デモンズ・ゲート

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第2章

疑惑

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 地上は激しい雨が降りつけているが、今回の悪魔の門出現で犠牲となってしまった人達の搬送が兵士によって休みなく続けられている。

 ケイムは今回の件について考察をしていた。
 単眼の巨人襲撃による死者は132人に上った。我々が現場に駆けつけるのがもう少し早ければ、犠牲者の数をもっと少なく出来たかも知れない。
 だがそれよりも深刻だと思えるのは、悪魔の門の出現場所だ。住人が避難した地下空間は軍事機密の場所で軍の関係者しか知らないはず。その上、あの空間からは外へ出られそうに無い巨人を召喚された事。
 考えられるのは、住人の避難先を確認した上で何者かが門を召喚した可能性が高い。その何者かが軍の関係者と言う線もある。

   「ホグナー」

 ケイムが声の方向を見ると、グリーヴァとジャオシンジャが居た。
 「君たち、どうしてここに?」
 「研究室の連中が、神話に出て来る悪魔の門が出るかも知れないと言っているのを聞いてな。どんな物なのか見てみたかったのだが、……色々と遅かったようだな」
 グリーヴァの視線の先には、治療を受けるアレンとダートンの姿があった。
 「ああ、そうだな。君たちがもう少し早く着いていれば、ここの被害も少なく出来たかもしれんが」
 「肝心の門については何か分かったの?」
 「今回は門自体を確認することが出来なかったんでな。特に収穫は無しだ」
 「……ただ」
 「ただ、なんだ?」
 「門が現れる場所の近くに、門を召喚する奴がいる 可能性が出て来た。まだ推測に過ぎんがね」
 「悪魔の門を召喚するとなると、かなりの魔力を持った者になるわ。スノウにその魔力を感知してもらえば良いんじゃないかしら?」
 「いや、スノウが言うには門の出現する間際になると、辺りの魔力が強くなりすぎて感知出来んみたいなのだ」
 「ならば目で探すしか方法が無いのか」

 「ここの後の事は私達に任せて、あなた達は先にキャスタルへ戻りなさい。あの二人の怪我はここでは応急手当くらいしか出来ないでしょう?」
 「……すまんな。では後は任せても良いかね?」
 ケイムはもう少し調査をしたかったが、二人の治療を優先させるべくキャスタルへ帰還する事にした。


 マレーシュとは打って変わって、キャスタ ルは澄み切った青空が広がっている。

 「スノウ、お帰りケロー」
 ロバートが馬車に駆け寄って来た。
 「ロバート、早速で悪いんだけど後ろの二人を治療して貰って良い?」
 「スノウの頼みなら良いケロよ!」
 担架で医務室へと運ばれて行くアレンとダートンに、ロバートは魔法をかけながらついて行った。

 「スノウ、アンジ、マナ、少しいいか?」
 「どうしたんだよ?」
 「これは可能性が低い事ではあるが、私の考えでは門の出現に軍関係者が関わっているかもしれない」
 「……それって、内通者が居るって事なの?」
 「かも知れないと言うレベルの話だがな。可能性は捨てきれない」
 「そこで少し調べて貰いたい事があるのだが」


 目が 覚めるとそこは病室だった。
 体の痛みはあまり感じない。ベットの横を見ると、カエルが仰向けに大の字で寝ていた。
 怪我の治りが早い、ロバートの回復魔法か。アレンが寝ているロバートに礼を言った時、病室のドアが開く。

 「おっ! 目ぇ覚めたかライオネット」
 入って来たのはナオとキャンディだった。
 「アレン、怪我の具合は大丈夫ですか?」
 「ああ、痛みもあまり感じないし腕も動くよ」
 「お前、何かあったらほとんど病室送りになってんじゃねぇのか?」
 そう言うとナオは笑っていた。
 「そう言う事を言ってはダメですよ」
 「いや、いいんだキャンディ。……間違ってはないしな」
 「なんだよ? 随分としおらしいじゃねぇか」
 「……最 近は、負けてばっかりだったしな」
 それを聞くとナオはアレンの頭を叩いた。
 「な、何してるんですか!?」
 ナオは驚くキャンディを余所に、もう一発頭を叩く。
 「この前も言ったかも知れねぇけど、男がウジウジしてんじゃねぇよ」
 これはナオなりの優しさなのだろうか? 滅茶苦茶過ぎて自然と笑った。
 「な、なんでお前叩かれて笑ってんだよ? もしかして……変態か?」
 「違うよ! それがナオなりの優しさなのかなって思ったら笑えて来たんだ」
 「なっ、ち、違ぇよ! 勘違いしてんじゃねぇよ!」
 明らかに同様を見せるナオを見て、アレンとキャンディは笑った。

 ナオが更に叩こうとした時、病室にケイムが入って来た。
 「やぁ、お目覚めか なアレン。しかしこんな両手に花の状態だとマナに怒られるぞ」
 「お前ら、そんな関係なのか?」
 「そんなってどんな関係の事だ?」
 「なるほど、馬鹿なんだなお前」
 ケイムは頷いていた。

 「悪いんだけどアレンを借りて行っても良いかな?」
 「どこに行くんだ?」
 「ちょっと研究室に来て貰いたいんだ」

 病室を後にし、ケイムと研究室へ向かった。
 「何か話す事があるのか?」
 「まぁ、そう慌てるな。こっちの部屋だ」
 研究室の奥に扉が見える。そんな所にまだ部屋があったとは知らなかったな。
 扉を開けると調査部隊が揃っていた。
 「みんな揃ってるのか。次の任務の話か?」
 そう言いながら部屋へ入ると、見覚えのある人物がベ ットの横たわっていた。
 以前とは何処か様子が違うが、その人物はホーストンで見た光る人間だ。

 「こいつは、あの時の!」
 「ここに来て貰ったのは、こいつについて分かった事を報告させて貰おうと思ってね」
 「こいつは、君の未来の姿だ」
 「はっ? 何を言ってるんだ?」

 ケイムの顔を見るが、その表情は何処か悲しそうに見えた。
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