子兎とシープドッグ

篠原皐月

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本編

第9話 行動開始

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 新入社員の綾乃は、まだそれほど残業する事もなく、その日もほぼ定時で上がってから荷物を持って自社ビル一階に降りた。しかしそのまま家路を辿る事はせず、ロビーの片隅で柱の陰に身を潜めながら、密かにその時を待つ。

「あ、来たかな?」
 手にしていた携帯電話が静かに振動だけを伝えると、綾乃が嬉しそうに弘樹からのメールの受信内容を確認する。そしてそれを元通りバッグにしまい込んでから、密かに自分自身を奮い立たせた。

「よし、頑張ろう!」
 そんな風に軽く顔を叩いて気合いを入れた綾乃の視界に、待ち人である一人の女性の姿が入り、静かに横切って行った。その顔を、綾乃がしみじみと感慨深げに眺める。
(あの人だ……。写真で見るよりお母さんに似ていて、美人だなぁ……。いけない、見とれてないで、本来の目的を果たさないと)
 些か呆け気味に、その背中を見送りかけた綾乃は、慌てて彼女の後を追った。

「あの……、商品開発部の荒川幸恵さんですよね?」
 最寄り駅に向かって歩いている幸恵の後を追いかけ、横に並んで歩きながら綾乃が声をかけると、案の定幸恵は歩みを止めないまま訝しげな視線を彼女に向けた。

「あなた、誰?」
「申し遅れました。私、今年から星光文具総務部で勤務している、君島綾乃です。宜しくお願いします」
 笑顔で綾乃がそう名乗った途端、幸恵はピタリと足を止め、拳一つ分頭が低い綾乃を見下ろした。
「…………君島?」
「はい。それで」
 無表情になった上、僅かに凄むような声音で確認を入れられた綾乃が、慎重に話を続けようとしたが、幸恵が忌々しそうに口を開いてそれを遮った。

「それで名前が、よりにもよって『あやの』ですって?」
「そうですが……、それが何か?」
「……別に」
 如何にも面白く無さそうに、幸恵はブスッと黙り込んで視線を逸らしたが、綾乃は勇気を振り絞って申し出た。

「あのっ! 荒川さん、一緒にお夕飯でもどうですか?」
「どうして見ず知らずのあなたと、私が一緒に食事をしなければいけないのかしら?」
 当然と言えば当然の皮肉を交えた反応に、綾乃が真顔で答える。
「その……、荒川さんは先輩達の中でも、能力や容姿が一際目立っていますから。これから会社勤めをしていく上で大切な事を、色々ご教授して頂きたいと思いまして……」
 すると、何故かここで幸恵は、険しさを漂わせていた表情を緩め、穏やかに話し出した。

「ふぅん、なぁるほどねぇ……。ご教授願いたいと……。それで、まず私とお近づきになりたくて、食事をご一緒に、というわけなのね?」
「はいっ!」
「それなら……、会社勤めに必要な事を、早速一つ教えてあげるわ」
「本当ですか? ご親切に、ありがとうございます!」
 にこやかな笑顔で語りかけられた綾乃は、すっかり嬉しくなって幸恵の次の言葉を待った。

(一見、お母さんより冷たい感じのする美人だけど、意外に面倒見が良くて、いい人なんだわ。仲良くできそう)
 そんな事を考えながら、期待に溢れる目で幸恵を見つめていた綾乃だったが、対する幸恵は相変わらずニコニコと笑いながら冷たく言い捨てた。

「空気読め、常春とこはる頭」
「え?」
 一瞬自分の耳を疑って固まった綾乃に、幸恵が背後を指さしながら淡々と話を続ける。

「って、あそこの看板に書いてあるのよ。続きを読んでみなさい」
「は? え、ええっと……」
 オロオロとしながら視線を彷徨わせた綾乃に対し、幸恵が幾分厳しく尋ねた。

「返事は?」
「は、はい!」
 そうして慌てて背後に向き直り、言われた看板を探し始めた綾乃だったが、一通り見渡しても該当する物が見当たらず、途方に暮れる。
「あの……、でも荒川さん。さっき仰った看板って、具体的にどこら辺にあるんでしょうか? 何だか見当たらなくて……、あれ? 荒川さん?」
 恐縮気味に尋ねながら、再び背後に向き直った綾乃だったが、幸恵はとっくにその場から足音も立てずに立ち去った後だった。そして十メートル程度離れた所から、密かに二人の様子を窺っていた弘樹と祐司は、一人取り残されて動揺している綾乃を眺め、盛大な溜め息を吐いた。

「何を話していたのかは聞こえなかったが、荒川の奴、あっさりトンズラしやがったな」
「普通に考えて、幸恵の相手は彼女には無理だろ」
「そうね。今のはどう見ても、鼻であしらわれた感じだし」
「そうそう……、うおっ!?」
「相変わらずキツい……、は?」
 いきなり自分達の会話に割り込んできた女性の声に驚いて二人が振り返ると、苦々しげな顔で公子が立っていた。そして弘樹を睨み付けながら、確認を入れてくる。

「以前から、何をコソコソとやっているのかと思えば……。君島さんに頻繁にメール送りつけていただけじゃなくて、ろくでもない事をさせているんじゃ無いでしょうね?」
 その一睨みで観念したらしく、弘樹は乾いた笑いを漏らした。

「あはは……、そう言えば綾乃ちゃん、公子さんに社内メールの事がバレて怒られたって言ってたっけ。だけど今の彼女の行動は、やんごとなき事情から、彼女が自発的に行った行動であって」
「弁解は良いのよ。この際、ちゃんと『おばあちゃん』に、この事態の説明をしてくれるわよね? 弘樹君?」
「は、ははっ……。人が悪いなぁ、公子さん。偶に俺がそう呼ぶと、もの凄く嫌な顔をするくせに、こんな時ばっかり」
 ここで盛大に顔を引き攣らせた弘樹の横で、二人のやり取りを聞いた祐司が眉を寄せ、友人を非難した。

「おい、弘樹! お前、笹木さんに、そんな事を言ってたのか? 笹木さんはまだ五十手前だろう。幾ら何でも『おばあちゃん』は失礼だろうが!」
「うん、まあ……、確かにそうなんだけどな……」
 お局社員として、他にも色々な意味で社内で有名な人物ではあったが、流石に「おばあちゃん」呼ばわりは無いだろうと思った祐司だったが、何故か弘樹は訂正したり謝罪したりする気配を見せず、曖昧に言葉を濁す。その態度に祐司が更に説教しようとすると、公子が口を挟んできた。

「営業部の高木さん、だったわね? 君島さんを回収した方が良いんじゃないかしら? 彼女、どうして良いか分からなくて、オロオロしてるわよ?」
 声をかけながら指さされた方向には、確かに途方に暮れた状態の綾乃が佇んでおり、祐司はその指摘に素直に頷く。

「分かりました、それでは失礼します。じゃあ弘樹、ここで」
「ああ、お疲れ」
 そうしてバタバタと綾乃の元に祐司が走り寄って行くと、公子が薄笑いを浮かべつつ弘樹に向かって一歩足を踏み出した。

「さてと。この顛末を、洗いざらい話してくれるわよね? どこぞの不肖の義理の息子は、私の職場に訳あり娘を突っ込んで、知らん振りを決め込んでいるし」
「は、はは……。もう敵わないな、公子さんには。実は俺も詳しい事情を知ったのは、ごく最近なんだけど……」
 引き攣った笑顔で弘樹が公子に事情を吐かせられている一方で、祐司は幸恵の姿をまだ探していた綾乃に、落ち着き払って声をかけた。

「君島さん」
「え? あ、高木さん、今お帰りですか?」
 律儀に頭を下げて挨拶してきた綾乃に、祐司が幾分疲れ気味に声をかける。

「探しても無駄だと思うぞ? 幸恵はもう居なくなってる筈だから、一緒に何か食べながら帰らないか?」
「えっと……、やっぱりお帰りになったんでしょうか? それにひょっとして、私と幸恵さんのやり取りを見てました?」
 祐司の台詞から様子を窺っていたのを察した綾乃が確認を入れると、祐司が申し訳無さそうに告げた。

「悪い。ちょっと心配だったから、弘樹の奴に連絡して貰う事にしていて……。でもどんなやり取りをしてたか聞こえなかったが、何を言われたんだ?」
 最後は心配そうに尋ねたが、綾乃はそれには直接答えず、難しい顔で溜め息を吐いた。
「一応名乗りましたが、初対面で相当嫌われたみたいです」
「正直に名乗ったから、毛嫌いされたんじゃないか?」
「でも偽名を使うわけにもいきませんし……。大丈夫です。幸恵さんが私の家の人間に、好感情を持っていないのは分かっていましたから。ちょっとやそっと避けられた位で、諦めたりしません!」
 至極真っ当な意見に加え、綾乃のやる気が微塵も衰えていないのを確認できた祐司は、無意識に手を伸ばして彼女の頭を撫でつつ、相好を崩した。

「その意気だ。あいつは相当手強いと思うが頑張れ。今日の夕飯は奢るから」
 そう言って祐司が身振りで移動を促すと、綾乃は並んで歩き出しながら嬉しそうに尋ねてきた。

「ありがとうございます。じゃあ食べながら色々お聞きしたい事があるので、教えて貰えますか?」
「分かった。じゃあ俺もこの前君の連絡先とか聞きそびれたから、教えて貰えるかな?」
 ついでを装って祐司が尋ねると、綾乃が意外そうな顔を見せた。
「遠藤さんには伝えてあるんですが……、遠藤さんからお聞きになって無いんですか?」
 しかしその問いに、祐司が忌々しげに応じる。

「あいつ……、『可愛い女の子の情報は機密保持の対象だ。知りたかったら自分で聞け』とかほざきやがった」
 その如何にも腹立たしげな台詞を聞いて、綾乃は思わず小さく噴き出した。そして何とか笑いを堪えながらコメントする。
「遠藤さんって、結構楽しい方みたいですね?」
「人をからかう事にかけては、天才的なのは認める。まあ……、それはともかく、これから俺のお薦めの店に連れて行くけど、俺に聞きたい事があれば、移動しながらでも遠慮なく聞いて良いよ?」
 もう苦笑いしかできない祐司がそう促すと、綾乃は少し真剣な顔で考えてから、真顔で言い出した。

「そうですか? それじゃあ……、まず幸恵さんは、お昼は社員食堂派かお弁当持参派かご存知ですか?」
「は?」
 いきなり出てきた予想外の質問に、祐司が目を丸くして固まる。その反応を見た綾乃が、申し訳無さそうに俯いた。

「すみません。お付き合いしていたのなら、こういう事もご存知かと思ったんですが……」
「ええと……。俺の知る限りでは外食派だな。社食と店に食べに行くのとコンビニとかで弁当の類を買って席で食べるのと、大体同じ割合だったかと思うが……」
 気を取り直し、昼食に関する過去のやり取りを思い返しつつ冷静に述べると、綾乃は途端に顔付きを明るくする。

「やっぱり良くご存知ですね。次に、出勤時間帯は何時位ですか?」
「大体始業時間二十分前に、正面玄関から入るペースかな?」
「それから、幸恵さんの趣味は何ですか? もしくは休日の過ごし方とか教えて貰いたいんですが」
「…………」
 そんな調子で綾乃の幸恵に関する質問は止まることを知らず、祐司は何とか笑顔を保ちながら、律儀に最後までその質問に答えたのだった。

 そして翌朝、社屋ビル一階ロビーで幸恵を待ち受けていた綾乃は、幸恵の姿が視界の隅に入ってきた途端、彼女に向かってパタパタと駆け寄った。

「荒川さん、おはようございます!」
「…………」
 しかし綾乃の方をチラリとも見ず、幸恵は真っ直ぐ前を向いたまま歩き続ける。
「今日は気持ちの良いお天気ですね?」
「…………」
「こういう日は、お仕事もはかどりそうですよね!」
「…………」
 明るく話しかけている綾乃を幸恵がひたすら無視すると言う構図に、周囲の者達は何事かと怪訝な表情で二人を眺めたが、事情を知っている男二人は、昨夜同様少し離れた所から、半ば呆れ気味に問題の二人の様子を眺めていた。

「綾乃ちゃん、今日も朝から頑張ってるな……」
「あれ、どう見たって、相手にされてないだろ……」
 そこで項垂れた祐司に、弘樹が僅かに顔を顰めながら言い出す。

「お前もそれなりに頑張ってるんだろうな? わざわざ公子さんに締め上げられるのを覚悟で、二人きりにしてやったんだから、ありがたく思えよ?」
 その恩着せがましい台詞にも腹を立てたりせず、祐司は静かに答えた。
「一応……、昨日は夕飯を一緒に食べながら聞きそびれていたメルアドと携番を交換して、マンションの下まで送って行ったが……」
「おぉ、調子出てきたじゃないか!」
 僅かにからかいを含んだ口調で嬉々として応じた弘樹だったが、何故か祐司は暗い表情のまま話を続けた。

「彼女が振ってくる話題が、最初から最後まで元カノに関する事って言うのは、世間一般的に見てどうかと思う」
 言われた内容と、その微妙な口調に、弘樹は思わずピクリと顔を引き攣らせて尋ねる。

「おいおい、まさか荒川に嫉妬なんかしてないだろうな? お前に関する事、何も聞かれなかった訳じゃないだろ?」
「………………」
 しかし難しい顔で黙り込んでしまった祐司を見て、弘樹は頭痛を覚えた。

(微塵も聞かれなかったのかよ……。綾乃ちゃん、ちょっとは男心を汲んでやってくれ)
 既にその場を立ち去った綾乃に対して心の中で懇願してから、弘樹は何とか無難な感想を述べてみた。

「まあ……、確かにそれは、イマイチ盛り上がりに欠ける上、気まずいよなぁ……」
 そう言って気遣わしげに祐司に目をやった弘樹だったが、祐司は小さく首を振った。

「いや、目をキラキラさせて、彼女だけはメモを取りながら大いに盛り上がってた。だからついつい問われるまま答えていたが……。幸恵とのデートの内容まで話が及んだ時には、もう本当にどうしようかと……」
 流石にそれを聞いた弘樹は、顔を強張らせた。

「おい、まさかバカ正直に、そんな事まで洗いざらい話したわけじゃないだろうな?」
「……何とか話を逸らして誤魔化した」
「苦労が多いよな、お互い」
 疲れたように溜め息を吐き出した祐司に、弘樹が苦笑いで返す。すると些か気分を害したように、祐司が言い出した。

「お互いにって……、お前は端から見て面白がってるだけだろうが?」
「今回に限ってはそうでも無いんだ、これが。公子さんの耳に入っちまったからな」
 それを聞いた祐司が、不可解な表情で問い掛ける。

「あの人に何の関係があるんだ? 確かにベテラン社員として色々な意味で有名だが、所属部署は違うし年齢も離れてるし。……そう言えばお前と接点が無い筈なのに、昨日何か妙な事を言ってたよな?」
 僅かに目を細めて祐司が追及の姿勢を見せたが、ここで弘樹は小さく肩を竦めて話を逸らした。

「それは追々説明する。取り敢えず行くぞ? 始業時間に遅れる」
「分かった」
 すっきりしないのは山々だったが、弘樹の言い分を認めた祐司は(いつかはきちんと説明させてやる)と思いながら、自分の職場に向かって歩き出した。

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