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第2章
単眼の巨人
しおりを挟む「あの木の棒には絶対当たるなよ!」
「ありゃ木の棒って言うより、そのまんま木だろ!」
アレンとアンジは巨人の左右それぞれに別れる。
「おいアレン、でもこんなデカい奴どうすりゃいいんだよ!」
「足だ、足を狙え! ダメージが溜まれば頭が下りて来るだろ!」
「こんな太っとい足、何回斬ればいいんだよ」
アンジは愚痴を言いながらも、巨人の足の指へと斬りかかる。しかし斬れた感触はせず、代わりに柔らかい物を叩いた感触がした。
「嘘だろ、斬れねぇ!」
それを見たアレンは切れ味を上げる為に、防御に回していた魔装を双剣にも纏わせる。すると魔力に覆われた双剣に異変が起こった。
「何だ? 急に軽くなっ た気がする」
巨人はアレンに向かって木の棒を薙ぎ払う様に振って来る。大振りなので見切りやすいが、傍を通過した木の棒の風圧は凄まじい。少し億しながらも足に向かって斬撃を放つ。
その刃は巨人の皮膚を切り裂いた。だが違和感がする。自分が振ったイメージ以上に深く斬り裂いている。
「これは、風の魔法か?」
アンジの刀と同じく、ナオの双剣にも魔法が籠っているのだろうか? ナオが使っている風魔法が知らず知らずのうちに影響をもたらしたのか?
今は詳しくは分からないが、これは有り難い。
「これなら4万WCの価値があるってもんだ!」
更に左足を斬りつける。巨人は低い声を上げながら右足でアレンに向け蹴りを出す。回避するがこれもまた風圧が凄 まじい。当たれば一撃でおしまいだろう。
すかさずアンジが軸足となっている、左足のアキレス腱辺りに斬りかかるが、やはり刃が通らない。
「なんで俺だけ斬れねぇんだよ!」
右足を地に下した巨人は、左足の踵をアンジに向け後ろへ振って来た。
「しまった!」
それを見てダートンが魔法を唱える。
「ディス・ディンゲ」
二重の魔法障壁がアンジの前に現れる。踵は二重障壁を突き破るが、当たった抵抗で速度が落ちる。アンジはギリギリで回避に成功した。
「サンキュー、ダートン」
「気を抜いたら駄目だよ!」
「分かってんよ!」
アンジに気が行っている巨人を見て、アレンは魔力を溜め足の切り傷に向け「カーレント」を放った。
だ が電撃は足を避ける様にして二つに分かれる。
「まさか……あれは、魔装!?」
魔装を使えるモンスターなど存在しないはずだ。しかしあれを魔装なのだと仮定すると、電撃が逸れたのもアンジの刃が通らないのも説明が付く。
しかし、「カーレント」を完全に弾くレベルの魔装ならば魔法ではまず倒せない。
アンジの刃も通らないとなると、ダメージを与えれるのは俺だけと言う事になる。
巨人も自分にとって脅威となるものを判断したのか、アンジを無視しアレンの方にどっしりと構えた。
「てめぇ、俺は眼中に無いってか!」
アンジは炎を放つが、やはり魔装に完全に遮断され本体にダメージは通っていない。
アレンは巨人の繰り出す蹴りや木の棒を、 ダートンの防御魔法にも助けられ次々と回避するが、やはり1対1の状態では隙をつきにくく防戦一方だ。
「これじゃあ、いつかは捉えられて終わってしまうな」
巨人の一撃のプレッシャーもあり、息が切れ始める。
「アレン! 目を閉じろ!」
その声と共に金属製の球が転がって来た。何なのか分からないが言われた通りに目を閉じると、瞼を閉じていても分かるほどの強い光が放たれたのが分かる。
「これはフラッシュか!」
先ほどの金属の球。ケイムの発明品、魔玉の事を思い出した。
これで巨人の視界は奪われたはずだ。
アレンはこの機を逃さまいと、足に向け突進する。
だがアレンの目に映ったのは、自分に向け正確に蹴りを放つ巨人の足だった。
反射 的に魔装を全て前面に集め、蹴りに備えたが焼け石に水だった。
一瞬にして左半身の腕、肩、肋骨が砕けたのが分かった。
アレンの体は、巨人から50mは離れた場所に居たマナの所まで飛ばされる。
何とか意識は失わなかったが、それがまた地獄だった。耐え難い痛みが複数の箇所から襲い掛かって来る。
叫びながら悶えるアレンにマナは回復魔法を放つが、これほどの大怪我だとこれもまた焼け石に水の状態だった。
この巨人を倒せる希望を失った他の者は、徐々に死の恐怖が湧いてくる。
「アンジ! 実技試験で見せたあれを使え!」
突然のケイムの言葉に、アンジは記憶を辿る。
「ダートン! アンジにありったけの防御魔法を掛けろ!」
そう言うとケイ ムは魔力を上げる「M・エンハンス」をダートンに向け放つ。
アンジは魔装を全て刀へと纏わせ、体はダートンの「ディス・ディンゲ」で覆われる。
この攻撃が通らなければ、本当におしまいだ。皆の祈るような思いを感じながらアンジは巨人へ斬りかかる。
「貫け! 花鳥風月!」
刀は巨人の右足に突き刺さった。
巨人は低い声を上げ、アンジの方に向き直す。
「よっしゃあ! 俺がてめぇを倒してやるよ!」
刀を抜こうとしたアンジは焦った。
「抜けねぇ! おい嘘だろ!」
巨人の木の棒が襲い掛かって来る。苦渋の選択だが、アンジは刀から手を離し回避する。
今度はアンジと1対1の図式で向かい合う巨人。これでは刀を引っこ抜く事も不可能だ。
火 の魔法を発動させて見たが、あまりの実力差にアンジにはマッチの火の様に見えた。
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