クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

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第20話:ゴールへ

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 俺たちは地下道を突き進んだ。勝てるという期待で気力が出たのか、年少組も弱音一つ吐いていない。
 地下道に入る前、全体の三分のニくらいに到達していたが、この地下道は、本来円周上を回るイメージのルートを無視して、一直線にゴール方向へ向かっている。そのため、今通っている場所は山の中腹辺りの下なのだ。
 俺は、そのことを忘れていた。

「と、止まって!」

 気が抜けて、探知魔法を使っていなかったため、敵に気づくのがだいぶ遅れてしまった。
 もはや、敵は目視できるほど近くにいる。

「キィィィィィィ!?」

 耳をつんざくような絶叫が洞窟内にこだまする。それだけで、クラスメートのほとんどが意識を手放した。
 この敵は今までと別格だ……アイラでも勝てない。
 近くにいたアイラとルージュは風魔法で音の大半をかき消したが、それでも顔をしかめている。

「大丈夫?」

 ただ、みんなの様子を見に後方へ下がっていたラークも、精神力で耐え切っていた。

「くっ……ああ。だが、動けそうには……」

 ガンガンと痛むであろう頭を抑えていて、言葉より状態は悪そうだ。

「あ、あれは、 中腹以上に生息するダークリーチ!? 遥さん、あれは彼らの手に負えるような魔物じゃないぞ! 棄権させてでも助けないとっ!」

 冒険者の動揺ぶりが伝わってくる。だが、まだ日本なら小学生の奴らがここまで頑張ったんだ、ここは一肌脱ごう。

「……目隠し」

 小さく呟くと、冒険者と遥、ルージュとラークの視界を闇が包む。驚きの声が聞こえるが放置でいいだろう。遥はもう闇を解除しているみたいで、見られることは避けられないだろう。

「悪いけど、死ね」

 突き出した指先から超高圧の水が射出され、ダークリーチが反応する間も無くその胴体を貫く。

「キ、キィィィィィィアッ!」

 ダメージはないようだが、琴線に触れたようでまた金切り声を上げるが、風の膜を張りそれをシャットアウトする。

「キィィッ!」

「燃えろッ!」

 間髪なく、黒光りする細長い体を投げ出して肉薄してくるダークリーチを、青い炎が覆い尽くす。

「ギッ!? ギャァァァァ!」

 堪らず大きく距離を取ったダークリーチだが、あまりダメージは見られない。
 ダークリーチ。シンプルに光属性を使ってみるか。

「キィァッ!」

 真っ暗な身体から何本も生やした触手のようなものをこちらに伸ばしてくるダークリーチに向けて、光属性の魔法を行使する。

「喰らえッ!」

 洞窟中が強烈な光に包まれ、全てがホワイトアウトした。
 それは俺が作った闇の目隠しも吹き飛ばし、光が収まった頃には、魔物は欠片すら残っていなかった。

「……終わったよ」

「ふ、ふわぁぁ……すごい」

「うぅっ……急に真っ暗にしないでよ……」

「な、なにが……」

 各々が言葉を漏らすが、遥は口元を歪めていて、悪い予感しかしない。先が思いやられるなあ。
 とりあえず、全員起こして先を急ぐことにする。

「ラーク、全員起こそう」

「お、おう。わかった」

 ラークにクラスメートを起こさせ、俺たちは再出発した。

 ★

「出口だっ」

 喜色を多分に含んだ声でラークが指差す。その先には、数時間ぶりに見る太陽の光が第20クラスを出迎えていた。

「ゴールはもうすぐだ、ラストスパートをかけるぞ!」

 地下道から出たところはちょうど正規の道で、ゴールの方向には人の気配も感じられる。ルージュもそれを感じ取ったのか、口を開く。

「こっち!」

 自分たちの代わりに大蛇と戦った彼女を疑う者はいない。みんな、一位という希望を胸に抱いて、ルージュが指差した方向に走り出す。
 森の中の開けた場所に出ると、少し先に別のクラスが走っていた。
 おそらく、あのクラスがトップだろう。

「みんな、頑張れっ!」

 励ます声にクラスが応え、全体の進行ペースがさらに上がる。
 このままなら、いける。
 そう確信できるほどの追い上げで、みるみるうちに距離が縮まる。
 すると、一人の少女と目が合った。

「シアン君っ!?」

「リアッ!」

 竜人の少女リアである。
 彼女のクラスもまた、上位のクラスを抜き去りトップに立っていたのだ。

「っ、負けない! 滾れ力っ!」

「負かしてやるっ!」

 俺とリアは同時に身体強化魔法をクラスに掛けてチーム力を底上げする。
 だが、魔法の実力は俺に軍配が上がる。
 広くなった道を二つのクラスが走り抜け、ゴールももう目前というところで、ついにリアの所属する第10クラスを追い抜き、順位が入れ替わる。
 そして、そのままゴールテープを揺らした。

「っはあっ! はあっ! ……か、勝ったっ」

 地面に仰向けに寝転がって、ラークは喜びをこぼす。
 辺りを見渡すと、息が上がりながらも、顔には満足げな表情を浮かべていた。
 そして、脳に直接響くあの声が聞こえた。
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