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四章
第50話 準備
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リィンと別れ、ヒューイの案内で馬車があるという場所まで歩いてきた。
厩舎だ。何頭もの馬がここで飼育されているようだ。
その列から外れたところに、ヒューイが私たちのために用意してくれた馬車が停まっていた。
馬や馬車、と私は今まで日本語に置き換えて呼んでいたけれど、この世界には元の世界の馬はいない。
見た目的には馬に近いのだが、元の世界の馬とは決定的に違う。
何が違うって色が違う。荷台に繋がれているこの動物は、キリンみたいな色模様をしている。
まさしく、馬をキリン柄にしました、という感じだ。
この動物の名前を私は知らない。父も確かフィンキーを狩りに行くのに、この動物を借りて行っていた。
ヒューイが用意してくれた馬車は、まさしく荷物を乗せるため、という感じの箱型の荷台に、馬が2頭繋がれている。荷物を乗せるためではあるけれど、4人くらいなら人間も乗れそうなくらいの大きさの荷台だ。
御者が座る部分には簡易的な屋根もついていて、雨を凌げるようになっている。
「2頭もつけてくれたのか?」
馬車を目にしたセスが開口一番そう言った。
「荷台を預けて2人で1頭ずつ乗って行くこともできるようにな」
ヒューイが答える。
確かにセスの言う通り、このくらいの荷台であれば1頭で十分引っ張れる気はする。
荷台が必要のない場面で2人が1頭ずつ乗れるようにと配慮してくれたヒューイは、やはりできる男だ。
「ありがとうヒューイ、厚意は素直に受け取らせてもらう」
「ありがとうございます。ヒューイさん」
セスと私の言葉に、ヒューイは嬉しそうに笑って頷いた。
「赤い首輪の方がリッキー、青い首輪の方がライム。どちらも雄だ。可愛がってやってくれ」
なるほど、名前か。
一緒に旅をしていけば見分けがつくようになるのかもしれないけれど、今のところ首輪の色でしか判断ができない。よく覚えておこう。
「ちなみに、この動物の名前は何ていうんですか?」
「なるほど、そこからか。これは魔獣、カデムだ。足が速く、騎乗用や馬車用として飼育されていることが多い。草食だから道中の餌にも困らないし、長距離の移動に適した動物だな」
ヒューイは私の質問に若干驚いた様子を見せたが、快く説明してくれた。
餌に困らないということは街道沿いに生えている草を食べてくれるということかな。わざわざ餌を用意しなくてもいいのは重要ポイントだ。
「そうなんですね、教えてくださってありがとうございます」
「いや、構わない。君は本当に謙虚だな」
私が頭を下げるとヒューイは苦い笑みを浮かべてそう言った。
「ヒューイ、しばらくここに置かせてもらって構わないか?色々買い出しにも行かなければならない」
「ああ、構わない。厩舎の奥に誰かしらいるから必要な時は声をかけてくれ。君たちの話は通しておく」
「すまない、助かる」
「それでは、これでお別れだ。いつかまた会えることを祈っている」
私とセスに向き直ってヒューイが言った。
悲しいとも切ないとも言えるような表情で私たちを見つめている。
その顔を見たら急に寂しいという気持ちが沸き上がってきた。
別れというものは、何度経験しても慣れない。
「ヒューイさん…本当にありがとうございました」
「君が持ってくる依頼はろくなものじゃないから、できれば次は依頼とは関係のないところで会いたいものだ」
頭を下げた私には反して、セスはヒューイから視線を逸らしてそう言った。
「…そうだな。俺には、そういう案件しか回ってこないんだ。申し訳ない。前回からセスにはずいぶんと助けてもらった。感謝している」
セスの言葉にヒューイはどこか悲しそうに笑ってそう答えた。
2人にそんな言い方をされると、前の依頼はどんなものだったのか余計に気になる。
「あまり無理をしないようにね。元気で、ヒューイ」
「ああ…ありがとう。2人も元気で」
「さぁ、宿を取ってから必要なものを買い出しに行こう」
去っていくヒューイの背中を見送ってから、セスが口を開いた。
「いつカルナを発つ予定?」
「あまりここにカデムたちを預けてもおけないだろうから、できれば明日には発ちたいね」
予想以上にすぐだった。
でもまぁ、カルナでやりたいことも別にないし、構わないか。
私たちは依頼を受ける前に泊まっていた宿をもう一度訪れ、1泊分取り直すことにした。
「シエル、これから旅をする上で、可能であれば宿はシングルで2部屋取って別々の部屋に泊まるようにする」
歩きながらセスが私にそう言った。
そうするかしないか、という選択肢が示されることもなく断定的に言うのは珍しい。
「わかったけど…どうして?」
わざわざそうするのは何故だろう。
私と同室で過ごすのが嫌、という言い方には感じられない。
まぁ、今までの生活で感覚が麻痺していたけれど私も女な訳だし、男性と別の部屋で寝るのは全くもって構わない。というか、体が男なせいでその部分が考慮されなかっただけで、むしろこちらからそうしたいくらいだ。
私がセスを異性として意識してしまっている以上、同室だと色々と気持ちの面で辛い部分もあるし。
「一緒にいる時間が長いからこそ、1人で過ごす時間というのは大切になってくる。上手くやっていくためには、俺にも君にもこの1人の時間が必要だ」
「なるほど」
確かにそうかもしれない。
野宿などでは何をどうしたって一緒にいることになる。宿でまで一緒の部屋で過ごしていたら、本当に1人になる時間なんてない。時には息が詰まることもあるかもしれない。1人になりたい時なんて、誰にだってあるわけだし。
「すごい納得できる理由だった。わかった。そうしよう」
私の言葉にしかしセスはどこか悲しそうに笑った。
前にそうしなかったがために上手くいかなかったのだろうか。そう思わせるような悲しい笑みだった。
別々の部屋で宿を取り、私たちは旅に必要なものを買いに出かけた。
何が必要というのは私にはよくわからないので、基本的にはセスに任せている。
とりあえず今現在買った物は、道中で水浴びなどをするための桶や体を隠すための衝立だ。
どちらも提灯のように蛇腹になっていて、小さく折りたためるようになっている。
さすがに長旅でずっと体を洗えないというのもきついものがあるしこういうのは必需品なのだろうが、いくら小さく折りたためるとはいえ、馬車がなければさすがに持ち歩くには苦労しそうだ。
「そういえばセスってさ…何かつけてる?」
水浴びと言えば、今までの生活で2~3日お風呂に入れない、なんてことは普通にあったわけだが、セスからはどんな時も常にいい匂いがしている。
すれ違った時とかにフワッと香るような感じで、きっと香水のようなものをつけているのでは、と思うのだが、こちらの世界でそのようなものを見たことがない。
「何かって?」
あまりにも抽象的すぎる質問にセスが疑問を返す。
そりゃそうだ。いくらなんでも説明不足だった。
「セス、いつもいい匂いがするから、何かつけてるのかなぁって」
「ああ…香水をつけているよ。気になるなら店に案内するけど」
やはり香水はこの世界にもあるらしい。
ヒューイもセス同様に何かをつけているのでは、と思わせるようないい匂いがしていたし、イケメンは違うな。さすがだ。
「見に行ってみたい!」
私も汗の匂いとか気になるので、案内してもらうことにした。
セスに案内されたお店は、まさしく香水屋さんという感じだった。
匂いが混ざり合ってむせ返りそうになる狭い店内には、小瓶がいくつも並んでいる。
奥のカウンターに女性が1人いたけれど、いらっしゃいませと言うだけで、こちらに来ることもそれ以上何かを言うこともなかった。
「俺がつけてるのはこれだよ」
棚に並ぶテスターの一つを手に取り、セスが私に手渡してきた。
コルクでできた蓋を開けて匂いを嗅ぐと、セスと同じ匂いがした。柑橘系の爽やかな香りだ。
「いい匂い」
ヒューイは逆に、甘いバニラ系の香りだった。そんな甘い香りを放ちながらあのイケメンマスクに迫られたら、並大抵の女性はコロッと落ちるだろう。
しかしどちらかと言えば私は柑橘系の匂いの方が好きだ。かと言ってセスと同じにするのも何なので、別のものをいくつか手に取り、気に入ったものを探す。
「あ、これ、リーゼロッテの匂いだ」
ローズのようなフローラルな香りがする香水だ。
そんなにリーゼロッテに近づいたわけでもないけれど、すれ違った時にこれと同じ匂いがしていた。
「上流貴族だと女性も男性も日常的に使っているだろうね」
「なるほど」
エレンやベルナ、リィンもみんないい匂いがしていたが、それは香水というよりもシャンプーの匂いという感じだった。
女性はそうやって何もつけていなくてもいい匂いがする。前世の私もそうだったのだろうか。
「これ、どうかな?」
選んだ香水の瓶をセスに差し出す。
セスのものはシトラス系の爽やかな感じだけど、私が選んだのはオレンジ系の少し柔らかい感じのものだ。同じ柑橘系でも系統が少し違う。
セスはなぜか一瞬驚いた顔を見せてから、それを受け取って香りを確かめた。
「いい匂いだと思うけど…どうして俺に聞くの?」
瓶を私に返しながらセスが言う。
「え、だってセスにとって不快な匂いだったら一緒に旅していく上で苦痛じゃない?」
匂いの相性というのは大事だ。
好きではない香水の匂いをさせている人が近くに来ると息が詰まったりするし、そういう思いをセスにさせたくなかったのだが、そんなに驚くことだろうか。
「…なるほど。不快ではないよ。気を遣ってくれてありがとう。君によく合うと思うよ」
「そっか、よかった。じゃあこれにしよう」
ルピア、これがこの香水に使われている果物の名前だ。
1瓶銀貨5枚。一度に使うのは少量なので、1瓶あれば相当長く使えそう。
セスみたいに、私はこれを日常的に纏うことにした。
「ねぇ、セス、道すがらで料理してもいい?」
昼食を食べた後、やってきた保存食屋で私はセスに聞いた。
街から街への移動に時間がかかるこの世界では、保存食が充実している。それを買えばわざわざ料理する必要もないのだが、旅の途中で料理ができるような調理器具セットみたいなものも売られていたりする。
異世界に来て調理バイトばっかりやっていたお陰で、料理の腕には自信がある。どうせ道中そんなにやることもないのだから、せっかくなら料理を作って食べたい。
「別に構わないけど…俺は料理できないよ?」
確認するようにセスがそう言葉を返した。
「別にいいよ?僕がやりたいだけだから。でもセスにもできないことがあるんだね」
何でも器用にこなせる人なのだろうと思っていたので若干意外だ。
「料理をする必要性が感じられなくてね」
「なるほど…」
必要があるかないか、という話か。ということは案外やってみたらできるんだろうな。
「セスはどんな料理が好き?」
今まで何度かセスがおすすめしてくれたお店に行くことはあったが、その系統に共通性はなく、どういう料理が好きかという話も聞かなかった。
せっかく作るのなら、相手が好きなものを作りたい。
「…うーん…」
「……」
そのままセスは沈黙した。
どんな料理が好きかという問いに答えるのに、こんなにも長考が必要なのだろうか。
「特にこれと言って好き嫌いはないかな」
「それだけ考えたのに出た答えがそれなの…」
「ごめん、食にはあまり興味がなくて」
「えぇ…」
じゃあ今まで一体何をもって料理店をおすすめしてくれていたのというのか。訳わからなすぎる。
でもまぁ、いいか。そういうことなら俄然やる気が出てきた。
食に興味のない人間に興味を持たせるくらい美味しいものを作ってやろう。
店内を回り、必要な物を買い揃える。
まずは小麦粉。正確には小麦ではないのだけれど、まぁ、小麦と同じようなものだ。この世界の主食となる。
次に粉乳。小麦粉と粉乳を使えばクリーム煮ができる。
ドライイースト。この世界での名前は違うけど、まぁ良しとして、パンを膨らませるのに使う。これが何でできているのかは知らない。
これがあれば道中でナンくらいなら作れそうなので買ってみる。
あとは簡易的な調理道具一式と、保存食、日持ちするような野菜、調味料や香辛料をカゴに入れた。
普通に考えたらこれを持ち歩くことは難しいので、馬車って素晴らしい。
「卵って持って行くのは難しいかな?」
卵があれば料理のバリエーションが豊かになるのだけど厳しいだろうか、とセスに聞いてみたらやはり首を捻った。
「振動で割れるかもしれないね。どうしても卵が必要ならマニを買うか」
「マニを!?」
マニ、こちらの世界でのニワトリ。エルフの里では毎朝同じ時間に鳴いて起こしてくれた鳥だ。
ニワトリよろしく毎日卵を産むことで重宝されている鳥だが、まさかのマニごと買う発言に驚きを隠せない。
「そんなに高くないよ。銀貨5枚くらいで買える。餌もそんなに高くないし」
「や、やすっ!いや、でもマニって…マニを連れて行くってことだよね?」
「うん」
動揺を隠せない私に反し、何でもないことのようにセスは言う。
カデム2頭にマニまで連れて行ったら動物園みたいじゃない?それはそれで賑やかでいいのだろうか…。いいのか?
「不必要になったら食べてもいい」
「や、やめて!そんなひどいこと言わないで!」
この世界の肉料理の代表と言ってもいいくらいマニは日常的に食べられているのでセスの言うこともわかる。道中で獣を狩って捌いて食べるのとどう違うのかと言われれば違わないのかもしれない。けど卵を産んでもらう目的で一緒に連れて行ったマニを食べるなんて!さすがに情というものがあるよ!
「君は変なところで変なことを気にするね」
セスからしたらそう思うのが普通なのだろう。本気で不思議そうな顔をしてそう言った。
「セスが言いたいこともわかる。自分が一般的な感覚ではないのかもしれないことも自覚してる。ただ、情が移るだろうなぁって思っただけ」
「なるほどね。まぁ、どちらでもいいよ。君が必要なら買えばいい。ただマニは10年くらい生きるからね。10年も連れ添う覚悟があるかな?」
「やめておく」
即答だ。10年も面倒見られる自信はない。かと言って面倒が見きれなくなったら命を戴くというのも無理だ。
卵は諦めよう。なければないで何とでもなる。
そんな私をセスが面白いものを見るような目で見ていた。そんなに物珍しいか!くそう。
「あ、でももしケルデスが売っているならほしい。後で見に行ってもいい?」
「ああ。構わないよ」
空を飛ぶ、ということは諦めていない。
そんな私の気持ちを察したのか、真剣な顔でお願いした私にセスもまた真剣な顔で頷いてくれた。
なのだが、結果としてケルデスは売られていなかった。
元々、高所作業目的の他にも愛玩目的としての需要もあるらしく、その割には供給が追い付いていないのだとか。
残念がる私に、もしかしたらアルセノでなら手に入るかもしれない、とセスは慰めるように言ってくれた。
その後日用品などを買い足し、一度荷物を宿に置きに行ってから私とセスは依頼の報酬をもらいにギルドへと赴いた。
ちなみに今日買った物は、香水を除きすべてセスが支払っている。
2人で使うものなのだから折半しようと言ったのだけど、料理を作ってくれる対価だ、と言われたので仕方なく折れた。
報酬とポイントをもらう。
これでBランクだ。CからBまでヒューイからの依頼だけで上がってしまったので、感慨も何もない。果たして自分がBランクの冒険者と名乗っていいものなのだろうか。
「いいんじゃないのかな。依頼の幅が広がっただけの話だよ」
そんな疑問をセスにぶつけてみたら、こう返ってきた。
そういうものなのか。達成感を感じられないまま、私はしばらくギルドカードを見つめていた。
厩舎だ。何頭もの馬がここで飼育されているようだ。
その列から外れたところに、ヒューイが私たちのために用意してくれた馬車が停まっていた。
馬や馬車、と私は今まで日本語に置き換えて呼んでいたけれど、この世界には元の世界の馬はいない。
見た目的には馬に近いのだが、元の世界の馬とは決定的に違う。
何が違うって色が違う。荷台に繋がれているこの動物は、キリンみたいな色模様をしている。
まさしく、馬をキリン柄にしました、という感じだ。
この動物の名前を私は知らない。父も確かフィンキーを狩りに行くのに、この動物を借りて行っていた。
ヒューイが用意してくれた馬車は、まさしく荷物を乗せるため、という感じの箱型の荷台に、馬が2頭繋がれている。荷物を乗せるためではあるけれど、4人くらいなら人間も乗れそうなくらいの大きさの荷台だ。
御者が座る部分には簡易的な屋根もついていて、雨を凌げるようになっている。
「2頭もつけてくれたのか?」
馬車を目にしたセスが開口一番そう言った。
「荷台を預けて2人で1頭ずつ乗って行くこともできるようにな」
ヒューイが答える。
確かにセスの言う通り、このくらいの荷台であれば1頭で十分引っ張れる気はする。
荷台が必要のない場面で2人が1頭ずつ乗れるようにと配慮してくれたヒューイは、やはりできる男だ。
「ありがとうヒューイ、厚意は素直に受け取らせてもらう」
「ありがとうございます。ヒューイさん」
セスと私の言葉に、ヒューイは嬉しそうに笑って頷いた。
「赤い首輪の方がリッキー、青い首輪の方がライム。どちらも雄だ。可愛がってやってくれ」
なるほど、名前か。
一緒に旅をしていけば見分けがつくようになるのかもしれないけれど、今のところ首輪の色でしか判断ができない。よく覚えておこう。
「ちなみに、この動物の名前は何ていうんですか?」
「なるほど、そこからか。これは魔獣、カデムだ。足が速く、騎乗用や馬車用として飼育されていることが多い。草食だから道中の餌にも困らないし、長距離の移動に適した動物だな」
ヒューイは私の質問に若干驚いた様子を見せたが、快く説明してくれた。
餌に困らないということは街道沿いに生えている草を食べてくれるということかな。わざわざ餌を用意しなくてもいいのは重要ポイントだ。
「そうなんですね、教えてくださってありがとうございます」
「いや、構わない。君は本当に謙虚だな」
私が頭を下げるとヒューイは苦い笑みを浮かべてそう言った。
「ヒューイ、しばらくここに置かせてもらって構わないか?色々買い出しにも行かなければならない」
「ああ、構わない。厩舎の奥に誰かしらいるから必要な時は声をかけてくれ。君たちの話は通しておく」
「すまない、助かる」
「それでは、これでお別れだ。いつかまた会えることを祈っている」
私とセスに向き直ってヒューイが言った。
悲しいとも切ないとも言えるような表情で私たちを見つめている。
その顔を見たら急に寂しいという気持ちが沸き上がってきた。
別れというものは、何度経験しても慣れない。
「ヒューイさん…本当にありがとうございました」
「君が持ってくる依頼はろくなものじゃないから、できれば次は依頼とは関係のないところで会いたいものだ」
頭を下げた私には反して、セスはヒューイから視線を逸らしてそう言った。
「…そうだな。俺には、そういう案件しか回ってこないんだ。申し訳ない。前回からセスにはずいぶんと助けてもらった。感謝している」
セスの言葉にヒューイはどこか悲しそうに笑ってそう答えた。
2人にそんな言い方をされると、前の依頼はどんなものだったのか余計に気になる。
「あまり無理をしないようにね。元気で、ヒューイ」
「ああ…ありがとう。2人も元気で」
「さぁ、宿を取ってから必要なものを買い出しに行こう」
去っていくヒューイの背中を見送ってから、セスが口を開いた。
「いつカルナを発つ予定?」
「あまりここにカデムたちを預けてもおけないだろうから、できれば明日には発ちたいね」
予想以上にすぐだった。
でもまぁ、カルナでやりたいことも別にないし、構わないか。
私たちは依頼を受ける前に泊まっていた宿をもう一度訪れ、1泊分取り直すことにした。
「シエル、これから旅をする上で、可能であれば宿はシングルで2部屋取って別々の部屋に泊まるようにする」
歩きながらセスが私にそう言った。
そうするかしないか、という選択肢が示されることもなく断定的に言うのは珍しい。
「わかったけど…どうして?」
わざわざそうするのは何故だろう。
私と同室で過ごすのが嫌、という言い方には感じられない。
まぁ、今までの生活で感覚が麻痺していたけれど私も女な訳だし、男性と別の部屋で寝るのは全くもって構わない。というか、体が男なせいでその部分が考慮されなかっただけで、むしろこちらからそうしたいくらいだ。
私がセスを異性として意識してしまっている以上、同室だと色々と気持ちの面で辛い部分もあるし。
「一緒にいる時間が長いからこそ、1人で過ごす時間というのは大切になってくる。上手くやっていくためには、俺にも君にもこの1人の時間が必要だ」
「なるほど」
確かにそうかもしれない。
野宿などでは何をどうしたって一緒にいることになる。宿でまで一緒の部屋で過ごしていたら、本当に1人になる時間なんてない。時には息が詰まることもあるかもしれない。1人になりたい時なんて、誰にだってあるわけだし。
「すごい納得できる理由だった。わかった。そうしよう」
私の言葉にしかしセスはどこか悲しそうに笑った。
前にそうしなかったがために上手くいかなかったのだろうか。そう思わせるような悲しい笑みだった。
別々の部屋で宿を取り、私たちは旅に必要なものを買いに出かけた。
何が必要というのは私にはよくわからないので、基本的にはセスに任せている。
とりあえず今現在買った物は、道中で水浴びなどをするための桶や体を隠すための衝立だ。
どちらも提灯のように蛇腹になっていて、小さく折りたためるようになっている。
さすがに長旅でずっと体を洗えないというのもきついものがあるしこういうのは必需品なのだろうが、いくら小さく折りたためるとはいえ、馬車がなければさすがに持ち歩くには苦労しそうだ。
「そういえばセスってさ…何かつけてる?」
水浴びと言えば、今までの生活で2~3日お風呂に入れない、なんてことは普通にあったわけだが、セスからはどんな時も常にいい匂いがしている。
すれ違った時とかにフワッと香るような感じで、きっと香水のようなものをつけているのでは、と思うのだが、こちらの世界でそのようなものを見たことがない。
「何かって?」
あまりにも抽象的すぎる質問にセスが疑問を返す。
そりゃそうだ。いくらなんでも説明不足だった。
「セス、いつもいい匂いがするから、何かつけてるのかなぁって」
「ああ…香水をつけているよ。気になるなら店に案内するけど」
やはり香水はこの世界にもあるらしい。
ヒューイもセス同様に何かをつけているのでは、と思わせるようないい匂いがしていたし、イケメンは違うな。さすがだ。
「見に行ってみたい!」
私も汗の匂いとか気になるので、案内してもらうことにした。
セスに案内されたお店は、まさしく香水屋さんという感じだった。
匂いが混ざり合ってむせ返りそうになる狭い店内には、小瓶がいくつも並んでいる。
奥のカウンターに女性が1人いたけれど、いらっしゃいませと言うだけで、こちらに来ることもそれ以上何かを言うこともなかった。
「俺がつけてるのはこれだよ」
棚に並ぶテスターの一つを手に取り、セスが私に手渡してきた。
コルクでできた蓋を開けて匂いを嗅ぐと、セスと同じ匂いがした。柑橘系の爽やかな香りだ。
「いい匂い」
ヒューイは逆に、甘いバニラ系の香りだった。そんな甘い香りを放ちながらあのイケメンマスクに迫られたら、並大抵の女性はコロッと落ちるだろう。
しかしどちらかと言えば私は柑橘系の匂いの方が好きだ。かと言ってセスと同じにするのも何なので、別のものをいくつか手に取り、気に入ったものを探す。
「あ、これ、リーゼロッテの匂いだ」
ローズのようなフローラルな香りがする香水だ。
そんなにリーゼロッテに近づいたわけでもないけれど、すれ違った時にこれと同じ匂いがしていた。
「上流貴族だと女性も男性も日常的に使っているだろうね」
「なるほど」
エレンやベルナ、リィンもみんないい匂いがしていたが、それは香水というよりもシャンプーの匂いという感じだった。
女性はそうやって何もつけていなくてもいい匂いがする。前世の私もそうだったのだろうか。
「これ、どうかな?」
選んだ香水の瓶をセスに差し出す。
セスのものはシトラス系の爽やかな感じだけど、私が選んだのはオレンジ系の少し柔らかい感じのものだ。同じ柑橘系でも系統が少し違う。
セスはなぜか一瞬驚いた顔を見せてから、それを受け取って香りを確かめた。
「いい匂いだと思うけど…どうして俺に聞くの?」
瓶を私に返しながらセスが言う。
「え、だってセスにとって不快な匂いだったら一緒に旅していく上で苦痛じゃない?」
匂いの相性というのは大事だ。
好きではない香水の匂いをさせている人が近くに来ると息が詰まったりするし、そういう思いをセスにさせたくなかったのだが、そんなに驚くことだろうか。
「…なるほど。不快ではないよ。気を遣ってくれてありがとう。君によく合うと思うよ」
「そっか、よかった。じゃあこれにしよう」
ルピア、これがこの香水に使われている果物の名前だ。
1瓶銀貨5枚。一度に使うのは少量なので、1瓶あれば相当長く使えそう。
セスみたいに、私はこれを日常的に纏うことにした。
「ねぇ、セス、道すがらで料理してもいい?」
昼食を食べた後、やってきた保存食屋で私はセスに聞いた。
街から街への移動に時間がかかるこの世界では、保存食が充実している。それを買えばわざわざ料理する必要もないのだが、旅の途中で料理ができるような調理器具セットみたいなものも売られていたりする。
異世界に来て調理バイトばっかりやっていたお陰で、料理の腕には自信がある。どうせ道中そんなにやることもないのだから、せっかくなら料理を作って食べたい。
「別に構わないけど…俺は料理できないよ?」
確認するようにセスがそう言葉を返した。
「別にいいよ?僕がやりたいだけだから。でもセスにもできないことがあるんだね」
何でも器用にこなせる人なのだろうと思っていたので若干意外だ。
「料理をする必要性が感じられなくてね」
「なるほど…」
必要があるかないか、という話か。ということは案外やってみたらできるんだろうな。
「セスはどんな料理が好き?」
今まで何度かセスがおすすめしてくれたお店に行くことはあったが、その系統に共通性はなく、どういう料理が好きかという話も聞かなかった。
せっかく作るのなら、相手が好きなものを作りたい。
「…うーん…」
「……」
そのままセスは沈黙した。
どんな料理が好きかという問いに答えるのに、こんなにも長考が必要なのだろうか。
「特にこれと言って好き嫌いはないかな」
「それだけ考えたのに出た答えがそれなの…」
「ごめん、食にはあまり興味がなくて」
「えぇ…」
じゃあ今まで一体何をもって料理店をおすすめしてくれていたのというのか。訳わからなすぎる。
でもまぁ、いいか。そういうことなら俄然やる気が出てきた。
食に興味のない人間に興味を持たせるくらい美味しいものを作ってやろう。
店内を回り、必要な物を買い揃える。
まずは小麦粉。正確には小麦ではないのだけれど、まぁ、小麦と同じようなものだ。この世界の主食となる。
次に粉乳。小麦粉と粉乳を使えばクリーム煮ができる。
ドライイースト。この世界での名前は違うけど、まぁ良しとして、パンを膨らませるのに使う。これが何でできているのかは知らない。
これがあれば道中でナンくらいなら作れそうなので買ってみる。
あとは簡易的な調理道具一式と、保存食、日持ちするような野菜、調味料や香辛料をカゴに入れた。
普通に考えたらこれを持ち歩くことは難しいので、馬車って素晴らしい。
「卵って持って行くのは難しいかな?」
卵があれば料理のバリエーションが豊かになるのだけど厳しいだろうか、とセスに聞いてみたらやはり首を捻った。
「振動で割れるかもしれないね。どうしても卵が必要ならマニを買うか」
「マニを!?」
マニ、こちらの世界でのニワトリ。エルフの里では毎朝同じ時間に鳴いて起こしてくれた鳥だ。
ニワトリよろしく毎日卵を産むことで重宝されている鳥だが、まさかのマニごと買う発言に驚きを隠せない。
「そんなに高くないよ。銀貨5枚くらいで買える。餌もそんなに高くないし」
「や、やすっ!いや、でもマニって…マニを連れて行くってことだよね?」
「うん」
動揺を隠せない私に反し、何でもないことのようにセスは言う。
カデム2頭にマニまで連れて行ったら動物園みたいじゃない?それはそれで賑やかでいいのだろうか…。いいのか?
「不必要になったら食べてもいい」
「や、やめて!そんなひどいこと言わないで!」
この世界の肉料理の代表と言ってもいいくらいマニは日常的に食べられているのでセスの言うこともわかる。道中で獣を狩って捌いて食べるのとどう違うのかと言われれば違わないのかもしれない。けど卵を産んでもらう目的で一緒に連れて行ったマニを食べるなんて!さすがに情というものがあるよ!
「君は変なところで変なことを気にするね」
セスからしたらそう思うのが普通なのだろう。本気で不思議そうな顔をしてそう言った。
「セスが言いたいこともわかる。自分が一般的な感覚ではないのかもしれないことも自覚してる。ただ、情が移るだろうなぁって思っただけ」
「なるほどね。まぁ、どちらでもいいよ。君が必要なら買えばいい。ただマニは10年くらい生きるからね。10年も連れ添う覚悟があるかな?」
「やめておく」
即答だ。10年も面倒見られる自信はない。かと言って面倒が見きれなくなったら命を戴くというのも無理だ。
卵は諦めよう。なければないで何とでもなる。
そんな私をセスが面白いものを見るような目で見ていた。そんなに物珍しいか!くそう。
「あ、でももしケルデスが売っているならほしい。後で見に行ってもいい?」
「ああ。構わないよ」
空を飛ぶ、ということは諦めていない。
そんな私の気持ちを察したのか、真剣な顔でお願いした私にセスもまた真剣な顔で頷いてくれた。
なのだが、結果としてケルデスは売られていなかった。
元々、高所作業目的の他にも愛玩目的としての需要もあるらしく、その割には供給が追い付いていないのだとか。
残念がる私に、もしかしたらアルセノでなら手に入るかもしれない、とセスは慰めるように言ってくれた。
その後日用品などを買い足し、一度荷物を宿に置きに行ってから私とセスは依頼の報酬をもらいにギルドへと赴いた。
ちなみに今日買った物は、香水を除きすべてセスが支払っている。
2人で使うものなのだから折半しようと言ったのだけど、料理を作ってくれる対価だ、と言われたので仕方なく折れた。
報酬とポイントをもらう。
これでBランクだ。CからBまでヒューイからの依頼だけで上がってしまったので、感慨も何もない。果たして自分がBランクの冒険者と名乗っていいものなのだろうか。
「いいんじゃないのかな。依頼の幅が広がっただけの話だよ」
そんな疑問をセスにぶつけてみたら、こう返ってきた。
そういうものなのか。達成感を感じられないまま、私はしばらくギルドカードを見つめていた。
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