クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

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第43話:鍛冶屋

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 鍛冶屋のなかでまず目に付いたのは、手入れの行き届いた道具類。
 長年の使用により、持ち手が削れたり、変色したりと年季を感じさせながらも、まだまだ現役だという力強さが感じられた。
 この人なら、魔法での強化などにも耐えられる武器や、逆に強力な攻撃に耐えうる防具を作ってくれるのではないかと思えた。

「……入ってきたってこたあ、客って判断していいんだな?」

 追随する形で歩いていたため、大男が振り返る。
 相変わらず強面だが、人相と腕前は関連しない。

「そうです。武具屋には自分たちに合う・・ものがなかったので」

 やはり、俺たちのサイズに合う・・・・・・ものは特注するしかない。

「む……店に出ているものでは自分たちの実力に見合わない・・・・・と」

 俺の言葉を耳にして、ボソボソとなにかを呟いて大男は眉をひそめる。
 なにか気に障ることを言ってしまったのかとサニャクルシアを見ると、彼女もまたあわあわと慌てていた。

「サニャ、なにか俺やらか――」

「いちおう、この街にある武具の大半は俺が作っているんだが……」

 その声音にはわずかだが怒気が込められており、大男の表情も、少なくとも客を相手にしているものではない。
 それだけ、己の作るものに自信があったとわかる。
 なぜ怒っているのかは皆目見当もつかないが。

「そうなんですか。それはすごいですね!」

「……全部、手抜きなんてしてないんだが」

 大男の口ぶりでは、他にも武器、防具の店があるのだろう。一店舗であれだけの量なのだから、総量は言うまでもない。それを全て手を抜かずに作るのは、相当の気概だ。

「へえ、あれを……」

「っ……! てめえ、こっちが我慢してりゃ好き勝手いいやがって……っ」

 ど、どうして大男は更に怒っているんだ?

「てめえらは俺の作品を侮辱しにきたのか!?」

「は、はぁ? 武具の依頼をしにきたって言ったじゃないですかっ」

 こんなにも褒めてるのにっ!

「ならどうしてこんなに嫌味を言うんだ!」

「そ、そう言われても……」

 全くわけがわからない。
 俺自身に心当たりが皆無のため、なんと返していいかわからず戸惑ってしまう。
 困り果てた俺に、サニャクルシアが声をかけてきた。

「た、たぶん、シアン君が『自分たちのサイズに合う』ってところを、『自分たちに合う』ってい、言っちゃったから、勘違いが生まれたんじゃないかな」

「あぁ……」

 相手は職人だ。それゆえに、自身の腕にも覚えがあり、品の評価も俺たちより気になってしまうのかもしれない。
 勘違いとはいえ、相手をここまで激怒させたのだ。
 ここで武具を作ってもらうのは諦めた方がいいのかもしれない。

「俺だって鍛冶屋としての誇りはある。あれだけ言われて黙っちゃいられねえ!」

 あれ?

「だが、てめえらも冒険者の端くれだろ。俺が依頼を出す。だから、てめえらで武具の素材を集めろ! それを俺が加工する!」

 これは、おそらく俺たちへの挑戦状である。
 俺たちがその素材をどれだけ良い状態で持ってこられるかによって、できあがる製品の質も変わってくるぞ。と暗に示しているのだ。
 大男は俺たちの返答を聞かずに続ける。

「素材は魔物から取れる。……今不足しているのは『鉱牛』だ。それを取ってきてくれ」

 聞いたことのない魔物だ。
 しかし、サニャクルシアは知っているらしく、口を開く。

「こ、鉱牛っていうのは、体表に鉱物を貼り付ける習性のある牛だよ。と、突進が主な攻撃手段かな」

「そうなんだ」

 解説を聞く限り、あまり強そうな印象は受けない。

「まあ、無駄死にされちゃ後味が悪いから言っとくが、北の洞窟には行くな。あそこには最近、『鉱竜』が住み着いてるからな」

「鉱竜?」

 鉱牛と同種だろうか。

「あぁ。三メートルくらいの地竜だが、こいつは体内に鉱石を蓄積、凝縮させる。それを使ってブレスを撃ってくるのが厄介だ。それに、スピードも鉱牛とは段違いだ」

 素材としては、鉱牛より何倍も有能だがな。と大男は付け加える。
 鉱牛を基準にされてもよくわからないが、聞く限りではあまり戦いたくはない相手だ。

「とりあえず、北にさえ行かなけりゃどこにでもいる」

「……わかりました。代金は?」

 だが、北に行かなければ鉱竜と戦う必要はないということだ。
 断ることもない。

「……いや、いらん。これは俺の誇りを守るためにふっかけたことだ。素材があればタダで作ってやる」

 つまり、彼は俺に鍛冶屋としての腕を納得させたいということだ。

「っ! ありがとうございます」

 そして話は終わり、条件付きではあるが、冒険者らしい装備を手に入れられる算段がついた。

 ☆☆☆☆☆

 まあ、さすがに今日街の外へ出るわけにはいかないので、宿を探したところ、いいところが見つかった。
 そこは、夫婦で営んでいる民宿でちょうど二部屋空きがあったため、宿泊を決めるに至った。

「銀貨一枚よ」

「はい」

「ありがとう。部屋はどうする?」

 人相のいいおばさんが笑顔で応対してくれる。
 ずっと一緒にいたのだ。サニャクルシアにも一人の時間が必要だろう。

「個室――」

「ふ、二人一緒でお願いします!」

 今まで黙っていたサニャクルシアが大きな声を出したことに、俺とおばさんは唖然とする。
 だが、年季が違うのか。おばさんはうふふと笑って、了承の返事をした。

 そうして二人一緒の部屋になったわけだが、そのぶん話し合いはしやすくなったともいえる。
 おばさんに話を聞いたところ、ひと月ほど前から傭兵の需要が高まっているらしい。
 反魔王勢力の存在もみんな知っているらしいが、ある意味それは魔王の宿命らしいので、特別なことではないらしい。
 裏で彼らがなにをしているかまでは知らないようだが。

「たぶん、反魔王勢力が集めてるんだと思う。戦いにおいて、数の有利は大きいからね」

「そ、そうだね。じ、時期的にももうすぐ侵攻しそうだと思うよ」

 ひと月もあれば、今の魔王に納得していない者たちは募集を知り、集まるだろう。
 魔王も、これまではそれを堂々と迎え撃っていたらしいから、今回もそうなるだろうと聞いている。

「やっぱり、魔王と協力できた方が楽だよな」

 現魔王は穏便な性格らしく、これといった侵略行為はしていないようで、悪い噂も信憑性に欠けるものばかりだ。

「い、今の魔王は来るもの拒まずらしいから、き、きっと大丈夫だよ!」

 まだ幼いが、魔族領で暮らしていただろうサニャクルシアの言葉は信頼できる。

「そっか。それじゃあ、やっぱり一度魔王城に向かおうか」

 場合によっては直接反魔王軍の本部を叩こうとも考えていたが、俺たちの負担も考慮すると、魔王城が手堅そうだ。
 まだ来て一日。
 だが、確実に敵へと近づいている実感が湧いていた。
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