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第3章 恐ろしき陰謀渦巻く宮廷にご用心
5 あたしを助けてくれる唯一の人
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「おい、大丈夫か?」
牢の前に立ったのは一颯であった。蓮花はちっと舌打ちをする。
「おい、今舌打ちをしたな?」
「何が大丈夫かって? あたしのこの姿を見て大丈夫そうに見える?」
一颯はあごに手をあてうむと唸る。
「ひどい有様だ」
ちょっと、あんたの言い方のほうがひどくないか。
「あいかわらず独り言を言っていたな。離れた所まで聞こえていたぞ」
「関係ないでしょ」
蓮花は不機嫌に答える。
「今じゃ宮廷中の者がおまえのことを頭のおかしい娘だと噂しているからな」
「そんなことを言いにわざわざここに来たの?」
だったら帰れ、と蓮花は食ってかかろうとするが、相手は牢の格子の向こうだ。
「どうやら、景貴妃に嵌められたな。ああ、そうだ」
一颯は、何か思い出したように懐から小瓶を取り出すと、それを蓮花の元に投げ込んだ。蓮花は目をつり上げ、小瓶を拾って一颯の顔面めがけて投げ返す。
「何これ、毒薬? 自害しろって?」
「アホか。キズに効く薬だ。打たれたところにすり込んでおけ」
「薬?」
「たまたま持っていただけだ」
一颯は再び小瓶を蓮花に投げ返す。受け取った蓮花はさっそく小瓶の中の薬を傷口にすり込んだ。
「嵌められたって分かってんなら、何とかしてよ」
「そうしたいのはやまやまだが、なかなか難しい。おまえを助けるよう陛下にお願いしても、陛下は簡単には首を縦には振らない。
いや、振れないんだ。
なぜなら、おまえを牢から出せば、景貴妃と景貴妃の実家を侮ることになる」
なるほど。あちらをたてればこちらがたたぬってやつだ。
つまり、自分でなんとかしろってこと? そりゃないでしょ。
「はあ? このままじゃ、冗談じゃなく殺されるわ。っていうか、どうしてあたしが景貴妃に睨まれるのか分からないんだけど。あたしが景貴妃の未来を霊視できないって言ったから、それで恨まれてるの?」
「いや、霊能者であるおまえが皇后の側についているのが気に入らないのだろう」
「それだけの理由?」
「それと、皇后に子が授かると予言したのだろう?」
「それは普通に、ちゃんと食べて元気を取り戻さないと子どもも授からないわよって言っただけ。予言でもなんでもない」
「なんにせよ、おまえの力は後宮の者たちにとって、脅威なんだ」
「それを分かっていてあたしをここに連れてきたわけ? あんた鬼?」
「すまない」
ぽつりと、一颯は謝罪の言葉を口にする。
「僕もこうなるとは想像がつかなかった。ただ、姉……いや皇后のためにと思っただけで」
蓮花は声をひそめた。
「ところで、自分が持ってきた羹を口にして。景貴妃はなんともなかったの? ピンピンしてる?」
「ああ、なんともないようだ」
「あの時、景貴妃が持ってきた羹をちゃんと調べることはできないの? 食べ残しはとっておいてない? 絶対、あの中にヤバいものが入っていたのよ。間違いない」
こんなことなら、自分で毒味するべきだった。そうすれば、中身が分かったのに。今となっては心底悔やまれる。
「何故そう言い切れる?」
「知らない女の人があたしに言ったの。それを飲んではだめだって」
「女? 誰だ?」
「だから、知らない女だってば」
一颯は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。
「羹はすでに処分された」
やはり、そうだったのか。まあ、そりゃあそうだろう。
「だが、その羹を作った者に、材料は何を入れたのか聞き出しているところだ」
なんだ、ちゃんと調べてくれていたんだ。だが、詳しい者でなければ見逃してしまう可能性がある。
「辛いだろうがもうしばらく待っていてくれ。必ず証拠を見つけ、ここから出してやる。それに、陛下もおまえを殺すつもりはない
「殺すつもりはなくても、拷問は仕方がないって?」
「安心しろ。これ以上の拷問は必要ないと陛下は命じている」
「ついでに、まともな食事も出せって伝えて」
一拍置いてから、一颯は分かった、と答える。
「景貴妃は皇后の子を殺すつもりよ。絶対によくないことを企んでいる」
一颯は神妙な顔で頷く。
「分かっている。もう二度と同じ過ちは繰り返さない」
「もう二度とか……ねえ聞いてもいい? 皇后さまって、以前にも子を身ごもったの? 何度か皇后さまが口にしていた言葉が気になって。今度こそ産んでみせるって」
「ああ、三年前のことだ。安定期に入る前に流れてしまった」
一颯が言うに、流れた原因は結局分からずじまいだったということだ。
なるほど、と蓮花は納得する。
皇后に子が産まれれば、それも皇子なら皇后の地位も揺るがないものとなる。
阻止しようと企む者もいるだろう。
それは誰か。皇后の次の地位にいる景貴妃が一番怪しいのではないか。
「とにかく早くここから出して」
一颯は頷いた。
ふと、蓮花が手に簪を握りしめていることに気づく。
「それは……陛下が凜妃に贈った簪ではないか! なぜおまえが持っている!」
「なんで驚くのよ。凜妃さまからいただいたの知ってるでしょう」
「おまえが持つものではない!」
何故か一颯は怖い形相で怒鳴りつけてくる。
「あたしには似合わないって言いたいんでしょ。まったくどいつもこいつも失礼ね」
「そういう意味では」
蓮花ははっとなる。
そうだった! すっかり忘れていた。
他人に頼って、ここから出してもらえるのを待つばかりでは、それこそ、いつになるか分かったもんじゃない。
ここは後宮、自力でなんとかするのだ。
「恵医師を呼んで来て」
「恵医師をか?」
「そうよ、あたしを窮地から救ってくれるかもしれない、ただ一人の人だから!」
牢の前に立ったのは一颯であった。蓮花はちっと舌打ちをする。
「おい、今舌打ちをしたな?」
「何が大丈夫かって? あたしのこの姿を見て大丈夫そうに見える?」
一颯はあごに手をあてうむと唸る。
「ひどい有様だ」
ちょっと、あんたの言い方のほうがひどくないか。
「あいかわらず独り言を言っていたな。離れた所まで聞こえていたぞ」
「関係ないでしょ」
蓮花は不機嫌に答える。
「今じゃ宮廷中の者がおまえのことを頭のおかしい娘だと噂しているからな」
「そんなことを言いにわざわざここに来たの?」
だったら帰れ、と蓮花は食ってかかろうとするが、相手は牢の格子の向こうだ。
「どうやら、景貴妃に嵌められたな。ああ、そうだ」
一颯は、何か思い出したように懐から小瓶を取り出すと、それを蓮花の元に投げ込んだ。蓮花は目をつり上げ、小瓶を拾って一颯の顔面めがけて投げ返す。
「何これ、毒薬? 自害しろって?」
「アホか。キズに効く薬だ。打たれたところにすり込んでおけ」
「薬?」
「たまたま持っていただけだ」
一颯は再び小瓶を蓮花に投げ返す。受け取った蓮花はさっそく小瓶の中の薬を傷口にすり込んだ。
「嵌められたって分かってんなら、何とかしてよ」
「そうしたいのはやまやまだが、なかなか難しい。おまえを助けるよう陛下にお願いしても、陛下は簡単には首を縦には振らない。
いや、振れないんだ。
なぜなら、おまえを牢から出せば、景貴妃と景貴妃の実家を侮ることになる」
なるほど。あちらをたてればこちらがたたぬってやつだ。
つまり、自分でなんとかしろってこと? そりゃないでしょ。
「はあ? このままじゃ、冗談じゃなく殺されるわ。っていうか、どうしてあたしが景貴妃に睨まれるのか分からないんだけど。あたしが景貴妃の未来を霊視できないって言ったから、それで恨まれてるの?」
「いや、霊能者であるおまえが皇后の側についているのが気に入らないのだろう」
「それだけの理由?」
「それと、皇后に子が授かると予言したのだろう?」
「それは普通に、ちゃんと食べて元気を取り戻さないと子どもも授からないわよって言っただけ。予言でもなんでもない」
「なんにせよ、おまえの力は後宮の者たちにとって、脅威なんだ」
「それを分かっていてあたしをここに連れてきたわけ? あんた鬼?」
「すまない」
ぽつりと、一颯は謝罪の言葉を口にする。
「僕もこうなるとは想像がつかなかった。ただ、姉……いや皇后のためにと思っただけで」
蓮花は声をひそめた。
「ところで、自分が持ってきた羹を口にして。景貴妃はなんともなかったの? ピンピンしてる?」
「ああ、なんともないようだ」
「あの時、景貴妃が持ってきた羹をちゃんと調べることはできないの? 食べ残しはとっておいてない? 絶対、あの中にヤバいものが入っていたのよ。間違いない」
こんなことなら、自分で毒味するべきだった。そうすれば、中身が分かったのに。今となっては心底悔やまれる。
「何故そう言い切れる?」
「知らない女の人があたしに言ったの。それを飲んではだめだって」
「女? 誰だ?」
「だから、知らない女だってば」
一颯は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。
「羹はすでに処分された」
やはり、そうだったのか。まあ、そりゃあそうだろう。
「だが、その羹を作った者に、材料は何を入れたのか聞き出しているところだ」
なんだ、ちゃんと調べてくれていたんだ。だが、詳しい者でなければ見逃してしまう可能性がある。
「辛いだろうがもうしばらく待っていてくれ。必ず証拠を見つけ、ここから出してやる。それに、陛下もおまえを殺すつもりはない
「殺すつもりはなくても、拷問は仕方がないって?」
「安心しろ。これ以上の拷問は必要ないと陛下は命じている」
「ついでに、まともな食事も出せって伝えて」
一拍置いてから、一颯は分かった、と答える。
「景貴妃は皇后の子を殺すつもりよ。絶対によくないことを企んでいる」
一颯は神妙な顔で頷く。
「分かっている。もう二度と同じ過ちは繰り返さない」
「もう二度とか……ねえ聞いてもいい? 皇后さまって、以前にも子を身ごもったの? 何度か皇后さまが口にしていた言葉が気になって。今度こそ産んでみせるって」
「ああ、三年前のことだ。安定期に入る前に流れてしまった」
一颯が言うに、流れた原因は結局分からずじまいだったということだ。
なるほど、と蓮花は納得する。
皇后に子が産まれれば、それも皇子なら皇后の地位も揺るがないものとなる。
阻止しようと企む者もいるだろう。
それは誰か。皇后の次の地位にいる景貴妃が一番怪しいのではないか。
「とにかく早くここから出して」
一颯は頷いた。
ふと、蓮花が手に簪を握りしめていることに気づく。
「それは……陛下が凜妃に贈った簪ではないか! なぜおまえが持っている!」
「なんで驚くのよ。凜妃さまからいただいたの知ってるでしょう」
「おまえが持つものではない!」
何故か一颯は怖い形相で怒鳴りつけてくる。
「あたしには似合わないって言いたいんでしょ。まったくどいつもこいつも失礼ね」
「そういう意味では」
蓮花ははっとなる。
そうだった! すっかり忘れていた。
他人に頼って、ここから出してもらえるのを待つばかりでは、それこそ、いつになるか分かったもんじゃない。
ここは後宮、自力でなんとかするのだ。
「恵医師を呼んで来て」
「恵医師をか?」
「そうよ、あたしを窮地から救ってくれるかもしれない、ただ一人の人だから!」
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