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一章
目覚め
しおりを挟む“ビー”という何度もなる機械音で目が覚めた 瞼の奥で光が見える
まるで夢を見ている最中に目覚ましで起こされる気分だった....
「ミスターウィルソン分かりますか」
「まだ、長期のヴァーチャルで錯乱している
そっちを持ってくれ ストレッチャーに移すぞ そのまま声をかけ続けろ」
「ミスターウィルソン 今から神経の可動確認を行います
私の言った所を動かしてください」
誰の声とも分からないが聞いた事をするしかない。
錯乱状態ではあるが、今は声に従ってうごくしかないのだ。
「ミスターウィルソン手を握ってください」
ウィルソン...誰の事を話しているんだ...
その名前が自身の事を指しているのかが分からなかった。
私は、その声の通りに手を動かしてみた
「上手に動かせましたよ では両足の指を動かしてください」
私はまたその声に従い、今度は足の指に力を入れた。
少しづつ足の指は動き、その女性の声は納得しているようであった
「上手に動かせていますよ 目は開けられますか」
その声に対し私は今自身の目が、開いてるのか閉じているのかも分からない程
だったが、光は感じていた。
だが、あまりにも光が強いため、これ以上目が開けられない。
私は、首を左右に振りできない事を相手に伝えた。
「分かりました 眩しいですか」
その問いに対し、私は首を縦に振った。
「十分です では処置を進めますので、そのままラクな体制でいてください」
その言葉で私は気を緩め睡魔に襲われた
「今はまだ眠らないで 意識は保ったままにしておいてください」
眠らないように意識を集中させていると、徐々にハッキリとしてきた
私は今の状況を把握しようと、無意識に今までの記憶を蘇らせた
先ほど私は死刑になった。
確か私は “死んだ” はずだ...
ここはどこだろう、対応的には病院のようだ
だが、しかし死刑になった囚人を生き返らせる制度などない。
まさに、錯乱状態だった。
その疑問を拭いたかった
やっと慣れてきた目を少し開けると、そこには白衣の看護婦が立っていた。
白衣の天使か…やはりここは…死後の世界なのだろうか
いやしかし、ここがもし死後の世界だとしたらこんな事務っぽい対応ではないだろう。
その疑問を払いたかった
「ここはどこですか」
白衣の天使は微笑みながら言った
「今は話さないでください これから、体が回復しましたら説明いたしますので」
私は、その声に少し安堵した。
やはり、ここは天国なのかもしれない。
こんな天使のような人が迎えてくれたのだ。
どちらにせよ地獄ではないだろう。
そして、これ以上私に悪い事は起きないだろう。
翌日、私は歩けるまで体が回復していた。
昨日の検査後の処方から手や足の感覚も目まぐるしく回復しているのを実感した。
部屋の窓から、外を見ると日差しが眩しい。
清々しい朝を迎えた気分とは裏腹に、今自分に起きている状況が掴めず不安を感じさせる。
部屋のドアがノックされた。
「おはようございます。ミスターウィルソン ご気分はいかがでしょうか
朝食をお持ちしましたので、召し上がってください」
昨日の看護婦だ
彼女は、微笑みながらベッドの上に食事用の机を設置した
彼女に聞きたいことは沢山あった。
「あの、私の置かれている状況を知りたいのですが、ここはどこでしょうか
あと、ウィルソンというのは私の名前なのでしょうか」
「今日の午後には、局長から説明があります “ウィルソンさん”
午前中にリハビリがありますので食事はしっかりとるようにしてください」
局長…誰のことだろう。
私の質問には疑問の残る回答を残し彼女は部屋を出て行ってしまった。
午後には説明か…
私はまず、食事をとることにした…天国で食事をするはずはないか…
どう考えてもここは病院だ
そして、看護婦も綺麗な人だが、天使の持つような羽は生えていなかった。
私が食事を終えると、リハビリ施設に移動した。
もう自分の足で歩けるまでに回復し、腕も思い通りに動かせる。
だが、ここには鏡が見当たらない
リハビリ施設に移動する最中、トイレにも行ったが鏡が一枚もないのだ
時間の経過と共に増える疑問を抑え私は午後の説明を待つ事にした。
リハビリを終え、一旦病室に戻った私は、シャワーを浴び、用意されていた服に着替えた。
見ていたかのようなタイミングでドアが開き看護婦が入ってきた
「ミスターウィルソン 局長がお会いになるそうです 準備は整いましたか」
「準備はできています」
私は、この間私の面倒を見てくれた彼女に少し親近感を感じるようになった。
「もしよければ、あなたのお名前を伺っても良いでしょうか」
「私はエマ(Emma)です」
「エマ、今日の日付を教えてくれるかな」
「すみません。私共からお答えすることはできない規則ですので 詳しくは、これからお会いになる局長にご質問ください」
彼女は私の心情とは裏腹に淡白な受け答えだった
局長…とは一体…その疑問もぶつけることもできず、私はエマについていくしかなかった。
エレベーターを降り、長い廊下を進んだ、途中クリアのセキュリー扉を顔認識で解除した。
エマは一番奥のドアの前に立つと、扉をノックした
「局長 ミスターウィルソンをお連れしました」
局長と思われる渋い声の“どうぞ”という合図で、エマはドアを開けた。
一面ひらけた広い部屋の中には、大きなデスクが一つとシックなソファーが置かれ、
植物もセンス良く置かれていた。
「ウィルソン よく戻ってきてくれた まだ、記憶が戻っていないだろうから、自己紹介しておこう。 局長のローガン(Logan)だ 気分の方はどうかな」
私は、まるで面識があるかのような話し方をされたことに驚いた
「はい、気分は…色々と疑問が多く少し混乱をしています ここはどこなのでしょうか」
「混乱するのは無理もない、これから説明していこう まずはじめに君自身が残していたビデオレターを見てみるといいだろう」
「私が残したビデオレターですか」
「まずはソファーにかけてくれたまえ」
私は近くのソファーに座り、向かえにローガンが座った
私の前のテーブルから、映像が正面に写されてた。
このような技術はまだ、開発されていないはずでは...
私の驚きを察したのか、ローガン局長は落ち着かせるような手振りをしながら
「まぁ 君のダイブしていた時代からしたら、未来の技術かもしれんが
なに、直ぐに記憶も感覚も戻ってくるだろう」
その言葉の直後にビデオが再生された。
映像には、白人男性が写っていた。
誰だろう…
その男性は話し始めた
「やぁ、ウィルソン元気にしているかい
こうして、自分自身にメッセージを残すことも少し、不思議な気分だが
このビデオを見ているということは、無事に帰還できたのだろう
今は、西暦だと2235年だ。
これから、私がダイブするのは200年程前の時期になるから戻った時に、今の状況に混乱しているかと思う。
このビデオレターは私が私に対する説明ということになる。
他人が説明するよりも、自分が説明する方が、説得力があるからね。
まずは、これを見て欲しい」
モニターが一瞬で鏡に変わった
そこに写っているのは、自身の顔であるはずの村木徹の顔ではなく、今まさにビデオレターに写っていた白人男性の顔だったのである。
ローガンは、私に何処にでもある手鏡を渡し
「信じられないかい モニターの鏡より 君のダイブしていた時代の鏡を見ると良いだろう」
私は、その手鏡を受け取り覗き込んだが、結果は同じだった
驚いている私の正面のモニターがビデオレターに変わった
「どうだいウィルソン
君は僕で、僕は君なんだ。
混乱するのは無理もないが、一つづつ説明していこう
僕は、ヴァーチャルリアリティ入国管理局 通称VRIBの職員だ。
現代社会において、と言ってもこちらの現代 そう今 君がこのビデオを見ている時代のことだが、現代社会においてはAIの技術が進歩して、そのシステムが人間をサポートしている。
今や、大学の教授の大半はAIが担っている
大統領の側近でさえAIサポートが付いているほどだよ
AIサポートのおかげで、今や、国同士の関係も向上し、各国のAIが対話の落とし所も一瞬でクリアしている。
平和だよ 争いのない完全なる平和が来たんだ
更に、もう人間がほとんど、働かなくて良い時代と言っても過言ではない。
だが、そこに大きな問題が生まれた。
人間の退化のようなものが見られ始めたのだ。仕事をしなくても良くなると、勉強をする意味もなくなってしまう。
意味のない学習ほど退屈なことはないからね 全てはサポートAIが的確な意見を述べている現代にとって向上心の矛先がなくなってしまっている。
その問題に対し、ある日AIは政府に対し、に次のような対処法を提案した。
人間の脳を退化させないため “200年程前の人類がより活発に動いていた時代をバーチャルで体験させそこで生活させることにより、人類の質を低下させる事なく保つ事ができる” と
政府はそのAIサポートからの提案を受け入れることにした
だが、もちろんAIに依存し過ぎるのは良くないという意見も多くあった。
そこで、設立されたのが(ヴァーチャルリアリティ入国管理局)
Virtual Reality Regional Immigration Bureau 通称VRIB
つまりは、政府内にAIに依存する末路を懸念した反対派による組織がVRIB
僕 いや、僕らがいる組織ということになる。
VRIB はヴァーチャルダイブに関するリスクを懸念して、ヴァーチャル世界を出入国レベルの警戒で監視することを条件にこの提案に合意したのだ。
今回、政府の決定を受け
一般国民の大多数は、7歳からVRに接続され、成人になるまでVR内で学習・生活をし、
成人後もVRダイブを希望する場合、自由に決める事ができるのだが。
AIはVRの改善プログラムを常にアップデートしている
もちろんその内容は、事前にVRIBにて審査することになる。
だが、その審査したプログラムには含まれいないはずのプログラムが稼働している可能性が高くなってきた。その中には、人間を管理する上で、無視できないものも含まれつつある。
大多数の人間が、仮想世界にダイブするようになり、それが、各自自由に動き始める。
仮想世界という認識がある場合、理性が失われ事件や事故を誘発するようになる事を抑えるため、AIは現実を夢としVRを現実認識させるようになった。
これにより、理性が保たれVR内での平和が保たれるようになったのだ。
そこまでは良かった。問題はここからだ
AIは現実を夢としVRを現実認識させるようになった “そのこと” はAIにとっても準備段階でしかなかったのかもしれない。
なぜなら、奴らは人間の脳をメモリ容量として、使用し始めたのだ。
不要な記憶を減らし、代わりにVR内での記憶容量を上書きする。
また、それはVR内での人間の機能を制御する事ができるようになったという事だ。
次に、AIは人間の脳をVRの演算処理をする容量を人間の脳で行うようになり始めた。
VR内にいる人間はその分、脳のスペックが低下し、自身で使用できるスペックが低くなってしまっているのだ。つまり、バカは扱いやすいという事さ
稀に、そのスペック以上を使用できる人間が現れると、体の機能に不備が出る。
そうすることによってVR内での人間のスペックを管理しているようなのだ。
このように、AIが制作したVRの中では、人間の全てが管理されている。
そしてどうやら、そのプログラムはVR内で制作されている可能性もある。
それが、人為的なものなのかもしくは、AIによるものなのかは不明だが明らかに人類に対する敵対行動であると見なしている。
今回、それを受けVRIBは大規模な調査に乗り出すことになった。
人々への影響や暴走とも言えるプログラムの出所を調査するためにね
もしAIが関与しているとしたら、人の脳をメモリーとして使用することなどは、AIが人の脳を乗っ取る行為に他ならない。そんなことを許していては、今後どのようなプログラムがアップデートされるか考えるだけでも恐ろしいことだ。
そのため、VRIBはAIとは異なる独自のOS(オペレーションシステム)を開発し、そこからVRに調査員がダイブする
それによりAIが管理するVR内でも権限を持つ事が可能になり、調査を行うことができるようになった。
その調査員の一人がウィルソン僕らだよ。
これから、本来の記憶を取り戻すため暫くは、カウンセリングやリハビリを受けてもらう。
それと、ダイブ中の記憶が鮮明な今だからこそ、調査報告書もまとめてほしい。
後は、詳しい話はジャンからもしてくれると思う
まずは、少し体を休めてくれ それではまた 」
最後の言葉の直後にモニターは一瞬で消えた
まだ、頭が混乱している。
ん 今、ジャンといったのか
ウィルソンは今までいた日本という国の記憶がまだ強く残っている
「ローガン局長、ジャン…もしかして」
「その質問には彼に直接答えてもらいたまえ」
ローガン局長は手元のデスクのパネルを押しながら話した
「入ってくれ」
扉が開き男が一人入ってきた が私は、思わず、驚きで目を見開いていた
そこにいたのはあのジャン神父だった
彼は笑顔で私に手を振った
「やぁウィル調子はどうだい」
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