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四章
第51話 カデム
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夕食はセスおすすめのお店に来ている。
一体何がおすすめなのかと問うたら、値段の割に量が多い、という答えが返ってきた。要するにコスパか。
しかしそう言う割に、普段セスはあまり量を食べない。
「セスって少食だよね」
「そう?普通に食べているつもりだけど」
確かに討伐依頼で出された食事も残したりはしていなかったし、こういうお店で頼んだものもすべて食べ切っている。しかしその頼むものの量があまり多くない。
「僕の方が食べている気がする。セスの方が背が高いのに」
「君は育ち盛りだろう」
「そうかもしれないけど…」
15歳男子。確かに食べ盛りだ。それを考えたらセスの食べる量は標準なのだろうか。わからない。
ちなみにセスは今回、マニの香草焼きを頼んでいる。私はファンクという鹿に似た獣の肉をスパイスで味付けして焼いたもの頼んだ。加えて2人でシェアするためのサラダやポテトなどを頼んでいるのだが、先に運ばれてきているそれにセスはほとんど手をつけていない。
「ファンクはネリスに入る手前の森にも生息している。料理するというのなら、捕えて捌いてもいい。捌くくらいだったら俺にもできる」
私の料理が運ばれてきたのを見て、セスが言った。
「そうなんだ。現地調達ができるのはいいね」
保存食として売られている肉は当然ながら塩気が強い。それを使うとなると調理法にも限りがあるので、純粋な生肉が手に入るのは嬉しい。
獣を捌く、ということであれば実は私もできる。父に教わってきたからだ。ただ正直グロテスクすぎてあまりやりたくない。セスができるというのであれば、できればやってもらいたいところだ。
夕食後、セスの部屋のお風呂を溜めて私は部屋へと戻ってきた。
久しぶりに1人きりで過ごす夜である。
だからと言って別にやることもないので、自分もお風呂に入って早めにベッドへと入った。
朝、セスが部屋のドアを叩く音で目を覚ました。
何かの夢を見た気がするのだけれど、思い出せない。
眠い目をこすりつつセスと1階の食堂で朝食を摂る。
「シエル、出発前に一度手合せしよう」
セスのその一言で一気に目が覚めた。
そういえば依頼前に一度やった時、これから毎日でもやったほうがいいと言っていた気がする。
「わかった」
セスとヒューイの手合せを見た後で恐怖心が拭えないが、自分のためなので素直に頷いた。
場所は前回と同じ、宿の裏手にある中庭だ。
最近ずっと体を動かしていなかったのであの時よりも動けないかもしれない。
「いつでもいいよ」
離れたところに立っているセスが言う。
そう言われても術は無効化されてしまうので正直どうすればいいのかわからない。が、とりあえずまずセスの足元から岩石の槍を出現させる。
もしこれが当たれば怪我どころじゃ済まないレベルのものだが、セスは当然のようにスッと横に軽く飛んでそれを避けた。
その着地点にも同様に槍を出現させる。
ただ1発目を撃った直後なので2発目の動作が遅れ、それが発動したころにはセスは地面を蹴ってこちらに向かってきていた。
セスに向かって岩石の槍を放つ。
セスはそれを相殺することはなく、強く地面を蹴って飛び越して躱した。ずいぶんと高くジャンプできるものだ。忍者か。しかもその落下地点にいるのは私だ。
正直そんな避け方をされるとは思ってなかったので焦るが、手刀を構えて落下してきているセスを避けたところで逃げ切れるわけでもないので、今回は試しに迎え撃ってみよう。
岩石で盾を作って横に振られた手刀を受け止める。
しかしその一撃は思いの外重く、受け止めきれずに飛ばされた。崩れた岩の盾が砂になって空中に舞う。おそらく、盾を崩すためにその手刀は気で纏われていたのだろう。
地面を派手に転がったせいで打ち付けた体が痛んだが、そんなことを気にしている場合ではない、と急いで体を起こした時にはもう目前までセスが迫っていた。まさに今私に回し蹴りを食らわそうとしている。
今からではどんな回避行動も間に合わない。
「ぐっ…!」
咄嗟に右腕を盾にしてその蹴りを受け止めたが、回転で増幅された強い蹴りには耐えられず、再び地面を転がった。
腕がひどく痛む。折れたんじゃないのこれ。
「っ…」
それでも何とか体を起こし状況を確認すると、セスはその場から動いてはいなかった。
両手をポケットに入れて無表情に私を見つめている。
手合せは一度ここでお終い、ということだろうか。
「どうして受け止めてみようと思ったの?」
そう聞きながらセスがこちらへ歩いてくる。
戦意は感じられないので私は身構えずにそのまま待った。
私はセスを懐に入れないために空を飛ぶ研究までしていたのだ。それを知っているセスからしたら不思議に思ったことだろう。
「受け止めたら、どうなるのか試してみたかった」
「なるほど。まぁ、そうやって色々と試してみるのはいいことだ」
その返答にセスは苦い笑みを浮かべ、私の右腕に治癒術をかけ始めた。淡い光に照らされて、痛みが和らいでいく。
「ありがとう」
「…いや」
治癒術の礼に、セスは息を若干荒くして短く答えた。
「全然だめだな…。何をどうやっても対等に戦える道筋が見えてこない」
「地族の術師が近接を敵に回したら基本的には勝ち目がない。詠唱を必要とするヒューマは特に。でもエルフは無詠唱で術を使える分、まだ対処のしようがある。どうやったら俺の攻撃を避けられるか、どうやったら俺に攻撃を当てられるか。毎回それを考えて実践していれば、実際にそういう場面になった時に対処できるようになる。そのための手合わせだ」
私の呟きにセスは真剣な顔でそう言った。
「なるほどね」
自分の身を守ることは一番大事なことだもんな。里でも父はそう言って私に同じような訓練をさせていた。
「この世界の前衛職は本当に強いよね。それに比べて術師はずいぶん不利だ。気で術を相殺されたらどうしようもない」
この世界の前衛を例えるならば魔法剣士だ。それも無詠唱の。無詠唱で魔法を放つ剣士に、詠唱を必要とする術師が敵うわけがない。無詠唱の術師だって、懐に入られれば太刀打ちできない。
「…ヨハンも同じことを言っていた」
私の言葉にセスは苦笑いしてそう言った。
「"剣士にとっての剣が術師にとっての術なのに、気で術を相殺できるなんて不公平だ"とね。まぁ、確かに言われてみればそうかもしれないけど、それが当たり前だったからヨハンにそう言われるまで俺は不公平なんて考えには至らなかった。それに、人間を相手にすること自体、本来ならあまりないことだからね」
「なるほどなぁ…」
色々と考えさせられる。
術師が不利、という考えすらこの世界では異端なのか。
まぁ、セスの言う通り冒険者をやるにしろ、騎士団に入るにしろ、相手にするのはモンスターがメインだ。前衛と戦うという状況がそもそもあまりないというのはわかる。
だからこそ、万が一そういうことになった時のために、セスはこうして手合わせをしてくれているのだ。
「シエル、ごめん、ちょっと風呂に入りたいんだけどいいかな。砂まみれだ」
セスが服に付いた砂を払いながら言う。
「あぁ、そうだよね、ごめん。僕もだ」
岩の盾を気で崩されたときに舞った砂でセスも私も砂まみれだ。それに加えて私は2回も地面を転がっているのでなおのこと砂にまみれている。
さすがにそれは出発前に綺麗にしておきたい。
これからは地の術じゃなくて他の術にした方がいいだろうか。
セスの部屋のお風呂を溜めてから自分もお風呂に入る。
考えてみれば使いやすいからと地の術をメインで使っていたけれど、他の術の活用法をもっと考えた方がいいかもしれない。火なんて水を温めたりとか、温風にしたりとか、生活部分でしか活用していない。でも火は熱いし何かに燃え移ったら大変だしなぁ…。
確かエレンも火の術を使えたと思うけど、デッドライン討伐で使っているのを見ることはなかった。他の人も戦闘では使いづらいのだろうか。
お風呂から上がり、いよいよカルナから出る時が来た。
セスと2人で厩舎へ向かい馬車を譲り受けた後、色々と買い込んだ荷物を乗せた。
「シエル、どちらがどちらのカデムに乗るかここで決めておこう」
早速乗り込もうと思った私にセスが声をかけた。
どちらがどちらに乗るかというのは、事前に決めておかなければならないことなのか。
「わかったけど、どうして?」
「手綱を握る人間が常に同じであればカデムからしても動き方がわかりやすいからだ」
「なるほど…」
その人の癖みたいなものをカデムが理解してくれる、ということかな。
「どっちにも乗ってみてしっくりくる方をシエルのカデムにするといい」
「僕が先に決めていいの?」
「ああ。カデムの名前すら知らなかったということは、乗ったこともないのだろう?今の状態で乗りやすいと感じる方を選ぶといい」
「ありがとう」
せっかくセスがそう言ってくれているのだからお言葉に甘えてそうさせてもらおう。
「初めまして、僕はシエル。よろしくね」
そう言いながら2頭の顔を撫でる。
どちらも嫌がることはなかったが、赤い首輪をつけているリッキーがもっと、と言わんばかりに私の手に顔を押し付けてきた。かわいい。
「ちょっと乗せてね」
まず青い首輪をつけているライムに乗ってみる。
「……」
ライムは暴れることもなく、ただ静かに私を乗せている。
どうか、と聞かれれば普通、と答えるしかない感じだ。
「ありがとう、ライム」
そう言ってライムから降りて顔を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じた。かわいい。
「リッキー、乗せてね」
リッキーに乗ってみる。ライムと同じく暴れることもなく静かに佇んでいて、これもまた普通、という感想しか出てこない。
「ありがとう」
降りて顔を撫でると、先ほどと同じようにもっと、という感じで顔を押しつけてきた。
リッキーの方が人懐っこいのかな。
「どう?」
「いやぁ…乗った時の違いはあまり感じられない…」
「じゃあリッキーがいいんじゃないかな。ずいぶんと君に懐いているようだし」
グイグイと私に顔を押しつけてもっと撫でてとやってくるリッキーを見てセスが言う。
確かにライムよりはリッキーの方に好かれている気はする。
「うん、じゃあそうする」
「そうしたら君はしばらくリッキーに乗って行くんだ。まずはカデムに乗るということに慣れないと」
そう言いながらセスはリッキーを馬車の荷台から外し始めた。
その間にもリッキーはセスに撫でてと顔を押しつけている。別に私にだけ懐いているという訳でもなさそうだ。
そんなリッキーをセスは優しい顔で撫でてやりながら私に手綱を渡した。
「わかった。よろしくねリッキー」
リッキーの顔を撫でてから再び乗る。
セスも馬車に乗り込み、いよいよ出発となった。
門の所でギルドカードを見せて街から出た。
私が何かをすることもなく、リッキーは馬車に合わせるように並行して動いてくれている。騎士団で飼われていたカデムだからかな。お利口さんだ。
元の世界で乗馬の経験があるわけでもないので、最初は中々楽しいものだなと思っていたのだが、時間が経つにつれ振動でお尻が痛くなってきた。やわらかクッションを敷きたいくらいだ。
ちなみに、道中の私とセスの会話はもっぱらアルディナ語の勉強だ。
とにかく発音が難しいので、セスから教わった単語を繰り返し口にして練習している。中々セスから丸がもらえないので、まだ数個の単語しか習得できていない。先生の採点基準はとても厳しい。私が下手すぎるだけなのかもしれないけど。
そんな感じでリッキーに乗りながらアルディナ語の勉強をして数時間が経過したころ、昼休憩となった。久しぶりに地面に降り立つと、お尻だけじゃなくて腕とか足も痛んだ。自然と色々なところに力が入っていたようだ。
それを正直にセスに話すと、慣れるまではしょうがない、と苦笑いを返された。
お昼は、ファンクのスパイス焼きと、昨日のうちに買っておいたパンがあるので野菜のクリーム煮を作った。
「ずいぶん本格的に作るんだね」
私が調理している間にカデムたちの世話をしていたセスは、出来上がったものを見て予想外に驚きを表した。
「別にそんなに手は込んでないけど」
料理をしない人からすれば本格的に見えるのだろうか。ただ肉を焼いてスープを作っただけのことだから特別大変だったわけでもない。
「そうなんだ?店で出てくるものと遜色ないように見える。ありがたくいただくよ」
そう言ってセスは食べ始めたが、普段食べている時と様子は変わらない。
「どう?」
「……?おいしいよ?」
私が聞くと、なぜそれを聞かれたのかわからない、というような顔でセスが言葉を返した。
作ってくれた人に対して味の感想を言うのは、この世界でも普通にあることだ。実際幼少期に私や父が母の料理をおいしいと言うと母はとてもうれしそうにしていたし、デッドラインの討伐でだって食堂で料理を作ってくれる人においしかったです、とみんなも言っていたりした。
そういえばその時もセスはそういうことをしていなかったか。アルディナとミトスの文化の違いなのか、それともセスがそういう風に育ってこなかったのか、はたまた個人の性格的な問題なのかどれだろう。
「そっか、よかった」
何であっても、できればいつかセスが自分から味の感想を言ってくれるようになったら嬉しい。
昼休憩が終わるとまた私はリッキーに乗って街道を進んだ。
道中モンスターが出てくるわけでもないので、またアルディナ語のお勉強である。飽きないの?とセスに聞かれたが不思議と飽きない。未知の言語を学ぶのは結構楽しい。中学もまともに卒業していないので余計にそう思うのかもしれない。
逆に教えるのに飽きたかとセスに聞いたら、だんだんできるようになっていくのを見聞きするのは嫌いじゃない、と私の質問に対して正しい答えなのか何なのかわからない返答をされた。
日が暮れ始めたころ、私は夕食の準備を始めた。
昼に作ったクリーム煮にパスタを絡めたものと、干し肉の香草焼きだ。
「パンもつける?」
「いや、俺はいい。これでも多いと思うくらいだ」
「…僕、パンも食べていい?」
「あぁ…好きなだけ食べるといい」
私の言葉にセスは苦い笑みを返した。
おそらく前世の自分だったら、こんなには食べられなかった。やはり成長期の男子というのは恐ろしい。
カデムたちはというと、本当に道草をムシャムシャして満足しているようだった。それにお水をあげればいいだけなので、非常に経済的だ。
私が料理を作っている間にセスがお世話をしているのだが、動物が好きなのかずいぶんと優しい顔つきをしている。カデムたちも懐いているようだ。普段のセスを思うと少し意外に感じる。
夜、見張りは立てなくていいとセスに言われたので素直に休むことにした。
何かあればセスがすぐ気付くし、カデムたちも敏感だから大丈夫、ということらしい。
自分も何かあった時に気配を感じられるようになりたい、と言ってみたら、そういう訓練は追々やっていくから今はいい、と言われてしまった。ちょっと残念だが、追々にでもやってくれるつもりでいるらしいのでそこら辺はセスに任せることにする。
横になって夜空に浮かぶ二つの月を眺める。この世界には太陽と月はあっても星はない。
まぁ、月が二つの時点で私が知る月ではないのだろうけれども、何とも不思議だ。おそらく術の類が発展しているこの世界では、そういう部分が解明されることはないのだろう。そう思うと余計に気になってくる。
この世界は一体どこに存在しているのだろうか。なぜ私は今ここにいるのだろうか。
そんなことを考えながら夜空を眺めていたらいつの間にか眠りに落ちてしまっていた。
一体何がおすすめなのかと問うたら、値段の割に量が多い、という答えが返ってきた。要するにコスパか。
しかしそう言う割に、普段セスはあまり量を食べない。
「セスって少食だよね」
「そう?普通に食べているつもりだけど」
確かに討伐依頼で出された食事も残したりはしていなかったし、こういうお店で頼んだものもすべて食べ切っている。しかしその頼むものの量があまり多くない。
「僕の方が食べている気がする。セスの方が背が高いのに」
「君は育ち盛りだろう」
「そうかもしれないけど…」
15歳男子。確かに食べ盛りだ。それを考えたらセスの食べる量は標準なのだろうか。わからない。
ちなみにセスは今回、マニの香草焼きを頼んでいる。私はファンクという鹿に似た獣の肉をスパイスで味付けして焼いたもの頼んだ。加えて2人でシェアするためのサラダやポテトなどを頼んでいるのだが、先に運ばれてきているそれにセスはほとんど手をつけていない。
「ファンクはネリスに入る手前の森にも生息している。料理するというのなら、捕えて捌いてもいい。捌くくらいだったら俺にもできる」
私の料理が運ばれてきたのを見て、セスが言った。
「そうなんだ。現地調達ができるのはいいね」
保存食として売られている肉は当然ながら塩気が強い。それを使うとなると調理法にも限りがあるので、純粋な生肉が手に入るのは嬉しい。
獣を捌く、ということであれば実は私もできる。父に教わってきたからだ。ただ正直グロテスクすぎてあまりやりたくない。セスができるというのであれば、できればやってもらいたいところだ。
夕食後、セスの部屋のお風呂を溜めて私は部屋へと戻ってきた。
久しぶりに1人きりで過ごす夜である。
だからと言って別にやることもないので、自分もお風呂に入って早めにベッドへと入った。
朝、セスが部屋のドアを叩く音で目を覚ました。
何かの夢を見た気がするのだけれど、思い出せない。
眠い目をこすりつつセスと1階の食堂で朝食を摂る。
「シエル、出発前に一度手合せしよう」
セスのその一言で一気に目が覚めた。
そういえば依頼前に一度やった時、これから毎日でもやったほうがいいと言っていた気がする。
「わかった」
セスとヒューイの手合せを見た後で恐怖心が拭えないが、自分のためなので素直に頷いた。
場所は前回と同じ、宿の裏手にある中庭だ。
最近ずっと体を動かしていなかったのであの時よりも動けないかもしれない。
「いつでもいいよ」
離れたところに立っているセスが言う。
そう言われても術は無効化されてしまうので正直どうすればいいのかわからない。が、とりあえずまずセスの足元から岩石の槍を出現させる。
もしこれが当たれば怪我どころじゃ済まないレベルのものだが、セスは当然のようにスッと横に軽く飛んでそれを避けた。
その着地点にも同様に槍を出現させる。
ただ1発目を撃った直後なので2発目の動作が遅れ、それが発動したころにはセスは地面を蹴ってこちらに向かってきていた。
セスに向かって岩石の槍を放つ。
セスはそれを相殺することはなく、強く地面を蹴って飛び越して躱した。ずいぶんと高くジャンプできるものだ。忍者か。しかもその落下地点にいるのは私だ。
正直そんな避け方をされるとは思ってなかったので焦るが、手刀を構えて落下してきているセスを避けたところで逃げ切れるわけでもないので、今回は試しに迎え撃ってみよう。
岩石で盾を作って横に振られた手刀を受け止める。
しかしその一撃は思いの外重く、受け止めきれずに飛ばされた。崩れた岩の盾が砂になって空中に舞う。おそらく、盾を崩すためにその手刀は気で纏われていたのだろう。
地面を派手に転がったせいで打ち付けた体が痛んだが、そんなことを気にしている場合ではない、と急いで体を起こした時にはもう目前までセスが迫っていた。まさに今私に回し蹴りを食らわそうとしている。
今からではどんな回避行動も間に合わない。
「ぐっ…!」
咄嗟に右腕を盾にしてその蹴りを受け止めたが、回転で増幅された強い蹴りには耐えられず、再び地面を転がった。
腕がひどく痛む。折れたんじゃないのこれ。
「っ…」
それでも何とか体を起こし状況を確認すると、セスはその場から動いてはいなかった。
両手をポケットに入れて無表情に私を見つめている。
手合せは一度ここでお終い、ということだろうか。
「どうして受け止めてみようと思ったの?」
そう聞きながらセスがこちらへ歩いてくる。
戦意は感じられないので私は身構えずにそのまま待った。
私はセスを懐に入れないために空を飛ぶ研究までしていたのだ。それを知っているセスからしたら不思議に思ったことだろう。
「受け止めたら、どうなるのか試してみたかった」
「なるほど。まぁ、そうやって色々と試してみるのはいいことだ」
その返答にセスは苦い笑みを浮かべ、私の右腕に治癒術をかけ始めた。淡い光に照らされて、痛みが和らいでいく。
「ありがとう」
「…いや」
治癒術の礼に、セスは息を若干荒くして短く答えた。
「全然だめだな…。何をどうやっても対等に戦える道筋が見えてこない」
「地族の術師が近接を敵に回したら基本的には勝ち目がない。詠唱を必要とするヒューマは特に。でもエルフは無詠唱で術を使える分、まだ対処のしようがある。どうやったら俺の攻撃を避けられるか、どうやったら俺に攻撃を当てられるか。毎回それを考えて実践していれば、実際にそういう場面になった時に対処できるようになる。そのための手合わせだ」
私の呟きにセスは真剣な顔でそう言った。
「なるほどね」
自分の身を守ることは一番大事なことだもんな。里でも父はそう言って私に同じような訓練をさせていた。
「この世界の前衛職は本当に強いよね。それに比べて術師はずいぶん不利だ。気で術を相殺されたらどうしようもない」
この世界の前衛を例えるならば魔法剣士だ。それも無詠唱の。無詠唱で魔法を放つ剣士に、詠唱を必要とする術師が敵うわけがない。無詠唱の術師だって、懐に入られれば太刀打ちできない。
「…ヨハンも同じことを言っていた」
私の言葉にセスは苦笑いしてそう言った。
「"剣士にとっての剣が術師にとっての術なのに、気で術を相殺できるなんて不公平だ"とね。まぁ、確かに言われてみればそうかもしれないけど、それが当たり前だったからヨハンにそう言われるまで俺は不公平なんて考えには至らなかった。それに、人間を相手にすること自体、本来ならあまりないことだからね」
「なるほどなぁ…」
色々と考えさせられる。
術師が不利、という考えすらこの世界では異端なのか。
まぁ、セスの言う通り冒険者をやるにしろ、騎士団に入るにしろ、相手にするのはモンスターがメインだ。前衛と戦うという状況がそもそもあまりないというのはわかる。
だからこそ、万が一そういうことになった時のために、セスはこうして手合わせをしてくれているのだ。
「シエル、ごめん、ちょっと風呂に入りたいんだけどいいかな。砂まみれだ」
セスが服に付いた砂を払いながら言う。
「あぁ、そうだよね、ごめん。僕もだ」
岩の盾を気で崩されたときに舞った砂でセスも私も砂まみれだ。それに加えて私は2回も地面を転がっているのでなおのこと砂にまみれている。
さすがにそれは出発前に綺麗にしておきたい。
これからは地の術じゃなくて他の術にした方がいいだろうか。
セスの部屋のお風呂を溜めてから自分もお風呂に入る。
考えてみれば使いやすいからと地の術をメインで使っていたけれど、他の術の活用法をもっと考えた方がいいかもしれない。火なんて水を温めたりとか、温風にしたりとか、生活部分でしか活用していない。でも火は熱いし何かに燃え移ったら大変だしなぁ…。
確かエレンも火の術を使えたと思うけど、デッドライン討伐で使っているのを見ることはなかった。他の人も戦闘では使いづらいのだろうか。
お風呂から上がり、いよいよカルナから出る時が来た。
セスと2人で厩舎へ向かい馬車を譲り受けた後、色々と買い込んだ荷物を乗せた。
「シエル、どちらがどちらのカデムに乗るかここで決めておこう」
早速乗り込もうと思った私にセスが声をかけた。
どちらがどちらに乗るかというのは、事前に決めておかなければならないことなのか。
「わかったけど、どうして?」
「手綱を握る人間が常に同じであればカデムからしても動き方がわかりやすいからだ」
「なるほど…」
その人の癖みたいなものをカデムが理解してくれる、ということかな。
「どっちにも乗ってみてしっくりくる方をシエルのカデムにするといい」
「僕が先に決めていいの?」
「ああ。カデムの名前すら知らなかったということは、乗ったこともないのだろう?今の状態で乗りやすいと感じる方を選ぶといい」
「ありがとう」
せっかくセスがそう言ってくれているのだからお言葉に甘えてそうさせてもらおう。
「初めまして、僕はシエル。よろしくね」
そう言いながら2頭の顔を撫でる。
どちらも嫌がることはなかったが、赤い首輪をつけているリッキーがもっと、と言わんばかりに私の手に顔を押し付けてきた。かわいい。
「ちょっと乗せてね」
まず青い首輪をつけているライムに乗ってみる。
「……」
ライムは暴れることもなく、ただ静かに私を乗せている。
どうか、と聞かれれば普通、と答えるしかない感じだ。
「ありがとう、ライム」
そう言ってライムから降りて顔を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じた。かわいい。
「リッキー、乗せてね」
リッキーに乗ってみる。ライムと同じく暴れることもなく静かに佇んでいて、これもまた普通、という感想しか出てこない。
「ありがとう」
降りて顔を撫でると、先ほどと同じようにもっと、という感じで顔を押しつけてきた。
リッキーの方が人懐っこいのかな。
「どう?」
「いやぁ…乗った時の違いはあまり感じられない…」
「じゃあリッキーがいいんじゃないかな。ずいぶんと君に懐いているようだし」
グイグイと私に顔を押しつけてもっと撫でてとやってくるリッキーを見てセスが言う。
確かにライムよりはリッキーの方に好かれている気はする。
「うん、じゃあそうする」
「そうしたら君はしばらくリッキーに乗って行くんだ。まずはカデムに乗るということに慣れないと」
そう言いながらセスはリッキーを馬車の荷台から外し始めた。
その間にもリッキーはセスに撫でてと顔を押しつけている。別に私にだけ懐いているという訳でもなさそうだ。
そんなリッキーをセスは優しい顔で撫でてやりながら私に手綱を渡した。
「わかった。よろしくねリッキー」
リッキーの顔を撫でてから再び乗る。
セスも馬車に乗り込み、いよいよ出発となった。
門の所でギルドカードを見せて街から出た。
私が何かをすることもなく、リッキーは馬車に合わせるように並行して動いてくれている。騎士団で飼われていたカデムだからかな。お利口さんだ。
元の世界で乗馬の経験があるわけでもないので、最初は中々楽しいものだなと思っていたのだが、時間が経つにつれ振動でお尻が痛くなってきた。やわらかクッションを敷きたいくらいだ。
ちなみに、道中の私とセスの会話はもっぱらアルディナ語の勉強だ。
とにかく発音が難しいので、セスから教わった単語を繰り返し口にして練習している。中々セスから丸がもらえないので、まだ数個の単語しか習得できていない。先生の採点基準はとても厳しい。私が下手すぎるだけなのかもしれないけど。
そんな感じでリッキーに乗りながらアルディナ語の勉強をして数時間が経過したころ、昼休憩となった。久しぶりに地面に降り立つと、お尻だけじゃなくて腕とか足も痛んだ。自然と色々なところに力が入っていたようだ。
それを正直にセスに話すと、慣れるまではしょうがない、と苦笑いを返された。
お昼は、ファンクのスパイス焼きと、昨日のうちに買っておいたパンがあるので野菜のクリーム煮を作った。
「ずいぶん本格的に作るんだね」
私が調理している間にカデムたちの世話をしていたセスは、出来上がったものを見て予想外に驚きを表した。
「別にそんなに手は込んでないけど」
料理をしない人からすれば本格的に見えるのだろうか。ただ肉を焼いてスープを作っただけのことだから特別大変だったわけでもない。
「そうなんだ?店で出てくるものと遜色ないように見える。ありがたくいただくよ」
そう言ってセスは食べ始めたが、普段食べている時と様子は変わらない。
「どう?」
「……?おいしいよ?」
私が聞くと、なぜそれを聞かれたのかわからない、というような顔でセスが言葉を返した。
作ってくれた人に対して味の感想を言うのは、この世界でも普通にあることだ。実際幼少期に私や父が母の料理をおいしいと言うと母はとてもうれしそうにしていたし、デッドラインの討伐でだって食堂で料理を作ってくれる人においしかったです、とみんなも言っていたりした。
そういえばその時もセスはそういうことをしていなかったか。アルディナとミトスの文化の違いなのか、それともセスがそういう風に育ってこなかったのか、はたまた個人の性格的な問題なのかどれだろう。
「そっか、よかった」
何であっても、できればいつかセスが自分から味の感想を言ってくれるようになったら嬉しい。
昼休憩が終わるとまた私はリッキーに乗って街道を進んだ。
道中モンスターが出てくるわけでもないので、またアルディナ語のお勉強である。飽きないの?とセスに聞かれたが不思議と飽きない。未知の言語を学ぶのは結構楽しい。中学もまともに卒業していないので余計にそう思うのかもしれない。
逆に教えるのに飽きたかとセスに聞いたら、だんだんできるようになっていくのを見聞きするのは嫌いじゃない、と私の質問に対して正しい答えなのか何なのかわからない返答をされた。
日が暮れ始めたころ、私は夕食の準備を始めた。
昼に作ったクリーム煮にパスタを絡めたものと、干し肉の香草焼きだ。
「パンもつける?」
「いや、俺はいい。これでも多いと思うくらいだ」
「…僕、パンも食べていい?」
「あぁ…好きなだけ食べるといい」
私の言葉にセスは苦い笑みを返した。
おそらく前世の自分だったら、こんなには食べられなかった。やはり成長期の男子というのは恐ろしい。
カデムたちはというと、本当に道草をムシャムシャして満足しているようだった。それにお水をあげればいいだけなので、非常に経済的だ。
私が料理を作っている間にセスがお世話をしているのだが、動物が好きなのかずいぶんと優しい顔つきをしている。カデムたちも懐いているようだ。普段のセスを思うと少し意外に感じる。
夜、見張りは立てなくていいとセスに言われたので素直に休むことにした。
何かあればセスがすぐ気付くし、カデムたちも敏感だから大丈夫、ということらしい。
自分も何かあった時に気配を感じられるようになりたい、と言ってみたら、そういう訓練は追々やっていくから今はいい、と言われてしまった。ちょっと残念だが、追々にでもやってくれるつもりでいるらしいのでそこら辺はセスに任せることにする。
横になって夜空に浮かぶ二つの月を眺める。この世界には太陽と月はあっても星はない。
まぁ、月が二つの時点で私が知る月ではないのだろうけれども、何とも不思議だ。おそらく術の類が発展しているこの世界では、そういう部分が解明されることはないのだろう。そう思うと余計に気になってくる。
この世界は一体どこに存在しているのだろうか。なぜ私は今ここにいるのだろうか。
そんなことを考えながら夜空を眺めていたらいつの間にか眠りに落ちてしまっていた。
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