103 / 196
魔王プリシラ1
しおりを挟む
魔王を名乗った10代の半ばに見える少女は玉座の上からゼロを見据えた。
「この城に何用だ?」
見た目相応の可愛らしい声の他愛ない問いかけ、そのたった一言に竜の咆哮のような圧力が込められている。
うら若き少女の姿の魔王、しかしその相反する矛盾を否定することはできない。
ゼロ達の目の前に座する彼女は紛うことなき魔王の風格を身に纏っている。
現にゼロ以外の者は魔王の気に本能的な恐怖に支配されて身動きも言葉を発することもできないでいる。
「この城に調査に向かった複数の冒険者等が行方不明になり、私達は彼等の捜索と救出のために来ました。心当たりはありませんか?」
臆することなく答えるゼロの問いにプリシラは口を開いた。
「あるぞ。最初にこの城に近づいた人間共は野良の魔物に襲われて食われおった。その後に来た輩はこの城までたどり着く前に我が下僕に捕らえられた。最後にこの城に来た2人は不敬にも妾に刃を向けおったな」
些細なことのように答える。
「無事なのですか?」
「無事もなにも今は小間使いとして使っておるよ」
「イザベラさん達程の手練れがですか?」
「手練れ?・・おお、そうか。あの程度でも人にしてみれば手練れと言われるのか。妾がひと睨みしたら動けなくなったがの」
プリシラの言うことが嘘でないならばイザベラとアランですらまるで勝負にならない相手だ。
彼女が魔王であることは最早疑いようはない。
「イザベラさん達を解放していただけますか?」
ゼロは表情を変えることなく要求する。
「ほう?妾に臆することなく要求までするとは興味深いな。普通の人間は妾の視線を受けたら本能的な死の恐怖に抗えないものだが。おお、そうだ其方は死霊術師であったか。それもなかなか高位の術師だな。生と死を究めし者か、ならば死の恐怖に囚われることはないか」
プリシラはほんの少しだけ身を乗り出してゼロを見据える。
「で、イザベラさん達を解放していただけますか?」
ゼロは今一度要求する。
プリシラは更なる笑みを浮かべた。
「本当に面白いやつじゃ。別に構わんよ。小間使いとしても大した役に立たないからの。ただ、1つ条件じゃ。妾の戯れにちとばかし付き合ってもらおうかの?」
プリシラが玉座から立ち上がり、ゆっくりと階段を下りてくる。
その手には死神が持つような大きな鎌が現れ、担ぎ上げる。
「妾と手合わせ願おう。なに、妾に勝てなどとは言わんよ。ちとばかし楽しませてもらえればよい」
プリシラが大鎌をゼロに向けたその時
「止めなさいゼロ!勝ち負け以前の問題よ!」
恐怖を振りほどいたレナが駆け寄りゼロの前に立つ。
「流石にどうにかなる相手ではないわ。戦ってはだめよ!」
ゼロを引き戻そうとするレナだが、その身体は小刻みに震えている。
「ほう、大したものだ。恐怖に打ち勝つ程の想いに駆られたか。だがの・・・」
プリシラの表情から笑顔が消えた。
「妾の邪魔立てをするな小娘が!」
プリシラが一喝するとレナの身体が宙に浮き、魔力によって拘束された。
レナは必死で抵抗しようとするも完全に拘束されて身動きできない。
その様子を見たゼロは表情を変えないままも腰の剣に手をかけ、親指を鍔にかけて鯉口を切った。
「心配するな。傷1つ付けてはおらんよ。これしきのことでいちいち殺していてはキリがない。ただ、戯れの邪魔をされては興ざめだ。小娘はそこで大人しく見ておれ」
プリシラはつまらなそうに話す。
ゼロは静かに剣を抜いた。
「お相手しましょう」
「そうでなくては面白くない。なに、安心せい。妾は魔力は一切使わぬ。この鎌による攻撃だけじゃ。しっかりと手加減もしてやろう。ただ、お主等人間は脆弱だ、手加減をしていても妾の一撃を受けたら消し飛ぶかもしれんがな」
プリシラはゆっくりとゼロに近付いてくる。
ゼロは剣をプリシラに向けた。
「その前に1つお伺いします」
「なんじゃ?」
「私の剣はただの剣に過ぎません。この剣が貴女に通用するのですか?通用しないのならば戦うだけ無駄ですが?」
ゼロの質問にプリシラが面食らったような表情を浮かべた。
そして声を上げて笑い始めた。
「ハハハハッ!此奴め、妾に勝つつもりか?面白い、益々気に入った。どれ、その剣を見せてみい」
プリシラに促されてゼロは剣を手渡した。
「ふむ、なかなかの業物だな。大丈夫じゃ、魔王とて肉体を持つものだ。妾も魔力を完全に抑えて戦うから、万が一この刃が妾に届けば妾を傷付けることもできる。あわよくば妾を倒すこともできるやもしれんぞ?」
悪戯っぽい笑みを見せながら剣を返してくる。
「妾に掠りでもすればだがの?あと、お主の死霊共も使っても構わぬよ。妾の城内に死霊を入れるのは虫が好かぬが仕方ない、今だけ許してやろう」
プリシラが指を鳴らすと城を覆っていた結界のような力が消え去った。
「さて、始めよう。約束通り妾はこの鎌だけ、手加減してやる。其方は剣でも魔法でも死霊でも何をしても構わんよ」
プリシラは大鎌を構えた。
ゼロはアンデッドを召喚した。
ゼロの背後にオメガ、バンシー、ジャック・オー・ランタンとスペクターが現れ、前面には3体のスケルトンロードが並ぶ。
「全力で行かせてもらいます。でないと一息で叩き潰されそうですから」
ゼロも剣を肩に担いで得意の斬撃の構えだ。
サーベルと槍を装備したスケルトンロード2体が左右に分かれ、大盾装備のスケルトンロードはゼロの正面を守る。
ジャック・オー・ランタンとスペクターは宙を舞って距離を取った。
「ドラゴンゾンビといい、魔王といい、そのような強敵に挑むとは!流石は私がお仕えするマスターです」
ゼロの隣でオメガがバスターソードを構えた。
「主様がどこに行かれようと私はどこまでもお供します。ただ主様、決して無理をなさらぬように願い申し上げます」
バンシーは魔力で作り上げた氷のローブを身に纏い、氷の杖を構えた。
「ほう、これほど上位の死霊を操るか。さて、始めるぞ」
プリシラは無邪気な笑みを浮かべた。
「この城に何用だ?」
見た目相応の可愛らしい声の他愛ない問いかけ、そのたった一言に竜の咆哮のような圧力が込められている。
うら若き少女の姿の魔王、しかしその相反する矛盾を否定することはできない。
ゼロ達の目の前に座する彼女は紛うことなき魔王の風格を身に纏っている。
現にゼロ以外の者は魔王の気に本能的な恐怖に支配されて身動きも言葉を発することもできないでいる。
「この城に調査に向かった複数の冒険者等が行方不明になり、私達は彼等の捜索と救出のために来ました。心当たりはありませんか?」
臆することなく答えるゼロの問いにプリシラは口を開いた。
「あるぞ。最初にこの城に近づいた人間共は野良の魔物に襲われて食われおった。その後に来た輩はこの城までたどり着く前に我が下僕に捕らえられた。最後にこの城に来た2人は不敬にも妾に刃を向けおったな」
些細なことのように答える。
「無事なのですか?」
「無事もなにも今は小間使いとして使っておるよ」
「イザベラさん達程の手練れがですか?」
「手練れ?・・おお、そうか。あの程度でも人にしてみれば手練れと言われるのか。妾がひと睨みしたら動けなくなったがの」
プリシラの言うことが嘘でないならばイザベラとアランですらまるで勝負にならない相手だ。
彼女が魔王であることは最早疑いようはない。
「イザベラさん達を解放していただけますか?」
ゼロは表情を変えることなく要求する。
「ほう?妾に臆することなく要求までするとは興味深いな。普通の人間は妾の視線を受けたら本能的な死の恐怖に抗えないものだが。おお、そうだ其方は死霊術師であったか。それもなかなか高位の術師だな。生と死を究めし者か、ならば死の恐怖に囚われることはないか」
プリシラはほんの少しだけ身を乗り出してゼロを見据える。
「で、イザベラさん達を解放していただけますか?」
ゼロは今一度要求する。
プリシラは更なる笑みを浮かべた。
「本当に面白いやつじゃ。別に構わんよ。小間使いとしても大した役に立たないからの。ただ、1つ条件じゃ。妾の戯れにちとばかし付き合ってもらおうかの?」
プリシラが玉座から立ち上がり、ゆっくりと階段を下りてくる。
その手には死神が持つような大きな鎌が現れ、担ぎ上げる。
「妾と手合わせ願おう。なに、妾に勝てなどとは言わんよ。ちとばかし楽しませてもらえればよい」
プリシラが大鎌をゼロに向けたその時
「止めなさいゼロ!勝ち負け以前の問題よ!」
恐怖を振りほどいたレナが駆け寄りゼロの前に立つ。
「流石にどうにかなる相手ではないわ。戦ってはだめよ!」
ゼロを引き戻そうとするレナだが、その身体は小刻みに震えている。
「ほう、大したものだ。恐怖に打ち勝つ程の想いに駆られたか。だがの・・・」
プリシラの表情から笑顔が消えた。
「妾の邪魔立てをするな小娘が!」
プリシラが一喝するとレナの身体が宙に浮き、魔力によって拘束された。
レナは必死で抵抗しようとするも完全に拘束されて身動きできない。
その様子を見たゼロは表情を変えないままも腰の剣に手をかけ、親指を鍔にかけて鯉口を切った。
「心配するな。傷1つ付けてはおらんよ。これしきのことでいちいち殺していてはキリがない。ただ、戯れの邪魔をされては興ざめだ。小娘はそこで大人しく見ておれ」
プリシラはつまらなそうに話す。
ゼロは静かに剣を抜いた。
「お相手しましょう」
「そうでなくては面白くない。なに、安心せい。妾は魔力は一切使わぬ。この鎌による攻撃だけじゃ。しっかりと手加減もしてやろう。ただ、お主等人間は脆弱だ、手加減をしていても妾の一撃を受けたら消し飛ぶかもしれんがな」
プリシラはゆっくりとゼロに近付いてくる。
ゼロは剣をプリシラに向けた。
「その前に1つお伺いします」
「なんじゃ?」
「私の剣はただの剣に過ぎません。この剣が貴女に通用するのですか?通用しないのならば戦うだけ無駄ですが?」
ゼロの質問にプリシラが面食らったような表情を浮かべた。
そして声を上げて笑い始めた。
「ハハハハッ!此奴め、妾に勝つつもりか?面白い、益々気に入った。どれ、その剣を見せてみい」
プリシラに促されてゼロは剣を手渡した。
「ふむ、なかなかの業物だな。大丈夫じゃ、魔王とて肉体を持つものだ。妾も魔力を完全に抑えて戦うから、万が一この刃が妾に届けば妾を傷付けることもできる。あわよくば妾を倒すこともできるやもしれんぞ?」
悪戯っぽい笑みを見せながら剣を返してくる。
「妾に掠りでもすればだがの?あと、お主の死霊共も使っても構わぬよ。妾の城内に死霊を入れるのは虫が好かぬが仕方ない、今だけ許してやろう」
プリシラが指を鳴らすと城を覆っていた結界のような力が消え去った。
「さて、始めよう。約束通り妾はこの鎌だけ、手加減してやる。其方は剣でも魔法でも死霊でも何をしても構わんよ」
プリシラは大鎌を構えた。
ゼロはアンデッドを召喚した。
ゼロの背後にオメガ、バンシー、ジャック・オー・ランタンとスペクターが現れ、前面には3体のスケルトンロードが並ぶ。
「全力で行かせてもらいます。でないと一息で叩き潰されそうですから」
ゼロも剣を肩に担いで得意の斬撃の構えだ。
サーベルと槍を装備したスケルトンロード2体が左右に分かれ、大盾装備のスケルトンロードはゼロの正面を守る。
ジャック・オー・ランタンとスペクターは宙を舞って距離を取った。
「ドラゴンゾンビといい、魔王といい、そのような強敵に挑むとは!流石は私がお仕えするマスターです」
ゼロの隣でオメガがバスターソードを構えた。
「主様がどこに行かれようと私はどこまでもお供します。ただ主様、決して無理をなさらぬように願い申し上げます」
バンシーは魔力で作り上げた氷のローブを身に纏い、氷の杖を構えた。
「ほう、これほど上位の死霊を操るか。さて、始めるぞ」
プリシラは無邪気な笑みを浮かべた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
284
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる