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~ 悲劇 ~
しおりを挟むその時は嫌な気がした、いつもはあまりこんな気持ちにはならないのだが、そのどす黒いモヤのような物が心の何処からわきあがってきているのは分からなかった。
そのモヤは心に纏わりつき、太一は何とも言えない嫌な気持ちに襲われていた、このまま道来さんが何処か遠くに行ってしまうような、そんな不吉な予感。
大丈夫 信じろ 信じるんだ。
太一は自分に言い聞かせるように言ったがその不安は何故か一向に拭えなかったのだ。
キィンッ キィンッ 目の前で死闘が繰り広げられている ビュンッ ズバッ
あの、あいつの大技を見極めなきゃ死ぬな、途切れそうな意識の中、道来は相手の技を見極めるのに必死であった。
もう少し、なんだもう掴みかけている。
道来は嬉しかった、何故ならこの戦いの最中、自身が物凄い速さで成長してるのを実感していたからだ。
来るっ
道来は直感で感じる
閃光のような突きが身体に向かってくるのを感じる、
はっ速い。
ジュパアアンッ
道来の脇腹が突かれる
ズバアアッ
「道来さんっ」太一が叫ぶ
ニヤリ笑ったのは、秀峰ではなく道来のほうだった。
「貴様」驚く秀峰
「殺すつもりだったろう?見きったぜ秀峰」
こいつ、まさかこの短期間で私の秘剣全てを見きりやがった。
ギリッ「生意気だよ、おまえ」
富士の頂上では
骸が声をあげ笑っている
「あはははははははははははははは」
嬉しいぜ、まさか本気で戦える相手がいるとはなぁ、たまらねぇ、たまらねぇ。
「頼むぜ、簡単に死んでくれるなよ」
とてつもない殺気だった、僕は倒れ、その場から立てなくなってしまった。
こんなっ・・・・こんなにすごいのか。
僕の額から大量の汗が流れ落ちる。
あの殺気を僕に向けられたら、間違いなく発狂して死ぬだろう、文太がそう確信出来るほど恐ろしくまた未知なる力だった。
「真堂丸、俺は人生で刀では負けなしだ、ある一人姉さんを除いてはな」
「?」
「姉さんは強く美しい人だった、俺が斬ったがな」
骸は灰のように焼け焦げた自身の身体を見つめた。
「頼むぜ、せめて五分は楽しませてくれよ」
真堂丸が骸に刀を向ける
ジャキッ
「行くぞ」
「うおおおっ」ズバアアッンッ
真堂丸が下から振りあげた凄まじい一撃を、骸は全くよけようともせず、何と顔面で受けたのだ。
あまりの光景に僕は言葉を失った。
ガッ ガタッ
うっ 嘘だ
骸はなんとあの真堂丸の刀を口でとめたのだ
「あはははははははははははははははははは」
「真堂丸、これを避けてね」
口調が違う?
ズバアアッッ
ぐはっ、なんだっこの一撃
まったく避けられねぇ
真堂丸の身体から血が噴き出す
ああ
なんだよっ
こいつは本当にやばいな
全く勝てそうにねぇ
ああ、駄目か?
ズサアアッ
真堂丸は地面にふたたび倒れる
いや、骸はそうさせてくれなかった。
倒れそうになる真堂丸の頭を片手で掴んでいた。
「ねぇ、頼むよ全力出してあげたんだから、簡単に死なないで」
骸のこの口調、こいつ一体どうしたんだ?
真堂丸は消え入りそうな意識の中、考えていた。
さっき姉さんと言ってたな、自身で斬ったと、それがこいつにとってなんらかの心の傷、全力を出すことで抑え込んだ幼少期の骸がそのまま剥き出しのままあらわれてるのか?
どっちにしても、強いな。
「ねぇ、もう終わり、そんなの許せないよ」
「許さないよ」
ギロリ
骸が真堂丸から手をはなす。
「うん、じゃあしょうがない先に君の友達を殺すね、君はもう、僕に勝つしか救われないんだよ」
「やめろっ、骸 やめろっ」真堂丸が叫んだ
頂上より少し下に降りた場所
ちょうど同時刻、気を失っていた、しんべえが目をさます。
「ハッ、あいつらは?あいつらは?」
「目を覚ましたでごんすか」
「俺は骸の殺気で気を失って、おいっ一之助あいつらはどうなった?」
「まだ、戦い中、おそらく道来殿も」
「はやく、あいつらの元に」
「よせ、しんべえ、あっしらが行っても何も出来ない」
「だからって、こんなとこで待ってるのかよ」
「ああ、そうでごんす」一之助の表情は真剣だった。
「あっしらは彼らを信じてここで待つ」
「文太と真堂丸を信じ、ここで待つ」
「分かったよ」あまりに気迫のこもった一之助の表情にしんべえは息を呑み、頷く。
「しんべえ少し座って休んでるでごんす」一之助は座らずに立ったままだった。
それが何故だかなんとなくしんべえにも分かる。
「いや、俺もあいつらが帰ってくるまで、立ってる」
一之助はしんべえを見て微笑んだ。
「もしよ、真堂丸が負けたら この国はどうなるかなぁ?」
「間違いなく、国は崩壊に向かうだろう、でごんすね」
「ふーーん」
しんべえにとってはどうでも良かった、仲間が無事に生きて帰って来てくれさえすれば。
負けんなよ おめぇら。
ふたたび、富士の頂上
ザッ ザッ
骸が文太に向かって歩き出す
「やめろ骸」真堂丸が叫ぶ
その時、辺りに文太の声が響く
「真堂丸僕なら大丈夫、いつだって覚悟は出来てる、絶対に自分を責めるような事は許さないから、骸に勝ったら、僕がいなくなっても大帝国を必ず止めて欲しい、お願いばかりでごめん、僕は真堂丸を信じてる」
「文太」
一瞬虚しい空気が真堂丸の身体全体を覆う
「別れの挨拶はいいね、さようなら」骸が刀をかざす
「今までありがとう真堂丸」
ズバッ
それは
とても
ゆっくりに見えた
ドサッ
ああっ
ああ
ああああああああああっ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ
文太が斬られた………
文太が死んでしまった
文太が死んでしまった
「次はおまえだよ」
俺のせいで
俺が骸を止められなかったせいだ
この時、真堂丸はすべての気力を失ってしまう
もう、戻らぬ時間
「俺もすぐに向かうよ文太」
骸の刀が真堂丸の頭上にかざされる
「じゃあな、兄弟」ギロリ
その時、真堂丸の心に最期の文太の声が鳴り響く
僕は真堂丸を信じてる、骸に勝ったら僕がいなくても大帝国を止めて欲しい
涙がとまらず溢れ出た ちくしょう 畜生。
畜生
ドスッ
骸の刀が真堂丸の頭を貫いた
そのはずだった。
骸に悪寒が走る
「覚醒したな」ニヤリ
骸は突如吹っ飛んだ
「ああ、こんな境地があったんだな」悲しげに真堂丸が囁く
そして文太の元に向かう
「ああ、そうだよ」
ズバアアッ
骸の口調は戻っていた、この時すでに骸は幼少期の自身を統合していたのかもしれない。
骸の一撃をしゃがんで躱わした。
「さあ、俺を楽しませてくれよ」
「文太の最期の願いは覚えている」
ザッ
「そんなに大切だったのか?」骸が問う
「ああ、なによりも」
「すぐに同じ場所に送ってやるよ」
「文太、すまねぇ」
「おまえの望みしかと受け取ったから」
「不甲斐ない俺を許してくれ」
ズバアアッ ズバアアッ スパアアンッ
骸の刀を躱す真堂丸
そして一瞬の隙をつき刀の柄を骸のみぞおちに打ち込んだ。
ズゴオオオオンッ
ザッ 真堂丸は文太の元にふたたび歩み寄る
「文太」
背後から笑い声
「あっはっはっはっは、まだ少し足りないか」
「骸おまえ」
文太は傷を負ったものの、まだ生きていた。
「お前が余りに生ぬるいからな、少々力を引き出してやったのさ、まあ一撃で殺さなきゃ、その分おまえに強くなる機会を与えられるかと思い殺さなかっただけだ、次は殺す」
よかった
本当によかった
真堂丸は優しく文太を地面に寝かせ、骸の方を振り返る
「もう、そんなことはやらせねえよ」
「やろうぜ、決着だ」
「良いだろう、楽しませろよ」
ゴゴゴゴゴゴォォオオオオオオオーー
どちらが生き どちらが死ぬ?
決着は近い
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