教科書通りの恋を教えて

山鳩由真

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4.再会 6

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「動いて。郁」

 室見は床の上に仰向けになった自身の上に、裸の郁を跨がらせて腰を突き上げた。何度も後ろで達せられてとけた顔の郁は、その刺激に息を切らせながらもゆるゆると腰を揺らせて応じる。しかし胸の先を指で弄られて耐えるように身体を硬直させた。
「んっ……んん……そ……れ、しな……っ」
「なんで? ここ好きでしょ。弄るとすごく締まる」
「んっ……力入ら、な……、う、動けなく、なる……から……っ」
「じゃあ、いいよ動かなくて」
 郁の頭を大きな手のひらで支えて、下を繋げたまま体制を入れ換える。室見は上になると郁の淡い色の胸の飾りを思う存分に舐め啜った。
「あっ……んん……っ、あ……いや……ぁ、そこ……や……め……っ」
「いい、でしょ。俺の舌で弄られると、気持ちいい?」
「あ……っ、あっ……、むろみ……っ」
 室見は執拗に胸の先を指と舌で弄った。時々痛いくらいにつねり、その後は慰めるように優しく舌で円を描くように舐める。最後に乳輪を抉るように舌ですくうと、郁の腰が震えた。
「あぁっ……」
「気持ちいいんだね、郁……俺も、すごく、いい……、頭、おかしくなりそう……発情期じゃないのに、こんな……」
 室見は短く息をしながら硬く張りつめたペニスを、郁の狭い中に深く突き入れては出す。
「あっ、ぅっ、はあっ、あっ……」
「想像と、全然ちがう……郁……ようやく会えた」
 耳元で吐息混じりに愛してる、とまた囁かれて郁は声を漏らした。

 室見は身体を起こすと、腹の上で未だに縮んでいる郁の中心を握ってしごく。しかしそれは、少しだけ頭をもたげたが、それだけだった。その様子に室見は舌打ちする。
「後ろはビショビショなのに何で……ずっとそうなの?」
「……八、年前、から……」
 室見の郁を見つめる瞳が揺らぐ。そして大きな腕は無言で郁を抱き締めた。
「ヒートも、こなく……なってる、から……」
 室見はそれを聞いて、再び起き上がった。ぼうっと瞳を潤ませて息を切らせている郁を見て、苦しそうに顔を歪ませる。

「なんで……なんで……郁……」

 どうして室見が、泣き出しそうな顔をするのか。十四才の、あの頃の室見と同じ顔。別れを告げた時の、途方にくれたような、あの時手を伸ばして抱き締めてやりたかった顔。郁は室見の頬を慰めるように撫でた。

 室見を愛したら、ゆるされるのだろうか。
 愛したら、室見は救われるのだろうか。

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