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第46話:新たな武具
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「すみませーん」
荷物が多いのも持ち運ぶのがめんどうなので、素材を預けるためにも俺は鍛冶屋に来ていた。
もちろん、服は予備のものを着ている。
「あいよ……なんだ、てめえか。無理ですって詫び入れにきたのか?」
相変わらずプライドの高い鍛冶屋である。
「違いますよ。……ほらこれ」
もはやパンパンになったカバンの中身をテーブルにぶちまける。
すると、みるみるうちに大男の表情が驚きに染まった。
「まさか本気でやりやがるとはな……ってこれ鉱竜の素材ッ!? 何者だてめえら?」
「たまたま鉱竜が死んでたんですよ。ラッキーでした」
「……ふぅん。まぁ、これだけあれば十分だ。二日。二日で仕上げてやる」
彼は俺の言い訳に眉をひそめたものの触れることはなく、そう言い放った。
その姿は、熟達した鍛冶屋そのものだった。
「ありがとうございます!」
俺は、この人を初めてかっこいいと思った。
「……ルドールだ」
「ん?」
「俺の名はルドールだ」
「……シアンです。ルドールさんの造る武具、期待してますよ」
ルドールは照れ臭そうに頭を掻いたあと、俺から目を離し、窯に向き合った。
邪魔するのも悪いので、俺は黙って店を出た。
☆☆☆☆☆
二日後、ルドールの指定した日付になったため、俺とサニャクルシアは再び鍛冶屋へと訪れた。
今日は、魔王城へと出発する日でもあるため、あの三人も一緒だが。
「おぉ、来たか。ほら見てみろ」
どうやらルドールも完成品を早くお披露目したくて興奮しているようで、表情からは読み取れないものの声が弾んでいる。
「はーい」
案内されるままについていくと、窯の前でそれはいきなり目に飛び込んできた。
「うわぁ……」
「す、すごいね……」
不意に感嘆の声が溢れた。見た目は子供サイズの普通な防具だけに、大人三人組はぽかんとしているが、魔法に理解が深い俺やサニャクルシアは、そのすごさがわかる。
「ほぅ、やっぱりわかるか。……今回、まだガキのてめえらは、やたらに体全身を覆っても動きづれえと思って、胸のプレートと額当てを作らさせてもらった」
どこか誇らしげに指差すは一見、ただの鉄にしか見えない防具。だがやはり、単純な防御力もさることながら、それは魔力の伝達補助、増強の効果が強力なことで、魔法士の力を十二分に発揮させてくれる代物である。
「これは……お世辞じゃなく、素晴らしいですよ」
「当たり前だ。……次はこの剣とレイピアだが、剣はてめえ、レイピアは嬢ちゃん用につくった。気づいていると思うが、鉱牛および鉱竜にくっついた鉱石はやつらの能力で変質し、より魔力との融和性が高くなる。その材料もたっぷりあったんで、その二本にはさっきの防具よりも鉱石がふんだんに使ってある。防具は衝撃吸収や強度を求められるからな。武器の方はより魔力を柔軟に通せるはずだ」
そう言って渡された剣は、薄っすらと剣の奥側が見えそうなくらいに透き通った刀身をしていた。
軽く魔力を通してみると、薄赤色に変化したが、壊れてしまうような不安は感じない。
思っていた以上の代物に、年甲斐もなく興奮して感嘆の声が止まらない。
「すっごいなあ……」
剣、防具ともに手に取ってみると、子供の筋力でも差し支えなく使えるくらいの軽さだ。
「お眼鏡にかなったようでなによりだ。ほら」
飛んできた丸太を、氷魔法を使うイメージで魔力を流し込んだ剣で切ると、一切の抵抗なく断ち切れた。
地に落ちた丸太の断面は、かちこちに凍っている。
「……あんまし剣は使えねえみたいだな」
「うるさいわ!」
要練習らしい。
「氷魔法なんて使うのね」
「珍しい魔法だなー」
水魔法を応用したりだとか、いろいろ方法はあるはずなんだがな。
「まあ、君たちの用事も済んだことだし、行くわよ」
「まじで行くのか……」
こいつらの薄情さにだいぶ引いた。
☆☆☆☆☆
ヴァージ王国。そこは人間領東に位置する、遥たち勇者を召喚した国である。
その王城の一部屋、大きな『コ』の字のテーブルと、上座に一つ、その城の最上級の地位を持つ者が座るであろう玉座がそびえる一室で、会議が行われていた。
「魔族領に関してですが、魔王軍に対抗する勢力が台頭したと、マジク魔法国に在籍する勇者から報告がございました」
「……ふむ」
玉座に座るは、老熟しながらも目には野心を宿した老人。テーブルを囲うのは、それに付き従う家臣。
「魔族領にいる者からの報告ですと、おそらく反乱軍が劣るかと……」
「勇者たちは?」
「一部を除いて、戦争は少し早いかと」
「少し、か」
「しかし、この戦いの勝ちがどちらに転ぼうとも、敵となる者の戦力は消耗を免れませんぞ! 多少未熟でも勇者の力は強大です……ここはご英断を」
国王とひとりの家臣の応答に、別の家臣が声を上げた。
「むぅ……だが、今の勇者の忠誠心は低いじゃろう? そのなかで戦地に赴かせれば、統制も取れず、無為に殺されてしまうのがオチじゃと思うのじゃが」
国王はまだ未熟な勇者を送り出すのに渋い顔をする。
一方、発言した家臣は押し切る自信があるようで、余裕のある表情だ。
「彼女を使いましょう」
その言葉に家臣だけでなく、国王の目も見開かれる。
「たしかに、それなら……」
「彼女がいれば、彼――マサムネ・サナダも乗り気になるでしょう。そしてその他のメンバーもマサムネがいれば心に余裕を持つことができるでしょう」
「……うむ。マサムネはあやつに執心しているようだしな。あやつを使えば、勇者筆頭とも名高いマサムネの手綱を握れるじゃろう」
国王が忠臣たちの顔を見ていくが、誰もが国王の決断が正義だと信じて疑っていない。
国王はそれを確認すると、ゆっくりと口を開いた。
「――ハルカ・ヒメクサを呼び戻せッ!」
荷物が多いのも持ち運ぶのがめんどうなので、素材を預けるためにも俺は鍛冶屋に来ていた。
もちろん、服は予備のものを着ている。
「あいよ……なんだ、てめえか。無理ですって詫び入れにきたのか?」
相変わらずプライドの高い鍛冶屋である。
「違いますよ。……ほらこれ」
もはやパンパンになったカバンの中身をテーブルにぶちまける。
すると、みるみるうちに大男の表情が驚きに染まった。
「まさか本気でやりやがるとはな……ってこれ鉱竜の素材ッ!? 何者だてめえら?」
「たまたま鉱竜が死んでたんですよ。ラッキーでした」
「……ふぅん。まぁ、これだけあれば十分だ。二日。二日で仕上げてやる」
彼は俺の言い訳に眉をひそめたものの触れることはなく、そう言い放った。
その姿は、熟達した鍛冶屋そのものだった。
「ありがとうございます!」
俺は、この人を初めてかっこいいと思った。
「……ルドールだ」
「ん?」
「俺の名はルドールだ」
「……シアンです。ルドールさんの造る武具、期待してますよ」
ルドールは照れ臭そうに頭を掻いたあと、俺から目を離し、窯に向き合った。
邪魔するのも悪いので、俺は黙って店を出た。
☆☆☆☆☆
二日後、ルドールの指定した日付になったため、俺とサニャクルシアは再び鍛冶屋へと訪れた。
今日は、魔王城へと出発する日でもあるため、あの三人も一緒だが。
「おぉ、来たか。ほら見てみろ」
どうやらルドールも完成品を早くお披露目したくて興奮しているようで、表情からは読み取れないものの声が弾んでいる。
「はーい」
案内されるままについていくと、窯の前でそれはいきなり目に飛び込んできた。
「うわぁ……」
「す、すごいね……」
不意に感嘆の声が溢れた。見た目は子供サイズの普通な防具だけに、大人三人組はぽかんとしているが、魔法に理解が深い俺やサニャクルシアは、そのすごさがわかる。
「ほぅ、やっぱりわかるか。……今回、まだガキのてめえらは、やたらに体全身を覆っても動きづれえと思って、胸のプレートと額当てを作らさせてもらった」
どこか誇らしげに指差すは一見、ただの鉄にしか見えない防具。だがやはり、単純な防御力もさることながら、それは魔力の伝達補助、増強の効果が強力なことで、魔法士の力を十二分に発揮させてくれる代物である。
「これは……お世辞じゃなく、素晴らしいですよ」
「当たり前だ。……次はこの剣とレイピアだが、剣はてめえ、レイピアは嬢ちゃん用につくった。気づいていると思うが、鉱牛および鉱竜にくっついた鉱石はやつらの能力で変質し、より魔力との融和性が高くなる。その材料もたっぷりあったんで、その二本にはさっきの防具よりも鉱石がふんだんに使ってある。防具は衝撃吸収や強度を求められるからな。武器の方はより魔力を柔軟に通せるはずだ」
そう言って渡された剣は、薄っすらと剣の奥側が見えそうなくらいに透き通った刀身をしていた。
軽く魔力を通してみると、薄赤色に変化したが、壊れてしまうような不安は感じない。
思っていた以上の代物に、年甲斐もなく興奮して感嘆の声が止まらない。
「すっごいなあ……」
剣、防具ともに手に取ってみると、子供の筋力でも差し支えなく使えるくらいの軽さだ。
「お眼鏡にかなったようでなによりだ。ほら」
飛んできた丸太を、氷魔法を使うイメージで魔力を流し込んだ剣で切ると、一切の抵抗なく断ち切れた。
地に落ちた丸太の断面は、かちこちに凍っている。
「……あんまし剣は使えねえみたいだな」
「うるさいわ!」
要練習らしい。
「氷魔法なんて使うのね」
「珍しい魔法だなー」
水魔法を応用したりだとか、いろいろ方法はあるはずなんだがな。
「まあ、君たちの用事も済んだことだし、行くわよ」
「まじで行くのか……」
こいつらの薄情さにだいぶ引いた。
☆☆☆☆☆
ヴァージ王国。そこは人間領東に位置する、遥たち勇者を召喚した国である。
その王城の一部屋、大きな『コ』の字のテーブルと、上座に一つ、その城の最上級の地位を持つ者が座るであろう玉座がそびえる一室で、会議が行われていた。
「魔族領に関してですが、魔王軍に対抗する勢力が台頭したと、マジク魔法国に在籍する勇者から報告がございました」
「……ふむ」
玉座に座るは、老熟しながらも目には野心を宿した老人。テーブルを囲うのは、それに付き従う家臣。
「魔族領にいる者からの報告ですと、おそらく反乱軍が劣るかと……」
「勇者たちは?」
「一部を除いて、戦争は少し早いかと」
「少し、か」
「しかし、この戦いの勝ちがどちらに転ぼうとも、敵となる者の戦力は消耗を免れませんぞ! 多少未熟でも勇者の力は強大です……ここはご英断を」
国王とひとりの家臣の応答に、別の家臣が声を上げた。
「むぅ……だが、今の勇者の忠誠心は低いじゃろう? そのなかで戦地に赴かせれば、統制も取れず、無為に殺されてしまうのがオチじゃと思うのじゃが」
国王はまだ未熟な勇者を送り出すのに渋い顔をする。
一方、発言した家臣は押し切る自信があるようで、余裕のある表情だ。
「彼女を使いましょう」
その言葉に家臣だけでなく、国王の目も見開かれる。
「たしかに、それなら……」
「彼女がいれば、彼――マサムネ・サナダも乗り気になるでしょう。そしてその他のメンバーもマサムネがいれば心に余裕を持つことができるでしょう」
「……うむ。マサムネはあやつに執心しているようだしな。あやつを使えば、勇者筆頭とも名高いマサムネの手綱を握れるじゃろう」
国王が忠臣たちの顔を見ていくが、誰もが国王の決断が正義だと信じて疑っていない。
国王はそれを確認すると、ゆっくりと口を開いた。
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