社会では変人な俺は仙人見習い

tukumo

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付喪仙流の物と者の橋渡し

年越しの宴会

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 -師父の庵にて-


「「「「「乾杯!!」」」」」


 今年もあと数日ときたある日の夕刻にて、
 師父の住みかで宴会をしていた。


「さちえさん?それ度数強いのでこっちのシャンパンなんてどうです?」

「甘いですか!?」

「はい甘くて炭酸がしゅわしゅわしてますよー」

「呑みます!」

 ふぃ~危ない、さちえさんが最初に呑もうとしたのがチューハイだった。

 度数は強くはないが、如何せん呑みやすくて悪酔いしやすい。

「のう八仙。どうしても駄目かの?」

 ダル絡みしてくる美さんの要望とは

「絶ッッ対駄目です!なんであんな物に執着するんですか?そもそも所持するだけでも危ういのに‥」

「あーん!いけずう~!!善いではないか、マカロフ一丁くらい!弾セットで格安だったんだ!」

 聴きました?皆さん、お使い頼んだらロシアン銃マカロフ買い込んできやがったのですよ。
 ‥処分しましたよ勿論跡形も無くしてね。
 美さんにはまだ伝えてなかったな。



「馬鹿か?こんな御時世にこの国では必要あるまい。全く、お前は道教崩れ愚か者と変わらんな。それでも天仙か?」

「‥それを腐れ縁のお前の口から云われたからには今の話は無しだな!あの屑と一緒にされたら困るからな!」

 邪仙人師父に諭される天仙人美さんて‥

 そんな二人のやり取りに苦笑いしつつ俺はふととある方向に目線を移す。

「‥ねえマリア」

「ングングッハー!はい?」

 俺が視たのは幻か?否、現実でおきておる。

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

 おれは 目の前の付喪神マリアがジョッキを持ったと思ったら 
 いつのまにか空になっていた

 な… 何を言っているのか わからねーと思うが

 おれも 何故人形がジョッキを空にしたのか
 わからなかった…

 頭がどうにかなりそうだった…

 幻術だとか超吸収だとか

 そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

 もっと人らしいものの片鱗を 味わったぜ…



「あ、えーっとマリアも酒呑めるの?」

「はい、呑めますよ!」

 即答!? え、その身体?どうなってるの??

「‥‥(駄目だこんな光景は始めてだ如何せん付喪神と人の橋渡しをしてきたとは云え、まだまだ素人。付喪神って飲み食いできるっけ?)」

 そんな俺の考えを 
 読み取ったのか、師父が会話に入ってくる


「嗚呼、八仙は妖怪は人に化ける事が出来るのは知っているだろう?」

「‥はい、完全に人の姿はまだ視たことありませんが創作でなら存じ上げてます。」

「どうやら物でも付喪神化したら最初は液体から取り入れてやがて人間と大差無い固形物も食事ができるようになるんだ。」

 マジすか。付喪神凄いなあ‥

「いや、でも食事というよりは吸収なのでは?」

 マリアを観ながら思う

「そうだな最初は吸込みからだやがて想像の口が生えてくる。」

 何それ怖い

「マリア、因みに味覚ってあるの?」
 
 師父のご教示は有り難い

 理解したなら後の疑問は本人に聴いてみるべきだよね。

「はい、最近特にですかね味覚が研ぎ澄まされた感じがしましてこのビールが美味しいです!」


「付喪神化が進んで意思を持ちはじめたんだ中々此処まで善な付喪神妖怪に成長するのは観られないからな八仙、お前にはこれからも橋渡しを任せた。」

「はい!マリア、そのビールが呑めるならこっちの西洋のビールもお勧めだよ。」

「へえ、ゴクゴク‥ハーッ!美味しい!!」

 心を持った人形ってこんなに笑うんだ



 俺は改めて運命とやらに感謝した。





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