文太と真堂丸

だかずお

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~ 一輪の花 ~

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キィンッ     キィンッ   キキン    キィンッ

目の前、凄まじい速さで真堂丸と骸の攻防が繰り広げられている
「ああ、楽しいねぇ」

「この日をどれだけ待ち望んだか」

見ていた一之助は驚く、先生は鬼神との戦の後、遥かに強くなっている
すごい、これならいける、更に先生の今日の調子は最高だ、見ていて分かる。

この勝負勝てる

一之助は確信した。

キィンッ   キィンッ   キンッ
真堂丸の刀を飛んでかわす骸
更にすぐさま、首元へ向かってくる真堂丸の刀を自身の刀の柄でさばけば、すぐに反対方向にある刀をまた柄ではじく、これらの攻防が目にもとらえられない速さで何度も繰り広げられている。
一瞬でも読み間違えれば、即座に首が跳ぶ

しんべえは見ているのが恐ろしかった
一瞬自身がまばたきでもして、次の瞬間、目の前に真堂丸の首が転がり落ちていたら?
まともな精神力じゃこんなの見ていられねぇ
おいっ
文太
お前は大丈夫なのか?
すげえよ
お前ずっとこんな時と向き合って来てんだよな
目をそらさずに
しんべえは文太を見た
あいつは今どう感じてるんだ?
文太は真っ直ぐ二人の戦いを見ている
あいつ、あんな目で戦いを見ていたんだ
知らなかった
あいつのあんな目
見たことねぇ
ありゃ 全てを覚悟している目だ
だめだ、今の俺にはとても怖くて直視できそうにない
真堂丸
頼むから死なないでくれよ

足、首、腹、腕
様々な場所に向かって来る刀を骸は見事にさばいている

ザッ   キイインッ
骸の顔の鼻すれすれのところ、刀と刀が交わる

「確かに強くなった、初めて会った頃より一段と」

「が」
骸が真堂丸の顔を覗き込む

「失望させてくれるなよ、兄弟」

「俺が相手になって、腕を見てやるって言ってんだ、本気でこいよ」

キイインッ
力で真堂丸の刀は押しのけられた。
その光景に一之助は唖然となる
すごい、認めたくはないがこの骸と言う男
敵ながら天晴れだ
この先生の腕を見て、まだ上からものを言っている
本当に本当に強い

ここまで

ここまで
鍛えあげられた 男なんだ
信じられない、あの先生と交わり、まだ本気で来いと言えるその実力

先生

先生は今どう感じてるでごんすか?
一之助の額から汗が流れる

「ふっ、悪りぃな」それは真堂丸の薄っすら浮かべた笑み

「舐めてたよ、これくらいでやれるかと」
ザッ
「お前も俺が相手になってるんだ、本気で来いよ」

ニヤリ骸が笑う

先生

先生
ぐっ  一之助の拳が力強く握られる
先生っっ

「では、行こうか、おいっ真堂丸  簡単に死ぬんじゃねえぜ」

グオゥン  
骸は刀を360度回し肩にかける

「しゃああああっ」
キンッ  キキン   キンッ   キィンッ  キン  キン   キィンッ
見ていた者、全てが驚いた

「はっはぇえ」
この動き人間じゃねぇ

突き  はじく

すぐさま   右肩   はじく

左首   止める

一瞬のうちにどれくらい、このような攻防があったのか?普通の人間には目で全てをとらえる事は不可能であった。
唯一僕らの目から分かった事、この時、真堂丸は全て受けにまわり一度も攻撃出来ていないということ
こんなの無理だ受けられてるだけでも、すごいが攻撃出来るはずがねぇ
しんべえは気が気ではない
死んじまう
あいつが死んじまう
やめてくんねぇか
もうこんな殺しあいやめてくんねぇか
どっちが強いかやって、死ぬんじゃおめぇら馬鹿じゃねえかよっ。
馬鹿じゃねえかっっ

キィンッ    キィンッ   キィンッ

後ろに押されていく、真堂丸

ザッ 骸がニヤリ笑う


    来る


「うおおおおっ」
骸の刀をはじき、真堂丸の猛撃が始まる

グゥオウンッ
「悪りぃな潰す」
真堂丸は一瞬嫌な予感がした
これは頭で考えて感じた類のものではない
その瞬間全力で一気に後ろに飛んだのである

ブオォン

「ふむ、良い感だ、さすがに何千と生死の戦をくぐり抜けて来ただけはあるなぁ」

それは不思議な太刀だった
見えたのは真っ黒い太刀筋
まるで影のような黒く不気味な
分かった事はもし、今後ろに飛んでいなかったら両腕を失っていただろうという事だ。

「それから、後ろで見ている諸君」

「俺はこの戦い力を解放し全力でやる事に決めた」

「忠告しておいてやろう、死にたくなきゃこの場を離れるんだな」

「?」

あああーーっ   あああああーっ

それはその瞬間だった
あたりの空気感が一瞬で変わった
もはやその場に生命感はなくなる
無生命、生きとし生ける者の生気がまるで感じない

「なっなんで、ごんすかこの感覚?」

「まるでこの辺り一帯、生の感覚が全くないようだ、怖いっ 怖い  気が狂う」

そこは絶望だけが漂う様な不思議な空間へと変わった



生命のない

希望の見えない

絶望

「うっうわあああああーっ」
突如、発狂したしんべえが倒れ込む

「しっ、しんべえ 」一瞬しんべえの声に一之助が意識を戻す

「まずいっ、こんな空間にいたら、しんべえや文太さんに、あっしも、気が狂う」

ブワアアア
真っ黒い影が再び全身をすぐに覆った感覚になる
この闇からは永遠に抜け出せない
ああ、駄目なんだ……全てを包む闇
逃げられない、絶望………光は閉じた

一之助が発狂しかけたその時だった

「一之助しっかりしろ、俺がいるっ」

ポタポタ 
瞳から涙が溢れ出ていた

先生

先生

あなたはいつでも、どんな暗闇や地獄にいても
救い出してくれる
真堂丸の声が一之助を地獄の闇から引きずり出す

「一之助すぐに二人を連れてこの場を離れろ」

「先生すいません、これ以上あっしらがここにいたら、先生の迷惑になる」

ポタポタ
「見届けられず、本当にすいません」堪えられぬ悔し涙

「ありがとう、充分だ」

「あとは任せろ」

一之助はしんべえを担ぎ、両膝をついてる文太の元に向かう

「文太さんつかまれ」

グッ  バッ

手ははじかれた
「文太さん大丈夫あっしです」
一之助は見た光景に驚く

ぐぎぎぎぎぎ
舌を噛み 血を流している文太
この時、一之助は理解した
舌を噛み、痛みを保つ事により、狂うのを止め、必死に生を感じ繋ぎとめていた。

文太が言う
「ぼ    ぼくは   みとどける」

ポタッ  ポタッ 
一之助の目から再び涙が溢れ落ちる

先生、文太さん、あなた達はあっしにとっての光だ

いつでも希望を見せてくれる
文太さんが残ってくれるなら、きっと、この決闘は……

「先生を頼みます」
文太は微笑んだ
地獄の中に自ら残り、微笑んだ
それはまるで、何もかもが焼き払われ、干からびた大地に咲く一輪の花のようだった。

一之助は意識のないしんべえを担ぎ歩きだす
一之助も苦しかった
この骸の持つ異様な空間はまるで、生命の存在出来ない場所の様に感じた、それはまるで全てを灰にしてしまうようなそんな漆黒の闇

「ほぉ、小僧ここに残るのか、死ぬぜ」

文太が骸を見る
「 シ ナ ナ イ」

「真  堂  丸   は  か   な   ら  ず   か  つ」

「・・・・・」
骸は黙って見ていた

「良いだろう、さあ続けようぜ」

「俺を楽しませてくれよ」

ニヤリ
死闘の第二幕が始まろうとしていた。

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