鬼神祭 呪哭の灯火 / 夜明けの雫

Laki

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第一部 呪哭の灯火

第三章 防衛前線

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第1幕 接敵

ザックと灯は南西側の学校付近にある商店街にやってきていた。住民はここ1、2時間で皆避難したようだ。

灯「そういえばなんで、私とザックをこっちに向かわせたんだろう。南東側はラキとかけるの2人なのは強いからわかるんだけど…あ!もしかして私こそかける達に匹敵すると見られて…!」

にやける灯を隣に、周囲を警戒しながらザックは答える。

ザック「いや、逆だ。本来なら俺一人のはずだ。恐らく灯が鬼だと知った上で、暴走したらなら俺に対処させるためがひとつ。」

灯「暴走?私そんなことないと思うけど。」

ザック「鬼は人間にとっては絶滅危惧種の未知の生命体だからな。竜人は人より数倍身体的能力値が高く、鬼とおなじように角が生えてるが飛べない翼も生えてるのが特徴だ。普段は隠しているがな。それに以前あったんだよ。人が鬼と化して暴走したことが。それも凄まじい力で。」

灯「人が…鬼に?そんなことあるの?」

ザック「鬼神が宿った武器を使い取り込まれれば鬼となり暴走する。ラキはそれが原因で今日まで剣を持たなかった。ましてやその武器をさっきアイツと取りに行ったがな。ちなみに俺もまあ似たような感じでその武器を扱えるし、過去に鬼と化した者を殺したのも俺だ。」

灯「私を守るか必要になったら殺すってことで理解していい?」

能天気のように聞き返す。

ザック「ああ、大体そうだ。もうひとつの理由はー。」

伏せろ!!

ザックが話を遮って灯を爆発から庇う。

どうやら建物に対して何かが撃ち込まれたようだった。

少し離れた位置にある訓練学校の廊下から狙撃した者がいることを朱雀は瞬時に理解する。

その正体はセカンドだった。

セカンド「へえ、やるじゃない。」

ザックは状況を把握すると閃光弾を取り付けた矢を瓦礫の隙間から瞬時に撃ち返し、セカンドのいる建物の手前の出看板端に当て目をくらます。その後すぐに灯をおぶって建物の影を死角をぬってセカンドのもとへと走っていく。

セカンドはそれを見逃さず、建物を次々と、腕と一体化している細い砲弾のような武器で破壊していく。

ザック「もうひとつの理由はな、恐らく俺が夜煌祭で1番強く、足でまといの灯を守りながら戦えると判断したからだ。」

灯「えぇーー!!足でまといぃーー!?」

ザックはそのまま訓練学校へと侵入していくのだった。


南門、雫、タツ、無名、骸灰鳥は正門へと向かっていた。

灰鳥「改めて、骸灰鳥といいます。愚弟がお世話になっております。」

雫「え、ラキアルのお姉さん?」

灰鳥「ええ、正確には従兄弟だったんだけどね。養子にしてもらってるから。それより相変わらずふざけた名前よね。あのクソ野郎。」

タツ「こ、こわ…さすが骸家…。」

無名「この中での最大戦力は間違いなく骸灰鳥さんだ。その次にタツ、僕は戦闘に不向きとはいえ、雫と同じくらいかそれ以上は戦える。」

タツ「外壁周辺は士族の組合連中で固めてる。南門から来るとしたらファースト、セカンド、サード、の誰か。敵もこっちも分散することで侵入と警護がしやすいはず。南は門が空いた時、呪哭の怪物は恐らく少しは侵入してくる。それで僕らに振られたんだね。安定した戦力より集団としての戦いが得意な俺や無名と共に。」

雫「僕に出来ることなんてあるのかな。」

タツ「自信を持ちな?雫は鬼灯村で夜煌祭が鍛えてたんだから保証する。お前は弱くなんかない。」

無名「とはいえ、呪哭はあまり入っては来られないだろう。恐らく士族の骸家当主と弓月家当主が主となって防いでくれる。」

灰鳥「その通りです。私たちはそれをかいくぐったものだけを始末するだけです。」

南門通りに到着すると門は閉まっている。
雫たちがほっとした瞬間、その場が凍りつくような気配がした。

黒い粒子のような小さな風が巻き起こり人のような何かを形どっていく。

その何かの正体は、ファーストだった、

ファースト「ごきげんよう。今夜は恐怖を知らせる夜としよう。」

骸灰鳥が最速でファーストの首を刀ではねた。

はずだった。

頭は粒子によって再生するだけでなく、黒い粒子の大きな手を生み出し、雫を捕まえ、握りつぶそうとする。

ファースト「おや、君、もしかして星の魂を持つ人間か。我々と相反する力…。面白い。」

無名が煙幕を焚き、タツの炎で腕を消し去る。

雫「4秒後、左から灰鳥さんに攻撃が来ます!」

雫は自分でも何を言っているのか分からなかった。しかし雫は4秒後の未来を確かに見ていた。その確信が発言へと至った。

4秒後、灰鳥へ左方向から粒子のパンチが煙幕を破って突きつけられるが刀を振り、粒子を打ち付ける。

無名「雫…!君、もしかして未来が見えて」
言い切る前に次の攻撃がやってくる。次の黒い手が無名を襲うが、タツの援護でかき消される。

煙幕が切れると、ファーストが片手を地面に突き合わせて叫ぶ

ファースト「Hack!!」

黒く細い壁のようなものが爪痕から走る電撃のように4人を飲み込んでいく。

全員の視界が一瞬で真っ暗になっていく。



南東側、かけるとラキはショッピングモールに来ていた。

かける「どうせならこの貸切状態のモールで隠れんぼしねえか!?」

馬鹿であった。

ラキ「おいおい、僕らは警護しに来てるんだ。隠れんぼは立派な警備だ!やろう!!」

馬鹿×2であった。

ワクワクしているふたりの目の前の天井ガラスがいきなり粉砕して何者がが現れる。

ガラスと共に降りてきたのはサードだった。

サード「遊ぼうぜクソ野郎ども!!」

馬鹿×3だった。

ラキ&かける「またお前かぁぁぁぁぁ!!!」



第2幕 The 3.

ショッピングモールに現れたサードは今までとは違う様な気配を漂わせていた。

黒い蒸気のようなものがサードにまとわりついている。

サード「さあさあ、今度はガチめに殺しちゃうぞ☆」

サードがクラウチングスタートをするような動作で足に力を溜めると15m先のかけるの顔を右手で捉え地面に擦り付ける。

目に見えない速さの様だった。

隣にいたラキはすぐさまかけるを押さえつけたサードに斬り掛かるが、サードは黒い短刀を腰から抜き出し防ぎ切る。

その一瞬の隙を見逃さず、かけるが右手でサードの顔をぶん殴る。吹っ飛ばされたサードに追撃するようにラキは斬風を飛ばす。

数秒後、瓦礫の煙から黒い矢がラキの頬をかすめる。

かける「おいおい、不死身かよこいつ…!」

ラキ「だったら無力化するまでぶった斬れば文句ないでしょ。」

サード「俺の細胞にどれだけ傷をつけても無駄だ!たっぷりとダメージを与えないと再生し続けるぞ!!さあもっと楽しもう!!」

ラキ「だからさぁ、細切れにしてやるっつってんだよ!!」

ラキの目が翠色の光が走り、妖刀から身体にかけて緑色の覇気のようなオーラが立ち上る。

かける「なんだか知らねぇが、狂ったやつしかいねえのかよここには。」

かけるが棍棒を抜き、サードに突っ込む。
サードの黒い弓から放たれる矢はかけるに向くが、後ろにいるラキが風で斬り裂く。かけるを斬らずに風斬圧でサードに傷をつかせ、かけるの棍棒とサードの持ち替えた二刀の短剣がぶつかりあう。かけるがサードの顎を蹴り上げると、サードは空中を舞うように着地の準備をする。その瞬間に2本の矢を放つが、かけるに狙ったものは本人に防がれ、もう一方は間合いまで踏み込もうとするラキに向けられている。
が、その矢を回転するように身体をそらして躱し、その重心移動による斬込みをサードめがけて間合いの外から行う。

風のように飛ぶ斬撃がサードに襲いかかり、
防ぐ瞬間ラキがようやくサードの懐で刀を抜く。

ラキの刀はサードの胸を斬り裂き走り抜ける。

サードはようやくダメージを負った様子だったが、傷は瞬時に回復した。

かける「今のでも無理だったか。」

ラキ「心臓だ。奴にも心臓のようなコアが見えた。アレを砕けばどうにかなるかもしれない。」

サード「お!ご名答!だが他のナンバーズよりも俺の体はすごく硬いんだ。砕けるかな?この闇夜のショーを!」

サードが指を鳴らす、その音が届くと同時にサードの短刀による猛攻がラキを襲う。ラキは防ぐことで精一杯の様だ。その背後からかけるの棍棒による攻撃も、サードにはあたるどころかダンスをするようにラキの剣戟をかわし、かけるの横腹に回し蹴りを直撃させた。重心の軸を失わず、その後すぐに短刀をラキの頭を突き刺そうとするが、数センチ避けられ髪の隙間を貫いた。

壁にめり込んでいたかけるがサードの横顔に瓦礫を投げつけると同時に姿を消す。

ラキはその隙にサードの片腕を斬り、距離を取るとサードの上には巨大なシャンデリアが落ちてくる。かけるの仕業だ。

ラキ「ごちゃごちゃうるせぇな。」

狂気にのまれかけているラキはさらに斬風を繰り出し隙を見極めている。

命中を避けるため、サードはシャンデリアを切り刻み、ラキの攻撃を防ぐ。

すべてをかわしきる直前、その影からかけるの攻撃が頭部へと直撃する。サードの頭部は黒い砂のように弾けるが、右手で貫かれた棍棒を握りしめる。

その一瞬の隙に、再生の間を入れず背後からラキがサードの心臓を一突きする。

サード「へぇ…よく頑張るねぇ。ラッキーボーイズ。」

サードの体は砂煙となって黒くて大きな丸い物体をその場に残して消え去る。

ラキ「なんだこれ」

カチカチカチ…

かける「なんか音鳴ってるな。」

ラキ&かける「爆弾だ!」

静かな夜の街中にドンと大きな音と振動が響く。


ショッピングモールの戦いはひとまず幕を終えたのだった。



第3幕 The 2.

セカンドの待ち構える兵士訓練学校へと侵入に成功したザックと灯。
ザックは灯を背負ってセカンドのいる三階廊下へと向かおうとするが、一階廊下の途中で呪哭が現れる。

ザック「しっかりつかまってろよ灯。」

琥珀色の瞳が電撃のようにザックを覆い尽くす瞬間、小刀を呪哭に投げつけ、即座に弓を弾く。音速のスピードで放たれる矢を追いかけるように敵に向かいダッシュする。投げた小刀を空中で手に取る。速すぎる鋭い矢は呪哭の大きな体に風穴を空けた。狼狽える呪哭にザックの小刀がとどめを刺す。切り裂いた呪哭を振り返ることなく三階廊下へと足を走らせる。

その姿は鬼神の様であり、雷のように力強い速さだった。

三階廊下。足元には鉄線式の地雷爆弾が設置されていたが難なく飛び越え、背後から迫る呪哭の一匹をしとめるために利用する。十分な距離を保ち、瞬時に振り向き地雷を撃ちぬく。

廊下の突き当りからその隙を狙っていたセカンドはザックと灯へと右腕の武装している照準口を向ける。おそらくその銃口のような穴からエネルギー弾のようなものを飛ばしているようだ。

セカンド「人間じゃない速さみたいね。そろそろ死んでくれる?」

セカンドはエネルギー出力をパワーよりもスピード寄りに置き換え、灯を狙って放つ。
しかしその弾はザックが庇うことで命中を避けられてしまう。

隙を突かれたとはいえザックも致命傷を避けるように動いていたため肩の擦り傷で済んだようだ。

セカンド「なるほどね。勝負はこっちでつけましょう。」

セカンドは廊下の突き当りにある扉を黒い塊のように溶け込んですり抜けていく。

その部屋は訓練兵のための戦闘演習施設となっており、柱と壁に阻まれた迷路が三階から一階まで階段を交差するように入り組んでいる。

灯「大丈夫?ザック。」
灯はザックから降りて頭の布をザックの肩に巻き応急処置をする。

ザック「問題ない。かすり傷だが、ここからは自分の足で動けるか?」

灯「うん!私も戦うよ!」
そういう灯はシュッシュッとボクシングをするように奮起をしているが、ザックにツッコまれる。

ザック「どこぞのバカ竜人みたいな戦い方じゃ死ぬぞ。武器はあるか?」

灯「ある…というか出せるよ!」

灯が目をつぶると黄色い光から大きな大剣を創造する。

ザック「え、なにそれかっこよ。てかそういうの初耳なんですけど。」

二人はそろって扉を蹴り破る。中には呪哭が数匹、いくつかの柱には鏡がかけられている。

目の前にある柱の鏡に映っていたのはセカンドだ。銃口をこちらに向け微笑む。

セカンド「さあ始めましょう。」

複数の鏡を通してエネルギー弾が反射してザックへと向かってくるが、軽々と身をかわす。
宙に浮いたザックは素早く呪哭の一匹を弓矢で仕留める。

右方向から呪哭が灯を襲うが、灯も大剣で応戦する。その威力は高く、呪哭を一刀両断して見せる。

ザック「なかなかできるじゃねぇか灯!」

灯がいぇーいとピースをしている間に灯の着地点の床下から次の呪哭が攻撃を仕掛ける。
慌てつつもその場からジャンプし、命中を避ける。ザックが小刀で切りつけることでその呪哭は倒せたが、灯は部屋の中央にある二階ホールへと無事に着地した。

二階ホールにはすぐに次の呪哭がやってくる。さっきまでの雑魚よりも大きなゴーレムのようだ。灯は少し驚くが、大剣を握りしめるその身体には闘志がみなぎっている。

ザックが応援に駆け付けようとするがセカンドの攻撃から避けることで足止めを食らってしまう。

ザック「一分でそこへ行く。どうだ灯、やれそうか!?」

灯「うん!私、ちょっぴり怖いけど頑張れるよ!」

セカンド「ずいぶん舐めた口をきいてくれるじゃない。」

セカンドは照準を灯に合わせてエネルギー弾を発射するが、ザックが空中で真っ二つに斬り、天井と壁に攻撃をそらす。

ザック「慌てんな。俺が相手だ。」

ホールのゴーレムは容赦なく灯に襲い掛かる。大きな岩のような左腕が灯に覆いかぶさるが、灯はその動きにしっかりと対応し、手を避けゴーレムの腕を砕き斬る。バラバラになった硬い呪哭の岩のような塊は空中でブロック状に舞い、灯へと向かってくる。

一つ一つを丁寧に避け、もう一本のゴーレムの腕へと走る。迫りくるブロックはその腕へと当たり体勢が崩れていく。灯は腕を駆け上り頭部へと突っ込む。高く飛び上がり、大きく振りかぶった大剣をたたきつけるようにゴーレムへと叩きつける。灯の勝利だ。

ザックは、姿をくらまし鏡を利用して攻撃するセカンドを探す。
何度も遠距離から反射をうまく活用しエネルギー弾が飛んでくる。それに当たらないように細心の注意を払いつつ、一階まで走ってきた。数メートル先にセカンドの髪が柱の陰で揺れるのを見つける。

その柱へと向かうがそこにセカンドはいない。罠だった。
天井の陰を伝い、セカンドはザックの背後を取り、後頭部に銃口を向ける。

セカンド「残念だったわね。ゲームは終わりよ。」

ザック「何言ってんだ、こっからだろ。」

セカンドは巻き添えを食らわないようにエネルギー量を抑えるが、鉛の弾丸を銃で撃つ速さと変わらないように調節し、撃ち抜く。

バンッと大きな音が響いた。その瞬間に合わせるようにザックは頭をそらし、エネルギー弾を避ける。そしてすぐさま小刀からナイフに持ち替え、背後のセカンドに反撃をする。
セカンドは驚きはしたがその動きに対応する。ナイフを避け、左手で陰に潜ろうとするが、
ザックに右腕をつかまれているせいでそれができない。ザックはそのまま右腕をナイフで斬り落とし、逃げようとするセカンドを、矢で首を突き刺す。

セカンドはその場に倒れる。

ザック「確かに、終わりだったな。」

セカンド「ふふふ、今はこのくらいにしといてあげる。それよりも、お仲間が心配なら市長さんの下へ向かったらどう?」

ザック「どういう意味だ。」

セカンド「さあね。また会いましょう。」

黒い砂のようにセカンドの体が崩れ、風に舞い消えていく。

ザック「灯!そっちはどうなった!?」

灯「ビクトリー!」

ザック「そうか、よくやった。こっちもカタがついた。一度市長の館に戻るぞ。」

訓練学校の戦いもどうにか幕を終えたのだった。



第4幕 The 1.

ショッピングモールでの戦いを終えた、かけるとラキは南門へと向かっていた。大きな戦闘音が離れていたその場所からでも聞こえてきたからだった。

街中を走っていると路地から背の高い女性が路地から出てくるのをかけるは見逃さなかった。腹部に深手を負ったその女性の正体は骸灰鳥だった。

かける「ラキ!あれってお前んとこの姉さんだろ!?」

ラキ「灰鳥姉さん?南門で何があったんだ?」

灰鳥「…クソ、が、多勢に…無勢だった。負けたのよ。あのクソ野郎。」

ラキ「灰鳥姉さんが負けるだなんて…他の皆は?」

灰鳥「他の子は無事よ。今のところはね。皆、呪哭とかいう輩に市長の館まで連れてかれたわ。」

かける「とにかくあんたを病院に運ばねえとその傷…。」

灰鳥「…私は大丈夫、致命傷は避けてる。それより館に行くなら気を付けて。あの男、人の心につけ込んで影を生み出してくる。歩人、間違いなくあんたは負ける。」

ラキ「急ぎたいところだけど、何があったか話せる?それでも知っておきたいんだ。」

灰鳥「私もしんどいから、ざっくりとだけよ。」


10分前ー。

南門に現れたファースト。対するは無名、タツ、雫、灰鳥の4名だった。
黒い手のような粒子体で攻撃を繰り出すファーストに4名は反撃するが、ファーストが片手を地面に突き合わせて「Hack!!」と叫ぶ。

黒く細い壁のようなものが爪痕から走る電撃のように4人を飲み込んでいく。

その後、視界が暗くなると灰鳥たちは自らの恐怖の根源が目前に現れた。灰鳥の前に現れた恐怖の存在をやっとの思いで斬りふせ、灰鳥だけが現実へと戻ってこれたようだった。

他三名は宙に浮く、縦向きの黒い棺桶に閉じこまれてしまっている。

ファースト「ほう、貴方は心がとても強いようだ。だが、まだ次の手がある。」

灰鳥の前には灰鳥そっくりの影武者が現れ、剣を抜く。

灰鳥の影は灰鳥自身と同じ動き、強さで決着がなかなかつかない。
この局面を切り抜けるには超えるしかない、自分自身をー。

さらに速く、さらに強く。その想いゆえか、激しい剣戟の末、灰鳥は自分の影に致命傷を与え討ち破る。

しかし、一瞬の隙を突かれ、ファーストが崩れゆく影武者の背後から灰鳥の腹部を貫く。

ファースト「最後の手は私自身だ。見事だったよ、骸灰鳥。だが、もう終わりだ。」

宙に浮く3つの棺桶と共に市長の館へとファーストは足を進める。

灰鳥「ま、待ちなさいよ…。クソ野郎。」

ファースト「仲間に伝えるがいい。私は彼らを連れて市長の館に向かう。無論、生きていたらだがな。」

灰鳥の後ろには無名、タツ、雫の影が黒い粒子によって構成される。

灰鳥「チッ、相手してる暇ねぇんだよガキども!!」


現在ー。

灰鳥「で、ガキどもの影をぶっ殺してこの傷でここまで来たってわけ。」

ラキ「姉さん素が出てるよ。にしてもここまでよく耐えたね。そこそこ重症だよこれ。応急処置だけしとくけどさ。」

かける「お前の姉ちゃん強すぎだろ。」

灰鳥「当たり前よ。少なくともそこの愚弟よりはね。それより早く行きなさい。」

かける「その傷ならここで待っててくれ、あとで医療班を呼ぶからよ。」

かけるとラキはその場を後にした。


市長の館、会議室。

かけるとラキはザック、灯と合流し中へ入る。

長い机のある部屋の中には椅子に縛られたエメルド市長、執事兼秘書のクロ、無名、タツ、そしてファーストにナイフを首にあてられる雫の姿があった。彼らは口も封じられているようだ。

人質を取られているこのタイミングでは敵意があれど武装を解除しなければならない。

ファースト「正しい判断だ。それでは始めようか、命の商談を。」

ザックたちは武器を置き、席に着く。
ザック「狙いはなんだ。どうすれば仲間たちを解放してくれる?」

ファースト「この少年、雫だよ、弓月朱雀。」

ザック「どうして俺の名を?まあいい、なぜ雫なんだ?」

ファースト「雫はただの人間ではない。未来を見通し、星の力を宿す生命体だ。そしてその力は呪哭にとって大きなエネルギー源となる。彼を地獄に連れ帰り、我らが王、ゼロへとささげるのだ。目的はシンプルなことだ。この現世に踏み入り、すべてを呪哭のものとする。」

かける「三日後ってのはどういう意味だ?」

ファースト「今は23時か。残り69時間だ。地獄の門が開くまでの時間のことだ。すでにこの世界から夜明けを奪った。地獄が開くことで文字通り、太陽と月は止まり、朝が来ることはなくなった。そして私たちが通れるほどには地獄はもう開きかけている。完全に地獄が開けばどうなるか…。それは世界が呪哭に覆いつくされ、現世の人間どもが皆、呪哭へと生まれ変わるのだ。」

ラキ「命の商談と言っていたが、結局皆、呪哭になるまで待つかここで殺すかってことか。雫を連れていく代わりに余命をやるってことだろう。」

ファースト「なかなか頭が回るじゃないか骸歩人。それだけじゃない、君たちにはチャンスも差し上げよう。地獄への入り口は雫の故郷、アストルム城に作ることができる。君たちと戦うのは私たちとしてもとても楽しいひと時だ。私たちはそこへ向かう。君たちにはその後を追うチャンスをあげよう。もちろん、時間は稼がしてもらうよ。」

ファーストが手を机に突き出し、「Hack」とつぶやく。

一同は心の闇に囚われ動くことができない。灯も恐怖で動けず、視界が暗くなっていく。

ファースト「よい子は寝る時間だ。」



第5幕 暗闇の少女(アカリ)

灯は神社の中、独りでたたずんでいた。 その場所の名は神籠。孤独に百年もの間、地獄の門をその場所から閉ざしてきた場所。時折、迷い込んでくる人間の話を聞いて安全な場所へと送り返す。

灯「ここは、神籠?私は…たしか…皆は?」

辺りを見回すが誰もいない。何事もなかったかのように夕暮れの風が寂しく背中をなでる。

灯「夢、だったの?」

「夢じゃない。すべて現実。」

灯の前に現れたのは、灯そっくりの影だった。

灯「誰?」

影「私はあなたの心。ここはあなたの心の闇。」

灯「心…?どうすれば皆のところへ帰れるの?」

影「あなたに帰る場所なんてない。ずっと孤独な鬼。外に出ても嫌われるだけだよ。」

灯「…わかってる。だけど、戻らないと!」

影「まだわからないの?あなたの居場所はない。どこにも。」

灯「今はそうかもしれない!だけどここから救い出してくれたのは雫だった。だから今度は私が雫を救うの!」

影「何を言っているの?もとよりあなたが始めたこと。この現状も何もかもね。全部あなたのせい。」

灯「そんなことわかってる!でも、だからこそ何にもしないなんてできない!」

深い暗闇に引き込まれそうな感覚に、その恐怖にのみこまれそうになる。そんなとき、灯を呼ぶ声が聞こえた。

かける「灯!大丈夫か灯!?」

影「思い出して。あなたの力は創造であり、想像。イメージすれば心まで繋がれることを。」

気が付くと灯は現実世界へと帰ってきていた。時間は午前3時をまわっていた。ファーストの精神攻撃を受けて既に4時間が経過していた。

ザック「目を覚ましたか。」

灯「雫はどうなったの!?呪哭は!?」

ザック「消えたよ。負けたんだ俺たちは。あまつさえ殺す価値すらないと判断され生かされただけだ。」

エメルド「まさか私までも意識を奪われてしまうとは…。」

無名「僕ら南門に向かった人間は二度も負けた。生きているだけでも奇跡だよ。正直ここにいる誰一人として勝ち目なんかなかった。」

かける「だからって何もしねぇつもりなのかよ!雫は俺らのせいで連れてかれちまったんだぞ!」

タツ「落ち着きなよ、かける。俺だって悔しい。自分の力不足を痛感させられたんだ。でも、まだ手遅れじゃないはずだ。」

無名「奴は行き先まで教えてくれたんだ。だがこちらも馬鹿正直に挑発に乗ってしまえば敵の思うつぼだ。」

ラキ「そんなこと言っても無名くんよ、策を弄してどうにかなる相手には思えなかったよ。唯一、自らの心の闇を討ち破った灰鳥姉さんも殺されかけてた。数で囲えばいいって寸法じゃ返りうちは必至だ。」

エメルド「先ほどの報告の件か。逆に兵を投入しすぎることも危険だろう。」

かける「気合で討ち破るしかねぇってのか?」

無名「いや、攻撃を受けないことがまず第一。気の持ちようだけで突破口が見えるのなら、かける、お前だってすぐに目を覚ますことができたはずだ。それにザックやラキは聞く限りでは精神攻撃には耐性が弱い。あの攻撃を食らうだけで全滅、よくて数人生きていられるかだ。」

ザック「もしそうなったら自分自身でどうにかするしかない。戻ってこれないとき、そいつは瞬時に見捨てろ。その覚悟がなければ全員が死ぬ。」

無名「そのとおりだ。」

タツ「…もしもの時はそうするしかないよね。とにかく灯はここにかくまってもらおう。」

灯「私、ファーストの攻撃から皆を救い出せるかもしれない。」

ザック「どういうことだ?」

灯「その前に、説明したいことと皆に謝らなければいけないことがあるの。」

無名「…続けてくれ」

灯「私は創造の力を持つ鬼神。物体の想像はこの大きな剣だけしかうまくつくれないけど、応用すれば心の深いところまで、その魂まで触れて繋がることができるの。今になってその力を理解したの。だから皆の魂が眠った状態になれば起こしてあげることができるかもしれない。」

タツ「もしそれが本当だとしても君はまだ子供だ。これ以上巻き込むわけにはいかないよ。」

灯「私のせいなの!さっきも言ったように私は鬼神。鬼神の私には生まれながらに役割があったんだ。それは地獄の門を閉ざし続けること。私がもともといた場所、神籠にいることで鬼神の力によって地獄の門は閉ざされたままだったのに、私が祭りに行きたいなんて雫に言ったから、封印は解かれてしまった。だからこれは私のせい。私が世界から夜明けを奪って、呪哭を解き放ってしまったの…。」

ザック「…。」

ザックが言葉すら発さず、灯に近寄り、右手を宙にあげる。罵詈雑言や暴力を覚悟していた灯の頭にはそっと優しく、暖かい手が触れる。

ザック「お前のせいじゃない、灯。お前は十分に頑張ってきたんだ。独りで辛かったろ。こんなに小さな背中でたくさんのことを背負ってきたんだな。」

灯「…うん!」

力強くうなずくと頬に涙が伝った。雫や彼らこそ灯にとっての理解者であり、居場所だった。そう理解した。

ラキ「たった一人の少女を犠牲に成り立つ世界ほど残酷なことはないんだ。雫のしたことも、灯がここにいることも間違いだなんて僕らは思わないよ。」

エメルド「突飛な話ではあるが、何一つ不思議な話ではないな。過去にもそのような伝承は歴史としてこの地に刻まれている。とはいえ、そのような世界を許してしまっている我々大人はその責任を負わねばならない。種族が違おうとも、力があろうとも、このような少女に前線へと向かわせるのなら、私も同行しよう。呪哭の向かう先、アストルムへと。」

かける「小細工はいらねぇが、作戦はハッキリしたな。」

タツ「灯を全力で守り、雫を取り戻す。でしょ?」

無名「そして呪哭の親玉どもを始末する。世界の命運をこの7人で背負うのは正気とは思えないが。」

エメルド「私も剣には腕に覚えがある。しかし呪哭が活性化している今、ファーストもいることを考えても少数精鋭、実戦経験のあるこのメンツでいくしかあるまいよ。馬はすぐにでも用意できる。クロ!」

留守にしていた執事のクロがいつの間にか部屋に戻り返事をする。

クロ「心得ております主様。街の留守は市民に気づかれぬようこの私めが成り代わっておきます。馬は既に到着済みです。」

エメルド「お前には幼少の頃より世話を焼くな。すまない。」

クロ「今更謝らないでください。これっきりですからね。このような真似は。どうかご無事で。」

ザック「じゃあそろそろ行くか、アストルム城へ…!」


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​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

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高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

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つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

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殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

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"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

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