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~ 道来と菊一 ~
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霧立ちこめる森の中、その日も朝はやくから刀の交わる音が響き渡る、今日が菊一との約束の3日目。
「ハァハァハァ」
「随分強くなったな道来」
「夕方まで休め、そして再びこの場所に来い、そこでお前が俺に勝てなかったら、覚えているな」
道来が頷く、頭を下げ、この場を去った後、菊一が叫んだ。
「おい、お前もいつまでも隠れてないで、出てこい」
出て来たのは太一
「道来が心配でずっと来ていたみたいだな」
「ばれてましたか」
「当たり前だ、気配が隠れてない、もちろん道来も気づいてただろう」
太一はすかさず菊一に問う「今日の決着ってまさか、どちらか死ぬ気でなんてことじゃないですよね?」心配そうな表情を浮かべる太一
「この三日間最初から、そうやってきた、太一お前に先に伝えとく、道来がもし俺を斬ったらこう伝えろ、俺が望んでしたこと、何一つ悔いはないから斬った後、後悔するようなことしやがったら、許さんぞと」
「そんなっ」太一は今宵二人が本気で斬り合う事をこの時知った。
「じゃあまたな、俺も少し休む」
太一の脚は震えていた「道来さん、菊一さん、嘘だろ、嘘だろ、どちらかが死ぬ?」
そんなっ
太一はいてもたっても居られなくなり道来のもとに走りだした。
こんな斬り合いになんの意味があるって言うんだ。
止めなきゃ、道来さんを。
菊一は、空を見上げ居るんだろ、鳥野郎。
「俺にもしものことがあったら、この手紙が俺の意思だ、ここに置いとくから読め」
手紙を置き、菊一は去って行った。
高く頭上木の上にはガルゥラの姿
「ちっ、あの野郎、本気だな」
二人の命を賭けた決闘
「悪りぃな道来、俺も不器用なもんでよ、こうでもしねぇと、俺の培った経験全てを伝える自信がねぇんだ」菊一は目を閉じた。
なぁ一山、俺がそっちいいったら、酒でも酌み交わそうぜ。
その同時刻、鬼ヶ島に伝書鳩が飛んできていた。
それは大帝国からの使い。
「ちっ、こいつは厄介だな、これ以上、鬼神が死んだ事を大帝国に隠せないかもしれない」
「どうして、で 青鬼さん?」
「嫌な動きだ、文太さん達に報告に行く、大帝国が何やら動きだしそうだ」
「えっ?」
それは幹部全招集の令
その伝書鳩は雷獣のもとにも、届いていた。
「ふっ、何やら動くな、俺の動向もかなり秀峰にあやしまれてるからな」
「いよいよ死への招待状かも知れねぇな」
雷獣は青い空を見上げた
ふっ、俺としたことがな
あの日、刀の持たない、お前に負けたんだ 文太
初めて触れちまったのかもしれねぇな、人の持つ愛とやらに。
あれ以来大帝国のやり方には全く興味がなくなっちまった。
人間もまだまだ捨てたもんじゃねえ
まぁよ、最後の最後まで俺も自分の感じたままに行かせてもらうぜ。
少しはお前らの役に立てるようにな。
ザッ ザッ
「雷獣殿とお見受けした、鬼道様による幹部様の招集令がかかっております」
「ああ、分かったよ すぐに行く」
「ハッ」
雷獣はある覚悟を決めていた。
この機に鬼道を討つ。
頭上には青空が広がっている
ああ、そらが綺麗だなぁ、文太、真堂丸よぉ。
「俺に出来ることはしといてやるよ、てめぇらはこんな戦で死ぬこたぁねえ、生きろや」
再び鬼ヶ島
ザッ ザッ ザッ ザッ
「道来さん、こんな馬鹿馬鹿しいことやめにして下さい、道来さんに菊一さんが斬れるはずがねぇ、こんな殺しあい意味がねぇ」
道来は刀を研いでいる
「太一」
「はい?」
「お前に見届けてほしい」
太一は立ちすくんだ、本気だ 本気でやるつもりだ
どっちも自分の大好きな人間
闘う者同士、お互い大好きな人間
何故そこまで?
太一には返す言葉が見つからなかった。
俺はどうしたら良いんだ?
どうすれば?
菊一は一人目を閉じ過去を思い出している
それは一山との出会いから、数々の敵と闘い、今に至る
俺の人生はどうだった?
少しは成長したか?
何かを成したか?
この世に貢献出来たか?
さあな、知らねぇ
ただ一つ言えることは
ここまで生きて、今死んでも何一つ後悔はない
この命、次の命に託し、お役ごめんといくとするか
お前は常に理想を生きたな一山
「何、刀で天下を取るのを止めるだと?俺たちは天下を目指し鍛えてきたんじゃないか?」
「ああ、止めた 飽きたんだ」
「ばっ、馬鹿やろうー」
お前は何か新しいものを見つけた気がした
刀に生き、闘いに明け暮れ死んで行くと思っていた
お前はいつしか、生を、命を、慈しむようになっていった。
あいつでさえも……
「野郎、鬼道の野郎 あいつは悪だ、奴の野郎のしてることは間違ってる、俺が奴を殺してやる」
「菊一、この世に正義だの悪だの そんなものはない、人それぞれの価値観にすぎんじゃないか」
「じゃあ、奴のやろうとしてる事を放っておくのか?」
「奴は奴なりの価値観で動いているだけ、勘違いするな、我々が正しいとか正義だとかそんなもんじゃないんだ」
「じゃあ、どうすんだ人々が奴の奴隷になるのを見てるだけか?」
「儂は、奴を放っておくことは出来ない」
「じゃあ、斬りに行くしかねぇだろ」
「儂の望みは奴と昔の様に仲良くしたい、斬りたいんじゃない止めたいんじゃ」
「菊一、我々が奴らの主張は間違ってると斬って、我々の主張する正しさを相手を斬り殺し通す、結局、彼らとしていることは然程、変わりはないんではないか?」
「じゃあ、どうすんだよ?指くわえて見てんのかよ」
「儂は奴に会いにゆく」
菊一は現在に目を開く
けっ、馬鹿野郎が殺されちまいやがって、何の解決にもなってねぇじゃねえか。
信じ、託したのか?
奴らに
文太、真堂丸 若きお前達はどうする?
奴を斬り、闘いに勝ち止めるのか?
それ以外に解決策などあるのか?
わりぃな、難しいのを任せちまうな
ヒョオオオオオーー
真堂丸は目をつむり岩の上に座っていた。
一山と過ごした夜
「真堂丸君、君は沢山の人間を斬り罪悪感におそわれた、儂もそうじゃった」
「逃げても、隠してもその感情は必ずでてくる、ならば逃げずに向きあってみるんじゃ」
「儂の結論は、自分を許し、この生を受け入れ 生きることに徹した、もちろん 答えなどない」
「お主が自分で見つけるんじゃ」
「真堂丸君」
「愛とはなんじゃ?」
「愛?」
「儂はある時から生涯かけて己に自問自答するようになった」
「沢山人を斬り、ある時、この世には何一つ無駄な命などないことに気づいてからの話じゃがな」
一山は立ち上がる
「生きろ」
「生き、己を愛してみせよ、己が自己を愛し、大切にせず、誰が己を愛してやれるんじゃ、自分を愛せない者が他者を愛するなど出来ない、儂が今君に言いたかった言葉じゃ、さて寝るとするかのぅ」
真堂丸が目を開くと目の前には自然が広がっていた
「愛か」
ヒョオオオオーー
時刻は夕暮れ
太一は決闘の事は誰にも話さなかった。
目の前で対峙するのは、道来と菊一
「いくぞ」
「はいっ」
ザンッ キィンッ
いきなりの菊一の全力の一撃
首元で刀は止められる
本気だ、今のは本気で斬り殺す一撃
道来さん、菊一さん 俺はどうしたら。
キィンッ キィンッ キンッ
「腕をあげたな道来、これなら、どっちが死んでもおかしくねぇ」
キンッ キィンッ キンッ
「菊一さん、あなたのおかげです、感謝しています」
キンッ
一瞬、その言葉に菊一の心が熱くなる
「馬鹿野郎、生き延びてから言えよ」
キィンッ キィンッ
「速度、力、技術は俺を超えたな。さて、俺の最高の技でいく、気を引き締めろ真っ二つになるぞ」
ゴオオオオオオオーー
死
すぐ背中にあるのは
死
「しゃああああっ」
スパアアアンッ
死
一瞬走馬灯の様に頭をよぎったのは
仲間達の姿
そして
太一の姿だった。
俺はまだ
死ねない
ザンッ
「見事、死を超えたな」ニヤリ
道来、俺の伝えたいことはすべてやりきった、これから先、 しっかり生きろ 心の中 叫んだ。
うおおおおおおおおー
スパンッ
不覚にもこの時、太一は目をつむってしまう
菊一最期の動く姿
見れるはずがなかった。
涙が
頬から流れた
とめどなく
流れた
すると
「なんだ、俺は生きてるじゃねえか?」
「道来おまえ、あの技をだした俺を斬らずに刀をはじき止められたのか?」
「俺の刀の道の信条」
「殺すより生かすための強さ、それを求めて来たから出来たんです」
ハッハッハハッハ
菊一は笑った
太一も涙を流し二人に駆け寄り、抱きしめた。
おまえ達も大したもんだ
一山、おまえの見つけた希望達は本当に俺たちを超えていく
ちっ
なんだよ
涙がでらぁ
その頃だった
鬼ヶ島に上陸した一つの影
「なんといぅことだ、 鬼神 おまえは死んだのか?」
それは全身を白で包んだ存在
こいつは驚いた
誰がやった?
まさか?
殺気を完全に殺し、その手練れは高い所に立つ
ああ
ああっ
分かった
あいつが
真堂丸
そいつは異常な嗅覚を持つ
女狐の首からする匂いと同じ匂い
きゃははははははははは
たまらないわ
私の獲物
そいつは大帝国 幹部 白い刃の一人
女郎蜘蛛
きゃはははははははははは
嬉しい 鬼神の首と真堂丸の首二つも手に入るなんて
「ああっ、ああん 疼く 面白くなってきたわ」
ギロリ 不気味な黒い瞳が鬼ヶ島全体を見つめていた。
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