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4 空っぽを信じる
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見つけた瞬間、胸が熱くなった。
気が付くと、向こうに走っていた。
息を切らして橋を渡る。
大丈夫、まだ、消えてない。
あの時の、熱がぶり返す。
やっと、近くに来れた。
激しい鼓動が揺らす視界は酷く不気味だ。
それでも、口を開く。
「ねぇ、世界の収…」
「あー、それは……もう二度と会えない気がしたから、ちょっとふざけただけだよ。そういう方が、心に残りやすいでしょ?でも、そんな話信じる人いるんだ。君、詐欺に引っかかりやすいタイプ?」
言い終わっていないのに遮られた。
しかも、なんと腹立たしい子供扱いなこと。
言い始めたのはそっちなのに。
これは俺のスイッチが入っちゃう。
めきめきと戦闘心が燃え上がる。
「あのなぁ、信じるわけないだろ。世界?って言ったっけか。元の世界ってなんだよ?ここの世界以外に、経験してるとでも言うのか。そりゃ、おもろい妄想ですなぁ」
煽りに乗ってしまった。
どうしても、こういった場面で冷静になれないのだ。
航海に出ては、後悔している、煽り乗りの舟人の公開処刑はこうかいww
舟に乗ってる頭の悪そうなやつが、航海に出て、後悔してる様子がすぐさま頭に思い浮かんだ。近い将来、それが俺にならないことを願いたい。
って、いや、ふざけんな。
早く、協力を求めるんだろ、俺!
「なーんて、えぇっと、」
言葉が思い当たらず、言い淀んだ。らしくない。
彼女も、その沈黙を振り切る気力がなかったのか、
「そ、うだよね。」
消え入りそうな声で呟いた。
やっぱり、綺麗だった。惚れそうだった。
けど、そんな顔は初めてだった。
だから勿体ないと思った。同時に胸が痛んだ。
目を瞑りたい。逃げたい。そう思ってしまう。
なのに、懐かしい。
すぐに分かった。
これはきっと、俺が、この【世界】以外で経験した顔だ。
だから、俺は目を背けて泣きたかったのだ。
守るべき人も、正義も、一生分からない。
でも、忘れたくない想いが人を強くさせる。
世界は滑稽な仕組みだ。
別に、君には全然関係ないのに、放っておいてもいいのに、
どうして?
なんでそんな悲しそうな顔をしている?
そんな顔じゃ、俺がしたい話はできないよ。
「アイスは好き?」
意味分からないことを聞いていた。
コンビニまで歩いてアイスを買って一緒に食べた。
馬鹿みたいに美味しかった。
それからは、意味の無い話をした。
まず、名前を聞けた。夏渚。
音楽が好きだといってとびっきりのお気に入りを教えてくれた。
俺は、寝るのが好きだから、なるべく周りが静かな方が好きだ。耳からわざわざ、音を流し込むなんて、変な趣味だなぁって思ってしまい、題名すら頭に入ってこない。
それは少々ばかり申し訳ないと思っている。
結局、【世界の収集】については何も言えなかった。
この先も、言える自信がない。
こういう時はめんどくさい。
リセットボタンを押すべきだ。
けど、ここで押したら、記憶が消えて9回目の【世界】に飛ばされる。それもかなりめんどくさい。
いや、夏渚を、忘れるのが嫌なだけだったのかもしれない。
だって、そもそも、俺が煽りに乗った時点で、ちょっくらやらかしていた。
でも、リセットボタンのことなんてすっかり忘れていたのだ。
そんな中思う。
大事な時に、大切なことを思い出せない。
それは、とてつもなく、忌むべきだ。
しかし、あの時、ボタンを思い出していたら?
そんなの分からない。
もう俺は押さなかったかもしれない。
だって君に会ってしまったから。
けれど、押していた未来もあったと思う。
だから、大切なことを思い出さないからこそ、救われる未来もあると、今でも信じてしまう。
気が付くと、向こうに走っていた。
息を切らして橋を渡る。
大丈夫、まだ、消えてない。
あの時の、熱がぶり返す。
やっと、近くに来れた。
激しい鼓動が揺らす視界は酷く不気味だ。
それでも、口を開く。
「ねぇ、世界の収…」
「あー、それは……もう二度と会えない気がしたから、ちょっとふざけただけだよ。そういう方が、心に残りやすいでしょ?でも、そんな話信じる人いるんだ。君、詐欺に引っかかりやすいタイプ?」
言い終わっていないのに遮られた。
しかも、なんと腹立たしい子供扱いなこと。
言い始めたのはそっちなのに。
これは俺のスイッチが入っちゃう。
めきめきと戦闘心が燃え上がる。
「あのなぁ、信じるわけないだろ。世界?って言ったっけか。元の世界ってなんだよ?ここの世界以外に、経験してるとでも言うのか。そりゃ、おもろい妄想ですなぁ」
煽りに乗ってしまった。
どうしても、こういった場面で冷静になれないのだ。
航海に出ては、後悔している、煽り乗りの舟人の公開処刑はこうかいww
舟に乗ってる頭の悪そうなやつが、航海に出て、後悔してる様子がすぐさま頭に思い浮かんだ。近い将来、それが俺にならないことを願いたい。
って、いや、ふざけんな。
早く、協力を求めるんだろ、俺!
「なーんて、えぇっと、」
言葉が思い当たらず、言い淀んだ。らしくない。
彼女も、その沈黙を振り切る気力がなかったのか、
「そ、うだよね。」
消え入りそうな声で呟いた。
やっぱり、綺麗だった。惚れそうだった。
けど、そんな顔は初めてだった。
だから勿体ないと思った。同時に胸が痛んだ。
目を瞑りたい。逃げたい。そう思ってしまう。
なのに、懐かしい。
すぐに分かった。
これはきっと、俺が、この【世界】以外で経験した顔だ。
だから、俺は目を背けて泣きたかったのだ。
守るべき人も、正義も、一生分からない。
でも、忘れたくない想いが人を強くさせる。
世界は滑稽な仕組みだ。
別に、君には全然関係ないのに、放っておいてもいいのに、
どうして?
なんでそんな悲しそうな顔をしている?
そんな顔じゃ、俺がしたい話はできないよ。
「アイスは好き?」
意味分からないことを聞いていた。
コンビニまで歩いてアイスを買って一緒に食べた。
馬鹿みたいに美味しかった。
それからは、意味の無い話をした。
まず、名前を聞けた。夏渚。
音楽が好きだといってとびっきりのお気に入りを教えてくれた。
俺は、寝るのが好きだから、なるべく周りが静かな方が好きだ。耳からわざわざ、音を流し込むなんて、変な趣味だなぁって思ってしまい、題名すら頭に入ってこない。
それは少々ばかり申し訳ないと思っている。
結局、【世界の収集】については何も言えなかった。
この先も、言える自信がない。
こういう時はめんどくさい。
リセットボタンを押すべきだ。
けど、ここで押したら、記憶が消えて9回目の【世界】に飛ばされる。それもかなりめんどくさい。
いや、夏渚を、忘れるのが嫌なだけだったのかもしれない。
だって、そもそも、俺が煽りに乗った時点で、ちょっくらやらかしていた。
でも、リセットボタンのことなんてすっかり忘れていたのだ。
そんな中思う。
大事な時に、大切なことを思い出せない。
それは、とてつもなく、忌むべきだ。
しかし、あの時、ボタンを思い出していたら?
そんなの分からない。
もう俺は押さなかったかもしれない。
だって君に会ってしまったから。
けれど、押していた未来もあったと思う。
だから、大切なことを思い出さないからこそ、救われる未来もあると、今でも信じてしまう。
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