教科書通りの恋を教えて

山鳩由真

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後日談ーもう一度あの時をー 双子の義弟14

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 東京観光の翌日、郊外にある郁の父親の墓参りに全員で行った。

「郁のお父さんてなんで死んじゃったの?」

 墓前で花を手向ける母親たちから少し離れた所で、ウィリーは郁に聞いた。

「病気だったんだ」

「おまえ、なんでカナに怒らないの? パートナーが死んだばかりなのにさ、すぐに恋人作るなんて、薄情だと思わないの?」

 ノアは母親二人の仲睦まじそうに寄り添う後ろ姿にため息を吐いて、郁に訊ねた。

「父さんは母さんに、幸せに暮らしてほしいと思ってたはずだから、母さんが新しい相手と暮らして幸せなら、それでいいんだ」

 相手が幸せなら、それでいい?
 こいつは、なぜそんな風に思えるのか。
 俺だって、ママの幸せを願ってる。別れたほうのママだって、お互い幸せになりましょうって言って別れたらしいし。でも、俺は? 俺だって、幸せになりたい、愛情が欲しい。誰がカナに奪われた分のママの愛情を補ってくれる?

 ノアが悶々としていると、強めの風が吹いて、きゃっと母親二人が悲鳴をあげた。風が通りすぎると、メアリーがカナを守るように抱き締めて笑いあっている。
 郁がその様子を見てひとりごとのように呟いた。

「よかった……。母さんがあんなに楽しそうに笑うの、久しぶりに見たよ」

 なんて、嬉しそうに笑うんだろう。
 またノアの心臓がきゅっと跳ねる。自分の心臓を掴んだその張本人が、ゆっくりとこちらを向く。

「母さんを受け入れてくれてありがとう。ウィリー、ノア」

 そして郁は、ふんわりと花が咲いたように微笑んだ。その、可愛らしい笑顔。

「えっ……えーっ……どういたしまして??! 俺、郁みたいなかわいいにーちゃんが出来てうれしいよ! なあ、ノア? ノア……?」

 頬を赤く染めているウィリーが、舞い上がって言う。ノアの顔も燃えるように熱くなっていた。身体が震えて声も出ない。

 ああ、なんだ。この笑顔のひとが、欠けた分の愛を補ってくれるのなら、申し分ないじゃないか?

 ノアの心の中の、郁に対する「こいつは敵」という考えは嘘のように霧散していた。
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