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後日談ーもう一度あの時をー 双子の義弟9
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しかし、郁の提案を聞いて、ノアの心の中の悲しみが一気に憎しみに変換されて頭に血がのぼる。
欲しいのは本物の母親の愛情で、他人からの愛情なんて何の足しにもならない。
「ふざけんな! ママを返せっ! お前たちなんかに、愛してなんか……っ!」
ノアは、頬に触れていた郁の手をバシッと叩き落とした。その拍子に食べていたメロンソーダが倒れ、床に落ちてグラスが派手に砕け散る。
「ノア!」
ウィリーが嗜めるように睨んでから、郁の方を向いた。叩かれた時に爪が擦ったらしく、郁の右手の甲にはうっすらと血が滲んでいた。
「郁、大丈夫?」
「大丈夫だよ。ただのかすり傷だ」
モップを持った店員が、手慣れた様子でテーブルと床に散らばったメロンソーダの残骸を片づけてくれた。郁がお礼を言うと、愛想のいい店員はにこりと笑って持ち場に戻っていった。
「ノア、ごめん。無神経なことを言ってしまって」
右手をさりげなく隠した郁がノアの顔色を窺う。
メロンソーダを派手にぶちまけて、郁にも怪我を負わせて、ノアの心にはじわじわと罪悪感がわいていた。しかし、ついさっきまで怒り心頭だった自分もまだ心のなかに同居していて、素直な言葉を出せず顔を背ける。
結局、上機嫌の母親二人が買い物から戻り、その日宿泊するホテルに着いても、ノアは郁とは言葉を交わさなかった。
ホテルの部屋は広く、入り口は一つだが中で二部屋に別れていた。母親二人のベッドルームと、中で行き来ができるドアを挟んで子供たちのベッドルームがあった。ノア以外の全員が、自然とそれぞれの部屋に荷物を置くのに堪忍ならず、ノアはメアリーの袖を引っ張って部屋のすみで抗議の声をあげた。
「ちょっと、ママ……ッ! なんで俺たち、郁と一緒なの!」
「ノア、そうよね。みんなでタタミでフトンで寝たかったわよね。このホテル、五人一部屋がなかったのよ、ごめんなさいね」
しかしメアリーは検討違いなところをノアに謝罪した。
「そうじゃなくて……」
「ねえ、夕食は天ぷらのお店を予約しているのよ。そろそろ行きましょう?」
浮かれているメアリーにそれ以上言えず、ノアは引き摺られるようにしてレストランに連れていかれた。
欲しいのは本物の母親の愛情で、他人からの愛情なんて何の足しにもならない。
「ふざけんな! ママを返せっ! お前たちなんかに、愛してなんか……っ!」
ノアは、頬に触れていた郁の手をバシッと叩き落とした。その拍子に食べていたメロンソーダが倒れ、床に落ちてグラスが派手に砕け散る。
「ノア!」
ウィリーが嗜めるように睨んでから、郁の方を向いた。叩かれた時に爪が擦ったらしく、郁の右手の甲にはうっすらと血が滲んでいた。
「郁、大丈夫?」
「大丈夫だよ。ただのかすり傷だ」
モップを持った店員が、手慣れた様子でテーブルと床に散らばったメロンソーダの残骸を片づけてくれた。郁がお礼を言うと、愛想のいい店員はにこりと笑って持ち場に戻っていった。
「ノア、ごめん。無神経なことを言ってしまって」
右手をさりげなく隠した郁がノアの顔色を窺う。
メロンソーダを派手にぶちまけて、郁にも怪我を負わせて、ノアの心にはじわじわと罪悪感がわいていた。しかし、ついさっきまで怒り心頭だった自分もまだ心のなかに同居していて、素直な言葉を出せず顔を背ける。
結局、上機嫌の母親二人が買い物から戻り、その日宿泊するホテルに着いても、ノアは郁とは言葉を交わさなかった。
ホテルの部屋は広く、入り口は一つだが中で二部屋に別れていた。母親二人のベッドルームと、中で行き来ができるドアを挟んで子供たちのベッドルームがあった。ノア以外の全員が、自然とそれぞれの部屋に荷物を置くのに堪忍ならず、ノアはメアリーの袖を引っ張って部屋のすみで抗議の声をあげた。
「ちょっと、ママ……ッ! なんで俺たち、郁と一緒なの!」
「ノア、そうよね。みんなでタタミでフトンで寝たかったわよね。このホテル、五人一部屋がなかったのよ、ごめんなさいね」
しかしメアリーは検討違いなところをノアに謝罪した。
「そうじゃなくて……」
「ねえ、夕食は天ぷらのお店を予約しているのよ。そろそろ行きましょう?」
浮かれているメアリーにそれ以上言えず、ノアは引き摺られるようにしてレストランに連れていかれた。
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