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第五章『黄昏の終わり月夜と漆黒』
第56話『奇術師と手品』
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「頼交換用鉤爪投擲我疾走予測地点《ユーリ、弾切れだべ。新しいカギ爪を、受け取れる場所に投げてくれ!》」
躍るように戦場を駆けるエッジの動きを読め、と。
更に、最適な場所に交換武器を投げる……。
「んなもん、楽勝にできるぜ! 受け取れ、エッジ!」
背負った武器庫《アーセナル》からカギ爪を取り出す。
エッジの移動速度、風向きを予測。
落下地点を予測、空中にぶん投げる。
エッジは駆けながら落下してきた楽器《タクト》を掴む。
武器の交換は、走りながら。一瞬のことだ。
「謝謝謝謝!」
このカギ爪には明確な弱点がある。
それは使用できる弾数に上限があること。
このカギ爪の弾数は50。
右手は鋭利なだけの仕掛けのない鉄のカギ爪。
その右のカギ爪で首の後ろから脛骨を抜き取る。
カギ爪の形状は左右対象で同じ。
だが左のカギ爪は仕込み武器だ。
左の爪の先端には注射器のような機構がある。
人差し指、中指を同時に曲げると仕掛けが作動。
爪先の先端から寄生型粘性魔獣が射出される。
ゾンビと呼ばれる、死体を操る雑魚魔獣の本体。
魔獣としては非常に弱い部類の魔獣だ。
脳だけの機能しか持たない粘性の魔獣。
触手もなく動きはナメクジ並みに遅い。
アメーバに近い。魔獣としては非常に弱い。
通常は動かない腐敗した死体の傷口から侵入。
ゾンビはこの魔獣が死体を操って動かしているのだ。
本体の粘体は靴底で踏めば殺せる雑魚魔獣。
それも、タイミングと使い方次第だ。
そこらに居る雑魚魔獣だから補充も容易。
継戦能力を考慮すれば戦術的優位性《タクティカルアドバンテージ》は高い。
弾が補充しやすというのは、強みだ。
だが、弾丸が尽きればこの武器の優位性は損なわれる。
多数を相手とする殺傷用武器としては明らかにリーチが短かい。
模擬戦、趣味的な武器という位置付けの武器だ。
*
以前、エッジに奇術のタネを教えてもらった。
タネは呪術的な現象と不釣り合いなほどに単純。
奇術の手順はこのような感じだった。
一連の所作は一瞬で完結する。
まず
目標に向かって音で注意を引きながら一気に接近。
右のカギ爪で首の後ろからコンッと一つ脛骨を弾き出す。
ダルマ落としを木槌で一段抜くのと似ている。
次に
切り裂かれた首の隙間から左のカギ爪を挿し込み注射。
人差し指から、超強力な痛み止め薬剤が射出。
中指からは粘性寄生魔獣が射出される。
魔獣は即座に神経と癒着、身体コントロールを奪う。
切断面の流血、傷痕も粘性魔獣がふさぐ。
カギ爪で斬られた相手は痛み止めで麻痺している。
だから粘性魔獣の違和感にも気づけない。
そして
注意をそらすためカギ爪の金属音を立て通り過ぎる。
駆け抜けたあとしばらくして異変が起きる。
粘性魔獣の完全な神経接続、身体掌握が完了したのだ。
近づく人間を攻撃するだけの生きたゾンビと化す。
首から上は、元の人間のままで。
だから、戦場に疑心暗鬼と混乱が生じるのだ。
以上が、奇術のトリックの全てだ。
これを成功させるために様々な工夫がこらされている。
異様なほどの痩躯。
長腕、長脚という身体的特徴。
カギ爪という見慣れない武器。
左右の爪が奏でる恐怖を煽る鉄の音。
音のしない足音。
舞うような独特な足取り。
奇怪な笑い声。
暗闇に溶ける漆黒のローブ。
それら全てが奇術を成功させるための演出。
衣装、音、容姿、その全てに意味がある。
奇怪な笑い声、鳴り響く金属音、音なき足音で。
相手の聴覚を完全に支配する。
異常な痩躯、長大な両手足、鉄の爪、黒いローブ。
相手の視覚を完全に支配する。
左右のカギ爪による斬撃は200分の1秒で完結。
人間の目で認識できる速度は60分の1秒程度。
その3倍の速さで完了させる。
更に自壊式使用時は、10倍の速さで行われる。
2000分の1秒で一連の所作が完結する。
カマイタチに切られたような物だろう。
サーカスの奇術師と似た、発想の技。
一流の奇術師は舞台外の日常でもそれを続ける。
それは、エッジも同じなのだ。
この奇術の起源は、団長との出会い。
そして、彼の半生が影響しているのであった。
躍るように戦場を駆けるエッジの動きを読め、と。
更に、最適な場所に交換武器を投げる……。
「んなもん、楽勝にできるぜ! 受け取れ、エッジ!」
背負った武器庫《アーセナル》からカギ爪を取り出す。
エッジの移動速度、風向きを予測。
落下地点を予測、空中にぶん投げる。
エッジは駆けながら落下してきた楽器《タクト》を掴む。
武器の交換は、走りながら。一瞬のことだ。
「謝謝謝謝!」
このカギ爪には明確な弱点がある。
それは使用できる弾数に上限があること。
このカギ爪の弾数は50。
右手は鋭利なだけの仕掛けのない鉄のカギ爪。
その右のカギ爪で首の後ろから脛骨を抜き取る。
カギ爪の形状は左右対象で同じ。
だが左のカギ爪は仕込み武器だ。
左の爪の先端には注射器のような機構がある。
人差し指、中指を同時に曲げると仕掛けが作動。
爪先の先端から寄生型粘性魔獣が射出される。
ゾンビと呼ばれる、死体を操る雑魚魔獣の本体。
魔獣としては非常に弱い部類の魔獣だ。
脳だけの機能しか持たない粘性の魔獣。
触手もなく動きはナメクジ並みに遅い。
アメーバに近い。魔獣としては非常に弱い。
通常は動かない腐敗した死体の傷口から侵入。
ゾンビはこの魔獣が死体を操って動かしているのだ。
本体の粘体は靴底で踏めば殺せる雑魚魔獣。
それも、タイミングと使い方次第だ。
そこらに居る雑魚魔獣だから補充も容易。
継戦能力を考慮すれば戦術的優位性《タクティカルアドバンテージ》は高い。
弾が補充しやすというのは、強みだ。
だが、弾丸が尽きればこの武器の優位性は損なわれる。
多数を相手とする殺傷用武器としては明らかにリーチが短かい。
模擬戦、趣味的な武器という位置付けの武器だ。
*
以前、エッジに奇術のタネを教えてもらった。
タネは呪術的な現象と不釣り合いなほどに単純。
奇術の手順はこのような感じだった。
一連の所作は一瞬で完結する。
まず
目標に向かって音で注意を引きながら一気に接近。
右のカギ爪で首の後ろからコンッと一つ脛骨を弾き出す。
ダルマ落としを木槌で一段抜くのと似ている。
次に
切り裂かれた首の隙間から左のカギ爪を挿し込み注射。
人差し指から、超強力な痛み止め薬剤が射出。
中指からは粘性寄生魔獣が射出される。
魔獣は即座に神経と癒着、身体コントロールを奪う。
切断面の流血、傷痕も粘性魔獣がふさぐ。
カギ爪で斬られた相手は痛み止めで麻痺している。
だから粘性魔獣の違和感にも気づけない。
そして
注意をそらすためカギ爪の金属音を立て通り過ぎる。
駆け抜けたあとしばらくして異変が起きる。
粘性魔獣の完全な神経接続、身体掌握が完了したのだ。
近づく人間を攻撃するだけの生きたゾンビと化す。
首から上は、元の人間のままで。
だから、戦場に疑心暗鬼と混乱が生じるのだ。
以上が、奇術のトリックの全てだ。
これを成功させるために様々な工夫がこらされている。
異様なほどの痩躯。
長腕、長脚という身体的特徴。
カギ爪という見慣れない武器。
左右の爪が奏でる恐怖を煽る鉄の音。
音のしない足音。
舞うような独特な足取り。
奇怪な笑い声。
暗闇に溶ける漆黒のローブ。
それら全てが奇術を成功させるための演出。
衣装、音、容姿、その全てに意味がある。
奇怪な笑い声、鳴り響く金属音、音なき足音で。
相手の聴覚を完全に支配する。
異常な痩躯、長大な両手足、鉄の爪、黒いローブ。
相手の視覚を完全に支配する。
左右のカギ爪による斬撃は200分の1秒で完結。
人間の目で認識できる速度は60分の1秒程度。
その3倍の速さで完了させる。
更に自壊式使用時は、10倍の速さで行われる。
2000分の1秒で一連の所作が完結する。
カマイタチに切られたような物だろう。
サーカスの奇術師と似た、発想の技。
一流の奇術師は舞台外の日常でもそれを続ける。
それは、エッジも同じなのだ。
この奇術の起源は、団長との出会い。
そして、彼の半生が影響しているのであった。
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