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3 それ、勘違いやで
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ここから逃げるぞ、と決めたくせに。
やらかしたのでリセットをすると決めたくせに。
「ありがと、ふふ、君強いね?」
そこで完全に俺の行動は止まった。
可愛くて綺麗な声。
黒く美しい瞳の女性がいる。
そこまでは理解できた。
リセットボタンを押していない自分がいる。
それだけは信じられなかった。
彼女の言葉が止めさせたのか、その声が止めさせたのか、なんてのは今も分からない。
けれど、そのセリフだけが、木霊する。
ずっとずっと遠くの出来事のようだ。
残響だけが、俺を抉っている。
その、黒く美しい瞳からは、驚いた、と言わんばかりのが高揚感が溢れ出ていた。
俺が、顔も見ずに、瞬時に守ってしまった人だ。
もう一度、ゆっくりとまじまじと見る。
うーん。最高!咄嗟だったからと言えども、こんな人の前で戦うならもっとかっこつけりゃ良かったな。
そんな余裕こいた考えが回り出す中、交わす。
「無事で良かったよ」
俺がそう言うと、嬉しそうに笑ってくれた。
突然感情が込み上げてきた。
ああ、そうだ。
一時的でも、救えて良かった。
この先すぐにでも死んでも、これで後悔はしないな、と言えるくらいな達成感が込み上げてきたのだ。
すると、その女性は、
「私ねー、この世界で収集つけるまで、元いた世界に戻れないみたいなのよ。おかしいと思うでしょ?嘘だと思った?でもホント。だから、この辺でばいばい!そっちこそ、無事で良かった!気を付けてね~」
そう言って去っていった。
さっき起きた出来事なんてどうでも良くなるくらいの衝撃だった。
俺以外に、居たのか。
そう思った途端、初めて、安心していた。
呼吸を整える。
もう彼女の影はないけれど、希望が湧いたのだ。
ここで思ったことは、彼女と2人ならこの【世界の収集】ができるということ。
あの人は、自分と俺が同じ状況だなんてこと当然知らない。
けれど、確信した。
早急に打ち明けて立ち向かえば、2人ならば、いけるんじゃないかと。
酷く簡単に思ってしまった。
縋ってしまった。
とぼとぼと、しかし、珍しく、やる気になった俺は、歩きながら思考を回す。
俺は、多分心の中にある知殼の解放をすることで、攻撃ができることになっているようだ。
だったら彼女もきっとそうだろう。
実際は殴ったり蹴ったり、普通に戦っているように見えるが、根本的に違うのだ。
しかし、単なる最強スキルなわけがなく、当然欠点がある。
知殼を解放したあとの疲労感がぱねぇのだ。
解放し続けたらそれこそ、すぐ死ぬんじゃないかっていうくらい。
だからなるべく使いたくない。
それが本音である。
しんどいのも大嫌いな俺なのだ。当然だろ。
「だったら、あんとき、俺が守らなくても良かったのかー」
それじゃ、彼女1人で対処出来た筈だもんな。
無駄なことをした気分だ。
あの焦りを振り返りながら、
「ちっ、無駄な努力か、返してくれ」
なんて呟く。
しかし、あの瞳が、あの声が、忘れられない。
とりあえず、もう一度会って俺の状況を話してみよう。
もし分かってくれたなら、相当心強い。
歩き始めてしばらくだった。
だめだ、全然見つからない。
疲れ果てて、川沿いのベンチに腰掛ける。
眠っていた。どれくらい経ったのだろうか?
ぼんやりと状況を思い出す。
「はぁ、めんどくせぇ!」
と、目を開けると、さっき守った、いや、
悲しいことに、実は俺が守ったと勘違いしただけだったが、
例の人が、むこうの岸を歩いているのが見えた。
やらかしたのでリセットをすると決めたくせに。
「ありがと、ふふ、君強いね?」
そこで完全に俺の行動は止まった。
可愛くて綺麗な声。
黒く美しい瞳の女性がいる。
そこまでは理解できた。
リセットボタンを押していない自分がいる。
それだけは信じられなかった。
彼女の言葉が止めさせたのか、その声が止めさせたのか、なんてのは今も分からない。
けれど、そのセリフだけが、木霊する。
ずっとずっと遠くの出来事のようだ。
残響だけが、俺を抉っている。
その、黒く美しい瞳からは、驚いた、と言わんばかりのが高揚感が溢れ出ていた。
俺が、顔も見ずに、瞬時に守ってしまった人だ。
もう一度、ゆっくりとまじまじと見る。
うーん。最高!咄嗟だったからと言えども、こんな人の前で戦うならもっとかっこつけりゃ良かったな。
そんな余裕こいた考えが回り出す中、交わす。
「無事で良かったよ」
俺がそう言うと、嬉しそうに笑ってくれた。
突然感情が込み上げてきた。
ああ、そうだ。
一時的でも、救えて良かった。
この先すぐにでも死んでも、これで後悔はしないな、と言えるくらいな達成感が込み上げてきたのだ。
すると、その女性は、
「私ねー、この世界で収集つけるまで、元いた世界に戻れないみたいなのよ。おかしいと思うでしょ?嘘だと思った?でもホント。だから、この辺でばいばい!そっちこそ、無事で良かった!気を付けてね~」
そう言って去っていった。
さっき起きた出来事なんてどうでも良くなるくらいの衝撃だった。
俺以外に、居たのか。
そう思った途端、初めて、安心していた。
呼吸を整える。
もう彼女の影はないけれど、希望が湧いたのだ。
ここで思ったことは、彼女と2人ならこの【世界の収集】ができるということ。
あの人は、自分と俺が同じ状況だなんてこと当然知らない。
けれど、確信した。
早急に打ち明けて立ち向かえば、2人ならば、いけるんじゃないかと。
酷く簡単に思ってしまった。
縋ってしまった。
とぼとぼと、しかし、珍しく、やる気になった俺は、歩きながら思考を回す。
俺は、多分心の中にある知殼の解放をすることで、攻撃ができることになっているようだ。
だったら彼女もきっとそうだろう。
実際は殴ったり蹴ったり、普通に戦っているように見えるが、根本的に違うのだ。
しかし、単なる最強スキルなわけがなく、当然欠点がある。
知殼を解放したあとの疲労感がぱねぇのだ。
解放し続けたらそれこそ、すぐ死ぬんじゃないかっていうくらい。
だからなるべく使いたくない。
それが本音である。
しんどいのも大嫌いな俺なのだ。当然だろ。
「だったら、あんとき、俺が守らなくても良かったのかー」
それじゃ、彼女1人で対処出来た筈だもんな。
無駄なことをした気分だ。
あの焦りを振り返りながら、
「ちっ、無駄な努力か、返してくれ」
なんて呟く。
しかし、あの瞳が、あの声が、忘れられない。
とりあえず、もう一度会って俺の状況を話してみよう。
もし分かってくれたなら、相当心強い。
歩き始めてしばらくだった。
だめだ、全然見つからない。
疲れ果てて、川沿いのベンチに腰掛ける。
眠っていた。どれくらい経ったのだろうか?
ぼんやりと状況を思い出す。
「はぁ、めんどくせぇ!」
と、目を開けると、さっき守った、いや、
悲しいことに、実は俺が守ったと勘違いしただけだったが、
例の人が、むこうの岸を歩いているのが見えた。
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