気で亡くしており家では母親と二人暮らしだった。母は内職の少なし給与をやりくりして彼女の学費を支払っていた。
帰り道の途中の喫茶店では、同じ女学校の女学生数人がお茶を飲みながら談笑をしている。下田の目は、無意識にそちらを見てしまったが、すぐに目をそらした。
「ダメダメ!学費を払うだけで精一杯なのに、無駄遣いなんて出来ない!」
本当は彼女の、友達と一緒に銀座へ行ってみたかった。友達とお買い物をして、お茶をして…憧れではあったが、余計にお金を使うわけには行かなかい。下田は目をそらし、足早に歩きながら代わりに夕飯の献立を考えることにした。そのおかげで、彼女は目の前に立っていた掲示板に全く気づかなかった。
「痛ったい!もう…」
見事なまでにど真ん中にぶつかった。彼女は頭をおさえ、たんこぶでも出来ていないかを心配した。
「なんなのよ、こんな所に掲示板なんて…ん、これって」
彼女はぶつかった掲示板を見た。真ん中に大きな張り紙が一枚だけ掲示してある。そこには大きな目立つ文字でこう書かれていた。
『海軍省連絡 現在海軍省では事務作業手伝いのため、十代の女性を募集しています。希望される方は、下記の日時に海軍省にお越しください』
張り紙にはさらに、詳しい作業内容や仕事の期間、そして給与などが記されている。そこには「女学生歓迎」の文字もあった。確かに仕事内容は14歳の彼女にもできることだった。しかも短期間でそれなりの給与がもらえると書かれている。
「…夏季休暇の間だけでも、少しはお金の足しになるかな」
彼女はカバンからメモの切れ端を取り出し。素早く日時だけを記入してカバンに押し戻した。そして改めて足早に、献立を考えながら家に急いだ。
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