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プロローグ:クラス転移
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高校に通うことが当たり前の平穏な世界。
俺たちの誰もが明日も同じような日常を繰り返すと思っていたーー
★
「昨日も彼女とデートしてさぁ」
「えぇ! いいなあ、俺も彼女作ってデートしてえ!」
「お前に彼女なんてできるかよ!」
「「「アハハハッ!」」」
クラスの少し不良の入った生徒三人が窓際で騒いでいる。
「いやしかし、なんでアイツが姫草さんに優しくされて俺らが無視されなきゃいけねえんだよ」
不良達はそう言って俺の方を睨んできた。
「まだマシだろ。俺なんて話しかけたら睨まれたんだぜ? やっぱり顔より性格だよ、せ・い・か・く! お前の彼女が羨ましいぜぇ!」
「なんてったって俺の彼女は顔も性格もサイッコーだからな!」
不良の一人がわざとらしく言い放つ。その声音には優越感が感じられ、うざい。
「おや? 何も言い返さないのか、西宮 悠河君?」
ついには名前まで出してきた。こうなったらスルーし続けることはできない。
俺は仕方なく、ため息を吐きながら視線を不良へやってやった。
「あまりにくだらなかったから返す言葉もねえよ」
微笑を浮かべてそう言ってやると、不良達は顔を真っ赤にして距離を詰めてきた。拳は握られており、暴力を振るわれるのだろう。
「西宮ァ。あんまり舐めた口聞いてると殺すぞ?」
「ぐっ!」
そう言って一人が無防備な腹部にパンチを入れてきた。鈍い痛みに顔が歪む。
不良達はその表情を見てニヤニヤと嗤っている。
「やめなよ、暴力はいけない」
「……チッ」
そこに割って入ったのは真田 正宗だ。学級委員長の他にも生徒会副会長を務め、運動も勉強もできる黒髪のイケメンだ。
しかし……
「……君も、これ以上痛い目を見たくなかったら遥から手を引くんだな」
委員長の実態はあちら側だ。彼も遥ーー姫草 遥を想っていて、遥の俺への態度を快く思っていない。今回も委員長の仕事として、彼らを止めただけらしい。
まあ、委員長の本心を知らない周囲の女子の好感度はバカ上がりみたいだが。
「出してない手をどうやって引くんだよ……」
こんな嫌味やいじめが一ヶ月続いている。もちろん今まで通り会話してくれる人もいるが、やはり精神的にクる。
状況を悪化させているのは、俺の目の前にいる学年一の美少女といわれているこいつなんだが……。
「悠河。お弁当頂戴」
「はぁ……。お前話しかけられたら返事くらいしてやれよ」
俺の言葉に、遥は頬を膨らまして抗議した。
「遥って呼んで」
「遥、返事くらい返してやれ」
「嫌。悠河をいじめる人なんて顔も見たくない」
いじめが悪化しているのはそのせいなんだが。とは言えない。
ここは飯で釣ろう。
「明日の弁当オムレツ入れてやるから」
「えっ! ……分かった、返事はする」
オムレツという単語で顔に花が咲いた。しかしそれも一瞬で、けれども口元が緩んでいる姿が可愛い。
そこに、委員長が近づいてきた。
「遥、俺も弁当作ってきたんだ。良かったら食べてくれ」
委員長は片手に持った弁当箱を遥に差し出した。
それを見た遥は俺が出した弁当を手に取り、何故かとても穏やかな笑みを浮かべた。
猛烈に嫌な予感がするなか、遥の口が開く。
「ごめんなさい。私の胃袋もう掴まれてるから」
「なっ!? そ、そうなのかい」
断られる事は頭の中になかったようで、驚いた様子の委員長。踵を返し遥から離れていくときにはしっかりと俺を射殺すような目で睨んでいた。ため息しかでない。
「それじゃあ、私帰るね……ん? 扉が開かない」
遥が力任せに引き戸を引くが、ガタガタと揺れるだけで開く気配はない。
「うわっ!」
刹那、床に幾何学的な紋様が現れ白く発光しだした。教室が騒然とする。窓を叩き割ってでも出ようとする者、丸くなってビクビクと震えている者、恐怖と不安で叫び出す者。ここぞとばかりに俺に抱きついて「えへへ~」と痴態を晒している者……
教室が光に包まれ、最後に視界に映ったのは、艶やかな綺麗な黒髪だった。
俺たちの誰もが明日も同じような日常を繰り返すと思っていたーー
★
「昨日も彼女とデートしてさぁ」
「えぇ! いいなあ、俺も彼女作ってデートしてえ!」
「お前に彼女なんてできるかよ!」
「「「アハハハッ!」」」
クラスの少し不良の入った生徒三人が窓際で騒いでいる。
「いやしかし、なんでアイツが姫草さんに優しくされて俺らが無視されなきゃいけねえんだよ」
不良達はそう言って俺の方を睨んできた。
「まだマシだろ。俺なんて話しかけたら睨まれたんだぜ? やっぱり顔より性格だよ、せ・い・か・く! お前の彼女が羨ましいぜぇ!」
「なんてったって俺の彼女は顔も性格もサイッコーだからな!」
不良の一人がわざとらしく言い放つ。その声音には優越感が感じられ、うざい。
「おや? 何も言い返さないのか、西宮 悠河君?」
ついには名前まで出してきた。こうなったらスルーし続けることはできない。
俺は仕方なく、ため息を吐きながら視線を不良へやってやった。
「あまりにくだらなかったから返す言葉もねえよ」
微笑を浮かべてそう言ってやると、不良達は顔を真っ赤にして距離を詰めてきた。拳は握られており、暴力を振るわれるのだろう。
「西宮ァ。あんまり舐めた口聞いてると殺すぞ?」
「ぐっ!」
そう言って一人が無防備な腹部にパンチを入れてきた。鈍い痛みに顔が歪む。
不良達はその表情を見てニヤニヤと嗤っている。
「やめなよ、暴力はいけない」
「……チッ」
そこに割って入ったのは真田 正宗だ。学級委員長の他にも生徒会副会長を務め、運動も勉強もできる黒髪のイケメンだ。
しかし……
「……君も、これ以上痛い目を見たくなかったら遥から手を引くんだな」
委員長の実態はあちら側だ。彼も遥ーー姫草 遥を想っていて、遥の俺への態度を快く思っていない。今回も委員長の仕事として、彼らを止めただけらしい。
まあ、委員長の本心を知らない周囲の女子の好感度はバカ上がりみたいだが。
「出してない手をどうやって引くんだよ……」
こんな嫌味やいじめが一ヶ月続いている。もちろん今まで通り会話してくれる人もいるが、やはり精神的にクる。
状況を悪化させているのは、俺の目の前にいる学年一の美少女といわれているこいつなんだが……。
「悠河。お弁当頂戴」
「はぁ……。お前話しかけられたら返事くらいしてやれよ」
俺の言葉に、遥は頬を膨らまして抗議した。
「遥って呼んで」
「遥、返事くらい返してやれ」
「嫌。悠河をいじめる人なんて顔も見たくない」
いじめが悪化しているのはそのせいなんだが。とは言えない。
ここは飯で釣ろう。
「明日の弁当オムレツ入れてやるから」
「えっ! ……分かった、返事はする」
オムレツという単語で顔に花が咲いた。しかしそれも一瞬で、けれども口元が緩んでいる姿が可愛い。
そこに、委員長が近づいてきた。
「遥、俺も弁当作ってきたんだ。良かったら食べてくれ」
委員長は片手に持った弁当箱を遥に差し出した。
それを見た遥は俺が出した弁当を手に取り、何故かとても穏やかな笑みを浮かべた。
猛烈に嫌な予感がするなか、遥の口が開く。
「ごめんなさい。私の胃袋もう掴まれてるから」
「なっ!? そ、そうなのかい」
断られる事は頭の中になかったようで、驚いた様子の委員長。踵を返し遥から離れていくときにはしっかりと俺を射殺すような目で睨んでいた。ため息しかでない。
「それじゃあ、私帰るね……ん? 扉が開かない」
遥が力任せに引き戸を引くが、ガタガタと揺れるだけで開く気配はない。
「うわっ!」
刹那、床に幾何学的な紋様が現れ白く発光しだした。教室が騒然とする。窓を叩き割ってでも出ようとする者、丸くなってビクビクと震えている者、恐怖と不安で叫び出す者。ここぞとばかりに俺に抱きついて「えへへ~」と痴態を晒している者……
教室が光に包まれ、最後に視界に映ったのは、艶やかな綺麗な黒髪だった。
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