デモンズ・ゲート

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第2章

666

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 聞いた事のないスノウの大声に全員が身構えた。
 何処から現れるのか? 次第に強くなる雨が視界を悪くさせる。

 目を凝らし周囲を警戒していた時、悲鳴が上がった。しかし悲鳴は一人では無い、とても大勢のものだ。
 「なんだ! 何処に現れたのかね!」
 「待てよ! 町から悲鳴が上がる訳がねぇ!」
 アンジの言葉を受けて思い浮かんだのは、住人が避難したあの地下空間だ。
 「まさか、あの地下空間に門が現れたと言うのかね」

 地下への入口へ向かうと、溢れた水の様に人が地下から出て来ていた。
 「これじゃ、僕たちが地下に入れない!」
 「でもよぉ、人が途切れるの待ってたら手遅れだろ!」
 そうなのだが、混乱に陥 った住人は我先にと絶え間なく地下から押し出て来る。
 ケイムが何か閃いた様に調査機器を置いている所へと向かう。
 「アレン! S・エンハンスを発動させておきたまえ」
 何をするのか分からないがS・エンハンスを発動させケイムが戻って来るのを待つ。

 少ししてカバンを持って現れたケイムは、地下の入口から離れた場所にカバンの中身をばら撒けた。
 「ここなら、恐らく大丈夫だろう」
 ばら撒かれていたのは、魔法石だった。
 「入口から入れないのなら、別の入口を作るべきとは思わんかね?」
 少し考えアレンは答えた。
 「そう言う事か」

 ケイムが魔法石から特殊金属を外していく、それに向けてアレンは魔力を放つが数が多いので中々思う様にな らない。
 「僕の仕事でしょ」
 そう言いながら現れたスノウは息を吐くと、全魔力を魔法石にむけ放った。石が光に照らされた宝石の様に輝き始める。スノウを引っ張り全速力でその場から離れると大爆発が起こった。
 後ろから襲い掛かる爆風に体が飛ばされるが、地面には思惑通り地下に繋がる穴が空いていた。

 「ケイムは無茶するわね」
 マナはスノウとアレンに回復魔法を掛ける。
 ダートンがディンゲを複数発動させ、階段を作る。ケイム、アンジ、ダートンは先に地下へと向かった。

 「もう大丈夫だマナ、俺たちも向かおう」
 「大丈夫な訳ないでしょ! 全然キズ塞がってないじゃない」
 「危ないかも、3人だと」
 「あんたは魔力無くなってるんだから 、ここに居なさいよ」
 スノウは両手を広げると、避難誘導している兵の方へ向かった。

 マナと二人で地下へ降りると、地下にあったはずのロウソクの火は消え、ほとんど明かりの無い闇の世界だった。
 アンジが火の魔法で明かりを作っては居るが、それでも視界が狭い。
 「もっと強力な火の魔法は使えんのかね!」
 「うるせぇ! これが全力だ!」
 「モンスターが見当たらないな。ホーストンの時はうじゃうじゃと居た筈なのに」
 「確かにそうね。いくらここが広いとは言え1匹も見当たらないのはおかしいわ」
 「だったらモンスターが現れる元凶の門では無く、人々が逃げている入口の方に向かおう」
 ダートンの意見に賛成し、入口の方へと走る。その道中にもモ ンスターが見当たらない。

 入口の光が見えるが、時折その光が隠れる。そして地面には振動を感じる、これは逃げている人のものでは無いだろう。
 「ここは確か高さ16mと言っていたかね?」
 「いえ、確か18mだった筈よ」
 入口からの逆光でシルエットとして浮かび上がるそれは、この地下空間の天井ギリギリまでの大きさがあった。
 「これが魔界のモンスターかよ!」
 アンジが炎を放つとシルエットの全貌が明らかとなる。
 大きな単眼に紫の掛かった皮膚、そして18mの天井に届くくらいの巨体。間違いなくこの世界には存在しない巨人の姿がそこに現れる。
 
 「これは666門の魔物の一つなのか?」
 「666? なんだよそりゃあ?」
 「悪魔の門について調べた所、門には666の扉がある とされているのだよ。開く扉の数字によって現れるモンスターが変わる」
 「もちろん数字が高ければ高いほど、強力なモンスターが出て来るのだよ」
 「ならこいつは間違いなく、ホーストンの時よりは高い数字の扉から出てきた魔物って事だな?」
 「マジかよ……」

 単眼の魔物は大きく地面を踏みつける。地震のような振動に、バランスを崩しそうになる。
 雄たけびを上げると、血で赤く染まった大きな木の棒をこちらに向けた。
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