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番外編 結婚披露宴迷走曲~過去からの贈り物
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「さて、次はケーキ入刀及びファーストバイトに移りますが、ケーキの最後の仕上げは新郎にして頂く事になっております。その理由について、今から新郎様よりご説明がございます。それでは新郎様、宜しくお願いします」
「はい」
「清人?」
司会に促されて立ち上がった清人を、真澄は怪訝な顔で見上げた。
(普通のケーキカットじゃないの? そんな話、全然聞いていないんだけど?)
その視線を受けた清人が真澄に軽く微笑んでから、スタッフから渡されたマイクを片手に静かに語り出す。
「少しお時間を頂きます。実は私の早世した父は調理師だったのですが、最近父が残したレシピ集の中に、私と妻の名前入りのウェディングケーキのレシピが入っているのを発見しました」
「え?」
予想外の話を聞いて思わず小さな驚きの声を上げた真澄に一瞬視線を向けてから、清人は説明を続けた。
「実は今回の披露宴の演出は、自分達がまだ学生の頃に、勝手に二人が結婚する事を前提に、義理の母と柏木の義母と、当時懇意にしていた近所の女性が纏めたものがベースとなっております」
「おいおい、何年前の話だよ」
「お母様達、ご慧眼ですこと」
そこで清人が一旦言葉を区切ったのを受けて、会場から冷やかしや笑い声が上がる。それが静まってから清人が話を続けた。
「レシピに記載された日付を見ても、その披露宴案ができた日付から、そう大して時を置かずに書かれた物なのが分かります。これは私の推測ですが、おそらく義母からこの話を聞いた父が除け者にされたといじけて、『それならケーキは俺が作ってやる』と対抗して案を作ったのだと思われます」
清人が笑いを堪える様な表情でそう告げた為、会場からも小さな笑いが漏れた。そして静けさが戻ってから、清人が感慨深く言葉を続ける。
「生憎、父は私にそんな事を一言も漏らしませんでしたから、父が亡くなった後纏めてしまい込んだレシピの中に、そんな物が入っているなんて、夢にも思いませんでした。しかし今回結婚を期に住居を移転する為、処分出来るものは徹底的に処分しようと父の遺品を再確認する過程で、これを発見できた次第です。ちょうど披露宴の準備期間中に、それを発見出来たのは僥倖でした。この偶然は死んだ父の『これを使ってくれ』という遺志とも思えた為、それに沿って作る事に致しました」
そしていつの間にか静まり返った会場内の湿っぽい空気を払拭する様に、清人が明るく清香に向かって声をかけた。
「……ああ、清香。ついでっぽくお前の分のケーキのレシピも作って有ったぞ?」
「えぇ? お兄ちゃん、それ本当?」
思わずガタンと音を立てて椅子から立ち上がりながら清香が声を上げると、清人はニヤリと笑いながらその詳細を述べた。
「ああ。俺達のは二人の名前入りで長方形一段のアメリカ式の物だが、もう一つはお前の名前だけ入った三段スクエアのイギリス式だ。近所のケーキ店のショーウィンドーの前を通る度、お前はディスプレイされてた三段重ねのケーキを指差して『清香あれが食べたい!』って言ってただろう? だからそれになったんだな。良かったな、今なら全部食べても腹は壊さないと思うぞ?」
「おおおお兄ちゃん! 全部なんか食べないわよ! それにあれ、キラキラで可愛かったから欲しかったんだし!」
顔を真っ赤にして狼狽する清香の様子を見て、会場中から笑いが巻き起こった。それに満足した様に、清人が悪戯っぽく付け加える。
「実はお前の引き出物用の袋に、そのレシピが入れてあるんだ。落とさず持って帰れよ?」
「落とさないわよっ!」
腹立たしく叫んで、恥ずかしさでテーブルに突っ伏した清香を、笑いを堪える表情で由紀子と恭子が両脇から宥めているのを認めて、清人は真顔に戻って脱線した話を戻した。
「私は料理は一通りできるので、可能なら自分で作りたかったのですが、ここまでの大きさと本格的なケーキは作った事が無い上、出席者の皆さんにお配りする以上、何か問題が生じてもいけません。加えて素人が手製の生ケーキを持ち込んだり、厨房に入り込むのはホテルの厨房スタッフにとっても困る事態になりかねませんので、ここのスタッフにレシピに忠実に作って頂いて、この場で仕上げをさせて頂く事になりました。お見苦しい点が有るかもしれませんが、どうかご容赦下さい」
そうして清人がマイクを置いて一礼すると、了承する様に拍手が沸き起こった。そして雛壇と最前列のテーブルとの間に次々に大きなワゴンが運び込まれ、その中の一つに幅一メートルはあろうかという、生クリームでコーティングされた長方形のケーキが乗せられているのを認めた真澄は、横に立つ清人を仰ぎ見た。
「清人、あなたできるの?」
「こっそり練習したから大丈夫だ」
スタッフにジャケットを脱がせてもらい、袖口のカフスボタンを外してシャツを肘まで捲り上げながら自信たっぷりに応じた清人に、真澄は呆れて溜め息を吐いた。
「全く……、どこまで秘密主義なのよ」
そんな彼女に小さく笑いかけてから清人はテーブルを回り込み、一段降りてワゴンの前に立った。そして調理場のスタッフである白衣の人物と軽くやり取りをして受け取った、使い捨ての薄いプラスチックグローブを手に填める。そしてテーキの横に用意されたステンレス製のバットに手を伸ばした。
清人の作業風景は専門の撮影スタッフが斜め上からカメラで捉え、それが中央のスクリーンに映し出されていたが、そこには躊躇いや無駄のない清人の手の動きが鮮明に映し出されていた。
適当にカットされたイチゴやオレンジに加え、ブルーベリーなどで次々に花を模した形で四隅が埋め尽くされ、緑色で形成された葉や茎型、薄水色の鳩型のマジパンが周囲にアクセントを付けていく。加えて紙吹雪を模したらしい、ごく小さな立方体の色とりどりのゼリーやアザランを五月蠅くない程度に散らしてから、清人は金型の付いた白い絞り出し袋を手に取った。
周囲に均一に、途切れさせずにクリームを絞り出していくのは素人にはなかなか難儀だと思われる作業も、清人は滑らかな動きであっさりとやり遂げ、次いで細めの袋を手に取った。そして仕上げとばかりに中央に空いたスペースに、チョコで一気にメッセージを書き上げる。白いケーキ上に≪Happy Marriage Kiyoto & Masumi≫の文字が記され、清人が絞り袋を横に置きつつ司会者に頷いてみせると、彼は落ち着き払ってスタッフに指示を出しつつ出席者に呼びかけた。
「それではケーキが完成しましたので、こちらのお父様のレシピのイラストと並べ比べてみたいと思います」
そう言って司会者が手にしていたレシピを、先程清人の作業を撮影していたスタッフとは別のカメラマンが撮影し始めると同時に、スクリーンが上下二つに分割された。そしてレシピのイラストと、つい先ほど完成したケーキの画像を並べて目にする事になった会場の者達は、皆一様に唸って感嘆の声を上げる。
「うおっ、すげぇな」
「まさに、寸分違わずだぜ」
「やってくれるな、清人」
「何も見ないで、ここまで同じ様に作れるわけ?」
「さすがね。半分呆れたけど」
会場が少しざわめいてから、誰からともなく拍手が生じた。しばらく続いたそれに会釈しつつ清人が服装を整えている中、真澄がスタッフの手を借りてドレスの裾を気にしながら、ゆっくりテーブルの前へと進み出る。そして黙って自分を見つめてきた真澄に、清人は軽くケーキを指し示しながら明るく笑う。
「ほら、真澄。親父からの結婚祝いだ。直に作っては貰えなかったし、本来の物とは若干違うと思うがな」
そう言われて、何か口にしたら泣き出しそうで我慢していた真澄は、俯いてレースの手袋で軽く目頭を押さえながら、涙声で礼を述べた。
「……ううん、それでも良いの。本当に叔父様に祝福して貰ったみたいで、凄く嬉しい」
「そうか」
優しい声で頷いた清人はそのまま十数秒真澄の様子を観察し、何とか涙が収まったのを見て司会者に目配せを送った。それを受けてから心得た彼が、主席者に呼びかける。
「それではケーキ入刀に移ります。ご夫婦での初の協同作業を撮影されたい方は、前方にお集まり下さい。ファーストバイト後は一旦このケーキは引き上げさせて頂きまして、最後のデザートに添えさせて頂きますのでお楽しみに」
それを受けて嬉々として数人がカメラ片手に立ち上がり、前方に向かって歩き始めたが、ここで会場の反対側の方から、良く響く声が届いた。
「でもさ~、司会者さ~ん」
「はい?」
呼びかけられ、思わず反射的に司会者が答えると、新婦側親族席から玲二がどう見ても面白がっているとしか見えない笑顔で、わざとらしく声を張り上げた。
「確かにその二人、今日は同時だけど別々に叩いたり点火したり注いだりしたてけどね~、実はとっくに協同作業なんて済ませててさ~、姉貴のお腹にもう結果が居るんだけどな~、二人ほど~」
その発言に、会場中が一瞬不気味なほどに静まり返ってから、物凄い爆笑に包まれた。
笑いの差こそあれ、老若男女関係なく「違いない!」「そうだな、初じゃないよな」「結果はもう出てたわね」などと口々に言い合って盛り上がる面々を前にして、真澄の怒りが一気に振り切れる。
「玲二!! 余計な事は言わないで! ……ちょっと清人! あなたまで、何一緒になって笑ってるのよ!?」
「すまんっ……、何かツボに入った……。腹が痛い……」
自分と一緒に憤慨しているかと思いきや、左腕で自分の腹を抱えるようにし、右手で口元を覆って必死に笑いを堪えているらしい清人に、真澄が怒りを炸裂させた。
「あのね! お腹抱えてないで、さっさと進めるわよ!」
「分かった、分かったから、頼む……、ちょっとだけ待ってくれ」
そうして清人は何とか平常心を取り戻してから、怒りと羞恥心で顔を朱に染めた真澄と共にケーキカットを行った。そして冷やかす声が飛び交う中、一口サイズに切り分けたそれを互いに一切れずつ食べさせ合ってから、満足そうに真澄の手を引きつつ席に戻った。
「はい」
「清人?」
司会に促されて立ち上がった清人を、真澄は怪訝な顔で見上げた。
(普通のケーキカットじゃないの? そんな話、全然聞いていないんだけど?)
その視線を受けた清人が真澄に軽く微笑んでから、スタッフから渡されたマイクを片手に静かに語り出す。
「少しお時間を頂きます。実は私の早世した父は調理師だったのですが、最近父が残したレシピ集の中に、私と妻の名前入りのウェディングケーキのレシピが入っているのを発見しました」
「え?」
予想外の話を聞いて思わず小さな驚きの声を上げた真澄に一瞬視線を向けてから、清人は説明を続けた。
「実は今回の披露宴の演出は、自分達がまだ学生の頃に、勝手に二人が結婚する事を前提に、義理の母と柏木の義母と、当時懇意にしていた近所の女性が纏めたものがベースとなっております」
「おいおい、何年前の話だよ」
「お母様達、ご慧眼ですこと」
そこで清人が一旦言葉を区切ったのを受けて、会場から冷やかしや笑い声が上がる。それが静まってから清人が話を続けた。
「レシピに記載された日付を見ても、その披露宴案ができた日付から、そう大して時を置かずに書かれた物なのが分かります。これは私の推測ですが、おそらく義母からこの話を聞いた父が除け者にされたといじけて、『それならケーキは俺が作ってやる』と対抗して案を作ったのだと思われます」
清人が笑いを堪える様な表情でそう告げた為、会場からも小さな笑いが漏れた。そして静けさが戻ってから、清人が感慨深く言葉を続ける。
「生憎、父は私にそんな事を一言も漏らしませんでしたから、父が亡くなった後纏めてしまい込んだレシピの中に、そんな物が入っているなんて、夢にも思いませんでした。しかし今回結婚を期に住居を移転する為、処分出来るものは徹底的に処分しようと父の遺品を再確認する過程で、これを発見できた次第です。ちょうど披露宴の準備期間中に、それを発見出来たのは僥倖でした。この偶然は死んだ父の『これを使ってくれ』という遺志とも思えた為、それに沿って作る事に致しました」
そしていつの間にか静まり返った会場内の湿っぽい空気を払拭する様に、清人が明るく清香に向かって声をかけた。
「……ああ、清香。ついでっぽくお前の分のケーキのレシピも作って有ったぞ?」
「えぇ? お兄ちゃん、それ本当?」
思わずガタンと音を立てて椅子から立ち上がりながら清香が声を上げると、清人はニヤリと笑いながらその詳細を述べた。
「ああ。俺達のは二人の名前入りで長方形一段のアメリカ式の物だが、もう一つはお前の名前だけ入った三段スクエアのイギリス式だ。近所のケーキ店のショーウィンドーの前を通る度、お前はディスプレイされてた三段重ねのケーキを指差して『清香あれが食べたい!』って言ってただろう? だからそれになったんだな。良かったな、今なら全部食べても腹は壊さないと思うぞ?」
「おおおお兄ちゃん! 全部なんか食べないわよ! それにあれ、キラキラで可愛かったから欲しかったんだし!」
顔を真っ赤にして狼狽する清香の様子を見て、会場中から笑いが巻き起こった。それに満足した様に、清人が悪戯っぽく付け加える。
「実はお前の引き出物用の袋に、そのレシピが入れてあるんだ。落とさず持って帰れよ?」
「落とさないわよっ!」
腹立たしく叫んで、恥ずかしさでテーブルに突っ伏した清香を、笑いを堪える表情で由紀子と恭子が両脇から宥めているのを認めて、清人は真顔に戻って脱線した話を戻した。
「私は料理は一通りできるので、可能なら自分で作りたかったのですが、ここまでの大きさと本格的なケーキは作った事が無い上、出席者の皆さんにお配りする以上、何か問題が生じてもいけません。加えて素人が手製の生ケーキを持ち込んだり、厨房に入り込むのはホテルの厨房スタッフにとっても困る事態になりかねませんので、ここのスタッフにレシピに忠実に作って頂いて、この場で仕上げをさせて頂く事になりました。お見苦しい点が有るかもしれませんが、どうかご容赦下さい」
そうして清人がマイクを置いて一礼すると、了承する様に拍手が沸き起こった。そして雛壇と最前列のテーブルとの間に次々に大きなワゴンが運び込まれ、その中の一つに幅一メートルはあろうかという、生クリームでコーティングされた長方形のケーキが乗せられているのを認めた真澄は、横に立つ清人を仰ぎ見た。
「清人、あなたできるの?」
「こっそり練習したから大丈夫だ」
スタッフにジャケットを脱がせてもらい、袖口のカフスボタンを外してシャツを肘まで捲り上げながら自信たっぷりに応じた清人に、真澄は呆れて溜め息を吐いた。
「全く……、どこまで秘密主義なのよ」
そんな彼女に小さく笑いかけてから清人はテーブルを回り込み、一段降りてワゴンの前に立った。そして調理場のスタッフである白衣の人物と軽くやり取りをして受け取った、使い捨ての薄いプラスチックグローブを手に填める。そしてテーキの横に用意されたステンレス製のバットに手を伸ばした。
清人の作業風景は専門の撮影スタッフが斜め上からカメラで捉え、それが中央のスクリーンに映し出されていたが、そこには躊躇いや無駄のない清人の手の動きが鮮明に映し出されていた。
適当にカットされたイチゴやオレンジに加え、ブルーベリーなどで次々に花を模した形で四隅が埋め尽くされ、緑色で形成された葉や茎型、薄水色の鳩型のマジパンが周囲にアクセントを付けていく。加えて紙吹雪を模したらしい、ごく小さな立方体の色とりどりのゼリーやアザランを五月蠅くない程度に散らしてから、清人は金型の付いた白い絞り出し袋を手に取った。
周囲に均一に、途切れさせずにクリームを絞り出していくのは素人にはなかなか難儀だと思われる作業も、清人は滑らかな動きであっさりとやり遂げ、次いで細めの袋を手に取った。そして仕上げとばかりに中央に空いたスペースに、チョコで一気にメッセージを書き上げる。白いケーキ上に≪Happy Marriage Kiyoto & Masumi≫の文字が記され、清人が絞り袋を横に置きつつ司会者に頷いてみせると、彼は落ち着き払ってスタッフに指示を出しつつ出席者に呼びかけた。
「それではケーキが完成しましたので、こちらのお父様のレシピのイラストと並べ比べてみたいと思います」
そう言って司会者が手にしていたレシピを、先程清人の作業を撮影していたスタッフとは別のカメラマンが撮影し始めると同時に、スクリーンが上下二つに分割された。そしてレシピのイラストと、つい先ほど完成したケーキの画像を並べて目にする事になった会場の者達は、皆一様に唸って感嘆の声を上げる。
「うおっ、すげぇな」
「まさに、寸分違わずだぜ」
「やってくれるな、清人」
「何も見ないで、ここまで同じ様に作れるわけ?」
「さすがね。半分呆れたけど」
会場が少しざわめいてから、誰からともなく拍手が生じた。しばらく続いたそれに会釈しつつ清人が服装を整えている中、真澄がスタッフの手を借りてドレスの裾を気にしながら、ゆっくりテーブルの前へと進み出る。そして黙って自分を見つめてきた真澄に、清人は軽くケーキを指し示しながら明るく笑う。
「ほら、真澄。親父からの結婚祝いだ。直に作っては貰えなかったし、本来の物とは若干違うと思うがな」
そう言われて、何か口にしたら泣き出しそうで我慢していた真澄は、俯いてレースの手袋で軽く目頭を押さえながら、涙声で礼を述べた。
「……ううん、それでも良いの。本当に叔父様に祝福して貰ったみたいで、凄く嬉しい」
「そうか」
優しい声で頷いた清人はそのまま十数秒真澄の様子を観察し、何とか涙が収まったのを見て司会者に目配せを送った。それを受けてから心得た彼が、主席者に呼びかける。
「それではケーキ入刀に移ります。ご夫婦での初の協同作業を撮影されたい方は、前方にお集まり下さい。ファーストバイト後は一旦このケーキは引き上げさせて頂きまして、最後のデザートに添えさせて頂きますのでお楽しみに」
それを受けて嬉々として数人がカメラ片手に立ち上がり、前方に向かって歩き始めたが、ここで会場の反対側の方から、良く響く声が届いた。
「でもさ~、司会者さ~ん」
「はい?」
呼びかけられ、思わず反射的に司会者が答えると、新婦側親族席から玲二がどう見ても面白がっているとしか見えない笑顔で、わざとらしく声を張り上げた。
「確かにその二人、今日は同時だけど別々に叩いたり点火したり注いだりしたてけどね~、実はとっくに協同作業なんて済ませててさ~、姉貴のお腹にもう結果が居るんだけどな~、二人ほど~」
その発言に、会場中が一瞬不気味なほどに静まり返ってから、物凄い爆笑に包まれた。
笑いの差こそあれ、老若男女関係なく「違いない!」「そうだな、初じゃないよな」「結果はもう出てたわね」などと口々に言い合って盛り上がる面々を前にして、真澄の怒りが一気に振り切れる。
「玲二!! 余計な事は言わないで! ……ちょっと清人! あなたまで、何一緒になって笑ってるのよ!?」
「すまんっ……、何かツボに入った……。腹が痛い……」
自分と一緒に憤慨しているかと思いきや、左腕で自分の腹を抱えるようにし、右手で口元を覆って必死に笑いを堪えているらしい清人に、真澄が怒りを炸裂させた。
「あのね! お腹抱えてないで、さっさと進めるわよ!」
「分かった、分かったから、頼む……、ちょっとだけ待ってくれ」
そうして清人は何とか平常心を取り戻してから、怒りと羞恥心で顔を朱に染めた真澄と共にケーキカットを行った。そして冷やかす声が飛び交う中、一口サイズに切り分けたそれを互いに一切れずつ食べさせ合ってから、満足そうに真澄の手を引きつつ席に戻った。
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