28 / 51
第27話:入寮
しおりを挟む
模擬戦を終え、そのあとの授業も消化した放課後。
授業を振り返ると、冷たいものだった。
勝ち組は自信と余裕をもって授業に向かうのに対して負けた組は悔しさを糧に真剣に授業に臨んでいた。
お互いをライバル視するのはいいことなのだが、会話までしないとなると好ましくない。
合宿では二位だったが、入学試験の時点では底辺の実力の集まりだ。なので、他クラスは、合宿で一位であり、参加したなかでも上位クラスの第10クラスを狙うより、俺たちを狙ったほうが楽に昇格できると考えて、下克上システムを俺たちに使うだろう。
そんなときに、まともにコミュニケーションも取れてない状態じゃ勝てる戦も勝てない。
仕方ない、ここはラークと協力して良いライバル関係を築けるよう仕向けてみるか。
「ラーク、ちょっといい?」
「……なんだ。俺は今から鍛錬したいんだが」
あまり反応はよろしくない。だらだら話していると切り上げられそうだから手っ取り早く話すか。
「このままじゃ、俺たちは下克上システムでやられる」
ラークの目が変わった。こいつは負けと聞くと食いつくように感じる。
「どういうことだ?」
「俺たちは試験の序列じゃ、下から六番目だ。実力で勝ると考える他のクラスから下克上を挑まれてもおかしくはないはずだ」
「むしろ、第20クラスの俺たちに勝てば、クラス序列七位になれるんだから挑まない手はないな」
「うん。一度負けてるから相手も油断はしてこないと思う。それに比べてウチはちょっと……」
「そうだな。明日、俺が声をかけてみる」
なんとかなりそうだ。ラークと別れ、初めての寮に向かおう。
教室を出ると困った様子の大人の女性に声をかけられた。
「君がシアン君かな~?」
「えっと、はい」
その容貌はブロンズの髪を柔らかくショートにした、ゆるふわ系お姉さんであり、普段、アイラやリアがお姉さんを語っているせいか、こう、本物を見ると戸惑ってしまう。
「お姉さんちょっと困っていてね。ちょっとついてきてくれないかしら?」
「どうしたんですか?」
「寮で喧嘩が起きちゃって……君が来ないと帰らないって話を聞かなくて~」
一瞬でその光景の予想ができてしまった……。
「わかりました……すみません」
「いいのよ~……騒ぎを収めてさえくれれば」
「ひっ!?」
一気に温度が下がった声音に悲鳴が漏れてしまった。女性はくすくすと笑った。
「うふふ。冗談よ、じょーだん。それじゃ、行きましょうか」
だめだ、十年以上人生経験を積んでいるが、この女性におもしろいようにからかわれている。
これからもからかわれ続けないことを祈りながら女性についていった。
一つ気になったのは、彼女が俺の頭ーー髪の毛と耳を凝視していたことなのだが、ハーフだとバレたのだろうか……。
寮は男女別々というわけではなく、同じ建物らしい。
最大三千人を収容する部屋数が必要なため、いくつも同じ形の建物がある。
「ここよ~」
案内されるままになかへ入っていくと、食堂に人が集まっていた。
「私がシアンと相部屋になるのーっ!」
「いや、私がシアン君の世話をするの!」
その中心には案の定、アイラとリアが言い争っていた。
この数日で何度か見た光景に頭が痛くなってくる。
「アイラ、リア。みんなに迷惑だろ? やめなよ」
俺の存在に気づいた二人は口を揃えて言った。
「「シアン(君)は私と相部屋がいいよね!?」」
「えっ……」
言葉に詰まる。
どっちを選んでもどちらかを悲しませる。そんな選択を迫られているのだ。まさに究極、極限の二択である。
「シアンは私とがいいよね?」
「お姉ちゃんである私の方がいいわよね?」
ジリジリと、心なしか彼我の距離までも詰められている気がしてきた。
いや、気のせいではないだろう。今、俺は群衆という壁と二人に至近距離でサンドイッチされているのだから。
「えっと……その……うぶっ!」
二人の顔が怖すぎて直視できないので顔を晒すと、頬を掴まれ二人の方を向けさせられる。
「ちょうどいいわ。ここでどっちがシアン君に必要か、白黒つけようじゃない!」
「いいよ! だったらなおさらシアンに返事を聞かないと!」
なんでだ。他所でやってくれ。
逃げたくても逃げられないのでダンマリを決め込みたいが、無言の圧力がそうさせてくれない。
「あ……え……うぅ」
ダメだ。五歳児にはこの状況は辛すぎる。
肉体に精神が引っ張られているからか涙が出てきた。
「し、シアン君!? ご、ごめんね? 泣かせる気はなかったの!」
「ごめんねシアン。お姉ちゃんなのにいじめちゃって」
途端、さっきまでの迫力は霧散し、頭を撫で、抱きしめたりする優しい女の子に一転した。
「……シアン君のルームメイトは、第20クラスからクジで決めましょうか」
ゆるふわの女性の一言でこの騒ぎは終着を迎えた。
こんなことになる前にそう言ってくれ。
女性を睨むと、彼女は口元に手を当て笑った。
む、むかつく……。
授業を振り返ると、冷たいものだった。
勝ち組は自信と余裕をもって授業に向かうのに対して負けた組は悔しさを糧に真剣に授業に臨んでいた。
お互いをライバル視するのはいいことなのだが、会話までしないとなると好ましくない。
合宿では二位だったが、入学試験の時点では底辺の実力の集まりだ。なので、他クラスは、合宿で一位であり、参加したなかでも上位クラスの第10クラスを狙うより、俺たちを狙ったほうが楽に昇格できると考えて、下克上システムを俺たちに使うだろう。
そんなときに、まともにコミュニケーションも取れてない状態じゃ勝てる戦も勝てない。
仕方ない、ここはラークと協力して良いライバル関係を築けるよう仕向けてみるか。
「ラーク、ちょっといい?」
「……なんだ。俺は今から鍛錬したいんだが」
あまり反応はよろしくない。だらだら話していると切り上げられそうだから手っ取り早く話すか。
「このままじゃ、俺たちは下克上システムでやられる」
ラークの目が変わった。こいつは負けと聞くと食いつくように感じる。
「どういうことだ?」
「俺たちは試験の序列じゃ、下から六番目だ。実力で勝ると考える他のクラスから下克上を挑まれてもおかしくはないはずだ」
「むしろ、第20クラスの俺たちに勝てば、クラス序列七位になれるんだから挑まない手はないな」
「うん。一度負けてるから相手も油断はしてこないと思う。それに比べてウチはちょっと……」
「そうだな。明日、俺が声をかけてみる」
なんとかなりそうだ。ラークと別れ、初めての寮に向かおう。
教室を出ると困った様子の大人の女性に声をかけられた。
「君がシアン君かな~?」
「えっと、はい」
その容貌はブロンズの髪を柔らかくショートにした、ゆるふわ系お姉さんであり、普段、アイラやリアがお姉さんを語っているせいか、こう、本物を見ると戸惑ってしまう。
「お姉さんちょっと困っていてね。ちょっとついてきてくれないかしら?」
「どうしたんですか?」
「寮で喧嘩が起きちゃって……君が来ないと帰らないって話を聞かなくて~」
一瞬でその光景の予想ができてしまった……。
「わかりました……すみません」
「いいのよ~……騒ぎを収めてさえくれれば」
「ひっ!?」
一気に温度が下がった声音に悲鳴が漏れてしまった。女性はくすくすと笑った。
「うふふ。冗談よ、じょーだん。それじゃ、行きましょうか」
だめだ、十年以上人生経験を積んでいるが、この女性におもしろいようにからかわれている。
これからもからかわれ続けないことを祈りながら女性についていった。
一つ気になったのは、彼女が俺の頭ーー髪の毛と耳を凝視していたことなのだが、ハーフだとバレたのだろうか……。
寮は男女別々というわけではなく、同じ建物らしい。
最大三千人を収容する部屋数が必要なため、いくつも同じ形の建物がある。
「ここよ~」
案内されるままになかへ入っていくと、食堂に人が集まっていた。
「私がシアンと相部屋になるのーっ!」
「いや、私がシアン君の世話をするの!」
その中心には案の定、アイラとリアが言い争っていた。
この数日で何度か見た光景に頭が痛くなってくる。
「アイラ、リア。みんなに迷惑だろ? やめなよ」
俺の存在に気づいた二人は口を揃えて言った。
「「シアン(君)は私と相部屋がいいよね!?」」
「えっ……」
言葉に詰まる。
どっちを選んでもどちらかを悲しませる。そんな選択を迫られているのだ。まさに究極、極限の二択である。
「シアンは私とがいいよね?」
「お姉ちゃんである私の方がいいわよね?」
ジリジリと、心なしか彼我の距離までも詰められている気がしてきた。
いや、気のせいではないだろう。今、俺は群衆という壁と二人に至近距離でサンドイッチされているのだから。
「えっと……その……うぶっ!」
二人の顔が怖すぎて直視できないので顔を晒すと、頬を掴まれ二人の方を向けさせられる。
「ちょうどいいわ。ここでどっちがシアン君に必要か、白黒つけようじゃない!」
「いいよ! だったらなおさらシアンに返事を聞かないと!」
なんでだ。他所でやってくれ。
逃げたくても逃げられないのでダンマリを決め込みたいが、無言の圧力がそうさせてくれない。
「あ……え……うぅ」
ダメだ。五歳児にはこの状況は辛すぎる。
肉体に精神が引っ張られているからか涙が出てきた。
「し、シアン君!? ご、ごめんね? 泣かせる気はなかったの!」
「ごめんねシアン。お姉ちゃんなのにいじめちゃって」
途端、さっきまでの迫力は霧散し、頭を撫で、抱きしめたりする優しい女の子に一転した。
「……シアン君のルームメイトは、第20クラスからクジで決めましょうか」
ゆるふわの女性の一言でこの騒ぎは終着を迎えた。
こんなことになる前にそう言ってくれ。
女性を睨むと、彼女は口元に手を当て笑った。
む、むかつく……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる