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騎士団長ルネ1
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第一話 騎士団長ルネ
大陸の南端に位置するレニエ王国。
領土は広くはないが、古い歴史を持ち、森林と海洋資源に恵まれた豊かな国として知られている。
北東と北西に接する二国間には領土争いが絶えないものの、レニエ王国は中立を貫き、数百年にわたり平和を保ち続けてきた。
理由の一つとして、隣国がレニエに戦線を広げる余裕がないことが挙げられる。
加えて、ミュラトール王家とそれに連なる血脈を持つ三大公爵家が中心となり、保守的だが堅実な政を行っているのも要因の一つと言えるだろう。
三大公爵家の一つであるヴィレール公爵家――現当主であるロドルフとその二番目の息子のルネは、至急登城せよとの命を受け、レニエ王城を訪れていた。
子細は告げられなかったが、余程の緊急事態に違いない。
二人は緊張した面持ちで馬車に揺られ、三日間かけてようやく領地から王都へ辿り着いたのだった。
王城を訪れると先んじてロドルフに話があるとのことで、ルネは客室で待つよう言い渡された。
案内された客室はさすが王家と言うべき豪奢なつくりをしている。
ルネは三人掛けの大きなソファの端に腰掛け、小さく息を漏らした。
入り口から見て右側に二つの内扉があるが、おそらくは寝室と浴室だろう。
つまりここは単なる応接室ではなく、宿泊客が通される部屋ということだ。
城下にはヴィレール家のタウンハウスがある。
あえて王城に宿泊させるのは、火急の呼び出しを気遣ってのことか。あるいはタウンハウスに帰る時間を惜しむほど切迫した事態なのかもしれない。
だが、政治的な問題であれば、ルネではなく次期当主である長兄・ルノーの方が適任だ。
いくら考えても兄を差し置いて自分が必要とされる事態など想像できず、ルネは落ち着かない心地でロドルフの戻りを待った。
一時間と少し経過した頃、ロドルフが客間へと戻ってきた。その顔つきは深刻だ。
「父上……」
「ルネ、陛下からの御申しつけだ。明日の叙任式をもって、お前を宮廷騎士団の団長に命ずる、と」
「えっ……明日、ですか?」
ルネが当惑するのも無理はない。
建国の祖から続く王家ミュラトール。
その尊い血を守るため組織されたのが宮廷騎士団だ。
その名のごとく宮廷内の警護が主な職務で、五つある騎士団の中で唯一平民の登用が許されていない。
職務の性質上、王城内を往来することが多いため、身元の確かな貴族や地方領主の家系の男子のみで構成されている。
全ての騎士の最高峰と称される特別な存在、それが宮廷騎士団だ。
その頂点に立つ騎士団長は、三大公爵家の嫡子以外の男子から持ち回りで選出することになっている。
最も信頼できる家柄であるのが一番の理由だ。
加えて、自身より身分の低い者に従うのを厭う貴族の性質に配慮している面もある。
適任者がいなければ騎士団長の任期を延ばすか、連続して同じ公爵家から輩出するなどして対応してきた。
過去には侯爵家の者が務めたこともあるが、適する年代の男子を生み育てるのも公爵家の重大な役目の一つだ。
現団長はバルゲリー公爵家の次男で、年齢は二十代後半と聞いている。
彼の引退後はヴィレール家から輩出することになっており、ルネもそのつもりで勉学と鍛錬に励んできた。
だが、就任は早くとも四、五年先の話だと思っていた。
歴代の団長は肉体の衰えを理由に三十代前半から半ばあたりで退任することが慣例になっているからだ。
また、次の団長は副団長として入団し、半年ほどかけて丁寧に引き継ぎが行われることになっている。
それを引継もなしに明日からと言われれば、驚くなというのが無理な話だ。
「ああ……私ももう少し時間が欲しいとお願いしたが、陛下に頭を下げられてしまってはな」
「何か、急を要する相当の事情があるということですね」
ロドルフは深く頷きながら重苦しい息を吐き出した。
語られたのは、バルゲリー公爵家を襲った不運な事故の話だった。
バルゲリー家は数年前に流行病で当主が亡くなり、長兄が跡目を継いだばかりだ。
その若きバルゲリー公が落馬し、命は取り留めたものの現在も意識不明の重体だという。
仮に目覚めたとしても公務への復帰は難しいというのが医師の見立てだ。
「バルゲリー家の心痛と混乱は大きい。それを鎮めるべく、団長は急ぎ領地に戻り爵位を継ぐこととなったのだ」
「そんな……」
バルゲリー公とは幼少の頃、一度だけ顔を合わせたことがあるが、見知らぬ大人に緊張しているルネに優しく声を掛けてくれたのを覚えている。
その弟である現団長も、快活で気のいい人物だったように記憶している。
「陛下も不幸が続くバルゲリー家に深く心を痛めておられる。とはいえ、宮廷騎士団長に空白の期間があってはならない。……ルネ、引き受けてくれるな?」
果たして、十九になったばかりの自分に務まるだろうか。
いつかは、と覚悟を決めていたが、人の上に立つには足りないものが多すぎる。
だが、バルゲリーの人々の悲嘆を思えば、躊躇している場合ではない。
引き受けることがルネにできる最大の手助けとなるはずだ。
「――はい、父上。少しでもバルゲリーの方々の憂いを減らせるならば、若輩者ではありますが、命を賭して努めます」
「うむ。お前なら立派に役目を果たせるはずだ」
「父上にそう言っていただけると心強いです」
ルネの返答に、ロドルフはわずかに表情を緩めた。決意に満ちた言葉に安堵したのかもしれない。
「明日、略式だが王の間でお前の騎士叙任式が執り行われる。今日はここでゆっくりと過ごせとのお達しだ」
「承知しました」
「まさか、こんなに突然お前と離れて暮らすことになるとは……寂しくなるな」
「はい。皆によろしくお伝えください」
王城内には宮廷騎士団専用の宿舎がある。
城下にタウンハウスを持たない地方領主の者や独身者が主に利用している。
既婚者は家族ともにタウンハウスに住むか、城下に小さな家を借りていることがほとんどだ。
団長と副団長については例外で、有事に備え宿舎への居住が定められている。
このまま騎士団長としての生活が始まることに不満はない。
ただ、今後は気軽に領地に戻れないことを考えると、きちんと家族に挨拶をしてくればよかったと思う。
「特にルノーは暴れるだろうな。お前のことを目に入れても痛くないくらい可愛がっているから」
「兄上に心配をかけぬよう、精一杯務めます」
「あいつが心配してるのは、そういう面じゃないんだがな……」
「え?」
ロドルフがぽつりと零したひと言に、ルネは紅い瞳を大きく瞬かせた。
「父上、そういう面とは」
「い、いや、ほら。お前は少し世間知らずなところがあるだろう。貴族の世界はお前が思っているよりも厄介で複雑だ、ということだ」
「……はい」
ロドルフらの心配はもっともだ。
ルネは八つの頃に家族で参加したパーティーで誘拐未遂にあって以来、長く社交の場から遠ざかっている。
事件自体は、犯人がルネを暗がりに連れて行こうとしたところでルノーが気付き阻止したため、ルネが恐怖心を抱く前に防ぐことができた。
だがその件以降、すっかり過保護になった家族たちは、ルネが十九になった今でも自領以外の外出には難色を示している。
他人からは窮屈に思われるかもしれないが、ルネにとって大きな不都合はなかった。
いわゆる社交界というものに興味が薄く、見知らぬ者ばかりのパーティーで行儀よくしているくらいなら、家でのんびり読書をしている方が何倍も楽しかったからだ。
頼めば城下町に行くことはできたし、ヴィレール城は広い庭園も大きな書庫もあった。
城の東側には自然豊かな森林と美しい湖があり、幼いルネにとっては十分な刺激が用意されていた。
次代の宮廷騎士団長に任命されるだろうと父ロドルフから告げられたのは、十四になる頃だ。
家督を継がない次男以下は、騎士になるか家門の商団を継ぐか、あるいは男子のいない家の婿養子になるくらいしか選択肢がない。
幼少の頃から漠然と将来を察していたルネは、剣の稽古も座学も真面目に取り組んできたが、それからはより一層鍛錬と研鑽に励んだ。
士官学校への入学は家族が難色を示したため、学業も剣術も優秀な家庭教師を雇い、空いた時間は家門の兵たちと稽古に明け暮れた。
それから次期公爵である兄のルノーも、忙しい業務の合間を縫ってルネに様々なことを教えてくれた。
友人と呼べるのはよく遊びに来ていたグラック侯爵家の次男・ジュストくらいのもので、ルネは今日この日まで安全な大人たちに囲まれ平穏に過ごしてきた。
敵意や悪意のある者と接した経験はないに等しい。
守られた世界から一歩出れば、厳しい世間の荒波に揉まれるのだろうが、経験不足については努力で埋めていくしかない。
それ以外にも足りないところは多々ある。騎士という職務についてもそうだ。
騎士団長に課せられた責任や大まかな仕事内容については座学で学んだが、書物と実務では異なることも多いだろう。
「今の副団長は職務を継続されるのでしょうか」
副団長以下は団長と異なり、家門の制限は設けられていない。
だが、実際は爵位を持つ者から選ばれることがほとんどで、現在の副団長は伯爵家の者だと聞いた覚えがある。
未熟な己を補佐してくれれば心強いと思ったが、ルネの期待をよそにロドルフは小さく首を横に振った。
「……副団長も、団長と合わせての退任と聞いている」
「そう、ですか……」
団長職の着任と退任については王に決定権があるが、副団長以下の人事は団長に一任されている。
職務に支障のないよう退任時期は調整されるはずだが、今回のように家門の事情により重なってしまうこともあるのだろう。
「そう肩を落とすな。現在の副団長は元々ひと月後の退任が決まっていたのだ。後任への引継はほぼ終えており、それならば同時に交代したほうが現場の混乱も少ないだろうと考えられてのことだ」
「そうでしたか、よかった」
小さく安堵の息を漏らしたルネを見て、ロドルフはにやりと口角を上げた。
「新しい副団長は、お前もよく知る人物だぞ」
大陸の南端に位置するレニエ王国。
領土は広くはないが、古い歴史を持ち、森林と海洋資源に恵まれた豊かな国として知られている。
北東と北西に接する二国間には領土争いが絶えないものの、レニエ王国は中立を貫き、数百年にわたり平和を保ち続けてきた。
理由の一つとして、隣国がレニエに戦線を広げる余裕がないことが挙げられる。
加えて、ミュラトール王家とそれに連なる血脈を持つ三大公爵家が中心となり、保守的だが堅実な政を行っているのも要因の一つと言えるだろう。
三大公爵家の一つであるヴィレール公爵家――現当主であるロドルフとその二番目の息子のルネは、至急登城せよとの命を受け、レニエ王城を訪れていた。
子細は告げられなかったが、余程の緊急事態に違いない。
二人は緊張した面持ちで馬車に揺られ、三日間かけてようやく領地から王都へ辿り着いたのだった。
王城を訪れると先んじてロドルフに話があるとのことで、ルネは客室で待つよう言い渡された。
案内された客室はさすが王家と言うべき豪奢なつくりをしている。
ルネは三人掛けの大きなソファの端に腰掛け、小さく息を漏らした。
入り口から見て右側に二つの内扉があるが、おそらくは寝室と浴室だろう。
つまりここは単なる応接室ではなく、宿泊客が通される部屋ということだ。
城下にはヴィレール家のタウンハウスがある。
あえて王城に宿泊させるのは、火急の呼び出しを気遣ってのことか。あるいはタウンハウスに帰る時間を惜しむほど切迫した事態なのかもしれない。
だが、政治的な問題であれば、ルネではなく次期当主である長兄・ルノーの方が適任だ。
いくら考えても兄を差し置いて自分が必要とされる事態など想像できず、ルネは落ち着かない心地でロドルフの戻りを待った。
一時間と少し経過した頃、ロドルフが客間へと戻ってきた。その顔つきは深刻だ。
「父上……」
「ルネ、陛下からの御申しつけだ。明日の叙任式をもって、お前を宮廷騎士団の団長に命ずる、と」
「えっ……明日、ですか?」
ルネが当惑するのも無理はない。
建国の祖から続く王家ミュラトール。
その尊い血を守るため組織されたのが宮廷騎士団だ。
その名のごとく宮廷内の警護が主な職務で、五つある騎士団の中で唯一平民の登用が許されていない。
職務の性質上、王城内を往来することが多いため、身元の確かな貴族や地方領主の家系の男子のみで構成されている。
全ての騎士の最高峰と称される特別な存在、それが宮廷騎士団だ。
その頂点に立つ騎士団長は、三大公爵家の嫡子以外の男子から持ち回りで選出することになっている。
最も信頼できる家柄であるのが一番の理由だ。
加えて、自身より身分の低い者に従うのを厭う貴族の性質に配慮している面もある。
適任者がいなければ騎士団長の任期を延ばすか、連続して同じ公爵家から輩出するなどして対応してきた。
過去には侯爵家の者が務めたこともあるが、適する年代の男子を生み育てるのも公爵家の重大な役目の一つだ。
現団長はバルゲリー公爵家の次男で、年齢は二十代後半と聞いている。
彼の引退後はヴィレール家から輩出することになっており、ルネもそのつもりで勉学と鍛錬に励んできた。
だが、就任は早くとも四、五年先の話だと思っていた。
歴代の団長は肉体の衰えを理由に三十代前半から半ばあたりで退任することが慣例になっているからだ。
また、次の団長は副団長として入団し、半年ほどかけて丁寧に引き継ぎが行われることになっている。
それを引継もなしに明日からと言われれば、驚くなというのが無理な話だ。
「ああ……私ももう少し時間が欲しいとお願いしたが、陛下に頭を下げられてしまってはな」
「何か、急を要する相当の事情があるということですね」
ロドルフは深く頷きながら重苦しい息を吐き出した。
語られたのは、バルゲリー公爵家を襲った不運な事故の話だった。
バルゲリー家は数年前に流行病で当主が亡くなり、長兄が跡目を継いだばかりだ。
その若きバルゲリー公が落馬し、命は取り留めたものの現在も意識不明の重体だという。
仮に目覚めたとしても公務への復帰は難しいというのが医師の見立てだ。
「バルゲリー家の心痛と混乱は大きい。それを鎮めるべく、団長は急ぎ領地に戻り爵位を継ぐこととなったのだ」
「そんな……」
バルゲリー公とは幼少の頃、一度だけ顔を合わせたことがあるが、見知らぬ大人に緊張しているルネに優しく声を掛けてくれたのを覚えている。
その弟である現団長も、快活で気のいい人物だったように記憶している。
「陛下も不幸が続くバルゲリー家に深く心を痛めておられる。とはいえ、宮廷騎士団長に空白の期間があってはならない。……ルネ、引き受けてくれるな?」
果たして、十九になったばかりの自分に務まるだろうか。
いつかは、と覚悟を決めていたが、人の上に立つには足りないものが多すぎる。
だが、バルゲリーの人々の悲嘆を思えば、躊躇している場合ではない。
引き受けることがルネにできる最大の手助けとなるはずだ。
「――はい、父上。少しでもバルゲリーの方々の憂いを減らせるならば、若輩者ではありますが、命を賭して努めます」
「うむ。お前なら立派に役目を果たせるはずだ」
「父上にそう言っていただけると心強いです」
ルネの返答に、ロドルフはわずかに表情を緩めた。決意に満ちた言葉に安堵したのかもしれない。
「明日、略式だが王の間でお前の騎士叙任式が執り行われる。今日はここでゆっくりと過ごせとのお達しだ」
「承知しました」
「まさか、こんなに突然お前と離れて暮らすことになるとは……寂しくなるな」
「はい。皆によろしくお伝えください」
王城内には宮廷騎士団専用の宿舎がある。
城下にタウンハウスを持たない地方領主の者や独身者が主に利用している。
既婚者は家族ともにタウンハウスに住むか、城下に小さな家を借りていることがほとんどだ。
団長と副団長については例外で、有事に備え宿舎への居住が定められている。
このまま騎士団長としての生活が始まることに不満はない。
ただ、今後は気軽に領地に戻れないことを考えると、きちんと家族に挨拶をしてくればよかったと思う。
「特にルノーは暴れるだろうな。お前のことを目に入れても痛くないくらい可愛がっているから」
「兄上に心配をかけぬよう、精一杯務めます」
「あいつが心配してるのは、そういう面じゃないんだがな……」
「え?」
ロドルフがぽつりと零したひと言に、ルネは紅い瞳を大きく瞬かせた。
「父上、そういう面とは」
「い、いや、ほら。お前は少し世間知らずなところがあるだろう。貴族の世界はお前が思っているよりも厄介で複雑だ、ということだ」
「……はい」
ロドルフらの心配はもっともだ。
ルネは八つの頃に家族で参加したパーティーで誘拐未遂にあって以来、長く社交の場から遠ざかっている。
事件自体は、犯人がルネを暗がりに連れて行こうとしたところでルノーが気付き阻止したため、ルネが恐怖心を抱く前に防ぐことができた。
だがその件以降、すっかり過保護になった家族たちは、ルネが十九になった今でも自領以外の外出には難色を示している。
他人からは窮屈に思われるかもしれないが、ルネにとって大きな不都合はなかった。
いわゆる社交界というものに興味が薄く、見知らぬ者ばかりのパーティーで行儀よくしているくらいなら、家でのんびり読書をしている方が何倍も楽しかったからだ。
頼めば城下町に行くことはできたし、ヴィレール城は広い庭園も大きな書庫もあった。
城の東側には自然豊かな森林と美しい湖があり、幼いルネにとっては十分な刺激が用意されていた。
次代の宮廷騎士団長に任命されるだろうと父ロドルフから告げられたのは、十四になる頃だ。
家督を継がない次男以下は、騎士になるか家門の商団を継ぐか、あるいは男子のいない家の婿養子になるくらいしか選択肢がない。
幼少の頃から漠然と将来を察していたルネは、剣の稽古も座学も真面目に取り組んできたが、それからはより一層鍛錬と研鑽に励んだ。
士官学校への入学は家族が難色を示したため、学業も剣術も優秀な家庭教師を雇い、空いた時間は家門の兵たちと稽古に明け暮れた。
それから次期公爵である兄のルノーも、忙しい業務の合間を縫ってルネに様々なことを教えてくれた。
友人と呼べるのはよく遊びに来ていたグラック侯爵家の次男・ジュストくらいのもので、ルネは今日この日まで安全な大人たちに囲まれ平穏に過ごしてきた。
敵意や悪意のある者と接した経験はないに等しい。
守られた世界から一歩出れば、厳しい世間の荒波に揉まれるのだろうが、経験不足については努力で埋めていくしかない。
それ以外にも足りないところは多々ある。騎士という職務についてもそうだ。
騎士団長に課せられた責任や大まかな仕事内容については座学で学んだが、書物と実務では異なることも多いだろう。
「今の副団長は職務を継続されるのでしょうか」
副団長以下は団長と異なり、家門の制限は設けられていない。
だが、実際は爵位を持つ者から選ばれることがほとんどで、現在の副団長は伯爵家の者だと聞いた覚えがある。
未熟な己を補佐してくれれば心強いと思ったが、ルネの期待をよそにロドルフは小さく首を横に振った。
「……副団長も、団長と合わせての退任と聞いている」
「そう、ですか……」
団長職の着任と退任については王に決定権があるが、副団長以下の人事は団長に一任されている。
職務に支障のないよう退任時期は調整されるはずだが、今回のように家門の事情により重なってしまうこともあるのだろう。
「そう肩を落とすな。現在の副団長は元々ひと月後の退任が決まっていたのだ。後任への引継はほぼ終えており、それならば同時に交代したほうが現場の混乱も少ないだろうと考えられてのことだ」
「そうでしたか、よかった」
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