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1.再会 3
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「……先生、準備室も見せてよ」
ところが、そう申し出られてドクリ、と大きく心臓が鳴り背筋が凍った。
この気持ちが何なのか瞬時に判断できない。けれども、目の前の男が求めるものを、自分が差し出さない選択肢など持ち合わせていないことは確かだった。それは、校門で彼の姿をみとめた瞬間から、職員玄関のセキュリティを解除して、規律に反して部外者の彼を校舎内に招き入れた時から、わかっていた。室見を招き入れてしまえば、この先何が起こるのか。彼が誰もいない二人きりの校舎で、何を要求する可能性があるのか。わかっていたのに、郁は室見に逆らうという発想を持ち合わせずに、ぼうっとしたまま、ここまで来てしまった。
理科室の奥に続く扉に鍵を挿し込み、ガチャリと音をさせてそれを抜く。けれど、丸いドアノブを回すのは躊躇した。八年ぶりにこの先の狭い部屋に彼と二人きりになるのが、やはり……怖いのだ。
「……開けて」
室見は子供を諭すような優しい口調で、けれど有無を言わさぬ静かな声で言う。郁のドアノブを持つ手が震えた。そこに室見の手が重ねられる。上から手首を捻られて、八年前から変わらない木製のドアがギィと音をたてて開いた。
「やっと、ここに来れた」
理科室の三分の一ほどの狭い空間に、薬品棚や水槽、実験器具などが置かれた準備室は、雑然としていた。室見はその中に迷うことなく足を踏み入れて、中央に設えられた実験台の横に立った。そして郁を振り返り手招きする。
「ここだよ。先生。来て」
準備室の入り口で立ち尽くしている郁を、室見は見つめる。決して強制する言い方ではない。だがそれは表向きだけだった。大人になった室見の顔に、中学生だった室見の顔が一瞬重なる。
「先生、どうしたの?」
八年前も室見はそう言って、この理科準備室で郁に触れた。
ところが、そう申し出られてドクリ、と大きく心臓が鳴り背筋が凍った。
この気持ちが何なのか瞬時に判断できない。けれども、目の前の男が求めるものを、自分が差し出さない選択肢など持ち合わせていないことは確かだった。それは、校門で彼の姿をみとめた瞬間から、職員玄関のセキュリティを解除して、規律に反して部外者の彼を校舎内に招き入れた時から、わかっていた。室見を招き入れてしまえば、この先何が起こるのか。彼が誰もいない二人きりの校舎で、何を要求する可能性があるのか。わかっていたのに、郁は室見に逆らうという発想を持ち合わせずに、ぼうっとしたまま、ここまで来てしまった。
理科室の奥に続く扉に鍵を挿し込み、ガチャリと音をさせてそれを抜く。けれど、丸いドアノブを回すのは躊躇した。八年ぶりにこの先の狭い部屋に彼と二人きりになるのが、やはり……怖いのだ。
「……開けて」
室見は子供を諭すような優しい口調で、けれど有無を言わさぬ静かな声で言う。郁のドアノブを持つ手が震えた。そこに室見の手が重ねられる。上から手首を捻られて、八年前から変わらない木製のドアがギィと音をたてて開いた。
「やっと、ここに来れた」
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「ここだよ。先生。来て」
準備室の入り口で立ち尽くしている郁を、室見は見つめる。決して強制する言い方ではない。だがそれは表向きだけだった。大人になった室見の顔に、中学生だった室見の顔が一瞬重なる。
「先生、どうしたの?」
八年前も室見はそう言って、この理科準備室で郁に触れた。
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