クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

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第29話:生徒会書記

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 翌朝、学校に行ってみると教室がやけに騒がしく、まるで喧嘩でもしているみたいだったので、こっそりとなかに入ってみると、案の定口論があちこちで発生していた。
 いまいち状況が飲み込めないため、昨日、寮で見た限り機嫌が直ったように見えるアイラに尋ねてみる。

「アイラ。これどうなってるの?」

「えっとね、あの子がクラスみんなをまとめようとしたらこんな感じになったの。……ごめんねシアン。昨日は冷たくしちゃって」

 アイラはそう言って目を伏せる。
 悪いのは俺なのに、本当に優しい子だ。
 俺はアイラの頭に手を置いて口を開く。

「気にしてないよ。俺もごめんね」

「うんっ!」

 声を弾ませて、アイラは俺の手に頭を擦り付けるようにする。
 俺の前ではよくお姉ちゃんぶるが、こういうところも可愛いのだ。
 一方でクラスは依然騒がしい。やはり、模擬戦の結果で割れている。
 アイラが言っていた『あの子』とは、前に立っているラークのことだろう。協力を促したが失敗したと見る。
 その結果、ラークもこの状況はお手上げと黙っている。

「きゃあっ!?」

 鈍い音とともに悲鳴が教室に木霊した。嫌な音に教室が静寂に包まれた。

「あ、相性で勝ったくせに調子に乗るな!」

 声の方を見遣ると、倒れ込んでいる女の子に向かって叫んでいる。
 どうしてウチのクラスにはこうも血気盛んなやつが多いんだ……。

「なにが『みんなで心を一つにしよう』だ! 庶民風情が!」

 確かにあの組の対戦は女の子の方が相性では有利だったかもしれないが、男も接近戦を挑むなり対策は練れたはずだ。惨めだぞ。
 ……とまあ、普段ならこんなことは胸の内にしまっていたはずなのだが、今回の事件は俺が発案したから起きたことでもある。
 なにより、女の子の額から流血しているため、見ていられない。
 俺は回復魔法をイメージするのが苦手なため、あまり得意ではないのだが、やらないよりはマシだろう。
 というか、俺が回復魔法を使おうとすると、回復というより再生してしまうのだ。別の魔法になってしまうのだ。

「見せて」

 女の子の前に跪き、血を拭き取る仕草をする。
 ぽんぽんとハンカチを傷の周りに当てて血を取ると、そこにあったはずの傷は見る影もなく消え失せていた。

「いちおう、保健室に行ったらどうかな」

「あ、ありがとっ」

 女の子のは顔を赤らめながら教室を出て行った。
 言い争っていた男の子を見ると、まだ興奮が冷めないのか、今度は敵愾心いっぱいに俺を睨んでいた。

「……なに? どうかしたの?」

「……俺は天才だ。七歳でこの学校に入って、ウチの後継ぎも俺だと親に言わしめた」

 第20クラスに入れるだけでも、その年齢のなかで世界で有数の実力の持ち主だということは間違いない。
 自信を持つことはいいことだろう。

「入学時は第20クラスに配置されるという、あまり芳しくない状況だったが、合宿では二位だ。それも、そこの白い獣人の女がいなければ一位だった!」

 傍観に徹していたルージュを指差し怒鳴る。

「俺はこの学校に、貴族たちに実力を証明した。俺の力で合宿を勝ち取った! だというのに、先の模擬戦は相性で負け、お前らは今、俺を悪者のように扱う! 相性で勝ったくらいで調子に乗るからいけないんだ! そうだろう!?」

 しん、と教室が静まる。みんなの顔を見ると、みんな引いている。今この瞬間は、彼以外の心は一つになったみたいだぞ。よかったな、女の子。

「……いや、俺自分がバカらしくなったよ。変に意識しちゃってごめんね」

「私も。少し天狗になってたかも」

 そこかしこで和解の言葉が溢れ、クラスはまとまりを取り戻しつつあるように見えた。

「ラークッ!」

 一人アウェーの男の子が鋭く叫ぶ。二人になにか関係があったのか、と興味が沸いたのでラークを見てみると、呆れたような表情だ。

「今、お前がここで俺の味方をすれば父さんに言って、便宜を図ってやる!」

 貴族つながりらしい。しかも、立場は男の子の方が上。だからといって年上に命令口調で話していいわけではないと思うが、ラークにとっても悪くない提案のはずだが……。

「……それが年上にものを頼む態度か? まず、ここでは爵位やらの権力は関係ない。それに、俺はお前の力で地位を復活させるつもりはない。俺の力で家を立て直す」

 キッパリと断られた男の子は怒髪天を衝くような形相だ。

「せいぜいその発言を後悔するんだなッ! 父さんーーハイズ・イーサスに言いつけて領地を圧迫してやる!」

 そう言い放ったとき、教室の扉が勢いよく開かれ、男の子に似た女の子が鬼の形相でやってきた。
 そしてそのまま男の子の頭を殴った。

「いてえっ!? や、やめろよねーちゃんっ! こいつらが俺を侮辱するから、貴族の偉大さを説いてやってたんだ!」

 よく即座にそんなでまかせが出たものだ。一種の才能かもしれない。
 しかし、その言い訳にも姉と呼ばれた女の子は表現を変えない。

「怪我人が出たと聞いて飛んできたんですよ。じゃあ、『ラークッ!』でしたっけ? シン、ここでは貴族だの平民だの関係ありませんよ? それなのになにを説いていたのですか? ふざけないでくださいッ!」

 弟とは違って、よくできた姉だ。

「まったく。同じ家名の者として恥ずかしい限りです。とりあえず、クラスの皆さんに謝罪したあと、保健室で寝ている子に謝りに行きなさい。五体投地は当たり前ですよ? 許してもらえるまで平伏していなさい!」

「ひ、ひいぃぃ!?」

 背後に阿修羅すら見えるほどの威圧に男の子ーーシンはたまらんとばかりに逃げ出した。

「……お仕置きですね。皆さん申し訳ありませんでした。私からもよ~く言っておきますので、どうかあのちゃらんぽらんをこれからもよろしくお願いします。特にあなた」

「俺?」

 女の子は俺を見る。

「はい。どうか、間違った方向へ行かないように、手綱を握っていてください。いち姉としてお願いします」

 女の子は深く頭を下げたあと、俺の返事も聞かずにシンを追って教室を出て行った。
 なんで俺なんだ。

「……ねえアイラ、あの人誰?」

「え、知らないの? この学校の生徒会書記、ユーノ・イーサスだよ」

 ……生徒会っていったら、生徒会長は遥だったはず。

「え、えぇぇぇぇ!?」

 遥の身内と面識を持ってしまった。
 こ、これは早急にどうにかしなければっ!
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