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第47話:生徒会長
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私は今、魔法学校の資料室である調べ物をしている。それは私たち地球人を召喚した魔法、そしてそのイレギュラーについて。
ここは、一般人や生徒は立ち入れないところなんだけれど、生徒会長となれば話は別。
かれこれ四時間はここの資料を読み漁っているけれど、めぼしいものは見つからない。
「……これも違うわね」
ふと窓に目を向けると、闇を光が食らいかけていた。
「もうすぐ、朝ね」
また、別の資料に目を落とす。
これは、歴代の転移勇者に関する記録だ。
しかし、三十九人と大規模な召喚が為されたのは今回が初めてだし、気になるところといえば、召喚人数が偶数が圧倒的に多いことくらいで、参考になりそうにはなかった。
ふと、妄想する。
もし、彼が私と一緒に転移していたら。
一緒に城を出て、旅をして、路銀を稼ぐために二人で冒険者なんかもいいかもしれない。万が一彼にそういう才能がなかったとしても、私が稼げば問題ないわ。
そして、生活に不自由がないくらいにお金が貯まったら、二人で式を挙げて、二人の愛を育んで、余生を過ごす。
彼の好きな肉じゃがを作ってあげたい。疲れて眠る彼の寝顔をじっくりと眺めたい。ずっと彼のそばにいたい――そして、彼を私に依存させたい。
彼の笑顔を見れるのは私だけ。
触れられるのは私だけ。
同じ空気を吸えるのは私だけ。
……まあ、それは不可能なんでしょうけど、もう一度あの日常……彼を貶めようとした連中はいらないけれど、あの日々が戻ればいいのに。
「――カ」
みんな、彼はもう死んだって言うけれど。
城の宮廷魔法士も、召喚時に確認できた魔力は三十九個だったと言うけれど。
根拠のない自信かもしれない。
それを妄信というのかもしれない。
それでも。
私は――姫草 遥は西宮 悠河が生きていると、信じて疑わない。
だってたぶん、悠河と私はこの世界で会っているもの――
「ハルカ!」
いつのまにか部屋に入ってきていた特徴的な水色の髪の子、ユーノの声で私の意識は引き戻される。
最近、時間があれば悠河との妄想をしているような気がする。
でも、空想のなかだけでも悠河といれるのなら、今はそれでいいかも。
思考をきりかえて、ユーノを見る。
「な、なにかしら」
「大丈夫ですか? ぼーっとしていたようですけど……最近徹夜も増えているみたいですし、一度休むことを勧めますよ」
「大丈夫よ、これくらい」
ユーノには悪いけど、早く出て行って欲しい。
この前の異変といい、魔族がなんらかの動きを見せていることは明らかだ。
勇者として在籍している私には、魔王討伐が命じられており、あまり時間がない。
いずれ討伐に駆り出される身である私には、一刻も早く悠河につながる手がかりが必要なのだ。
「それより、なんの用? 見ての通り、取り込んでるんだけど」
「わかってます。その取り込み中に伝えるのはさらに心苦しいのですが……ヴァージ王国から招集の命が出されました。『今すぐ来い』とのことです」
内心舌打ちする。
おそらく、今回の招集は魔王討伐に踏み切ったためだろう。
魔法士の卵がこぞって集まるここほど、魔法に関する資料が豊富なところはない。
王国の禁書庫などを漁ればなにかわかるかもしれないが、あの国王のことだから、自由にはさせてくれないはずである。
せめて、もう少しだけ猶予があれば目をつけていた資料を読みきれたのに……。
「最悪のタイミングね」
「もうすぐ終わりそうって言ってましたもんね」
「ええ……はぁ。また真田 正宗と顔を合わせないといけないと思うと、気落ちするわ」
「勇者たちのなかで最優って聞きますけど……そうなんですか?」
「ええ、いつもいい顔してるけど、性根は私たちのなかで一番腐ってると思うわ。そのくせ私によく絡んでくるし……それが悠河だったら大歓迎なのに……」
もし悠河だったなら、私は幸せでどうにかなっていた自信がある。
ユーノは、大変ですねと相槌を打ち、同情的な笑みを浮かべた。
「その、クソ野郎さんは今はどこにいるんですか? 優秀な人たちはみんなここに編入したって言ってましたけど、見た覚えがないんですよね」
「あぁ……隣の国のダンジョンで修行でもしてるんじゃないかしら。聖剣持ちだし」
この世界ではいちおう、聖剣持ちが勇者、その他が勇者の仲間、一行などと定義されている。形式的なものだけど。
「ヴァージ王国の隣っていうと……帝国ですね」
「ええ」
「大丈夫なんですか? 王国と帝国って仲悪かったはずじゃ」
「今は一大事だから、なりふり構ってられないんでしょ。あと、あわよくば勇者筆頭を取り込もうって魂胆もあるでしょうけど。国賓級の待遇だって聞いたわ」
丁重な扱いにつけあがって、増長してなければいいんだけど。
「ややこしいですね」
「ややこしいわね」
話もひと段落したので、再び資料を漁り始める。
まだ、出発まで多少の時間はあるはずなので、それまでに少しでも消化してやろう。
視線を切ったため、出て行くかと思われたユーノだが、そうはならなかった。
「私は……ハルカがそこまで執着する人物のことが気になります」
ユーノに視線を向けると、彼女の顔に影が差していた。というか、私のことを心配している様子だった。
悠河には劣るが、ユーノは大切な友人だ。まだ幼いけれども、人に気遣いができる心が綺麗な女の子。
その子に、なにも知らせずに心配ばかりさせているのも心苦しい。
この胸の苦しみも、誰かに話せば少しは楽になるかもしれない。
「そうね……あなたには、話そうかしら」
そうして私は、悠河と私の馴れ初めを語り始めた。
ここは、一般人や生徒は立ち入れないところなんだけれど、生徒会長となれば話は別。
かれこれ四時間はここの資料を読み漁っているけれど、めぼしいものは見つからない。
「……これも違うわね」
ふと窓に目を向けると、闇を光が食らいかけていた。
「もうすぐ、朝ね」
また、別の資料に目を落とす。
これは、歴代の転移勇者に関する記録だ。
しかし、三十九人と大規模な召喚が為されたのは今回が初めてだし、気になるところといえば、召喚人数が偶数が圧倒的に多いことくらいで、参考になりそうにはなかった。
ふと、妄想する。
もし、彼が私と一緒に転移していたら。
一緒に城を出て、旅をして、路銀を稼ぐために二人で冒険者なんかもいいかもしれない。万が一彼にそういう才能がなかったとしても、私が稼げば問題ないわ。
そして、生活に不自由がないくらいにお金が貯まったら、二人で式を挙げて、二人の愛を育んで、余生を過ごす。
彼の好きな肉じゃがを作ってあげたい。疲れて眠る彼の寝顔をじっくりと眺めたい。ずっと彼のそばにいたい――そして、彼を私に依存させたい。
彼の笑顔を見れるのは私だけ。
触れられるのは私だけ。
同じ空気を吸えるのは私だけ。
……まあ、それは不可能なんでしょうけど、もう一度あの日常……彼を貶めようとした連中はいらないけれど、あの日々が戻ればいいのに。
「――カ」
みんな、彼はもう死んだって言うけれど。
城の宮廷魔法士も、召喚時に確認できた魔力は三十九個だったと言うけれど。
根拠のない自信かもしれない。
それを妄信というのかもしれない。
それでも。
私は――姫草 遥は西宮 悠河が生きていると、信じて疑わない。
だってたぶん、悠河と私はこの世界で会っているもの――
「ハルカ!」
いつのまにか部屋に入ってきていた特徴的な水色の髪の子、ユーノの声で私の意識は引き戻される。
最近、時間があれば悠河との妄想をしているような気がする。
でも、空想のなかだけでも悠河といれるのなら、今はそれでいいかも。
思考をきりかえて、ユーノを見る。
「な、なにかしら」
「大丈夫ですか? ぼーっとしていたようですけど……最近徹夜も増えているみたいですし、一度休むことを勧めますよ」
「大丈夫よ、これくらい」
ユーノには悪いけど、早く出て行って欲しい。
この前の異変といい、魔族がなんらかの動きを見せていることは明らかだ。
勇者として在籍している私には、魔王討伐が命じられており、あまり時間がない。
いずれ討伐に駆り出される身である私には、一刻も早く悠河につながる手がかりが必要なのだ。
「それより、なんの用? 見ての通り、取り込んでるんだけど」
「わかってます。その取り込み中に伝えるのはさらに心苦しいのですが……ヴァージ王国から招集の命が出されました。『今すぐ来い』とのことです」
内心舌打ちする。
おそらく、今回の招集は魔王討伐に踏み切ったためだろう。
魔法士の卵がこぞって集まるここほど、魔法に関する資料が豊富なところはない。
王国の禁書庫などを漁ればなにかわかるかもしれないが、あの国王のことだから、自由にはさせてくれないはずである。
せめて、もう少しだけ猶予があれば目をつけていた資料を読みきれたのに……。
「最悪のタイミングね」
「もうすぐ終わりそうって言ってましたもんね」
「ええ……はぁ。また真田 正宗と顔を合わせないといけないと思うと、気落ちするわ」
「勇者たちのなかで最優って聞きますけど……そうなんですか?」
「ええ、いつもいい顔してるけど、性根は私たちのなかで一番腐ってると思うわ。そのくせ私によく絡んでくるし……それが悠河だったら大歓迎なのに……」
もし悠河だったなら、私は幸せでどうにかなっていた自信がある。
ユーノは、大変ですねと相槌を打ち、同情的な笑みを浮かべた。
「その、クソ野郎さんは今はどこにいるんですか? 優秀な人たちはみんなここに編入したって言ってましたけど、見た覚えがないんですよね」
「あぁ……隣の国のダンジョンで修行でもしてるんじゃないかしら。聖剣持ちだし」
この世界ではいちおう、聖剣持ちが勇者、その他が勇者の仲間、一行などと定義されている。形式的なものだけど。
「ヴァージ王国の隣っていうと……帝国ですね」
「ええ」
「大丈夫なんですか? 王国と帝国って仲悪かったはずじゃ」
「今は一大事だから、なりふり構ってられないんでしょ。あと、あわよくば勇者筆頭を取り込もうって魂胆もあるでしょうけど。国賓級の待遇だって聞いたわ」
丁重な扱いにつけあがって、増長してなければいいんだけど。
「ややこしいですね」
「ややこしいわね」
話もひと段落したので、再び資料を漁り始める。
まだ、出発まで多少の時間はあるはずなので、それまでに少しでも消化してやろう。
視線を切ったため、出て行くかと思われたユーノだが、そうはならなかった。
「私は……ハルカがそこまで執着する人物のことが気になります」
ユーノに視線を向けると、彼女の顔に影が差していた。というか、私のことを心配している様子だった。
悠河には劣るが、ユーノは大切な友人だ。まだ幼いけれども、人に気遣いができる心が綺麗な女の子。
その子に、なにも知らせずに心配ばかりさせているのも心苦しい。
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