クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

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第15話:果たし状

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 宿泊所の中は大賑わいだ。どうやら俺たちが最後に到着したらしく、他のクラスは食堂で夕食を囲っていた。調理のおばさんは俺たちを見るや否や厨房に駆けていき、飢えたクラスメート達はバイキングへ我先にと雪崩れ込んだ。

「ちょ、抜かすなよ!」

 食事せんじょうに慈悲などない!
 俺の前に割り込んできたバカを蹴り出し、鼻を鳴らす。列から弾き出された少年はこちらをひと睨みして後列の方へ歩いていった。

「心せまっ!」

 俺の後ろに並ぶアイラが何か言っているが、何も聞こえない。

「みんなお腹空いてるんだし一人くらい前譲ってあげてもいいじゃん」

 なんで割り込みしたあの少年ではなく俺が責められているのだろうか?

「俺もお腹空いてるんだよ。なんだったらこの中の誰よりも空いてる自信がある」

「えぇ~、そんなに~?」

 ジトっとした視線を感じるが、目を合わせると口論に負けてそうなので合わせない。

「そんなケチな人をあの子が許してくれるとは思えないけどな~?」

「うっ」

 あの子とは、白髪の獣人の女の子である。
 さっき、けもみみを触って嫌われた女の子である。
 女の子には嫌われたくないので、どうにかして許してもらおうと思ってはいるが目に見える、いや、目が痛いくらいに拒絶されているため、間接的に少しでも好感度を上げておきたいのである。
 なので、余計にアイラの一言が胸に刺さる。

「分かったよ……次は譲るよ」

「譲っちゃダメでしょ」

「確かに!?」

 いつの間に洗脳されかけてたんだ!? 
 常識が改変されそうになっていた。一生アイラに勝てる気がしない。

「注意するくらいにしとくよ」

「そうだね、あっ、見て見てシアン! 凄く美味しそうっ」

 新たな料理ができあがったらしく、アイラがバイキングに運ばれている品々を見てはしゃぐ。こういう時はとりあえず相槌を打っておけばなんとかなる。

「ほんとだね」

「ほらっ、あのケーキ美味しそうっ! あのお肉も食べたいなあ」

 皿に並べられている料理は俺が空腹なのを除いてもどれもが一級品に見えた。まさに宝石箱や~である。
 少し待って、俺たちの順番が来たので、各々が好きな料理を取り皿から選び、盛り付けていく。
 どれもが美味しそうだったため、普段では食べきれそうにない量だったが疲れている今なら大丈夫だろう。
 空いている席に腰を下ろし、盛り付けた料理に手をつける。

「うまっ!」

 婆さんの料理も落ち着いた味で良かったが、ここのおばさんの濃い味付けの料理も堪らない。これじゃ足りないかもな、なんて思いつつ眼下の料理に舌鼓をうっていると、空席だった隣の席が埋まったのを視界の端で捉えた。
 普通なら気にしないのだが、アイラの口が動いていないのと、ただでさえ狭いスペースでなお、俺から離れようとする動きが隣であった。
 気になったので視線を上げてみると、例の少女がお隣失礼していた。

「ブホッ! ガホッゴホッ……」

 不意打ちを食らってむせ返る。
 いくら混んでいるとはいえ、まさか隣の席になるとは予想外である。他の席が空くまで待とうとは思わなかったのだろうか。
 咳き込む俺を、少女は心なしか頬をほんのり赤くしてチラチラ見ている。

「……」

 俺と少女の間に重苦しい空気が流れる。
 やらかした手前、フランクに話しかけることも憚られるので、言葉に困る。
 相手もだんまりなので、どうしようもない。
 おかげで、美味かった料理も味が霞む。
 助けを求めようとアイラを見ると、そこにアイラの影はなかった。
 逃げやがった!

「こ、こほん」

 隣から、気をひくための可愛い咳が聞こえた。

「ん?」

「え、えっと……これっ!」

 少女は茶色の封筒を押し付けて、からっぽの皿を持って逃げるように去って行った。

「なんだったんだ……?」

 封筒を見つめていると、アイラがこんもりと料理が盛られた食器を持って帰ってきた。

「あ、もう別れたんだ。何か進展はあったの?」

「手紙貰ったよ」

 そう言って封筒を見せると、アイラは「見せて」と封筒を取り、中身を確認する。

「なになに……うっわ、大胆だねえ」

 アイラが大きく目を見開いて呟くので、手紙の内容が一層気になる。

「何て書いてあるの?」

「えっとね。『最初の定期戦であんたを指名する。その時、あんたが勝ったら主人だって認めてなんでも言うこと聞いてやる。その代わり、私が勝ったらあんたが私の家来になること!』だって」

「うわぁ……」

 非常に厄介なことになった。
 自由でいるためには負けるわけにはいかない。しかし、ラークと戦っている時の動きは、このクラスにいるのがおかしいくらいのものだった。それと接戦を演じて下手に注目されると、後々厄介なことになりかねない。

「めんどくさい……」

「自分で蒔いた種だからねぇ」

 この件に関しては、アイラは白髪の少女の味方なようで、いつもには見られない辛辣さである。
 もしくは、俺はまだこの世界の価値観に馴染めていないので、その行為の捉え方に差異が出ているのかもしれない。
 どちらにせよ、とりあえず勝つしかなさそうである。
 勝って、適当な命令でもしてあやふやにしよう。

「食事が終わったら広間に集合してくれ、意見を交換したい」

 騒々しいなか、ラークが声を張り上げているのを耳にして、皿に残った料理をかきこみ、アイラと共に広間へ向かおうと席を立った時、声をかけられた。

「ねえ、ちょっといいかしら?」

 振り向くと、真剣な表情の遥が俺を見つめていた。
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