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第33話 卑怯、なセリフ
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その日はマリアは後処理に参加しなければならないらしく、先に帰っていろと言われた。
アキがコンビニで適当な弁当を買って帰る途中、ソフィアが話しかけてくる。
『マスタ。ソフィア、は反対』
『なにが?』
『戦う、反対』
ふわりとアキの前を浮かぶソフィアの表情はいつも以上に硬い。
どうやら怒っているようだ。
『でも、そうじゃないと学校辞めないといけないっぽいよ』
『ソフィア、いれば生きられる。それじゃ、不満?』
『不満なんてないよ』
言うと、ソフィアは背中に回って首に腕を回してきた。
『マスタ。もう戦わなくて、いい』
『う~ん……強要されて戦うっていうわけじゃないんだよ』
難しい。アキは自分がなぜBOUNDに協力することを是としたのか、上手く言語化できない。
『ほら、【B】さんの件もあるし、たぶん断っても巻き込まれると思うんだよね』
『……逃げる、できない?』
『それは嫌だって、ソフィアも知ってるでしょ』
『――……』
不満そうな沈黙が返ってくる。
どうやらソフィアは前の花の魔物のときといい、アキが戦うことを良く思っていないらしい。
身を案じてくれているのは当然、アキといえど理解している。
だが、アキはそうした降りかかる困難から逃げることを嫌っていた。
『ソフィアが一緒なら大丈夫だよ』
『卑怯、なセリフ』
『ごめんね』
そうして部屋に帰ってくる。
すると、靴を脱いでいる間にソフィアが実体化していた。
身長が2メートルあるソフィアがこの部屋で実体化すると、頭をぶつけないように屈まざるをえない。
それになぜ実体化したのかと思ったら、膝立ちになったソフィアに抱き着かれる。
「わっ、ソフィア――んん」
抗議の声を上げようとしたアキの口は、ソフィアの小振りな唇で塞がれていた。
そのまま首元や額に唇を滑らせ、絡みつくように腕を回される。
熱烈な愛情表現にアキの体は正直になってしまうが、ソフィアは気にしない。
仕方なくアキは彼女の髪を優しく撫でた。
「よしよし」
すると、ソフィアのじゃれつきが落ち着きを取り戻す。
きっと思い通りにいかなかったことの憂さ晴らしなのだろう。
こうして抱き合っていると恋人のように錯覚してしまうが、アキとソフィアの関係はそうではない。
もちろん好き合っているのは事実だが、もっと深く、そして歪なものだとアキは思う。
それを言葉で表現するならば【依存】と言った方が正しいかもしれない。
きっと、本来は独りでいる者同士がその寂しさを埋めるために1つになっているのだ。
そうして玄関先で抱き合っていると、しばらくしてソフィアが体を離す。
「マスタ。スマフォ、出して」
「いいけど、なにするの?」
「利便性、向上」
ポケットからスマフォを左手で出すや否や、腕輪から無数の触手のような糸がスマフォに伸びた。
チリチリと中で何か細工をしている音がして、その画面が超高速で点滅したり画面が切り替わったりする。
「完了」
「またハッキング?」
「この世界の機械、面白い」
「あーあぁ……」
これ、一応借り物なんだけどなぁ、と思いつつ、アキはスマフォを見た。
既存のホーム画面もいつの間にかにソフィアのイメージカラーである青いものに変わっていて、アプリも彼女のデフォルメされたアイコンのものがいくつか追加されている。
「暗号通信、傍受されない。機能制限も、解除」
「どんな機能?」
「UVライト、非接触強制通信、赤外線欺瞞、自爆機能」
「最後のは解除しないでよかったかなぁ……」
弁当をレンジでチンしながら、呆れたように言う。
すると体の動きだけでソフィアがスマフォを欲しがったので渡すと、少し嬉しそうな顔で受け取った。
「ソフィア。今日は、これで遊ぶ」
「……ほどほどにしてね」
ソフィアは膝立ちでリビングへと去っていく。
アキは一瞬にしてソフィアのおもちゃにされた現代の最新機器を哀れに思うのだった。
アキがコンビニで適当な弁当を買って帰る途中、ソフィアが話しかけてくる。
『マスタ。ソフィア、は反対』
『なにが?』
『戦う、反対』
ふわりとアキの前を浮かぶソフィアの表情はいつも以上に硬い。
どうやら怒っているようだ。
『でも、そうじゃないと学校辞めないといけないっぽいよ』
『ソフィア、いれば生きられる。それじゃ、不満?』
『不満なんてないよ』
言うと、ソフィアは背中に回って首に腕を回してきた。
『マスタ。もう戦わなくて、いい』
『う~ん……強要されて戦うっていうわけじゃないんだよ』
難しい。アキは自分がなぜBOUNDに協力することを是としたのか、上手く言語化できない。
『ほら、【B】さんの件もあるし、たぶん断っても巻き込まれると思うんだよね』
『……逃げる、できない?』
『それは嫌だって、ソフィアも知ってるでしょ』
『――……』
不満そうな沈黙が返ってくる。
どうやらソフィアは前の花の魔物のときといい、アキが戦うことを良く思っていないらしい。
身を案じてくれているのは当然、アキといえど理解している。
だが、アキはそうした降りかかる困難から逃げることを嫌っていた。
『ソフィアが一緒なら大丈夫だよ』
『卑怯、なセリフ』
『ごめんね』
そうして部屋に帰ってくる。
すると、靴を脱いでいる間にソフィアが実体化していた。
身長が2メートルあるソフィアがこの部屋で実体化すると、頭をぶつけないように屈まざるをえない。
それになぜ実体化したのかと思ったら、膝立ちになったソフィアに抱き着かれる。
「わっ、ソフィア――んん」
抗議の声を上げようとしたアキの口は、ソフィアの小振りな唇で塞がれていた。
そのまま首元や額に唇を滑らせ、絡みつくように腕を回される。
熱烈な愛情表現にアキの体は正直になってしまうが、ソフィアは気にしない。
仕方なくアキは彼女の髪を優しく撫でた。
「よしよし」
すると、ソフィアのじゃれつきが落ち着きを取り戻す。
きっと思い通りにいかなかったことの憂さ晴らしなのだろう。
こうして抱き合っていると恋人のように錯覚してしまうが、アキとソフィアの関係はそうではない。
もちろん好き合っているのは事実だが、もっと深く、そして歪なものだとアキは思う。
それを言葉で表現するならば【依存】と言った方が正しいかもしれない。
きっと、本来は独りでいる者同士がその寂しさを埋めるために1つになっているのだ。
そうして玄関先で抱き合っていると、しばらくしてソフィアが体を離す。
「マスタ。スマフォ、出して」
「いいけど、なにするの?」
「利便性、向上」
ポケットからスマフォを左手で出すや否や、腕輪から無数の触手のような糸がスマフォに伸びた。
チリチリと中で何か細工をしている音がして、その画面が超高速で点滅したり画面が切り替わったりする。
「完了」
「またハッキング?」
「この世界の機械、面白い」
「あーあぁ……」
これ、一応借り物なんだけどなぁ、と思いつつ、アキはスマフォを見た。
既存のホーム画面もいつの間にかにソフィアのイメージカラーである青いものに変わっていて、アプリも彼女のデフォルメされたアイコンのものがいくつか追加されている。
「暗号通信、傍受されない。機能制限も、解除」
「どんな機能?」
「UVライト、非接触強制通信、赤外線欺瞞、自爆機能」
「最後のは解除しないでよかったかなぁ……」
弁当をレンジでチンしながら、呆れたように言う。
すると体の動きだけでソフィアがスマフォを欲しがったので渡すと、少し嬉しそうな顔で受け取った。
「ソフィア。今日は、これで遊ぶ」
「……ほどほどにしてね」
ソフィアは膝立ちでリビングへと去っていく。
アキは一瞬にしてソフィアのおもちゃにされた現代の最新機器を哀れに思うのだった。
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