文太と真堂丸

だかずお

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~ 更なる道に ~

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ザッ ザッ ザアッ


目の前から歩いてくる


真っ黒な人間

その姿は、まるで 動く灰の屍

全身焼け焦げているのか?

ただ、なによりも菊一、ガルゥラの二人を驚愕させたのは その人間の異形な姿ではなかった。

それは、この人間が放つなんとも凶々しく、強烈で感じたことの無いような空気感であった。

菊一とガルゥラはその空気に触れた瞬間、即座に刀を抜かされてしまっていた。


「貴様何者だ?」叫ぶ菊一



ジロリ



二人の全身が声にならぬ声で叫び続けている

こいつは ヤバい 確実に殺される


「俺かぁ ?」

二タッ

ニヤァ アアアアアアアアアアアアアアアアアア

男の口元だけが笑う

「骸」

こっ、こいつが骸

菊一、ガルゥラの額から汗がしたたり落ちる

こんなにヤバい奴だったのか、ちっ俺としたことがなんてこった。

足の震えが止まらねぇ

目の前に立つ人間が、遥か天にまでそびえ立つ大きな存在に見えたのは産まれてはじめての体験だった。


「やるぞ」ガルゥラが叫ぶ


「動くな」

骸が視線を誰にも合わさずに囁く

その声はか細く、とても小さき小さき声であったが

二人の心を支配するのに充分な力と響きが込められていた。


小さき声が身体全身を貫く

これまた産まれて初めての体験

「くそが」ガルゥラが声をあげる

動けない、どうした?言うことを聞け俺の身体よ

今まで、どんな敵とも戦ってきたじゃないか



こっ こいつが



こいつが



そんなに怖いのかあああああああっ

二人の男は即座に感じた

自身の肉体はこの時、既に微塵斬りにされ地面の上に無残で小さな小さな肉片となり散らばっていただろう。

もしこいつが刀を抜いていたら。

「運が良かったな、俺は今、機嫌が良いんだよ」

男はニヤリと笑った。

「勘違いするな、この道の先で見る、お前達が目にする真の絶望は俺の仕業じゃねえ」

「貴様らも、刀の道を歩いて来たんだろう、くっくっく、真っ直ぐ進み直視して来いよ」

男は何事も無かったように、二人の間を通り抜け歩いて行く

この間、菊一とガルゥラは動くことすら出来ず、ただ立ち尽くしていた。

「ちきしょう、バカな あんな奴がいるのか」菊一は地面に倒れ込み叫ぶ

「あの野郎、俺たちをまるで赤子の様にしか思っていなかった」

ガルゥラの拳は強く握りしめられた。

菊一は天を見つめ

おいっ

聞こえるか一山

この国はどうなっちまうんだ?

お前なら、あいつを前にどうした?

もちろん、あいつに勝ってくれてたんだよなぁ?

ふぅ~~

文太、真堂丸 お前達が相手にしなきゃいけねぇのはとんでもねぇ化け物だ。

悪いが俺たちにはもうどうにも出来そうにない

もう、俺たちの想像を遥かに超えた次元



ちきしょう、ちきしょう ちくしょう。



空には沢山の黒き雲

背後に輝く光は覆われていた。

あいつらとんでもねぇ、運命を背負っちまったな

一山、あいつらを信じ お前はこの世を去ったんだろう?

頼む、見守ってやってくれ。

ガルゥラも菊一と同じよう、自分の想像を遥かに凌駕していた相手の実力に頭が真っ白になっていた。

「菊一よ、あいつは大帝国の幹部か?」

「そう、聞いたことがある」

この時、まだ二人は知らなかった 骸が幹部を斬り、既に大帝国を離れたことを。

そう彼の目的は真堂丸とやり合うことに絞られていた。

「菊一、あの野郎変なこと言ってなかったか?」

「けっ、人が必死に忘れようとしてる事を思いださすんじゃねえよ」

この道の先にさらなる絶望がある

「行くぞ」

「待てよ、ガルゥラ」

菊一は地面に座りこむ

「少し心の準備をさせろ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオ~~

まるで、目の前の道が不気味な唸り声をあげているようだった。

「ふぅー嫌な予感しかしねぇな」

その頃、鬼ヶ島では、いよいよ本当の地獄が始まろうとしていた。


真堂丸は倒れ

鬼神による、皆殺しが決行される

「ふふふ、ゆっくり、ゆっくり一人ずつ殺してやろう、先に殺される者は名乗りでろ、ここまで俺様を苦しめたことに敬意を払い選ばせてやる」

鬼達は思う

敬意じゃない、この状況で更に人間や俺たちの心の闇をえぐり出し、混乱させ楽しむつもりなんだ。

誰だって死にたくねぇ

出るぞ人間の本性

俺たちに通ずる心

だれを先に殺させるかで、人間達の闇が浮き彫りになるぞ

鬼神は笑った、さあ、口論しろ誰を先に殺すか、選びあえ、そして、嘆き、罵りあい、絶望しろ、仲間の本性を見届け、泣け さあ、誰が先に死ぬか仲間と争いあえ!!

すぐに前に出たのは青鬼だった

心の中強く思う

こいつらにそんな争いはさせない、俺が先に行きケリをつける。

「鬼神、最初は俺だ」と叫ぼうとした瞬間だった。

青鬼を含め、鬼達は想像だにしなかった光景に驚かされることになる

「いや、俺が先だ」と道来

「いや、あっしが一番でごんす」

「いや、ここは俺が最初です」と太一

「馬鹿野郎、俺があいつをぶん殴ってやる」しんべえが言う

「いや、最初は僕です」と文太

鬼達はあっけにとられてしまった。

何だこの人間達は?

頭がおかしいのか?

何故、自分こそが生き長らえると我々のように争わない?何故他人を守ろうとし、自身の命を捨てられる?

これは、全く鬼達は想像すら出来ない奇妙な光景だった。

自分達なら仲間を捨て、必ず自身が生き延びるようにするだろう

「ふっ、こいつらが好きな理由が分かった気がする」

青鬼が微笑む

「なら、皆共に立ち向かおうとするか」叫ぶ青鬼

「おおーっ」

鬼達も産まれて初めてこんな気持ちになった

こいつらの為なら自身の命すら惜しくもない

「やるぞー彼らを援護しろーーーーっ」

「おおーーーーーーーーっ」

「お前達」驚く青鬼

「てめぇら、全員皆殺し希望で良いんだな」

「行くぞおおおおおおお鬼神」

鬼神の鋭い爪が空をきると

10の鬼達が地面に倒れる

「お前達」青鬼が叫ぶ

「みな、心してかかるでごんす、触れれば身体は即真っ二つ」

ザザッ

「はっ、速い しまった 避けられないでごんす」

背後に立つのは鬼神

「次はお前だったな」





スパアアアンッ









身体が真っ二つになった







「お前、あっしをかばって」

「俺たちは産まれて初めて心を学んだ気がした、ありがとう」

その光景に涙がとめどなく溢れる、のの

お願いもうやめて、もうやめて、鬼神様

「貴様、仲間をなんだとっ、お前を慕いずっとついて来てくれた仲間だろうううっ」道来は許せなかった。

「うおおおおおおおおおおおおーっ」

この時、鬼神は至極冷静だったのだ

道来と太一の関係性までも今までのやりとりで読めていた。

最初から狙っていたのは、向かってくる道来ではなく太一だった。

「うおおおおおおおおおおおおおおおー」刀をふりかざす道来

「悪いな、最初から俺の狙いは貴様を慕う小僧だ」



ギロリ



道来の全身を衝撃が走る

「しっ、しまったああああっ」

「逃げろ太一」


「えっ」




ザザッ







「死ね」









ズバッ









「おっおおお」







「太一いいいいいっっーーーっ」







「そうはさせない」右から青鬼の手

「簡単にはやらせないでごんす」左から一之助の刀

二人がかりで防いでいた。

「お前達」ホッとすると同時に即鬼神に向かう

「うおおーーーっ」

ギロリ

「どいつも、こいつも笑わせやがる、俺は鬼神、鬼神様だ」


ズドオオオオオオオオオーン

激しい轟音と共に、すさまじい砂埃が舞い上がる

「おいっ、あいつら大丈夫か」叫ぶしんべえ

「皆さん」声をあげる文太

ヒョオオオオオオー

砂埃が去ったそこには

鬼や仲間たち全員が倒れている

そこに立つ唯一の存在は鬼神だった。

「さて、一人一人の首をもいでゆくとするか」

「あわわわわわ、やべえ」足の力が抜けてしまい座り込むしんべえ

「さて、こいつからだ」

「んっ?」

鬼神の目の前に立つのは文太

「文太」文太の姿に気づいた倒れている仲間たち

「目をつぶした今でも感じるぞ、小僧だな、この状況どうする?」

「皆さんは殺させない」

「ほぉ、貴様になにができる、口先だけで語り、実力もねぇ、語られるのは嘘ばかり、笑わせる」

「確かにあなたの言う通り、僕には力もなく、何も出来ないかもしれない、でも一つだけ僕にも出来ることがある」

「貴様に出来ることなど何もない」牙をむく鬼神

「文太ーーーー」叫ぶしんべえ

立ち向かう文太「うおおおおおおおーーっ、僕には仲間を信じることが出来る」

「あの世で悔いてろ、死ね小僧おおっ」



キィン キィン キィン キィン



「何だと」

文太の命を守った者それは、4人の男の刀

「みっ、みなさん」

鬼神の攻撃を食い止めた者

それは 道来、一之助、太一、青鬼

「文太の信念は曲げさせない」

「文太の兄貴に言われちゃあ、身体だって限界をこえる」

「右に同じでごんすよ」

「俺はこの人間が好きだ、絶対に殺させない」

「皆さん、ありがとう」

「貴様らが立ち上がった所ですぐに殺してやるよ」

「いや、おまえの相手は俺たちじゃない」道来が言った。

道来の視線の先に立つのは


真堂丸だった



「てっ、てめえええっ」


「真堂丸」


「決着をつけるぞ、鬼神」



ゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオー







その頃

道を進んだ、菊一とガルゥラのもとでは。

「なぁ、うっ、嘘だろガルゥラ」

「・・・・・・・・」

「ちきしょうっ、なんだよ、なんだってんだよっ」

祠の壁を全力で殴る菊一

大変なことが目の前に起こりやがった。





二人の目に映る光景









それは、骸の言った通り真の絶望









菊一の刀は力の抜けた手から離れ地面におちていた。







カランッ







嫌な音が祠に響き渡る





アアアアーー アアアアーー

彼らはその光景を直視するしかなかったのだ。


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