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第2章
魔装具
しおりを挟む次の日の朝、約束の午前8時前に研究室へと集合する。研究室の奥には先日までは無かった、何やら大きな物が設置されていた。
「早いな。まぁ遅刻されても困るがね」
「ケイム、この大きな装置の様な物は一体何なんだ?」
「これは悪魔の門が、何処に現れるかを感知する装置だ」
近くに寄って見てみると、キャスタル王国の地図が置かれていて、その周りに色々な機械仕掛けの様な物が設置されている。
「これで、どうやって悪魔の門が現れるとか分かるんだ?」
「悪魔の門は魔力の塊だと先日説明したと思うが、スノウにその魔力を感知してもらう。そしてスノウとこの装置を繋いで置けばこの地図上に門の場所が浮かび上がるんだ」
「スノ ウ様々だな」
「その魔力を感知するまで、僕たちはここに待機なのかい?」
ダートンが割って入る。確かにそれまでここに待機しなくてはならないのだとうか?
「まさか。それだと君たちは給料泥棒だと後ろ指を刺されるぞ」
「なら他に仕事があるのか?」
「悪魔の門を感知するまでの間は、潜入部隊、調査部隊、両方の戦闘能力向上を目的として戦闘訓練をしてもらう。どちらかと言えば潜入部隊の為に君たちが練習相手になるというかたちだがな」
それを聞いたアンジが、体の前で拳をぶつける
「おもしろいじゃねぇか!」
「いや、でもアンジ。あの4人を相手にするのは大変だよ?」
ダートンの言う通りだ。一人ひとりの強さは確実に向こうが上なのは間 違いない。
「でもここでずっと居るよりはマシだろ?」
「それも、そうだけど……」
「潜入部隊は演習場に居るはずだからそちらに向かってくれ。こちらに動きがあったら知らせに行くから」
演習場は中庭を抜けた先にある、訓練用の広場だ。広場に着くと4人と共に、その上官と見られる男がいた。
「おう! 君たちが調査部隊か。こちらからお願いした事だから、手伝ってくれると助かるよ」
その男は20歳後半から30歳前半位だろうか。アンジとほぼ似た様な体格で顔には無精ひげ、発せられる雰囲気には幾多の戦いを潜り抜けてきた屈強な戦士だと分かる。
「じゃあ早速で悪いんだけど、練習試合の相手をして欲しいんだ。まずは1対1の戦闘訓練だ」
そ う言うと男は潜入部隊の方を向き手招きをする。
「ナオ・フォースタ! 来てくれ」
「ナオか。俺が相手しても良いよな」
ウズウズとしているアンジ。だがそれに首を振る。
「いや、俺にやらせてくれないか?」
何故ならば、言うまでもなくこの双剣の恨みがあるからだ。
「そっちは君かい? じゃあこの訓練用の双剣をを使ってくれ」
刃が丸くなっていて切れないように細工が施された双剣を手渡される。この切れ味の悪い双剣でも良かったのに。
「では、始め!」
双剣を構えると、ナオがゆっくりと近づいてくる。
「ライオネット。俺の双剣は気に入ったか?」
挑発か? 普段ならそんな安い挑発にはもちろん乗らないが、今は違う。 鬱憤が爆発しそうだ。
「ああ! お陰様で良い買い物が出来たよ!」
そう言いながらナオに斬りかかる。ナオはそれをふんわりとした動きで後ろに回避した。あの不思議な動きは風魔法によるものだろう。
「その割には怒ってんじゃねぇか」
「怒ってはないよ。ただ……」
二撃目も空を切る。
「イライラしているだけだ!」
アレンは電撃を放つ。速度の速い電撃はナオを捉え動きを止めた。
すかさず双剣で追撃するが、ナオはその一撃を腕で止めた。
「やっぱり怒ってんじゃねぇか」
ナオは薄ら笑いの表情を見せる。
いくら魔装が厚かろうと、模擬刀とは言え鉄で出来た物を腕で止めるのは無理な筈だ。そんな事をすれば骨が折れるだろう。それに人間の腕とは思えない硬い物を殴った感触がする。
すると、 ナオの腕に肉眼でもハッキリと見えるほどの魔力が何か形を成していく。肘から手首に掛けては手甲の様なもの、そして手には5本の指それぞれに鋭い爪を有した物が具現化される。
「ライオネット! これが魔装具だ!」
ナオは爪を引っ掻く様に攻撃を繰り出す。双剣でそれを防ぐと金属音に似た音が発せられた。
と言うことは、あの魔装具は金属と同等の強度があるのか。
アレンは後ろに下がり再び電撃を放つ。
ナオはその電撃を爪で切り裂いた。
驚くアレンに対して、ナオはまた不敵な笑みを浮かべる。
「これは魔力で作られた爪だからな、こんな事も出来んだよ」
「調子上げてくけど、ちゃんと練習相手になってくれよ?」
そう言うと、風に 舞い上げられる綿の様にナオの体がふんわりと地面から浮く。
ギラギラした目をこちらに向けると、嵐の風みたいに高速で襲い掛かって来る。
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