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プロローグ そもそもの始まり
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とある二人の始まりは、《彼》の場合は大学時代からの悪友に、《彼女》の場合は後に姉の夫となる人物に、面白半分に引き合わされた事だった。
「やあ、美実ちゃん。良く来てくれたね」
「江原さんが、『絶対気に入る奴を紹介するから』って言うから、来てはみたけど……」
指定された喫茶店に出向いた美実は、只今絶賛長姉に言い寄り中の、なかなかハイスペックながらも壮絶に胡散臭い男の向かい側に座りながら、軽く顔を顰めた。その表情を見た彼女を呼びつけた男、江原秀明は、面白そうに笑みを零したが、彼が何か言う前に、並んで座っていた男が皮肉げに会話に割って入る。
「へえ? 俺じゃあ不満だとでも? 高校生って聞いてたが、やっぱガキだな。俺の魅力が分からないとは」
そう言って秀明の悪友である淳はせせら笑ったが、美実は負けじと言い返した。
「そうね。オジサンの魅力は、オバサンにしか分からないかもね。ホント、『ガキ』で良かったわ~。……あ、カフェオレ一つね」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
ちょうど注文を取りに来た店員にオーダーし、平然とお絞りで手を拭き始めた美実を見て、淳が若干顔を歪めながら低い声で唸る。
「この野郎……、生意気言ってくれるじゃねぇか」
「野郎じゃなくて、れっきとした女よ。日本語をもう一回、勉強してきたら? 最近は大学生の学力低下が顕著で、分数とかもできない学生がいるらしいけど、天下の最高峰東成大出身でも大した事は無いみたいね」
「ああ言えばこう言うっ……」
如何にも(生意気なガキだな)的な視線を投げられてもビクともしない美実を見て、秀明は笑いながら淳に言い聞かせた。
「淳、お前の負けだ。ここは潔く頭を下げて、開口一番ガキ呼ばわりした事を詫びるんだな」
「お前……、一体どっちの味方だ?」
「勿論、可愛い未来の義妹だ」
「本当にろくでもない奴」
しれっとして言い返した友人に向かって、淳は忌々しげに悪態を吐いて珈琲を飲んだが、ここで黙って二人のやり取りを聞いていた美実が、秀明に対して辛辣な台詞を投げつける。
「あらら。今現在、美子姉さんに見向きもされないどころか、目の前に姿も見せていない人間が、何をほざいているのやら」
「参ったな。俺まで返り討ちにされるとは」
「心にもない事を言ってるからよ」
「美実ちゃんの事は、本当に可愛いと思っているよ?」
「そんな世迷言はともかく、美子姉さんに多少ちょっかいを出すのは大目に見てあげるけど、遊び半分で手を出したら埋めるわよ?」
苦笑している秀明に向かって、真正面から凄んでみせた美実を見て、親友の底意地の悪さと質の悪さをこれまでのあれこれで知り抜いていた淳は、肝を冷やしながら確認を入れた。
「おい、秀明……。こいつ、お前の本性を知った上で言ってるのか?」
「本当の所までは分かっていないと思うが、相当胡散臭い人間だとは思っている筈だぞ? 人を見る目が、結構シビアだからな」
「それはそれは……」
落ち着き払って説明する秀明に淳は呆れたが、次の台詞で思わず溜め息を吐いてしまった。
「だから俺の悪友のお前も、ろくでもない類の人間だとちゃんと認識しているだろうし、紹介しても全く良心は痛まない」
「お前、そんな人間を紹介して、どうしようって言うんだ?」
「面白そうだし、意外に気が合いそうだと思ったんだが」
「お前が面白がっているだけだろ」
そこまで聞いて完全に呆れ果てた淳は、半ば自棄になりながら冷めかけた珈琲を飲んだ。
(全く……、なんで俺がこんな発育途上のガキの為に、貴重な休日の時間を浪費しなくちゃならないんだ?)
内心で腹を立てながら珈琲を飲んでいた淳を、美実は無言で観察していたが、テーブルに運ばれてきたカフェオレを一口飲んだところで、秀明に声をかけた。
「ところで、江原さん」
「うん? 何だい? 美実ちゃん」
「発育途上のガキなお子様に、その将来禿げそうなオジサンの名前と職業位、そろそろ教えて欲しいな~」
(って、こいつ! 心が読めるのかよ!? と言うか)
そこで淳は勢い良くカップをソーサーに戻して吠えた。
「誰が『将来禿げそうなオジサン』だ!?」
しかし秀明は、そんな友人の叫びを完全にスルーして、美実に向かって笑顔を振り撒く。
「ああ、悪い、うっかりしていた。こいつは小早川淳。年は俺と同じで、弁護士だ」
その紹介に、彼女は淳に視線を向けて、棒読み口調で感想を述べる。
「へぇえ~、弁護士ねぇ~。それはそれは、タイヘンナゴショクギョウデ、イラッシャイマスノネ~」
それを聞いた淳は、ひくっと顔を引き攣らせて反応した。
「今、絶対馬鹿にしただろ!? というか、『こいつ絶対悪の手先になって、善良な市民から小金を巻き上げてる小悪党だわ』とか決めつけてるよな!?」
「うわぁ……、被害妄想、ここに極まれりって感じ~。江原さん、ジャッジ」
「お前の気のせいだ」
「秀明! お前、どっちの味方だ!?」
「だからさっきから、美実ちゃんの味方だと言ってる」
「お前は俺のダチじゃなかったのかよ!?」
声を荒げた淳だったが、秀明は如何にも残念そうに首を振りながら、真顔で言ってのけた。
「間に男が入ると女同士の友情は脆いと言うが、女が絡むと男同士の友情も脆いと言う実例だな」
「お前と言う奴はっ……」
「うわぁ……、自称友人に切り捨てられるなんて可哀想なオジサン~。ピチピチの女子高生が、ちょっとだけなら慰めてあげても良いわよ?」
「だから十歳違いの男を、オジサン呼ばわりするな!」
本気で怒りを露わにした淳に、秀明と美実がとうとう堪え切れずに笑い出し、それから暫く二人掛かりで淳を宥める事となった。
「やあ、美実ちゃん。良く来てくれたね」
「江原さんが、『絶対気に入る奴を紹介するから』って言うから、来てはみたけど……」
指定された喫茶店に出向いた美実は、只今絶賛長姉に言い寄り中の、なかなかハイスペックながらも壮絶に胡散臭い男の向かい側に座りながら、軽く顔を顰めた。その表情を見た彼女を呼びつけた男、江原秀明は、面白そうに笑みを零したが、彼が何か言う前に、並んで座っていた男が皮肉げに会話に割って入る。
「へえ? 俺じゃあ不満だとでも? 高校生って聞いてたが、やっぱガキだな。俺の魅力が分からないとは」
そう言って秀明の悪友である淳はせせら笑ったが、美実は負けじと言い返した。
「そうね。オジサンの魅力は、オバサンにしか分からないかもね。ホント、『ガキ』で良かったわ~。……あ、カフェオレ一つね」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
ちょうど注文を取りに来た店員にオーダーし、平然とお絞りで手を拭き始めた美実を見て、淳が若干顔を歪めながら低い声で唸る。
「この野郎……、生意気言ってくれるじゃねぇか」
「野郎じゃなくて、れっきとした女よ。日本語をもう一回、勉強してきたら? 最近は大学生の学力低下が顕著で、分数とかもできない学生がいるらしいけど、天下の最高峰東成大出身でも大した事は無いみたいね」
「ああ言えばこう言うっ……」
如何にも(生意気なガキだな)的な視線を投げられてもビクともしない美実を見て、秀明は笑いながら淳に言い聞かせた。
「淳、お前の負けだ。ここは潔く頭を下げて、開口一番ガキ呼ばわりした事を詫びるんだな」
「お前……、一体どっちの味方だ?」
「勿論、可愛い未来の義妹だ」
「本当にろくでもない奴」
しれっとして言い返した友人に向かって、淳は忌々しげに悪態を吐いて珈琲を飲んだが、ここで黙って二人のやり取りを聞いていた美実が、秀明に対して辛辣な台詞を投げつける。
「あらら。今現在、美子姉さんに見向きもされないどころか、目の前に姿も見せていない人間が、何をほざいているのやら」
「参ったな。俺まで返り討ちにされるとは」
「心にもない事を言ってるからよ」
「美実ちゃんの事は、本当に可愛いと思っているよ?」
「そんな世迷言はともかく、美子姉さんに多少ちょっかいを出すのは大目に見てあげるけど、遊び半分で手を出したら埋めるわよ?」
苦笑している秀明に向かって、真正面から凄んでみせた美実を見て、親友の底意地の悪さと質の悪さをこれまでのあれこれで知り抜いていた淳は、肝を冷やしながら確認を入れた。
「おい、秀明……。こいつ、お前の本性を知った上で言ってるのか?」
「本当の所までは分かっていないと思うが、相当胡散臭い人間だとは思っている筈だぞ? 人を見る目が、結構シビアだからな」
「それはそれは……」
落ち着き払って説明する秀明に淳は呆れたが、次の台詞で思わず溜め息を吐いてしまった。
「だから俺の悪友のお前も、ろくでもない類の人間だとちゃんと認識しているだろうし、紹介しても全く良心は痛まない」
「お前、そんな人間を紹介して、どうしようって言うんだ?」
「面白そうだし、意外に気が合いそうだと思ったんだが」
「お前が面白がっているだけだろ」
そこまで聞いて完全に呆れ果てた淳は、半ば自棄になりながら冷めかけた珈琲を飲んだ。
(全く……、なんで俺がこんな発育途上のガキの為に、貴重な休日の時間を浪費しなくちゃならないんだ?)
内心で腹を立てながら珈琲を飲んでいた淳を、美実は無言で観察していたが、テーブルに運ばれてきたカフェオレを一口飲んだところで、秀明に声をかけた。
「ところで、江原さん」
「うん? 何だい? 美実ちゃん」
「発育途上のガキなお子様に、その将来禿げそうなオジサンの名前と職業位、そろそろ教えて欲しいな~」
(って、こいつ! 心が読めるのかよ!? と言うか)
そこで淳は勢い良くカップをソーサーに戻して吠えた。
「誰が『将来禿げそうなオジサン』だ!?」
しかし秀明は、そんな友人の叫びを完全にスルーして、美実に向かって笑顔を振り撒く。
「ああ、悪い、うっかりしていた。こいつは小早川淳。年は俺と同じで、弁護士だ」
その紹介に、彼女は淳に視線を向けて、棒読み口調で感想を述べる。
「へぇえ~、弁護士ねぇ~。それはそれは、タイヘンナゴショクギョウデ、イラッシャイマスノネ~」
それを聞いた淳は、ひくっと顔を引き攣らせて反応した。
「今、絶対馬鹿にしただろ!? というか、『こいつ絶対悪の手先になって、善良な市民から小金を巻き上げてる小悪党だわ』とか決めつけてるよな!?」
「うわぁ……、被害妄想、ここに極まれりって感じ~。江原さん、ジャッジ」
「お前の気のせいだ」
「秀明! お前、どっちの味方だ!?」
「だからさっきから、美実ちゃんの味方だと言ってる」
「お前は俺のダチじゃなかったのかよ!?」
声を荒げた淳だったが、秀明は如何にも残念そうに首を振りながら、真顔で言ってのけた。
「間に男が入ると女同士の友情は脆いと言うが、女が絡むと男同士の友情も脆いと言う実例だな」
「お前と言う奴はっ……」
「うわぁ……、自称友人に切り捨てられるなんて可哀想なオジサン~。ピチピチの女子高生が、ちょっとだけなら慰めてあげても良いわよ?」
「だから十歳違いの男を、オジサン呼ばわりするな!」
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