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第28話 院長室に届いた知らせ
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「教えてもらったのはこの地域の一般的な常識についてです。特別な知識などではありませんでしたので十分に助かりました」
「たとえば、どのようなことでしょう?」
「この地域の商人が着る、一般的な服装などです」
院長がユリアーナをチラリと見る。
黒を基調にしたフリルのたくさん付いた、いつものゴスロリ服をまとった彼女がいた。
「もしよろしければ妹さんの服をお見立ていたしましょうか?」
俺が返事をするよりも早く、寛大なはずのユリアーナが頬を引きつらせて言う。
「それにはおよびませんわ。これは故郷の服で、あたしが好んで着ているものですから」
「あら、失礼いたしました。てっきりロッテが自分のセンスで選んだのかと勘違いしてしましました」
院長とユリアーナの笑い声が辺りを包む。
二人の間に立ちはだかる理解の壁と微妙な空気を感じ取った俺は話を早々に切り上げることにした。
「私と妹の気持ちは固まっています。リーゼロッテさんを引き取らせて頂くのに何か不都合や不足があればおっしゃってください」
――――結果、ロッテは俺とユリアーナが引き取ることとなった。
孤児を引き取るのに必要な条件のうち、『この国に三年以上定住している』という条件を満たしていなかった。
しかし、来年成人を迎えるというロッテの年齢と本人の強い希望が決定だとなり、彼女を引き取ることが認められた。
「この街はいつ頃出発されるご予定ですか?」
すべての書類のサインを確認し終えた院長が訊ねた。
ここまで素振りすら見せなかったが、外国人の俺たちがロッテを引き取るのを認めた最たる理由は、『強硬手段に及ぶような権力者に狙われている彼女を何とか助けたい』、といういう思いからだろう。
「盗賊の騎士団への引き渡し手続きなどが終わったら出発するつもりです」
「少し時間がかかりそうですね」
声のトーンが落ちた院長に『御心配にはおよびませんよ』、と微笑みかけて言う。
「少女趣味の悪代官を黙らせる程度に価値のある魔道具を、眼の前に並べるくらい造作もないことです」
「差し出がましいようですが、希少な品や高価な品をお持ちになっていることはあまり苦にしない方がよろしいですよ」
俺たちってそんなに危うそうにみえるのだろうか?
「ここだけのお話です」
「そうですね、私も忘れることにいたしましょう」
席を立つ直前、俺は街中で気になったことを訊ねた。
「教会の付近がとても賑やかでしたが何かあるのでしょうか?」
この街の住人であるロッテですら驚くくらいに教会の前に人が集まっていた。それも、老若男女を問わずに教会の外からお祈りを捧げていた。
「昨日赴任していらした助祭様が、とても徳の高い方で着任早々、数々の奇跡を起こされたとか。それで一目見ようと大勢の住民が集まっています」
ロッテの脱走後に着任したのか。
廊下を走る音が急速に大きくなり、
「院長! 大変です!」
けたたましく扉が開かれ、若いシスターが廊下で聞き耳を立てていた子どもたちと一緒に院長室に転がり込んできた。
「何事ですか」
「魔物です! 魔物に襲われてシスター・アンジェラが重傷です! 一緒に薬草採取に森に行った子どもたちも、怪我をしたと知らせがありました!」
おいおい。
この街じゃ、シスターが子どもと一緒に魔物のいる森に出掛けるのかよ。
「たとえば、どのようなことでしょう?」
「この地域の商人が着る、一般的な服装などです」
院長がユリアーナをチラリと見る。
黒を基調にしたフリルのたくさん付いた、いつものゴスロリ服をまとった彼女がいた。
「もしよろしければ妹さんの服をお見立ていたしましょうか?」
俺が返事をするよりも早く、寛大なはずのユリアーナが頬を引きつらせて言う。
「それにはおよびませんわ。これは故郷の服で、あたしが好んで着ているものですから」
「あら、失礼いたしました。てっきりロッテが自分のセンスで選んだのかと勘違いしてしましました」
院長とユリアーナの笑い声が辺りを包む。
二人の間に立ちはだかる理解の壁と微妙な空気を感じ取った俺は話を早々に切り上げることにした。
「私と妹の気持ちは固まっています。リーゼロッテさんを引き取らせて頂くのに何か不都合や不足があればおっしゃってください」
――――結果、ロッテは俺とユリアーナが引き取ることとなった。
孤児を引き取るのに必要な条件のうち、『この国に三年以上定住している』という条件を満たしていなかった。
しかし、来年成人を迎えるというロッテの年齢と本人の強い希望が決定だとなり、彼女を引き取ることが認められた。
「この街はいつ頃出発されるご予定ですか?」
すべての書類のサインを確認し終えた院長が訊ねた。
ここまで素振りすら見せなかったが、外国人の俺たちがロッテを引き取るのを認めた最たる理由は、『強硬手段に及ぶような権力者に狙われている彼女を何とか助けたい』、といういう思いからだろう。
「盗賊の騎士団への引き渡し手続きなどが終わったら出発するつもりです」
「少し時間がかかりそうですね」
声のトーンが落ちた院長に『御心配にはおよびませんよ』、と微笑みかけて言う。
「少女趣味の悪代官を黙らせる程度に価値のある魔道具を、眼の前に並べるくらい造作もないことです」
「差し出がましいようですが、希少な品や高価な品をお持ちになっていることはあまり苦にしない方がよろしいですよ」
俺たちってそんなに危うそうにみえるのだろうか?
「ここだけのお話です」
「そうですね、私も忘れることにいたしましょう」
席を立つ直前、俺は街中で気になったことを訊ねた。
「教会の付近がとても賑やかでしたが何かあるのでしょうか?」
この街の住人であるロッテですら驚くくらいに教会の前に人が集まっていた。それも、老若男女を問わずに教会の外からお祈りを捧げていた。
「昨日赴任していらした助祭様が、とても徳の高い方で着任早々、数々の奇跡を起こされたとか。それで一目見ようと大勢の住民が集まっています」
ロッテの脱走後に着任したのか。
廊下を走る音が急速に大きくなり、
「院長! 大変です!」
けたたましく扉が開かれ、若いシスターが廊下で聞き耳を立てていた子どもたちと一緒に院長室に転がり込んできた。
「何事ですか」
「魔物です! 魔物に襲われてシスター・アンジェラが重傷です! 一緒に薬草採取に森に行った子どもたちも、怪我をしたと知らせがありました!」
おいおい。
この街じゃ、シスターが子どもと一緒に魔物のいる森に出掛けるのかよ。
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