デモンズ・ゲート

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第2章

新たな双剣

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  またホーストンから馬車で半日を掛け、キャスタルへと着いた。田舎のホーストンを先ほど見てきただけに、人の多さに目が回りそうになる。
  ケイムに事の顛末を報告する為に、城の研究室に向かった。

  中庭に着いた時、異物が目に入った。
  デカいカエルがベンチに腰掛け、何かを頬張っている。
  「お? やっと来たケロか?」
  こちらに気付くと頬張っていた物を丸呑みし、2足歩行で歩いて来る。不気味と言うか違和感しかない。
  「あっ! あれはスノウと居たカエルだわ」
  「モンスターじゃねぇのか?」
  「何を言うケロ! お前を助けてやったケロよ!」

  あれがマナが言っていたカエルなのか。ならばスノウもここに来ているのか?

  「カエルさん。スノウも一緒に来ているのかな?」
 アレンは優しく聞いて見た。
  「種族名で呼ぶなケロ! ロバートケロ!」

  何て流暢に喋るカエルなんだ。

  「研究室に居るケロ! 一緒に行くケロ!」

  そう言うとロバートと名乗るカエルは、飛び跳ねながら研究室のある図書館へと向かって行く。

  「走れはしないんだね」

  少し引いた顔のダートンが言う。

  薄暗い廊下を抜け、研究室の扉を開けると、研究員達の中にケイムとスノウの姿を見つけた。

  「いや~お疲れだったね! 初任務達成おめでとう。ホーストンは少し復興してたかな?」
  「卒業していたとは知らず学校に飛ばしちゃった。ごめんね」

  任務達成か......全滅した様なものだけど結果オーライと言うやつか。それより聞きたい事がある。

  「スノウ、このカエルは何なんだ?」
  「カエルじゃないケロ! ロバートケロ」
  「ロバートは僕が時空魔法を試してた時に異世界から迷い込んだんだ。言葉も理解し喋るし、人間見たいな動作をして面白いだろ」
  「転移魔法の他に時空魔法も使えるのか」
  「まだいつでも使える訳じゃないけどね」
  「スノウが来たお陰で、門の開く場所を特定出来る可能性が出てきた。君たちは今日は休みだ、宿屋でゆっくりしたまえ」

  そう言うと、ケイムは4人分の宿賃を手渡して来た。

  明日の朝8時に集合と約束をし、各々研究室から出て行こうとすると、ロバートが両手で大きく手を振っている。案外可愛いやつかも知れない。

  街へ出ると武器屋を探すが、人の多さに加えて店も多い。またホーストンとは違い武器屋にしても何店舗もある。取り敢えず一番客の多い店に入ってみた。

  店内に入り中を見回すと品揃えが凄い。剣や槍などよく見る物の他に、見たこと無い種類の武器も豊富にある。しかし店内居る客は、屈強な男が多過ぎて商品を探しにくい。遠目に探すと双剣がぶら下がっている所が目に入った。

  双剣だけでもかなりの種類がある。見た目が一番カッコイイ双剣を手に取ってみる。程よい重さで柄の部分はしっくり手に馴染む。これが気に入ったので、値段を見て見ると驚いた。
 「48万WC! 全然買えない」
  俺の給料は18万WCなので、とてもじゃないが手が出ない。
  他の双剣も片っ端から値段を見てみたが、一番安いのでも21万WCだった。気を落とし青い顔で店から出る。

  「ん? あっちは中古専門って書いてあるな」
  道を挟んで反対側にある店は、中古専門の武器屋の様だ。流石に中古なら買えるだろうと思い店に入るが、何やら揉めている様な声がする。
 「買取がたった1万だと! そんな訳ねぇだろうが! 相場知らねぇと思って騙そうとしてんだろ?」
  女性なのに、この汚い言葉遣い。思い当たるのはナオ・フォースタただ1人だ。
 「困りますよお客さん。こんなボロボロの双剣なのに」
 「あぁ? ボロボロだと!」

  よし他の店に行こう。と思い店を出ようとする。
 「ライオネットじゃねぇか! 何してんだ?」
  最悪だ。心の中でそう呟いた。
  「いや、剣を無くしたんで新しいの探してるんだ」
  「ふーん、新しいの探すったって給料もまだ出て無いんだから金持ってねぇだろ?」
 「そうなんだ。だから安く買えるの無いかなと思って、ここに来たんだよ」

  店主の方に向き直したかと思うと、直ぐにこちらを振り返った。その顔は笑顔に溢れていた。

 「ライオネットさん、今ならこの双剣。なんと、たった4万WCでお譲しますけど如何ですか?」
 「ーーさっき買取額1万って言って無かったか?」
  ナオはそれを聞いていつもの表情に戻る。
 「ちっ! 聞いてやがったか」
 「そもそも、それ売ってどうするんだよ? 新しいの買うつもりなのか?」
 「違ぇーよ、俺たち潜入部隊が武器ブラブラ下げて敵国歩いてたら怪しまれるだろ。だからこれは要らなくなったんだよ」
 「丸腰で潜入するのか?」
 「はっはーん。お前らまだ習って無いんだな?」

  急に馬鹿にする様な表情を見せるナオ。

  「魔装具って言ってな、魔力で武器を創り出す訓練をしてんだよ。それなら武器の出し入れ自由自在! なんせ魔力で出来てるんだからな」
 「凄いなそれ、潜入にもってこいな技術だ。俺もそれを身につければ武器買わなくて良いのかな?」
 「残念でした! お前には無理だぞ」
 「......何でだ?」
 「消費魔力が激しいし、繊細な魔力のコントロールが要るんだ。まぁ、つまりエリート中のエリートじゃねぇと取得出来ねぇの」
 「ましてや魔力の量が並のお前じゃあ、仮に取得出来たとしても維持出来ないしな」

  確かに言われてみれば、潜入部隊に選ばれた4人は魔力の量が多い奴ばかりだ。

 「悪い事は言わねぇから、これ買えって」

  押しつけてくる双剣を、鞘から出して刃の状態を見てみる。
アレンが使っていた双剣と違い、あちらこちら刃こぼれし、薄汚い。こんな物が4万は高過ぎる。

  「じゃあなライオネット! 良いお買い物でしたね」

  そう言って足早に店から出ていくナオの手に、アレンの財布が握られていた。
 「おいっ! 買うとは言ってないぞ!」
  店を出て追いかけようとするが、外にナオの姿が無い。
  空から財布が落ちて来る。
 「4万ちょうどしか入ってねぇじゃねぇか」
  そう言うナオは空に浮んでいる。あれは木と水の複合魔法の風属性の魔法だ。もちろん俺には使えない。
  風を巻いて空を飛んでいくナオ。

手元にはボロボロの双剣だけが残った。
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