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第3章
誇り
しおりを挟む雷鳴の刻印を発動させたアレンの体は、刻印から発せられる魔力により強固な魔装に覆われていく。
手に魔装を集中させ、アレンの首を割こうとするコリダロスの槍を掴んだ。
「なっ! 馬鹿な!」
コリダロスは予期せぬ事態に驚いた。
世界樹の魔力を帯びた槍の刃を、素手で掴まれる事など初めてであったからだ。
アレンは槍を掴んだまま、コリダロスの腹部を蹴り付ける。
その蹴りは人間とは思えないほどの力で、半獣と化したコリダロスであっても傷みつけられて行く。
しかし、それでも槍は離さなかった。
「……っ! お前、さっさと手を離せよ!」
「……私の魔装が無くなれば、この世界樹の槍であろうと今の貴様 には破壊されるだろう。これは……この槍は私にとっては命より大事なもの! 破壊されては困るのだよ!」
半獣の姿をした者が、その身からは似合わぬ人間臭いセリフを吐く。何ともチグハグな光景にアレンは攻撃の手を緩めてしまった。
一瞬、ほんの一瞬ではあるがアレンの槍を掴む力が緩んだ。コリダロスはその隙を見逃しはしない。
アレンへ体当たりをすると、槍を全体重を掛けた力でもぎ取った。
「戦いの場で迷うなどあってはならぬ事。貴様のその底知れぬ力には驚かされたが、精神はまだまだ青いな」
アレンが体勢を立て直した頃には、コリダロスは十分な距離を取っていた。
それを見てアレンは相手の行動の意味を考える。
槍が手から離れれば、槍 の魔装は薄くなる。だから距離を取ったとは言え、槍を投げる遠距離攻撃をするためではなく。俺があいつの間合いに入った時に、攻撃を合わせる返し技狙いか?
「S・エンハンス!」
アレンは刻印により上がった身体能力とエンハンスの力で、高速でコリダロスとの距離を詰める。
コリダロスはアレンの読み通り返し技を狙っていた。しかしアレンはその身のこなしに緩急へ入れ、不規則な動きとする事で返し技を打つタイミングをずらす。
徐々に狭まって来る距離に、コリダロスは返し技を諦め自ら槍をアレンへ向け突く。しかし反対に、その突きに対してアレンが返し技を決めた。
アレンの剣は、コリダロスの太ももを深く切り裂き機動力を奪った。
激しい痛みにコ リダロスが怯むと、アレンは更に斬りつける。
肩を斬られながらも気力で槍を振るが、アレンは悠々と回避する。そこへ更に斬られていない足に向け、マナの水魔法が放たれ貫通した。
コリダロスは遂に、膝を地面に付き動きが止まった。
「さぁ、この村から出ていけ! 二度と現れるな!」
コリダロスを見てアレンは言った。
アレンは剣を納め、マナの元へ向かった。
「今し方、青いと忠告したはずだぞ!」
コリダロスは翼を羽ばたかせ宙に浮き、まだ戦う姿勢を見せる。
「やめろ、そのまま向かって来ればお前を殺すことになる」
「フンっ! このまま背を向け逃げるなど出来るか! この国の騎士ならば戦いの中で散るものだ!」
コリダロスは死を覚悟した捨て身の攻撃を出すのだろう。
今までとは違い穏やかな表情に見え、満足げな顔にも見て取れた。
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