教科書通りの恋を教えて

山鳩由真

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14.強制発情 5

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 うつぶせになって室見のものを後ろに咥えこんだまま、郁は静かに涙を流していた。まだ室見の射精は続いている。中にあふれるほど吐き出されて熱は幾らかおさまったものの、欲望の火種は身体の奥で燻っていて、僅かなきっかけですぐに燃え上がる予感がする。郁は快感に呑まれないように慎重に息を吐きながら呟いた。

「室見……俺は……こんな風に……、おまえとの、関係が……壊れるなんて……思いも……しなかった……」

「どう……いうこと? どうして? 郁……泣かないで……どうして悲しいの」

「おまえはただ、俺を……、気に入っている、おもちゃのように……したい……だけ……なのか」

 使い古して手に馴染ませて、汚れて壊れて使えなくなったら捨てる。思い通りに遊べる玩具になることを、俺に求めていたのか。
 室見が息を飲んだ。顔を寄せて、郁の頬を流れる涙を舌ですくいとる。

「……ちがうよ」

 背中にはりつく身体が震えている。酷いことを言って傷つけたのかもしれない。あれほど興奮で荒ぶっていた熱が一瞬で冷えるようだった。

「俺は郁を幸せにしたいと思ってる」

 室見の腕が郁の身体をぎゅう、と強く抱き締める。

「おもちゃだなんて思ってない。郁を幸せにしたい……言っただろ……俺が幸せにしたい……一緒に幸せになりたい。でも、邪魔をするやつらから郁を守らないといけない。……郁を取られたくない……郁を失ったら生きていけない……」

 それは室見の嘘偽りない正直な気持ちなのだろうが、郁にそれを受け入れる余裕はまったくなかった。ずっと自分だけが背負ってきた罪が、ちがうのだと軽い口調で明かされて酷く混乱していた。とても室見を信じることができない。

「郁……わかって……お願いだよ……」

「……わからない……。わか……らない……」

 顔の横でシーツを握りしめていた指を開かされて、上から室見の手が重ねられる。指の間に指を重ねて握られて、身体の奥にある火種に薪がくべられる。心は混乱し室見を拒むのに、身体は簡単に受け入れようとする。心と身体の解離は八年前の事故を彷彿とさせ、郁を苦しめた。
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