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イカ対獣人
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ボスイカは全身を青く発光させた。
白かった体が空けて見え、内臓や触手の芯が青く浮かび上がる。まるで光だけでできた生物のようだ。
半身が浸かっている湖の水も光が零れ落ちたかのように青く染まっている。
イカの巨大さとも相まって神々しい絵面だ。
大人の頭部ほどもある目が、ひときわ強い光を放ちながら無感情にオレたちを見ていた。
ヤムトの誤算はいくつかあるが、もっとも大きな誤算は、一緒にいるのがオレだということだろう。
ここには肩を並べて剣を振るルシッドも、魔法で援護してくれるレミックもいない。
もちろんオレは戦力としては頭数に入らない。むしろ足を引っ張る可能性のほうが高いぐらいだ。
それも加味したうえで戦うことを選んでいるのだろうが、どうしたって無謀な挑戦に思えてしまう。まあヤムトなら、ヤバくなったら逃げるぐらいのことはできそうだけど。
シルバーが来さえすれば、この邪神イカも簡単に制圧できるのかもしれないが、いまだ呼びかけに反応はない。あのチャリ野郎は山を駆け回るのに夢中でオレのことを忘れているに違いない。
とりあえずオレにできることといえば、邪魔にならないようにこの戦闘から離れていることぐらいだ。
「的自ら光ってくれるんだから、こんなにやりやすいことはない」
微塵も怯むことなくヤムトは駆ける。
その軌跡に燐光の残像を残しながら、触手がヤムトに襲い掛かった。二本同時だ。
突進する速度は落とさず、左右にステップを踏んでヤムトは攻撃を躱す。
ボスイカの触手は数こそ多いが、攻撃に使用するのはひと際長い二本だけのようだ。
しかも攻撃パターンは鞭のように叩きつけるだけらしく、避けられた触手は一度引き戻される。
次の攻撃を繰り出した時には、ヤムトはすでにイカの間近まで迫っていた。
戦鎚の攻撃圏内だが、正面からいったのでは無数の触手に阻まれるだろう。
ヤムトはヘッドスライディングのように頭から飛び込むと前回り受け身の要領で立ちイカの右側に位置取りした。激しい水しぶきがあがる。
イカの巨大な目の前にヤムトはいた。戦鎚の攻撃圏内だ。戦鎚はすでに振りかざされている。
野球のフルスイングのように戦鎚が叩きつけられた。
予想外に硬質な音が大きく響く。
目を破壊した音ではない。
戦鎚が届く直前、翼のように見えていた外殻が素早く閉じて目を守ったのだ。
どうやら殻は、ヤムトの戦鎚でも壊れないほどに頑丈らしい。
閉じた両翼と額当てが合わさり、巨石のような姿になる。全く攻撃が通らなさそうに見える。
ヤムトが腕を引くより早く、触手が一斉に動いた。そのうちの数本が戦鎚に絡みつく。
取り戻そうと力を込めたらしく、ヤムトの腕の筋肉が膨れ上がった。
が、それも一瞬のことでヤムトはあっさりと手を放した。
直後、下からの豪快な蹴り上げ。
足指に生えている肉食獣の爪が、ぐちゃという音を土産に、戦鎚に絡んだ触手を切断した。
ヤムトは戦鎚を取り返すと、水から飛び出すように離脱した。
触手に追いすがることもさせない獣の身軽さで大きく距離を取る。
ヤムトはふうと小さく息を吐いた。
オレも詰めていた息をふうと吐いた。
次の瞬間、ヤムトがその大きな背中を震わせた。
背中越しでオレには見えなかったが、イカが何かを発射し、ヤムトの胸のあたりに直撃したようだ。
ヤムトは崩れるように膝を着いた。
白かった体が空けて見え、内臓や触手の芯が青く浮かび上がる。まるで光だけでできた生物のようだ。
半身が浸かっている湖の水も光が零れ落ちたかのように青く染まっている。
イカの巨大さとも相まって神々しい絵面だ。
大人の頭部ほどもある目が、ひときわ強い光を放ちながら無感情にオレたちを見ていた。
ヤムトの誤算はいくつかあるが、もっとも大きな誤算は、一緒にいるのがオレだということだろう。
ここには肩を並べて剣を振るルシッドも、魔法で援護してくれるレミックもいない。
もちろんオレは戦力としては頭数に入らない。むしろ足を引っ張る可能性のほうが高いぐらいだ。
それも加味したうえで戦うことを選んでいるのだろうが、どうしたって無謀な挑戦に思えてしまう。まあヤムトなら、ヤバくなったら逃げるぐらいのことはできそうだけど。
シルバーが来さえすれば、この邪神イカも簡単に制圧できるのかもしれないが、いまだ呼びかけに反応はない。あのチャリ野郎は山を駆け回るのに夢中でオレのことを忘れているに違いない。
とりあえずオレにできることといえば、邪魔にならないようにこの戦闘から離れていることぐらいだ。
「的自ら光ってくれるんだから、こんなにやりやすいことはない」
微塵も怯むことなくヤムトは駆ける。
その軌跡に燐光の残像を残しながら、触手がヤムトに襲い掛かった。二本同時だ。
突進する速度は落とさず、左右にステップを踏んでヤムトは攻撃を躱す。
ボスイカの触手は数こそ多いが、攻撃に使用するのはひと際長い二本だけのようだ。
しかも攻撃パターンは鞭のように叩きつけるだけらしく、避けられた触手は一度引き戻される。
次の攻撃を繰り出した時には、ヤムトはすでにイカの間近まで迫っていた。
戦鎚の攻撃圏内だが、正面からいったのでは無数の触手に阻まれるだろう。
ヤムトはヘッドスライディングのように頭から飛び込むと前回り受け身の要領で立ちイカの右側に位置取りした。激しい水しぶきがあがる。
イカの巨大な目の前にヤムトはいた。戦鎚の攻撃圏内だ。戦鎚はすでに振りかざされている。
野球のフルスイングのように戦鎚が叩きつけられた。
予想外に硬質な音が大きく響く。
目を破壊した音ではない。
戦鎚が届く直前、翼のように見えていた外殻が素早く閉じて目を守ったのだ。
どうやら殻は、ヤムトの戦鎚でも壊れないほどに頑丈らしい。
閉じた両翼と額当てが合わさり、巨石のような姿になる。全く攻撃が通らなさそうに見える。
ヤムトが腕を引くより早く、触手が一斉に動いた。そのうちの数本が戦鎚に絡みつく。
取り戻そうと力を込めたらしく、ヤムトの腕の筋肉が膨れ上がった。
が、それも一瞬のことでヤムトはあっさりと手を放した。
直後、下からの豪快な蹴り上げ。
足指に生えている肉食獣の爪が、ぐちゃという音を土産に、戦鎚に絡んだ触手を切断した。
ヤムトは戦鎚を取り返すと、水から飛び出すように離脱した。
触手に追いすがることもさせない獣の身軽さで大きく距離を取る。
ヤムトはふうと小さく息を吐いた。
オレも詰めていた息をふうと吐いた。
次の瞬間、ヤムトがその大きな背中を震わせた。
背中越しでオレには見えなかったが、イカが何かを発射し、ヤムトの胸のあたりに直撃したようだ。
ヤムトは崩れるように膝を着いた。
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