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配達
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オレとカノミの雰囲気に違和感を覚えたらしく、シルバーも店内の見学を止めて、カウンターの所までやってきた。
「お姉さんが帰って来ないの? 応援とかは出してないの?」
シルバーが訊いた。
「ギルドには問い合わせたんですけど……」
カノミがますます顔を曇らせる。もう泣き出さんばかりだ。
カノミの言葉を受けてオレがシルバーに説明をする。
「応援のために冒険者を派遣するにしても、もちろんその報酬が必要となってくる。タダというワケにはいかない。
依頼主の関係者が依頼主が戻らない事を心配して追加で捜索の依頼でもすれば別だが、そうでもない限りはギルドが自前で応援を出すなんてことはないな」
「ふーん、まあ君らの社会なんてそんなもんだよね」
今回ばかりはシルバーの皮肉には同調できる。
同じギルドで仕事を受けている人間が危機に瀕しているかもしれないのに、オレたちは依頼がないと動こうとさえしないのだ。
だが、オレにも言い分はある。
「いっておくが、トヨケはオレの何倍も腕の立つ剣士だ。そしてシルベネートはぶっちゃけ初心者向けのダンジョンだ。だから危険なことなんてないはずなんだ。
多少帰りが遅くなったとしても、それはたぶん雇い主の気変わりで予定よりも調査に時間を取られているだけなんだと思う。
たしかにめんどくさい事態ではあるだろうけど、その分報酬も上乗せされるだろうし、それはそれでいいんじゃないかな」
「じゃあ、それでいいじゃん」
「ああ」
「買い物も済んだしもう行こうよ。可愛い女の子が泣いてるのに放っておくのも冒険者としての矜持なんだろうし」
「あのな、もしも、もしもだぞ。万が一の事態があったとしても、オレよりも強いトヨケが手におえないような事態なら、オレが行ったところで出来ることは何もないんだからな」
「さすがにそれは言わない方がいいよ。あまりにもカッコ悪いから。
まあカズはもともとカッコ良くはないけど。
あ、これ入れてくね」
そう言うとシルバーは、カウンターの上に乗っていた食料品を異次元収納にしまい込んだ。
そのまま店の出口へ向かい振り返りもせず通りへと出てる。
「すごいですね、物を収納するスキルなんですか?」
商品が一瞬で消えるところを見たカノミが目を丸くしてオレに訊いた。
オレとシルバーとのやり取りを聞かなかったことにしようとしてくれているのだ。
普段の調子を意識したような声音だが、成功しているとは言い難い。
「ああ、万引きするのに便利そうなスキルだから、カノミも気を付けてくれ。
ところでトヨケは食糧はたくさん持っていったのか?」
ふと気になって尋ねた。
異次元収納のスキルも持たない普通の冒険者が、日帰りの仕事で出かけたのなら食糧も水もあまり準備はしていっていないだろう。
シルベネートにも水場はあったが、かなり深い層に降りて行かないといけなかったはずだ。
「いいえ、ほとんどなにも。水筒ひとつとかそれぐらいです。
お姉ちゃんお腹空かせてるだろうなあ」
思わずといった感じでカノミはぽつりとそう言った。
「おい、シルバー!」
オレは通りに出た自転車を大声で呼んだ。
「そんな大声を出さなくても聞こえるよ」
店先で立ち止まっていたシルバーがめんどくさそうに応えた。
「配達だ」
「お姉さんが帰って来ないの? 応援とかは出してないの?」
シルバーが訊いた。
「ギルドには問い合わせたんですけど……」
カノミがますます顔を曇らせる。もう泣き出さんばかりだ。
カノミの言葉を受けてオレがシルバーに説明をする。
「応援のために冒険者を派遣するにしても、もちろんその報酬が必要となってくる。タダというワケにはいかない。
依頼主の関係者が依頼主が戻らない事を心配して追加で捜索の依頼でもすれば別だが、そうでもない限りはギルドが自前で応援を出すなんてことはないな」
「ふーん、まあ君らの社会なんてそんなもんだよね」
今回ばかりはシルバーの皮肉には同調できる。
同じギルドで仕事を受けている人間が危機に瀕しているかもしれないのに、オレたちは依頼がないと動こうとさえしないのだ。
だが、オレにも言い分はある。
「いっておくが、トヨケはオレの何倍も腕の立つ剣士だ。そしてシルベネートはぶっちゃけ初心者向けのダンジョンだ。だから危険なことなんてないはずなんだ。
多少帰りが遅くなったとしても、それはたぶん雇い主の気変わりで予定よりも調査に時間を取られているだけなんだと思う。
たしかにめんどくさい事態ではあるだろうけど、その分報酬も上乗せされるだろうし、それはそれでいいんじゃないかな」
「じゃあ、それでいいじゃん」
「ああ」
「買い物も済んだしもう行こうよ。可愛い女の子が泣いてるのに放っておくのも冒険者としての矜持なんだろうし」
「あのな、もしも、もしもだぞ。万が一の事態があったとしても、オレよりも強いトヨケが手におえないような事態なら、オレが行ったところで出来ることは何もないんだからな」
「さすがにそれは言わない方がいいよ。あまりにもカッコ悪いから。
まあカズはもともとカッコ良くはないけど。
あ、これ入れてくね」
そう言うとシルバーは、カウンターの上に乗っていた食料品を異次元収納にしまい込んだ。
そのまま店の出口へ向かい振り返りもせず通りへと出てる。
「すごいですね、物を収納するスキルなんですか?」
商品が一瞬で消えるところを見たカノミが目を丸くしてオレに訊いた。
オレとシルバーとのやり取りを聞かなかったことにしようとしてくれているのだ。
普段の調子を意識したような声音だが、成功しているとは言い難い。
「ああ、万引きするのに便利そうなスキルだから、カノミも気を付けてくれ。
ところでトヨケは食糧はたくさん持っていったのか?」
ふと気になって尋ねた。
異次元収納のスキルも持たない普通の冒険者が、日帰りの仕事で出かけたのなら食糧も水もあまり準備はしていっていないだろう。
シルベネートにも水場はあったが、かなり深い層に降りて行かないといけなかったはずだ。
「いいえ、ほとんどなにも。水筒ひとつとかそれぐらいです。
お姉ちゃんお腹空かせてるだろうなあ」
思わずといった感じでカノミはぽつりとそう言った。
「おい、シルバー!」
オレは通りに出た自転車を大声で呼んだ。
「そんな大声を出さなくても聞こえるよ」
店先で立ち止まっていたシルバーがめんどくさそうに応えた。
「配達だ」
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