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第2章
予兆
しおりを挟む爆発を聞き、急いで地上へと戻る。
「何が起きたのだ!」
ケイムが周りの者に尋ねるが返事は返ってこない。
黒煙が上がっている場所を見ると、駐屯地の入口付近の様だ。
馬はバラバラになり、馬車も木っ端みじんになっていた。
「スノウは!?」
そうだ、スノウはもう一台の馬車に他の研究員達と乗っていたはずだ。
そこへ駆け寄ると、黒煙の中から顔がスス汚れたスノウが出て来る。
「こいつが爆発を起こしやがったんだ!」
周りの兵士がスノウを指さし、そう叫んだ。
「そんなはずないじゃない!」
マナは反論するが、兵士は瞬く間にスノウを取り囲む。
「スノウ! 何があったのだ?」
「……爆 発、僕じゃない。君だ……」
「え? 私か?」
スノウはケイムを指さす。その指はケイムが首から下げている魔法石に向けられていた。
「ま、魔法石? 魔法石が爆発したのか?」
「君に貰った石が、突然輝き出した。そして爆発した」
スノウの言葉を聞きケイムは推測する。
魔法石は魔力を吸収する魔石から出来ている。魔石の状態ならば魔力を吸収すれば爆発するが、魔法石は特殊金属の効果で爆発せず魔力を維持する事が出来る。しかしもしそれが爆発したとなれば、特殊金属では抑えれない程の巨大な魔力を短時間で吸収した可能性がある。それにスノウに渡していたのは闇属性用の魔法石だ。だとすると。
「スノウ! 今、何か巨大な魔力を感知しているか? 」
「今は感じられない、と言うよりは感じれない」
「どう言う意味なのだ?」
「感知を何かに阻害されている。……そんな気がする」
ケイムはそれを聞くと表情が険しくなる。
「マレーシュ部隊長! ……住人を急いで避難させてくれ!」
「ど、どうしましたケイム殿?」
「……神話が現れるかも知れない」
調査部隊4人はマレーシュの兵と協力し、住人の避難を進める。ケイムとスノウは駐屯地で観測機器の設置を始めるが、先ほどの爆発で半分ほど機器を失ってしまい作業は難航している様だ。
空は黒い雲に覆われ、いつ雨が降り出してもおかしくない。
「アレン! そっち側は終わった?」
「ああ、こっち側は大丈夫だ」
「この 空……ホーストンの時と似てるね」
「確かに、あの時も雨が降っていたな」
「本当に門が現れるのかしら?」
「分からない……けど現れた時のために備えるしかないな」
「お前らの方は終わったのか」
アンジとダートンが走って来た。
「なら全部終わった様だね、僕らも駐屯地へと戻ろうか」
人が居なくなり廃墟の様な雰囲気になった町を通り駐屯地へと戻った。
「住人の避難、ご苦労」
「ケイム、観測機器はどうなんだ?」
「正直この有り様ではなぁ、厳しいと言わざるを得ないね」
空が光り、雷鳴が鳴る。それを合図に雨が降り始めた。
「降り出したか」
そう言いケイムが空を見た時だった。
古い木の扉を開けた時の様な、 何かが軋む嫌な音が鳴る。その音は雨音の中でもやけに鮮明に聞こえた。
「何かね? 今の音は?」
門が開いた事を連想させる音に、町の中でも高い場所にある駐屯地から周りを見渡すが、門らしき物もモンスターの姿も確認できない。
「ビックリするじゃねぇか」
アンジは手にかけていた刀から手を離す。
「来る……」
「何だよスノウ?」
アンジがスノウを見ると、普段の人形の様な無表情では無く蒼白した顔のスノウが再び声を出した。
「悪魔の門が来るぞ!」
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