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協力者
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「その協力者がいたとして、今この場所にいるとは限らないだろ」
オレが言うとレミックは頷く。
「そうね。いる可能性の方が低いでしょうね。だからといって警戒しないでいい理由にはならないけれど」
レミックの言葉の棘がいつの間にか戻ってきているような気がする。
あんまりバカっぽい質問とかはしない方がいいんだろうか。
「荒事が得意な可能性も低いだろうし、そいつがリッチの仇を撃とうと考えることもきっとないだろう。それでもそいつがこの近くに潜んでいて、向こうはオレたちの顔を知っているのにオレたちは向こうの顔を知らないという事態になることは避けなければならん」
ルシッドが言った。特に強い感情が込められているふうでもなかったが、力強い声だった。
たしかに貴人なんかの使いっぱしりをするようなヤツに一方的にこちらの素性だけを知られているとなると、どんな不利益を被るか分かったものじゃない。
「あとは戦利品だな」
ヤムトが言った。その目はリッチが出てきた扉へと向けられていた。
オレたち冒険者の収入のうち、依頼攻略時に得られる戦利品は大きなウエイトを占めている。
とはいえ依頼の内容にもよるが相手が人間でその持ち物や財産を持ち帰れば、火事場泥棒、いや下手をすれば強盗行為にもなってしまう。
しかしモンスターが相手の時はそれほど問題もおきない。貴重品を持っているモンスターは少ないが骨や肉や皮などは素材になるし、魔法を使う種族だった場合は魔力結晶を持っていることもある。
魔力結晶は魔術具の作成に必要なため高値で取引されるし、特殊な例ではあるがシルバーのようにその体が貴重な金属でできていれば、下手な金銀財宝などかすむぐらいの価値があったりもする。
ちなみに魔力結晶とは、モンスターが魔法を行使した際に出る魔力滓が体内にとどまり結晶化したものだ。
強い魔法を使うほどに滓は濃い物となり、その量も増える。そして魔力結晶としてもサイズが大きく良質な物になる。高位のモンスターになればなるほど質の良い魔力結晶が得られるのはこのためだ。
通常であれば一定のサイズになれば自然排泄されるので、魔法を行使するモンスターの棲息する場所には魔力結晶が落ちている。
とはいってもきちんと排出されている結晶のサイズは砂粒みたいなものなのでオレたちがそれに気付けることはまずない。
戦利品となるのは、なんらかの異常で魔力滓が排出されないまま体内に溜まり続けて大きなサイズの結晶になった物に限られる。
要するに、胆石や尿路結石の魔力版みたいのなものなのだ。
一般的なサイズは小石から拳大ぐらいだが、形状に関しては様々だ。基本的には生姜のようにポコポコした物が多いが、そうでないものも少なくない。トゲトゲしていたりブドウの房のようだったり、数珠つなぎだったり、カットされた宝石のようだったりと千差万別だ。
色にいたっては赤っぽいのから黒、青、緑、白と色相環を制覇できるぐらいに多様だが、ひとつの例外もなく結晶自体が魔力の光を発している。
ちなみに人間に魔力結晶ができないのは、人間は術式を使用するからだといわれている。
そもそも人間は魔法が使えるようにはできていない。魔法を行使する時は、術式を使用して少しの無駄もなく体内の魔力を掻き集めて、あるいは魔法によっては周囲の魔力を集めさえしてようやく発動に至るのだ。だから魔力滓などが出ることはないらしい。
オレみたいに術式を使用してすら魔法を使えない者もいるぐらいだ。大雑把にやっても魔法を使えてしまうモンスターと違って人間に魔力結晶ができないのは至極当たり前のことのように思える。
で、術式を使って魔法を使っていたリッチには魔力結晶はできなかっただろうが、何より貴人だ。
その持ち物はどれもこれもが貧乏冒険者にとってはドン引きするぐらいの価値があるんじゃないだろうか。
だけど、
「なあ、リッチってモンスター扱いでいいのか?」
リッチには人間と変わらない自我がある。というか識人が自我と知性をたもったままアンデッド化した存在なのだから人間よりも高度な存在といえなくもない。死体好きの変態だけど。
今回の依頼内容は山賊の討伐で、リッチは傭兵の雇い主ではあったけど、山賊行為の黒幕だったとはいい難いわけで。
襲われたので戦いはしたが、これで家財道具を持って帰ったりすれば普通に強盗殺人とかになるのではないだろうか。
「モンスター扱いで良いと思いますよ」
オレの問いかけに返答したのは耳慣れない声だった。
皆が弾かれたように声のしたほうを見た。
リッチの部屋の扉からまたひとつ、人影が姿を現していた。
声と体格からして男のようだ。
黒いシャツと黒いズボン、黒いブーツと、全身を黒一色で統一している。前にいた世界だったらアーティストかちょっと痛いやつに限られる服装だが、この世界では職人たちなどはわりと汚れが目立ない黒っぽい服ばかりを選んだりする。しかし職人のそれはあまり丁寧に染められているわけでもないので、大抵は色褪せて茶色や灰色になる。
現れた人影の服の黒は黒々としていた。よほど丁寧に染められた布なのか、あるいはまだ染めたばかりで新しい布なのか。
いずれにせよ引っ掛かるポイントはそこではない。
男は仮面を付けていたのだ。鈍く輝く銀色で、浮彫の装飾もあるにはあるが目の脇から頬にかけてのみのシンプルさ。無表情であるが、少し顎を引けば薄笑いを浮かべているようにも見える。
「何者だ」
リッチの部屋から出てきたのだからリッチの仲間と考えて間違いないようには思うが、反射的にオレはそう訊いていた。
「あなた方が話していた、ここの主の協力者です」
オレが言うとレミックは頷く。
「そうね。いる可能性の方が低いでしょうね。だからといって警戒しないでいい理由にはならないけれど」
レミックの言葉の棘がいつの間にか戻ってきているような気がする。
あんまりバカっぽい質問とかはしない方がいいんだろうか。
「荒事が得意な可能性も低いだろうし、そいつがリッチの仇を撃とうと考えることもきっとないだろう。それでもそいつがこの近くに潜んでいて、向こうはオレたちの顔を知っているのにオレたちは向こうの顔を知らないという事態になることは避けなければならん」
ルシッドが言った。特に強い感情が込められているふうでもなかったが、力強い声だった。
たしかに貴人なんかの使いっぱしりをするようなヤツに一方的にこちらの素性だけを知られているとなると、どんな不利益を被るか分かったものじゃない。
「あとは戦利品だな」
ヤムトが言った。その目はリッチが出てきた扉へと向けられていた。
オレたち冒険者の収入のうち、依頼攻略時に得られる戦利品は大きなウエイトを占めている。
とはいえ依頼の内容にもよるが相手が人間でその持ち物や財産を持ち帰れば、火事場泥棒、いや下手をすれば強盗行為にもなってしまう。
しかしモンスターが相手の時はそれほど問題もおきない。貴重品を持っているモンスターは少ないが骨や肉や皮などは素材になるし、魔法を使う種族だった場合は魔力結晶を持っていることもある。
魔力結晶は魔術具の作成に必要なため高値で取引されるし、特殊な例ではあるがシルバーのようにその体が貴重な金属でできていれば、下手な金銀財宝などかすむぐらいの価値があったりもする。
ちなみに魔力結晶とは、モンスターが魔法を行使した際に出る魔力滓が体内にとどまり結晶化したものだ。
強い魔法を使うほどに滓は濃い物となり、その量も増える。そして魔力結晶としてもサイズが大きく良質な物になる。高位のモンスターになればなるほど質の良い魔力結晶が得られるのはこのためだ。
通常であれば一定のサイズになれば自然排泄されるので、魔法を行使するモンスターの棲息する場所には魔力結晶が落ちている。
とはいってもきちんと排出されている結晶のサイズは砂粒みたいなものなのでオレたちがそれに気付けることはまずない。
戦利品となるのは、なんらかの異常で魔力滓が排出されないまま体内に溜まり続けて大きなサイズの結晶になった物に限られる。
要するに、胆石や尿路結石の魔力版みたいのなものなのだ。
一般的なサイズは小石から拳大ぐらいだが、形状に関しては様々だ。基本的には生姜のようにポコポコした物が多いが、そうでないものも少なくない。トゲトゲしていたりブドウの房のようだったり、数珠つなぎだったり、カットされた宝石のようだったりと千差万別だ。
色にいたっては赤っぽいのから黒、青、緑、白と色相環を制覇できるぐらいに多様だが、ひとつの例外もなく結晶自体が魔力の光を発している。
ちなみに人間に魔力結晶ができないのは、人間は術式を使用するからだといわれている。
そもそも人間は魔法が使えるようにはできていない。魔法を行使する時は、術式を使用して少しの無駄もなく体内の魔力を掻き集めて、あるいは魔法によっては周囲の魔力を集めさえしてようやく発動に至るのだ。だから魔力滓などが出ることはないらしい。
オレみたいに術式を使用してすら魔法を使えない者もいるぐらいだ。大雑把にやっても魔法を使えてしまうモンスターと違って人間に魔力結晶ができないのは至極当たり前のことのように思える。
で、術式を使って魔法を使っていたリッチには魔力結晶はできなかっただろうが、何より貴人だ。
その持ち物はどれもこれもが貧乏冒険者にとってはドン引きするぐらいの価値があるんじゃないだろうか。
だけど、
「なあ、リッチってモンスター扱いでいいのか?」
リッチには人間と変わらない自我がある。というか識人が自我と知性をたもったままアンデッド化した存在なのだから人間よりも高度な存在といえなくもない。死体好きの変態だけど。
今回の依頼内容は山賊の討伐で、リッチは傭兵の雇い主ではあったけど、山賊行為の黒幕だったとはいい難いわけで。
襲われたので戦いはしたが、これで家財道具を持って帰ったりすれば普通に強盗殺人とかになるのではないだろうか。
「モンスター扱いで良いと思いますよ」
オレの問いかけに返答したのは耳慣れない声だった。
皆が弾かれたように声のしたほうを見た。
リッチの部屋の扉からまたひとつ、人影が姿を現していた。
声と体格からして男のようだ。
黒いシャツと黒いズボン、黒いブーツと、全身を黒一色で統一している。前にいた世界だったらアーティストかちょっと痛いやつに限られる服装だが、この世界では職人たちなどはわりと汚れが目立ない黒っぽい服ばかりを選んだりする。しかし職人のそれはあまり丁寧に染められているわけでもないので、大抵は色褪せて茶色や灰色になる。
現れた人影の服の黒は黒々としていた。よほど丁寧に染められた布なのか、あるいはまだ染めたばかりで新しい布なのか。
いずれにせよ引っ掛かるポイントはそこではない。
男は仮面を付けていたのだ。鈍く輝く銀色で、浮彫の装飾もあるにはあるが目の脇から頬にかけてのみのシンプルさ。無表情であるが、少し顎を引けば薄笑いを浮かべているようにも見える。
「何者だ」
リッチの部屋から出てきたのだからリッチの仲間と考えて間違いないようには思うが、反射的にオレはそう訊いていた。
「あなた方が話していた、ここの主の協力者です」
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