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第35話:面会
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翌日、教室のなかはやけに騒がしく、試合のことで議論が白熱しているのかと思えばそれは違った。
いつもは俺が最後に登校してくるらしいが、今日は違うということ。これについては物申したいところだが……あながち間違っていない気もする。
「あなたいつも遅いわね! 反省文書きなさい!」
先生は今日は機嫌がいいらしく、反省文と叱責だけで済んだ。
喜んでいいことなのかはわからないが。
「わかりました」
投げつけられた原稿用紙をキャッチし、適当な言葉を羅列する。
そうしているうちに、朝のホームルームが始まったらしく、先生が教壇に立った。
結局、俺より遅いと話題の生徒は来ていないようだ。
「えー、みんな話している生徒、サニャクルシアは昨日の集会のあと、怪我をして保健室へ運ばれました。今日は大事をとって休みよ」
教室内が騒然とする。
しかし、俺やルージュは先生の核心を突かない言い方に顔をしかめた。
「先生、なぜ怪我をしたんですか?」
俺に気を遣ってくれたのか、ルージュが先生に質問を投げかけた。
「それは……」
視線を右往左往させて戸惑った様子を見せたが、先生はもう一度ルージュを見て、諦めたようにため息をついた。
「何者かに襲撃されたのよ。けど、それ以上は彼女本人が口を開かなくてね……」
なるほど。
しかし、あの先生はもっと冷徹だと思っていたが、あんな表情もするんだな。
一瞬のうちに、教室全体の雰囲気が張り詰めたのを感じた。
原因は、怒り。揉め事はあったが、級友が傷つけられて黙ってはいられないらしい。根はみんないいやつらなのだ。
「……あなた、失礼なこと考えたでしょ。反省文プラス二枚ね」
おい、それはないだろ……。
「それと、試合の日時だけど、三日後に決まったわ。それまでにやることはやっておくこと」
詳しい話を聞く前に、先生は強引に話を打ち切り、授業へと入っていった。
授業は何事もなく終わり、数分の休憩のあと試合に関する会議が待っているという時間、教室を出たところで俺は先生を呼び止めた。
「先生」
「……なにかしら。すぐに戻ってくるから心配しなくても大丈夫よ」
相変わらず冷たい態度だが、今は気に留めない。
それよりも、聞かなければならないことがある。
「そうじゃなくて……昨日の事件、先生はどう読んでますか?」
襲撃に遭ったのなら、もっとおおごとになっても不思議ではない、いや、ならないとおかしいはずだ。
なのにそうならないのは、おそらく学校側が隠匿したい内容と推測できる。
先生は微かに困ったような顔をしたような気がした。
「知らないわよ。因縁でもあったんじゃないかしら?」
発されたものは冷徹な言葉だったが、表情がそれは嘘だと物語っている。
「俺の推測ですけど、襲撃したのは他のクラスの生徒じゃないんですか? たとえば第7クラスの連中とか」
というか、これは誰もが行き着く考えだろう。
理由はいくつか考えられるが、俺たちの作戦を知るためとか、戦力を削るとかだ。
俺は誤魔化されないぞ、と先生の目をじっと見つめ離さない。
すると、案外折れやすいのか、先生はあっけなく口を割った。
「……サニャクルシアが暴行を受けたと思われる時刻の前後に、第7クラスの生徒が校内で目撃されているわ。結構遅い時間だったから、ほぼ確定ね」
だが、学校としては公表したくない事案であり、被害者本人が供述しないため、捜査は停滞していると。
「なるほど、なんとなくわかりました。ありがとうございます」
感謝を口にし、一旦教室に戻り、アイラの隣に立つ。
「ごめんねアイラ。用事が入っちゃって、会議に参加できなくなったんだ」
「わかった! みんなには言っておくから、シアンは行ってきて!」
たった一言でやって欲しいことを理解してくれる。
流石はアイラだ、あとでたくさん構ってあげよう。
「ありがとっ」
金糸のような髪を少し撫で、俺は教室を出た。
向かう先は寮、サニャクルシアとやらの部屋だ。
☆☆☆
「え? サニャちゃんの部屋~? そんなの無断で教えられるわけないでしょ~?」
「うっ……」
寮母であり副担のモーラは、性格悪いくせにまともなことをのたまった。
無性にムカつくが、彼女の言い分は尤もなため返す言葉がない。
探知を使いたいところだが、ここはプライバシー保護のため、婆さんが直々にそういう類を拒絶する結界を張っているため使えない。
そのため、サニャクルシアを探すのにはモーラを頼るのが一番手っ取り早いのだが……。
「そこをなんとか! どうしても話がしたいんです」
「ダメよ~。シアン君のことは嫌いじゃないけど、流石に女の子の部屋に堂々と侵入しようとするなんて、ちょっとお姉さん引いちゃうな~」
「話がしたいって言ってますよね……」
口元に指をあて、困った表情で告げる仕草がその容姿と相まってなんか妖艶で、つい弱々しい口調になってしまう。
モーラは巨乳なのである。
「まあ、確かにあの子と会いたくなるのはわかるけどね……」
「……ん?」
不意に、モーラの顔に影がさした。
だが、その理由はわからずーー
「モーラ先生、どこにいるの……んひゃっ!?」
通路の角から出てきた少女が、奇声をあげて飛び退いた。
「うわっ!? ……あれ? 君、どこかで……」
それも、最近見た気がする。
首を傾げていると、珍しくモーラが焦った様子で弁明しだす。
「あのね、シアン君。この子はその、魔族じゃなくてね、その……」
「ん? あの子魔族なの?」
「……え?」
「え?」
どうにも気まずい空気が流れる。
とりあえず、桃色の髪をした、俺より年上っぽい少女は魔族らしい。
「ご、ごめんね~。言い間違えたわ、あの子はマゾっ子なのよね」
俺が知らなかったのをいいことに、モーラは強引に誤魔化し始めた。
だが、この耳ではっきり聞いてしまった。
「魔族ですよね」
「いや、だから」
「魔族ですよね?」
「……そうよ」
モーラは観念してうなだれた。
事件の被害者が魔族となると、単純な傷害事件では済まないことになっているかもしれない。
と、無意識に顔をしかめていたらしく、サニャクルシアが短い悲鳴をあげていた。
「あ、ごめん」
「……シアン君はサキュバスのこと知らないの?」
「知らないよ?」
さっきサニャクルシアを見たときのモーラの反応は、外見にサキュバスと判断するだけの特徴が現れていたということだろう。
そして、普段はそれがバレることなく過ごせているということから、上手くカモフラージュしているのか。
「君は年齢不相応に大人びていると思ってたのに、たまに常識がないわね~……」
「むっ……」
世間を知らなかったんだから仕方ないだろ。
俺の五年間を口にするのは好ましくないため、口を尖らせるだけに留める。
「そういうところは年相応って感じね~。……サニャちゃん、話してもいい?」
「えっ! あ……わ、私が話しますっ」
さっきの反応から、人見知りする子なのかと思っていたが、そういうわけでもないらしい。もしくは、どこまで話すかという判断のためか。
「えっと、し、シアン君。私のことどう思う?
「へ?」
もっと事件のことについて聞かれると思っていたが、まさかそのような質問とは。虚を突かれて間抜けな声を上げてしまったじゃないか。
「うーん……」
返答に窮していると、サニャクルシアが続ける。
「そっか……じゃあ、こ、これは?」
サニャクルシアが深呼吸をすると、髪の色に変化が起こる。
「髪の色が……それもサキュバスの力なの?」
桃色の髪が徐々に黒みを帯びていき、最終的には完全な黒色になったのだ。
「ち、違うよ。これは私にしかできないらしくて……理由はわからないんだけどね」
「そうなんだ」
その能力を見せたということは、サキュバスの特徴は髪の色なのだろう。ピンクがその象徴ということか。
「うん……。あ、あの、私のこと覚えてない?」
「え!? えっと……」
不安げな瞳で見つめられ、知らないとは言えない。
どこかで見たことがあるはずだ。それもこの数日で。
じっと観察していると、不意にサニャクルシアがおでこをさすった。
「あっ! あのときの女の子?」
あのときとは、シンが癇癪を起こして暴行を働いたときのことである。
だとすれば、この短期間で二度も暴力を受けるという災難に同情の念を禁じ得ない。
「そ、そう! よかった……覚えていてくれて」
最後の方はよく聞き取れなかったが、当たっていてなによりだ。
「わ、忘れるわけないじゃん。クラスメートなんだしね!」
今しがた思い出したことを悟られるわけにはいかないので見栄を張ったが、モーラの視線が痛い。
「そ、そうだよね……」
「ん?」
「な、なんでもないよ!」
落胆の色が見えた気がするが、気のせいか。
「そうなのか? それじゃあ、話してほしいな」
「わかった。き、昨日の会議のあと、私は一人で教室に残ってたの。そ、それで用事が済んだから、教室から出ると、他のクラスの子が待ってて……」
「……なるほど」
傷が見当たらないのはこの世界には魔法が発展しているわけで。
そのおかげ、というのか、そのせいといえばいいのかわからないが、どの程度の怪我だったのかは窺えないが、心に傷を負ったのは確かだろう。
「なにを聞かれたんだ?」
それを聞いて、彼女の表情が曇る。
おそらく、喋ってしまったのだろう。そのときに、屈せず口を閉ざしていればそんな表情はしないはずだから。
「言いたくない、よね」
口止めでもされているんだろう。
だが、その反応だけで十分だ。聞き出したいことなど、戦略や個人の特徴くらいだろうからな。
「ご、ごめんね……」
「いや、大丈夫だよ。それだけでもいろいろ収穫はあったしね」
相手も油断はしていない、ということなどだ。
そして、この試合、絶対に負けないと決めた。話すだけで体が震えるほどの恐怖を女の子に覚えさせたやつらに負けるわけにはいかない。
「あ、そうそう。シアン君、このことは秘密ね~」
「わかりました。サニャクルシア、話してくれてありがとう。試合頑張ろうね」
そう言い残し、俺はその場を去った。
一つ気がかりなのは、俺の言葉に目を逸らしたことだが……。
そうして、当日までの時が過ぎた。
いつもは俺が最後に登校してくるらしいが、今日は違うということ。これについては物申したいところだが……あながち間違っていない気もする。
「あなたいつも遅いわね! 反省文書きなさい!」
先生は今日は機嫌がいいらしく、反省文と叱責だけで済んだ。
喜んでいいことなのかはわからないが。
「わかりました」
投げつけられた原稿用紙をキャッチし、適当な言葉を羅列する。
そうしているうちに、朝のホームルームが始まったらしく、先生が教壇に立った。
結局、俺より遅いと話題の生徒は来ていないようだ。
「えー、みんな話している生徒、サニャクルシアは昨日の集会のあと、怪我をして保健室へ運ばれました。今日は大事をとって休みよ」
教室内が騒然とする。
しかし、俺やルージュは先生の核心を突かない言い方に顔をしかめた。
「先生、なぜ怪我をしたんですか?」
俺に気を遣ってくれたのか、ルージュが先生に質問を投げかけた。
「それは……」
視線を右往左往させて戸惑った様子を見せたが、先生はもう一度ルージュを見て、諦めたようにため息をついた。
「何者かに襲撃されたのよ。けど、それ以上は彼女本人が口を開かなくてね……」
なるほど。
しかし、あの先生はもっと冷徹だと思っていたが、あんな表情もするんだな。
一瞬のうちに、教室全体の雰囲気が張り詰めたのを感じた。
原因は、怒り。揉め事はあったが、級友が傷つけられて黙ってはいられないらしい。根はみんないいやつらなのだ。
「……あなた、失礼なこと考えたでしょ。反省文プラス二枚ね」
おい、それはないだろ……。
「それと、試合の日時だけど、三日後に決まったわ。それまでにやることはやっておくこと」
詳しい話を聞く前に、先生は強引に話を打ち切り、授業へと入っていった。
授業は何事もなく終わり、数分の休憩のあと試合に関する会議が待っているという時間、教室を出たところで俺は先生を呼び止めた。
「先生」
「……なにかしら。すぐに戻ってくるから心配しなくても大丈夫よ」
相変わらず冷たい態度だが、今は気に留めない。
それよりも、聞かなければならないことがある。
「そうじゃなくて……昨日の事件、先生はどう読んでますか?」
襲撃に遭ったのなら、もっとおおごとになっても不思議ではない、いや、ならないとおかしいはずだ。
なのにそうならないのは、おそらく学校側が隠匿したい内容と推測できる。
先生は微かに困ったような顔をしたような気がした。
「知らないわよ。因縁でもあったんじゃないかしら?」
発されたものは冷徹な言葉だったが、表情がそれは嘘だと物語っている。
「俺の推測ですけど、襲撃したのは他のクラスの生徒じゃないんですか? たとえば第7クラスの連中とか」
というか、これは誰もが行き着く考えだろう。
理由はいくつか考えられるが、俺たちの作戦を知るためとか、戦力を削るとかだ。
俺は誤魔化されないぞ、と先生の目をじっと見つめ離さない。
すると、案外折れやすいのか、先生はあっけなく口を割った。
「……サニャクルシアが暴行を受けたと思われる時刻の前後に、第7クラスの生徒が校内で目撃されているわ。結構遅い時間だったから、ほぼ確定ね」
だが、学校としては公表したくない事案であり、被害者本人が供述しないため、捜査は停滞していると。
「なるほど、なんとなくわかりました。ありがとうございます」
感謝を口にし、一旦教室に戻り、アイラの隣に立つ。
「ごめんねアイラ。用事が入っちゃって、会議に参加できなくなったんだ」
「わかった! みんなには言っておくから、シアンは行ってきて!」
たった一言でやって欲しいことを理解してくれる。
流石はアイラだ、あとでたくさん構ってあげよう。
「ありがとっ」
金糸のような髪を少し撫で、俺は教室を出た。
向かう先は寮、サニャクルシアとやらの部屋だ。
☆☆☆
「え? サニャちゃんの部屋~? そんなの無断で教えられるわけないでしょ~?」
「うっ……」
寮母であり副担のモーラは、性格悪いくせにまともなことをのたまった。
無性にムカつくが、彼女の言い分は尤もなため返す言葉がない。
探知を使いたいところだが、ここはプライバシー保護のため、婆さんが直々にそういう類を拒絶する結界を張っているため使えない。
そのため、サニャクルシアを探すのにはモーラを頼るのが一番手っ取り早いのだが……。
「そこをなんとか! どうしても話がしたいんです」
「ダメよ~。シアン君のことは嫌いじゃないけど、流石に女の子の部屋に堂々と侵入しようとするなんて、ちょっとお姉さん引いちゃうな~」
「話がしたいって言ってますよね……」
口元に指をあて、困った表情で告げる仕草がその容姿と相まってなんか妖艶で、つい弱々しい口調になってしまう。
モーラは巨乳なのである。
「まあ、確かにあの子と会いたくなるのはわかるけどね……」
「……ん?」
不意に、モーラの顔に影がさした。
だが、その理由はわからずーー
「モーラ先生、どこにいるの……んひゃっ!?」
通路の角から出てきた少女が、奇声をあげて飛び退いた。
「うわっ!? ……あれ? 君、どこかで……」
それも、最近見た気がする。
首を傾げていると、珍しくモーラが焦った様子で弁明しだす。
「あのね、シアン君。この子はその、魔族じゃなくてね、その……」
「ん? あの子魔族なの?」
「……え?」
「え?」
どうにも気まずい空気が流れる。
とりあえず、桃色の髪をした、俺より年上っぽい少女は魔族らしい。
「ご、ごめんね~。言い間違えたわ、あの子はマゾっ子なのよね」
俺が知らなかったのをいいことに、モーラは強引に誤魔化し始めた。
だが、この耳ではっきり聞いてしまった。
「魔族ですよね」
「いや、だから」
「魔族ですよね?」
「……そうよ」
モーラは観念してうなだれた。
事件の被害者が魔族となると、単純な傷害事件では済まないことになっているかもしれない。
と、無意識に顔をしかめていたらしく、サニャクルシアが短い悲鳴をあげていた。
「あ、ごめん」
「……シアン君はサキュバスのこと知らないの?」
「知らないよ?」
さっきサニャクルシアを見たときのモーラの反応は、外見にサキュバスと判断するだけの特徴が現れていたということだろう。
そして、普段はそれがバレることなく過ごせているということから、上手くカモフラージュしているのか。
「君は年齢不相応に大人びていると思ってたのに、たまに常識がないわね~……」
「むっ……」
世間を知らなかったんだから仕方ないだろ。
俺の五年間を口にするのは好ましくないため、口を尖らせるだけに留める。
「そういうところは年相応って感じね~。……サニャちゃん、話してもいい?」
「えっ! あ……わ、私が話しますっ」
さっきの反応から、人見知りする子なのかと思っていたが、そういうわけでもないらしい。もしくは、どこまで話すかという判断のためか。
「えっと、し、シアン君。私のことどう思う?
「へ?」
もっと事件のことについて聞かれると思っていたが、まさかそのような質問とは。虚を突かれて間抜けな声を上げてしまったじゃないか。
「うーん……」
返答に窮していると、サニャクルシアが続ける。
「そっか……じゃあ、こ、これは?」
サニャクルシアが深呼吸をすると、髪の色に変化が起こる。
「髪の色が……それもサキュバスの力なの?」
桃色の髪が徐々に黒みを帯びていき、最終的には完全な黒色になったのだ。
「ち、違うよ。これは私にしかできないらしくて……理由はわからないんだけどね」
「そうなんだ」
その能力を見せたということは、サキュバスの特徴は髪の色なのだろう。ピンクがその象徴ということか。
「うん……。あ、あの、私のこと覚えてない?」
「え!? えっと……」
不安げな瞳で見つめられ、知らないとは言えない。
どこかで見たことがあるはずだ。それもこの数日で。
じっと観察していると、不意にサニャクルシアがおでこをさすった。
「あっ! あのときの女の子?」
あのときとは、シンが癇癪を起こして暴行を働いたときのことである。
だとすれば、この短期間で二度も暴力を受けるという災難に同情の念を禁じ得ない。
「そ、そう! よかった……覚えていてくれて」
最後の方はよく聞き取れなかったが、当たっていてなによりだ。
「わ、忘れるわけないじゃん。クラスメートなんだしね!」
今しがた思い出したことを悟られるわけにはいかないので見栄を張ったが、モーラの視線が痛い。
「そ、そうだよね……」
「ん?」
「な、なんでもないよ!」
落胆の色が見えた気がするが、気のせいか。
「そうなのか? それじゃあ、話してほしいな」
「わかった。き、昨日の会議のあと、私は一人で教室に残ってたの。そ、それで用事が済んだから、教室から出ると、他のクラスの子が待ってて……」
「……なるほど」
傷が見当たらないのはこの世界には魔法が発展しているわけで。
そのおかげ、というのか、そのせいといえばいいのかわからないが、どの程度の怪我だったのかは窺えないが、心に傷を負ったのは確かだろう。
「なにを聞かれたんだ?」
それを聞いて、彼女の表情が曇る。
おそらく、喋ってしまったのだろう。そのときに、屈せず口を閉ざしていればそんな表情はしないはずだから。
「言いたくない、よね」
口止めでもされているんだろう。
だが、その反応だけで十分だ。聞き出したいことなど、戦略や個人の特徴くらいだろうからな。
「ご、ごめんね……」
「いや、大丈夫だよ。それだけでもいろいろ収穫はあったしね」
相手も油断はしていない、ということなどだ。
そして、この試合、絶対に負けないと決めた。話すだけで体が震えるほどの恐怖を女の子に覚えさせたやつらに負けるわけにはいかない。
「あ、そうそう。シアン君、このことは秘密ね~」
「わかりました。サニャクルシア、話してくれてありがとう。試合頑張ろうね」
そう言い残し、俺はその場を去った。
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