ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

山程ある

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ハンガクとツル

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 よく知らないのに勝手に高慢なイメージを抱いていたハンガクだが、いざ話をしてみると思いの外饒舌で茶目っ気があり、可愛い人だった。
 対してトヨケのもう一人のパーティメンバーであるツルはとても物静かだ。
 ハンガクとオレが話しをしてる間、たまに相槌を打つ程度の発言しかない。
 白に近い金色の髪は糸のように細く真っ直ぐで肩口まで伸びている。肌も透けるように白く、エルフだと言われれば疑うことなく信じてしまいそうだ。
 ただ背が低く耳も尖っていないことからエルフでない事は知れる。
 一般的にエルフは背が高く耳が尖っているのだ。
 儚げな当人とは裏腹に、魔法図形の刺繍入りのローブは年季が入っている。魔術士としては熟練の域なのだろう。

 いよいよ冒険者ギルドにも近付いて来た頃、そんなツルが口を開いた。

「あ、あの、さっきいただいたパン、お肉が挟んでありましたよね。あれは何のお肉なんですか」

 思い切って口を開いたという感じのわりには、大した質問ではなかった。
 だけど、料理について質問してくれたことが嬉しい。

「ああ、あれはブタです」

「ブタさんのお肉なんですか。分厚くて食べごたえがあるのにとっても柔らかくて、びっくりしました」

 考えてみれば、この世界にはハンバーグという料理がないのだ。
 似たものとしては腸詰があるが、食感はだいぶ違う。
 基本的に肉は干し肉か塩漬けにすることが多く、まれに新鮮な物を食べる場合でも、直火で焼くだけということが多い。

「あれは生の肉を細かく刻んだ物を手で丸めて塊にしてるんですよ。細かく刻んだ玉ねぎや粉にしたパン、玉子も入ってます」

 まるで自分が考え出した料理法のように説明する。

「そんなに色々。すごいですね。カズさんは神人さまの料理番でもしてらしたんですか?」

 ツルはゆっくり穏やかに喋る。
 それに影響されるからか、オレもついつい敬語になっていた。

「いやいや全然。料理番どころかマトモに習った事もないですよ。ただの趣味です」

「もし良かったら、今度お料理を教えてもらえませんか?」

 他人に、それも綺麗な女の子に、料理を教える──これまで考えたこともないシチュエーションだ。
 そもそも誰かに教えられるような腕前なんてオレにはない。一人暮らしで自炊の習慣があったがため、そしてほんの少しばかりこだわってしまう性格だったために、幾つかの素人料理ならばできるようになっていたが、それもほとんどお料理サイトの『クックメモ』頼りだ。
 ここで彼女のお願いを聞き入れる資格はオレにはないし、期待に応えられるとも思えない。ここは断るの一択だ。

「はい、よろこんで」

 オレは最上級の感じの良いスマイルを浮かべてそう答えていた。
 ところが意外なところから邪魔、もとい助け舟が出された。ハンガクだ。

「なあツル、やめとけって。カズのやつ困ってるじゃないか」

「あ、ごめんなさい。あんまり美味しかったものだから思わず厚かましいことお願いしてしまいました」

 ツルは慌てて頭を下げた。
 オレとしてはまったく困ってなどいないし、一ミリの厚かましさも感じていないし、迷惑になど思っていない。
 だけど「そんな事ない」と否定する間もなくハンガクが話を進める。

「他の女んトコに料理なんて教えに行って、トヨケに勘違いされたら困るもんな」

 そう言ってオレの肩をバシバシと叩く。
 さすがは弓のハンガクだけあって力が強い。強すぎる。本人は軽いバシバシのつもりなのかも知れないが、肩が悲鳴を上げている。

「だからそんなんじゃねえって」

 腕を振るって何とかバシバシを払いのけた。

「何か勘違いするのですか?」

 ツルはキョトンとして首を傾げた。
 あまり分かってなさそうだ。
 少し考えるような顔をした後、こう続けた。

「ではトヨケさんのお店ではどうですか? トヨケさんもご一緒なら、他の所へ行っていると勘違いもされませんよね」

「なるほど、トヨケの店か」

 食材や加工食品、調味料を売る店だけあって調理場は広いし器具も色々と揃ってもいる。
 レンタルキッチンとして使用料を払い、料理に使う食材も店で購入すれば、売り上げの貢献にはなる。悪くないかも知れない。
 と、そこで名前が耳に入ったのか前を行くトヨケがくるりと振り返った。

「なになに、なんの相談?」

「トヨケさんのお店でカズさんにお料理を教えてもらえないかと思いまして」

「ええー、うちでカズさんが料理するの? いつ来るの? 何作ってくれるの?」

「いや、作るというか教えにだな……まあ、作る事には変わりないんだけど」

 許可を取るまでもなく、トヨケの中では秒で決定事項になったらしい。

「なんだ、そういう感じなんだったらアタシも行こうかな。アタシはガッツリ系がいいな」

 ハンガクが言った。

「だから、食堂やるワケじゃないからな」

「で、いつ行けばいい?」

 さっきまでは反対していたくせに、ハンガクは急にノリノリだ。
 また肩バシバシが飛んでこないかと警戒して、オレは少し距離を取る。

「どのみち明日から一週間は仕事入ってるから、それより後だぞ」

 ため息をひとつ吐いてそう言った。
 だけど自分の作った料理を喜んでもらえるのって、少し気恥ずかしさはあるがなかなか嬉しいものだな。
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